ですが、これもまた、アエルスドロの「冒険」なのです。
大部屋に入った八人が見たのは、アルトンの変わり果てた姿だった。
「そんな……アルトン……」
かつて、身を呈してアエルスドロを守り、アエルスドロを地上に逃がした執事、アルトン。
今、彼には生気が感じられず、アンデッドにされてしまったようだ。
「……多分、誰かが無理矢理蘇らせたんでしょうね」
アルトンはアエルスドロの生存と引き換えに命を落とした。
しかし、敵はアエルスドロの心を砕くために、アルトンをアンデッドとして復活させたらしい。
「まさか、こんな形でアルトンと再会するとは……。
だが、私は……貴方を助けたい。だから……もう、休んでくれ……!」
アエルスドロは、アルトンを不死の呪縛から救うために、涙を流しながら剣を抜いた。
最早、人としての命が無いと知りながらも。
「ウオアァァァァァァァァ……!」
アルトンは瘴気を操って、アエルスドロ達を弱らせようとしたが、
驟雨が苦無を投げてそれを防いだ。
ルドルフはアルトンの身体や魔力の構成を読み取り、仲間との攻撃に生かした。
ミロは気合を溜めて攻撃力を上げ、ユミルはオール・シャープを唱えて全員の攻撃力を上げる。
「トランス・スケイル!」
「疾風の術!」
アエルスドロは瘴気で鱗を作り、茜はユミルに術をかけて素早い魔法攻撃ができるようにした。
「雷切」
「ド・ホル・ラ・ロタ・ド・トニト!」
驟雨は忍術で雷を落とし、ユミルは魔法で眩い電撃を発生させる。
アルトンは動きが速くなっていたが攻撃はギリギリ命中し、
彼をダメージと共に麻痺させ動きを鈍らせた。
動きが鈍くなったアルトンは双剣を驟雨に振りかざすが、
驟雨は目にも留まらぬ動きで攻撃を二回ともかわした。
「これ以上、アエルスドロを苦しめないでくださります? ピアシングショット!」
マリアンヌは防御が薄いところを狙い、集中して銃弾を撃ち込む。
彼女はアエルスドロのために、己のプライドを捨ててでもアルトンを楽にしたかったのだ。
「ウアァァァァァ……」
アルトンは呻き声を吐きながらも、どこか苦しそうな様子だった。
まるで、アルトンの魂が、不死の呪縛と戦っているかのように。
「アルトンは瘴気と戦っている。だから、私にできる事は1つだけだ……!」
「蛮勇の精霊よ、勇敢なる者を守りたまえ! バルキリースピア!」
ルドルフは蛮勇の精霊を召喚して輝く槍をアルトンに投げ、刺さると大爆発を起こす。
バルキリースピアは男性の精霊使いが使用すると、威力が大幅に高まる特性があるのだ。
「食らいなさい!」
「すまない、アルトン」
ミロは回し蹴りでアルトンを吹っ飛ばした後、飛び上がってもう一度アルトンを蹴る。
アエルスドロは二段斬りでアルトンを攻撃した。
「アルトンを楽にするためにも、あたしも頑張らなくっちゃね!
勇気の精霊よ、彼の者に勇気を与え給え! ファナティシズム!」
エリーは勇気の精霊を召喚してアエルスドロを勇気づけた。
「ありがとう、助かるぞ」
「ウアアァァァァァァァァァ」
アルトンはミロと驟雨に斬りかかってきた。
ミロと驟雨は攻撃をかわした後、忍術と超能力でアルトンを拘束した。
「アエルスドロのためにも、全力を出しましょう! ラ・ロタ・ド・ステラ・ド・トニト!」
ユミルが魔力を解放すると、銃弾のような雷弾がアルトンに次々と命中する。
最後の一発がアルトンに命中すると、大爆発が起こった。
「獄炎」
驟雨は忍術により無数の火柱を起こしてアルトンを包み込む。
アンデッド化しているアルトンに、炎の攻撃は効果が抜群だった。
アルトンは双剣を振り回して攻撃を当てようとするが、
拘束されている以上、その攻撃は当たらなかった。
「ファニングショット!」
マリアンヌは連射を行い、アルトンを撃ち抜く。
何度も攻撃を受けたアルトンは、涙を流そうとしたが、
もう目は枯れていて、泣こうにも泣けなかった。
アエルスドロは覚悟を決めた表情で、この部屋の瘴気を全て剣に吸わせた。
彼の剣は、救済しようとする心とは裏腹の、漆黒に染まっていた。
「さよならだ……そして、ありがとう……。魔空衝裂破!!」
地獄の嵐を纏いし刃が、アルトンの身体を一閃した。
金属さえ引き裂くその破壊力は、哀れな不死者を安らかに眠らせた。
「ア……アエルスドロ……お坊……ちゃ……ま……。ただいま……戻りました……」
アエルスドロの剣を受けたアルトンの動きが止まった。
「お帰りなさい……」
アエルスドロがアルトンに最初にかける言葉は、これ以外になかった。
「お坊ちゃま、見ないうちに強くなりましたね」
「アルトン……」
ようやく執事と再会したアエルスドロ。
だが、その時間も、長くは続かない事はアエルスドロにも分かった。
「わたくしはお坊ちゃまを逃がした時、
キアランお嬢様と彼女が使役する多くの魔物に襲われました。
それでも、わたくしは戦いを挑みましたが、力及ばず、倒れました。
そして、無理矢理の蘇生とはいえ、
このような醜態を見せてしまい、申し訳ありませんでした。
しかし、あなたのおかげで、わたくしの魂は解放されました」
「ああ……感謝しているよ、アルトン」
「これで、わたくしは安心してあの世に行けます。
そこの方々も、お坊ちゃまをずっと支えてください。
本当に、本当にありがとうございました……」
別れの言葉を告げたアルトンの身体は、光の粒子となって消滅した。
アエルスドロは、何も無くなった部屋で、一粒の涙を流した。
仲間をその手にかけたアエルスドロ。
ですが、これを乗り越えてこそ、主人公らしくなるのです。