ダークエルフと悪役令嬢   作:アヤ・ノア

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さらわれたエマを助けるために、アエルスドロは神の塔に向かいます。
この物語もクライマックスになってきました。


第50話 神の塔を目指して

 風の精霊によって、エマが捕まっている場所が分かった。

 それは、ナガル地方から南東にある神の塔だった。

「神の塔ですって?」

「はい。風の精霊が僕に教えてくれました。

 ガルバ帝国の神の塔に、エマという娘は囚われていると」

「……ふむ」

 マリアンヌは顎に手を添える。

 彼女は、神の塔がどういうところなのかを今、頭の中で調べていた。

 それなりに博識なマリアンヌも、時間をかけているため、

 神の塔の知名度は、人間にとっては低いようだ。

「神の塔……神の塔とは……ううん……ええと…………あ、思い出しましたわ!

 ガルバ帝国初代皇帝の娘、エーヴェルが成人の儀を行った時、

 彼女の前に女神イーファが降臨した場所ですわね!」

 マリアンヌはようやく、神の塔がどんな場所なのかを思い出した。

 神の塔は、ガルバ帝国における神聖な地なのだ。

 同時に、こんな神聖な場所をダークエルフに穢されるなんて……

 という怒りがふつふつと沸いてきた。

「……この神の塔で邪神を呼び出すなんて、傲慢にもほどがありますわね。

 あいつら、痛い目に遭いたいんですの?」

「当然だ。聖地を穢すのは神への冒涜だ……!」

 茜もダークエルフが聖地を穢す事に憤怒していた。

 彼女は信仰心が篤いため、このような行動を許す事ができないのだ。

「そして、エマを必ず救わねばならない!」

 アエルスドロは真剣な表情でそう言った。

 マリアンヌのライバル、エマを助けるため……また彼に、戦う理由が1つできた。

 

「……では、神の塔に乗り込みますわよ。準備なさってくださいな」

「ああ……」

 神の塔に行くため、アエルスドロ達は城で準備をした。

 回復アイテムや、予備の武器など、必要なものを全てバックパックに入れた。

 主武装も磨き、一行は万全の態勢を整えていた。

「大丈夫だよ、ルドルフ。あたし達は、必ず勝つ」

「ええ。勝利は、必ず約束します」

 アエルスドロ達は、世界を救う希望の光……というわけではないが、それに相当する光だ。

 それが消えてしまえば世界は闇に覆われてしまう。

 この戦いは、絶対に勝たなければならないのだ。

「皆さん、準備はよろしくて?」

「……怠ってはいない」

「さあ! 神の塔に行きますわよ!」

「「「「「「おーーーーっ!!」」」」」」

「……」

 こうして、一行は神の塔に向かい、邪神復活を阻止しに行くのだった。

 

「では、行ってきますわ。ディスト」

 マリアンヌは副官のディストの手をがっしりと掴んだ。

 これから、大きな試練に立ち向かう事になる……

 彼女はその覚悟を決めて、ディストに挨拶をしたのだ。

 アエルスドロ達は、マリアンヌに付き従うように立っていた。

 あくまでも彼らはマリアンヌの文官・武官という立場だからだ。

「マリアンヌ様、私はずっと待ち続けます。あなたが無事に、ナガル地方に帰ってくるまで」

「ディスト、本当にありがとうございますわ。

 あなたのような副官がいる事を、わたくしは誇りに思いますわ。

 そして、わたくしも、またあなたを信じますわ」

 副官のディストは、マリアンヌにとっての日常の象徴であり、彼女を誰よりも信頼している。

 マリアンヌも、彼の期待に応えられるように、気を引き締めて事に臨んだ。

 

「……では、行ってきますわ!」

「行ってらっしゃい!」

 そして、アエルスドロ達は、神の塔がある南東に向かっていった。

 ディストや他の文官・武官達も、ナガル地方を出ていく八人を見送っていった。

 

