ダークエルフと悪役令嬢   作:アヤ・ノア

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アエルスドロにとって、つらい戦いが始まります。
ですが、これもまた、アエルスドロの「冒険」なのです。


第44話 不死者と化した執事

 大部屋に入った八人が見たのは、アルトンの変わり果てた姿だった。

 

「そんな……アルトン……」

 かつて、身を呈してアエルスドロを守り、アエルスドロを地上に逃がした執事、アルトン。

 今、彼には生気が感じられず、アンデッドにされてしまったようだ。

「……多分、誰かが無理矢理蘇らせたんでしょうね」

 アルトンはアエルスドロの生存と引き換えに命を落とした。

 しかし、敵はアエルスドロの心を砕くために、アルトンをアンデッドとして復活させたらしい。

「まさか、こんな形でアルトンと再会するとは……。

 だが、私は……貴方を助けたい。だから……もう、休んでくれ……!」

 アエルスドロは、アルトンを不死の呪縛から救うために、涙を流しながら剣を抜いた。

 最早、人としての命が無いと知りながらも。

 

ウオアァァァァァァァァ……!

 アルトンは瘴気を操って、アエルスドロ達を弱らせようとしたが、

 驟雨が苦無を投げてそれを防いだ。

 ルドルフはアルトンの身体や魔力の構成を読み取り、仲間との攻撃に生かした。

 ミロは気合を溜めて攻撃力を上げ、ユミルはオール・シャープを唱えて全員の攻撃力を上げる。

「トランス・スケイル!」

「疾風の術!」

 アエルスドロは瘴気で鱗を作り、茜はユミルに術をかけて素早い魔法攻撃ができるようにした。

「雷切」

「ド・ホル・ラ・ロタ・ド・トニト!」

 驟雨は忍術で雷を落とし、ユミルは魔法で眩い電撃を発生させる。

 アルトンは動きが速くなっていたが攻撃はギリギリ命中し、

 彼をダメージと共に麻痺させ動きを鈍らせた。

 動きが鈍くなったアルトンは双剣を驟雨に振りかざすが、

 驟雨は目にも留まらぬ動きで攻撃を二回ともかわした。

「これ以上、アエルスドロを苦しめないでくださります? ピアシングショット!」

 マリアンヌは防御が薄いところを狙い、集中して銃弾を撃ち込む。

 彼女はアエルスドロのために、己のプライドを捨ててでもアルトンを楽にしたかったのだ。

ウアァァァァァ……

 アルトンは呻き声を吐きながらも、どこか苦しそうな様子だった。

 まるで、アルトンの魂が、不死の呪縛と戦っているかのように。

「アルトンは瘴気と戦っている。だから、私にできる事は1つだけだ……!」

 

「蛮勇の精霊よ、勇敢なる者を守りたまえ! バルキリースピア!」

 ルドルフは蛮勇の精霊を召喚して輝く槍をアルトンに投げ、刺さると大爆発を起こす。

 バルキリースピアは男性の精霊使いが使用すると、威力が大幅に高まる特性があるのだ。

「食らいなさい!」

「すまない、アルトン」

 ミロは回し蹴りでアルトンを吹っ飛ばした後、飛び上がってもう一度アルトンを蹴る。

 アエルスドロは二段斬りでアルトンを攻撃した。

「アルトンを楽にするためにも、あたしも頑張らなくっちゃね!

 勇気の精霊よ、彼の者に勇気を与え給え! ファナティシズム!」

 エリーは勇気の精霊を召喚してアエルスドロを勇気づけた。

「ありがとう、助かるぞ」

ウアアァァァァァァァァァ

 アルトンはミロと驟雨に斬りかかってきた。

 ミロと驟雨は攻撃をかわした後、忍術と超能力でアルトンを拘束した。

「アエルスドロのためにも、全力を出しましょう! ラ・ロタ・ド・ステラ・ド・トニト!」

 ユミルが魔力を解放すると、銃弾のような雷弾がアルトンに次々と命中する。

 最後の一発がアルトンに命中すると、大爆発が起こった。

「獄炎」

 驟雨は忍術により無数の火柱を起こしてアルトンを包み込む。

 アンデッド化しているアルトンに、炎の攻撃は効果が抜群だった。

 アルトンは双剣を振り回して攻撃を当てようとするが、

 拘束されている以上、その攻撃は当たらなかった。

「ファニングショット!」

 マリアンヌは連射を行い、アルトンを撃ち抜く。

 何度も攻撃を受けたアルトンは、涙を流そうとしたが、

 もう目は枯れていて、泣こうにも泣けなかった。

 アエルスドロは覚悟を決めた表情で、この部屋の瘴気を全て剣に吸わせた。

 彼の剣は、救済しようとする心とは裏腹の、漆黒に染まっていた。

「さよならだ……そして、ありがとう……。魔空衝裂破!!」

 地獄の嵐を纏いし刃が、アルトンの身体を一閃した。

 金属さえ引き裂くその破壊力は、哀れな不死者を安らかに眠らせた。

 

「ア……アエルスドロ……お坊……ちゃ……ま……。ただいま……戻りました……」

 アエルスドロの剣を受けたアルトンの動きが止まった。

「お帰りなさい……」

 アエルスドロがアルトンに最初にかける言葉は、これ以外になかった。

「お坊ちゃま、見ないうちに強くなりましたね」

「アルトン……」

 ようやく執事と再会したアエルスドロ。

 だが、その時間も、長くは続かない事はアエルスドロにも分かった。

「わたくしはお坊ちゃまを逃がした時、

 キアランお嬢様と彼女が使役する多くの魔物に襲われました。

 それでも、わたくしは戦いを挑みましたが、力及ばず、倒れました。

 そして、無理矢理の蘇生とはいえ、

 このような醜態を見せてしまい、申し訳ありませんでした。

 しかし、あなたのおかげで、わたくしの魂は解放されました」

「ああ……感謝しているよ、アルトン」

「これで、わたくしは安心してあの世に行けます。

 そこの方々も、お坊ちゃまをずっと支えてください。

 本当に、本当にありがとうございました……」

 別れの言葉を告げたアルトンの身体は、光の粒子となって消滅した。

 アエルスドロは、何も無くなった部屋で、一粒の涙を流した。




仲間をその手にかけたアエルスドロ。
ですが、これを乗り越えてこそ、主人公らしくなるのです。
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