ダークエルフと悪役令嬢   作:アヤ・ノア

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アルトンとの戦いは終わり、アンダーダークから地上に戻ろうとしますが……。
色々と衝撃的な展開にしました。



第45話 休息の裏には

 アルトンを倒したアエルスドロは、しばらく彼がいた場所に祈りを捧げていた。

「大丈夫だ、アルトン。私には家族がいる。私の周りには、信じられる家族がいる……」

 彼を見たマリアンヌ、ルドルフ、エリー、驟雨、茜も、アエルスドロと共に祈った。

 もうアルトンの魂は天に昇っているだろうが、

 アエルスドロの仲間である事を証明するために、彼と同じように祈っているのだ。

「アルトン……天国でも、私達を、見守っ、て……」

 アエルスドロが祈り終わると、突然、アエルスドロの身体がぐらりと傾いた。

「……アエルスドロ!? どうなさいまして!?」

「頭……が、おか、し、く、な……」

 そして、アエルスドロはばたりとその場に倒れた。

アエルスドロ! アエルスドローーーーーッ!!

 マリアンヌは、動かなくなったアエルスドロに向かってそう叫んだ。

 

「……」

 アエルスドロは、空中に一人浮かんでいた。

 鹿の角を生やし、輝く服を纏った女性の幻影が、目の前に現れる。

 六大神の一柱、豊穣神イーファだ。

イーファ!?

 神への信仰心はそれほど強くないアエルスドロだったが、その存在感に圧倒される。

 不敬にもイーファを呼び捨てにしてしまったが、

 幸い、イーファは幻影なのか気付いていなかった。

 そして、アエルスドロが奥を見ると、イーファが誰かと戦っているのを見た。

 上半身がダークエルフの女性、下半身が蜘蛛で、

 ダークエルフ達が信仰する蜘蛛の女神アラネアだ。

 

 彼女達は互いに魔法をぶつけ合っていた。

 イーファが手を振り下ろすと、大地の魔力が喚起して地震が起こった。

 アラネアはそれを、無数の蜘蛛による壁で防ぐ。

 その後、蜘蛛はイーファを襲うが、イーファは大地を隆起させて反撃した。

 イーファが守るように魔法を使っているのに対し、アラネアはただ、只管に相手を攻めている。

 この二柱の女神の性格が分かる魔法の使い方だ。

 

 そして、イーファとアラネアの魔法がぶつかり合うと、その場を眩い光が包み込んだ――

 

「……こ、こ、は……」

 アエルスドロは、気がつくと岩でできたベッドに寝かされていた。

「ずっと倒れてましたのよ? わたくしが運びましたから感謝しなさい」

「確かに、身体がゴツゴツして痛いな。アンダーダークには柔らかいベッドはないからな。

 ……私はどうやら、疲れすぎたようだ。マリアンヌ、君に感謝する」

 アエルスドロは、アルトンと戦って、疲労が溜まりに溜まって倒れてしまったようだ。

 最愛の執事が不死者になり、彼と戦い、彼を安らかに眠らせたのだ。

 アエルスドロが影響を受けないはずがなかった。

「それに、ここは優しそうな人がたくさんいるしね。

 逃げてきた……いいえ、戻ってきたあなたを匿えるのは、ここしかないし」

 一度アンダーダークを出立したアエルスドロが帰還したとなれば、

 ダークエルフが彼を裏切り者として処分するだろう。

 執念深いダークエルフだ、殺した後は死体を何らかの事に使うに違いない。

「しばらくはここにいた方がいいですよ。見つかれば確実に死にますし、ね」

「……はい」

 アエルスドロはしばらくの間、この隠れ家で休息を取る事にした。

 他のメンバーも、ここで戦いの疲れを取る事にした。

 