「さて、神の塔はここから南東にあるとおっしゃってましたけど……」

「ですが、風の精霊によれば、かなり遠い場所にあるそうです」

 ナガル地方を出た八人は、神の塔を目指して歩いていた。

 神の塔はとても遠い場所にあり、最低でも、1日はかかるとの事だ。

 しかも、邪神が復活しかけているため強化された魔物にも足止めされていた。

 巨大なスライムは何とか迂回したが、迂回した場所にはたくさんのガーゴイルがいた。

「風の精霊シルフ召喚! からの、上位置換・アイオロス!」

 ルドルフは二体の風の精霊シルフを召喚し、

 彼女達を媒体に風の上位精霊アイオロスを召喚した。

「ファストブレード!」

 アエルスドロは素早い斬り込みでガーゴイルを吹き飛ばす。

 そこにアイオロスの竜巻の援護が入ってガーゴイルを追撃したが、倒すには至らなかった。

「しぶといですね……」

ガァァァァァァァッ!

 二体のガーゴイルは爪を振りかざして驟雨とアエルスドロを襲った。

 二人は剣と盾で防御したが、あまりの素早さに攻撃を完全には防ぎ切れなかった。

「速いし硬いな」

「ああ……」

「ひゃん!?」

 ガーゴイルが爪を振ってミロを切り裂く。

 ミロは転倒して体勢を崩してしまう。

「よ、よくもやったわね! 破壊の爪よ!」

 ミロは爪を振って赤い衝撃波を飛ばし、ガーゴイルを切り裂き、さらに衝撃波で吹っ飛ばした。

 そのガーゴイルはミロを転ばせたガーゴイルとは違うものであったが、

 ミロは気にしていなかった。

「しぶといですこと。でも、これは避けられまして? ガトリングショット!」

 マリアンヌは二丁拳銃を構え、二体のガーゴイルに乱射した。

 ガーゴイルの身体は硬かったが、何度も銃弾を食らったため穴が開き、

 二体のガーゴイルはバラバラになった。

「疾走斬」

 驟雨は目にも留まらぬ動きでガーゴイルの前を通り過ぎ、短剣を振る。

 それに気づけなかったガーゴイルは切り裂かれ、ルドルフの呪文の発動を許してしまう。

「ウィンドカッター!」

 ルドルフの風の刃がガーゴイルに命中すると、

 ガーゴイルはさらなる斬撃を受け、ついにバラバラになった。

はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!

 そして、茜が鈍器を振り下ろして最後に生き残ったガーゴイルに大ダメージを与え、粉砕した。

 

「……まったく、どこまでも私達を先に進ませないつもりか!」

「……」

 神の塔に進む途中で何度も魔物に襲われたアエルスドロは、珍しく憤怒していた。

 ルドルフは何も言えず、項垂れていた。

 しかし、怒ったところで現実が変わるわけがなく、ただ時間が過ぎるだけだった。

 その事態を打開するべく、マリアンヌは優しくアエルスドロを撫でた。

「大丈夫ですわ、アエルスドロ。わたくし達は誓いましたわよ? 必ずエマを助けるって」

「……マリアンヌ……」

「今日が駄目なら明日がありますわ。少し進んだら、野宿しましょう」

「そうだ、な……。ありがとう、マリアンヌ」

 マリアンヌに励まされたアエルスドロは、気を引き締め直し、

 神の塔を目指し前へ前へ進んでいった。

 その道中で再び魔物に襲われ、それらはアエルスドロ達が撃破していった。

 気が付くと、既に夜になっており、

 アエルスドロ達は安全な場所に行ってテントを広げて休んだ。

 

「今日は、色々と、あったな……」

「わたくしが野宿するなんて、と思いましたけど、エマのためならこれくらい平気ですわ」

 マリアンヌは野宿をしたくなかったが、エマが危機に陥っている以上文句を言えなかった。

 食事を取り、汗を流して歯を磨いて、寝間着に着替えた後、寝る準備に入っていた。

「Zzzzz……」

「ぐぅー……」

 ルドルフとエリーの妖精組は、とっくに眠ってしまっていた。

 エリーの寝顔はとても可愛く、無邪気だった。

 彼女の寝顔を見たアエルスドロは少し微笑み、疲労を感じさせる事はなかった。

「では、私達もそろそろ寝よう」

「ええ」

 

 こうして、八人は眠りについた。

 邪神の瘴気が、徐々に強まっている事を知らずに。




次回は、アエルスドロ達が最後の試練に挑みます。
果たして、エマは助かるのでしょうか!?
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