ダークエルフと悪役令嬢   作:アヤ・ノア

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冒険後の日常回です。
ダークエルフには休みも必要なのです。


第4話 オッドアイ

 ゴブリン退治を終えたアエルスドロ達は、ナガル地方に戻ってきた。

 

「お帰りなさいませ、領主様!」

 真っ先にマリアンヌを出迎えてくれたのは、彼女が最も信頼している文官のディストだった。

「わたくしが留守の間、ナガル地方を守ってくれてご苦労様。

 あなたはいつも通り、文官の仕事をしなさい」

「はい!」

 アエルスドロ達がゴブリンを退治したおかげで、ナガル地方には活気が戻ってきた。

 翌日にはもう、農作業を始めていた。

 アエルスドロ達はそれを見て一安心し、身体を休むために小屋に戻った。

 

「それにしても、アエルスドロって、なんで左目が紫色なんですの?」

 小屋の中で、マリアンヌはアエルスドロの瞳を見つめていた。

 彼女は、アエルスドロが赤い右目と紫の左目を持つ事に興味を抱いていた。

「分かりません……。

 ただ一つ言える事は、私が特別なダークエルフである可能性がある、という事です。

 通常は持たない、善の属性であるように……」

 どうやら、この左目についてはアエルスドロでさえも分からないようだ。

「この世界には奇妙な事がたくさんあるんですのね」

 アルカディアには異種族や魔法が存在する。

 しかし、それでも、まだまだ分からない事が存在する。

 例えば、悪の属性を持つはずのダークエルフのアエルスドロが、善の属性を持つ、など。

「謎が多いですわね、あなたは」

「ええ……」

「まぁ、この事を考えるのは後にして、ゆっくり休みましょうか」

「はい」

 アエルスドロはマリアンヌに言われて、身体を休める事にした。

「お休みなさい」

 そう言って、アエルスドロは眠りについた。

 

 アンダーダークにて。

「お坊ちゃま、逃げてください」

「キアラン……!」

 ダークエルフの剣士が、幼いダークエルフを連れて逃げていた。

 剣士は武器を構えてゴブリンを斬りつつ、幼いダークエルフを守っている。

「わたくしは、ツリーンマチャス家を守る事ができればそれでよろしいのです。

 わたくしの命など、二の次です」

「いやだ! しんじゃダメだ!」

「お坊ちゃまはお優しいのですね。しかし、ここアンダーダークではそれが通用しません。

 ですので、お坊ちゃまだけでも生き延びてください」

「キアラン! ぼくはキアランとはなれたくない!」

 幼いダークエルフは、キアランの袖をぎゅっと掴んだ。

 しかし、キアランは彼の頭を撫でた後、彼の腕をそっと自分から離した。

 そして、武器を持つ手にぎゅっと力がこもる。

「生きてください、お坊ちゃま。そして、ダークエルフの希望の光となって……」

キアラーーーーーーーーーーーーーーーーン!!

 キアランは、ゴブリンの群れに一人立ち向かった。

 

「……!」

 そこで、アエルスドロは目が覚めた。

 これは、自分が幼い頃の記憶を辿る夢だ。

「……嫌な夢だな」

 孤独な自分を支えてくれたたった一人の存在、キアラン。

 それを幼い頃に失ってしまった事を夢に見る彼は、軽い不眠症になっていた。

「キアランとマリアンヌさんは私を受け入れてくれた人だ。

 だが、それ以外の人は、私を見て避けている。私は居場所がほしかった……それなのに」

 周りはダークエルフを極端に避けている。

 それは、ダークエルフが悪の種族だと一般に認知されているからだ。

 ほんの僅かしかいない善のダークエルフすらも、ダークエルフだからという理由で迫害され、

 酷い時には大量殺戮の対象にもなる。

 普通の人なら人間不信になりそうだったが、

 アエルスドロはマリアンヌのおかげで辛うじて歪まずに耐えていた。

 だが、この軽い不眠症はなかなか治らないだろう。

 

 アエルスドロが時計を確認してみると、時刻はまだ2時だった。

 本当ならこの時間に起きたかったが、マリアンヌの事を考えると寝るのが妥当だった。

「マリアンヌさん……これからもずっと、私の味方でいてくれ……」

 何も言わないマリアンヌに対し、アエルスドロはそっと優しく寄り添いながら眠るのだった。

 

 次の日。

 料理担当のファルナが、住民達に料理を振る舞っていた。

「みんな! 今日の朝ご飯は、白パンとオニオンスープ、

 それと卵とベーコンを使ったベーコンエッグだよ!」

「いただきます!」

 住民達はファルナが作った料理にありついた。

「シンプルですけど、味わいが深いな。やはり、ファルナの作った料理は美味い」

「はっはっは! そう言われると嬉しいよ。これからもじゃんじゃん、料理を作るからね!」

 アエルスドロに褒められ、豪快に笑うファルナ。

 普段はこのように竹を割ったような性格だが、料理のつくりは繊細で住民からは高評価だ。

 

 朝食を食べ終わり、少し身体を休めた後、マリアンヌは二丁拳銃の手入れをしていた。

 そこに、アエルスドロが入ってくる。

「あら、わたくしに何か御用?」

「今日は、何か用事でもありますか?」

「今は特にありませんわね」

「そうですか、ありがとうございました」

 

 外では、ルドルフが本を読んでいて、それをエリーがじっと見ていた。

「ルドルフー、それってどんな本なの?」

「魔導書です。これを読んで、もっと魔導の知識を深めたいのです」

「今でも十分いいと思うけど?」

「いえ、慢心してはいけません」

 楽天的なエリーとは対照的に、ルドルフは知識欲旺盛な努力家だった。

「ちぇー、釣れないなぁ。遊べばいいのにー……って、あれ?」

 エリーは、向こうから誰かが来るのを感じ、その人物に寄ってきた。

 それは、日傘を差しているアエルスドロだった。

「アエルスドロじゃない、どうしたの?」

「特に依頼がないから、この辺を散歩しようと思ってな」

「あー、じゃあ暇なんだね!」

「?」

 エリーが何故騒いでいるのか、アエルスドロは疑問に思った。

 すると、エリーはアエルスドロを不思議な力で引き寄せた。

「あたしと一緒に遊ぼうよ! 大丈夫、すぐ近くの森までだから!」

「あ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 こうして、アエルスドロはエリーに強制的に近くの森に連れていかれてしまった。

 

「……」

「どうしましたの、ルドルフ?」

 項垂れるルドルフに、銃の手入れを終えたマリアンヌがやって来た。

「エリーとアエルスドロが……勝手に近くの森に行ってしまったのです」

「まぁ! それは大変ですわね。いなくなれば戦力の低下は確実。

 『力ずくでも』探しに行きますわよ!」

「はい!」

 マリアンヌとルドルフは、いなくなった二人を探しに出かけるのだった。




次回は失踪したアエルスドロを探しに行きます。
マリアンヌだって戦うんですよ。
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