「はあ、はあ……出口はどこですの?」

 その頃、エマはアンダーダークの中を探索していた。

 魔族にさらわれて、小部屋に閉じ込められていたが、

 何とか鍵を見つけ、小部屋を脱出して出口を探していた。

「マリアンヌ……もし、いましたら、私の前に……」

 エマは、あれだけ敵視していたマリアンヌに助けを求めていた。

 マリアンヌは左遷先で住民思いの政策をし、

 さらにダークエルフのアエルスドロと固い絆で結ばれ、エマを助けようと奮闘した。

 今度は自分がマリアンヌを助けたい、とエマは自力でアンダーダークを脱出しようと試みた。

 

「……ここなら、見つかりませんわね」

 エマは戦う力がないため、魔物に見つからないように身を隠していた。

 魅力はあれど戦闘力はない、ならば取れる道は逃げる事、それだけだ。

「まったく、私とした事が、逃げる事しかできないなんて……」

 エマが逃げ込んだ先の部屋には、敵や罠の気配はなかった。 

 彼女は辺りを見渡した後、魔物の気配が少ない部屋に行った。

 だが、彼女が進もうとした道は、巨大なスライムによって完全に塞がれていた。

「そ、そんな……! 戦わなきゃいけないんですの……!?

 お願いです、誰か助けてください!」

 エマが蹲って泣きそうになると、彼女の周りにゴブリンが集まってきた。

「あぁ……魔物に助けられるなんて……。でも、この際、文句は言えません。

 ゴブリンさん、私に力を!」

 エマとゴブリンは、巨大スライムに戦いを挑んだ。

 

「きゃあぁぁ!」

 スライムは粘液を飛ばし、エマの身体をべたべたにしようとする。

 しかし、ゴブリンがエマを粘液から守り、代わりにべたべたになった。

 ゴブリンは持っていた短剣でスライムを連続で斬りつけて攻撃する。

 スライムの耐久力は高かったが、ゴブリンが数の暴力でどんどん体力を減らす。

 すると、スライムが自己再生で体力を回復した。

「これは、時間がかかりそうですね……。でも、頑張ってくださいね、ゴブリンさん」

 エマは身を隠しながら、ゴブリンを応援するのだった。

 ゴブリンはやるぞ、とスライムに戦いを挑んだ。

 普通は臆病なゴブリンであったが、エマの魅力によって勇敢になったようだ。

キィーーーキキキキキ!

キキキキキィーーーー!

 弓を持ったゴブリンがスライムの攻撃が届かない位置から矢を連射し、

 短剣を持ったゴブリンがスライムを連続斬りで攻撃する。

 ゴブリンシャーマンが味方の傷を癒しつつ、自らもマジックミサイルで追撃する。

 あまり協力しないゴブリンだが、彼らはエマの期待に応えるべく今回だけは協力するようだ。

キィィィィィィ!

 スライムの粘液を受けて、何匹か戦闘不能になるが、それでもゴブリン達の戦意は衰えない。

 彼らは皆、エマを守り、スライムを倒すために必死なのだ。

「ありがとうございます……皆様、頑張ってください!」

 

 こうして、ゴブリンの活躍によって、スライムの身体は見る見るうちに溶けていった。

 ゴブリンリーダーが味方のゴブリンに号令をかけるとゴブリンが一斉にスライムをリンチする。

 スライムはゴブリンを払おうとするが、ゴブリンは次から次へと襲い掛かる。

 そして、最後に槍を持ったゴブリンがスライムに突っ込んで槍で突き刺すと、

 スライムは完全に解けた。

 

「あ、ありがとうございます……。さて、出口を探しましょうか……」

 マリアンヌは、アンダーダークを脱出するため、出口がどこにあるのかを探していた。

 彼女が真っ直ぐに進んでいくと、光が見えてきた。

 あれに入れば、地上に出られる……エマがそう思い、光の中に飛び込もうとした時。

 

「きゃあああぁ!?」

 なんと、いきなり何者かに吹っ飛ばされた。

 エマは転倒して気を失いかける。

 彼女のぼやけた視界には、炎を纏った悪魔が見えていた。

「ああ……マリアンヌ……許して……」

 エマは、抵抗できないまま気を失い、その悪魔に連れ去られるのだった。




ヒロインがさらわれるのは定番中の定番です。
そして、次回はアエルスドロの関係者と遭遇します。
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