ダークエルフと悪役令嬢   作:アヤ・ノア

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アエルスドロ達はエマを追っていきます。
ですが、魔族側も、一筋縄ではいきませんよ。


第51話 最後の試練

 アエルスドロ達がナガル地方を出てから2日目。

 彼らは野宿をしつつも、目的地である神の塔を目指して進んでいた。

 魔物が襲ってくる事もあったが、それらは全て、撃退していった。

 

「……ん?」

 八人が道を歩いていると、ルドルフは何かを発見したように立ち止まった。

 アエルスドロ達はすぐにルドルフに駆け寄る。

「どうしたの、ルドルフ?」

「あれ……見てください」

 ルドルフはそう言って、どこかを指差した。

 そこには、天にも届きそうなほど高い塔があった。

「これは、神の塔!?」

 間違いない、あれが神の塔だ。

 マリアンヌはすぐに、塔が見える場所へと走っていった。

 アエルスドロ達も彼女の後を追って走り出した。

 

「これが……神の塔……!」

 目の前にあったのは、まさしく神の塔だった。

 だが……神々しいはずの神の塔は、黒い雲に覆われて禍々しい姿に変わり果ててしまっていた。

「聖地を平気で冒涜するとは……ダークエルフの根性は悪い意味であるな」

 茜は神の塔に祈りを捧げたかったが、それはしたくはなかったようで、

 代わりに鈍器を握り締める。

 聖なる場所で、神に祈りを捧げる、それが彼女の望みだからだ。

「……どうか、この塔を元に戻してくれ」

「当然だ」

 茜の真剣な言葉に、アエルスドロは静かに頷いた。

 マリアンヌ、ルドルフ、エリー、ミロ、ユミル、驟雨も同じく頷いた。

「……入りますわよ」

「ああ」

 声を掛け合って、八人は神の塔に足を踏み入れた。

 塔の中は禍々しく染まっていて、常人では立っているだけでふらつきそうだった。

 アエルスドロは弱い瘴気でバリアを作って皆の気を保った。

「君達の身体が瘴気に侵されそうだが……?」

「問題ない、微量だからな。……さて」

 八人が最初に入った部屋は、鉄格子によって二つに分けられていた。

 そこに、機械の砲台が鉄格子越しに砲弾を放ってくる。

「ひゃ!」

 マリアンヌは砲弾が当たる寸前で身を逸らして回避する。

「何しますのよ!」

 いきなりの砲撃に腹を立てたマリアンヌは、機械の砲台に拳銃を発砲する。

 しかし、魔法の加護を受けていない銃弾は、いとも簡単に鋼鉄に弾かれた。

「攻撃が効きませんわね」

「疾風の術!」

 茜はルドルフに風の加護を与えて素早さを上げる。

「風の上位精霊アイオロスよ、風よ裂けて刃となれ! ウィンドストーム!」

 ルドルフは風の精霊を召喚し、竜巻を起こしてマジックキャノンを攻撃した。

 マジックキャノンは重かったため少ししか浮かなかったが、

 それでも地面に叩きつけて僅かに罅を入れた。

「ダブルショット!」

 マリアンヌが罅が入った部分に二発撃つと、マジックキャノンは機能停止した。

 

「あら、呆気なかったですわね」

 あっさりマジックキャノンを撃破する事に成功した一行。

 物理攻撃に強いマジックキャノンを、

 弱点を突いたとはいえ即座に機能停止したのを見て、マリアンヌは高笑いした。

「おーっほっほっほっ! わたくしの銃はナガル地方一ですわ!

 さあ、どんどんかかってらっしゃい!」

「ああ……私の剣は、決して折れる事はない」

 アエルスドロは自身の剣と盾を抱き、静かに目を閉じた。

 この自信がある限り、彼らは決して折れる事はないのだ。

「さて、先に進むぞ。ん? 鍵がかかっているな」

 アエルスドロが左の扉を開けようとすると、その扉には鍵がかかっていた。

「俺がやる」

 驟雨は前に出て、楔を使い扉の罠を外した後、もう1つの楔で扉の鍵を開けた。

 ダンジョン探索のエキスパートである彼の本領を発揮する事ができた。

「戦闘が得意な方ばかりでは、この先の罠にかかるかもしれませんからね」

「どんなに強い戦士や魔導師も無力となる罠……。

 それに対処できるのは、斥候技能保持者(おれたち)だけだからな」

 ダンジョンには、侵入者を排除する罠が仕掛けられている事が多々ある。

 戦闘能力が高いものが入っても、

 罠を探知したり解除したりする能力がなければ、死が待ち受けている。

 そのため、スカウト技能など、それらに対処できる能力も必要なのだ。

「体だけでも心だけでもいけない」

「大事なのは、技だ」

 驟雨がいて本当によかった、と思うパーティメンバーなのであった。

 

「よし、開きましたね」

 ユミルが左の扉を開けると、部屋の中央に台座が置かれていた。

 台座の上には、何もないように見えるが……。

「ここも、何かありそうだな。……む?」

 驟雨は台座をよく調べてみると、コンシールトラップを発見した。

 もちろん、驟雨はコンシールをはがす。

 すると、中から宝箱が現れた。

「やったあ! 宝箱だ!」

「待て、これも罠が仕掛けられている可能性が高い、俺がまずは調べる」

 そう言って、驟雨は宝箱を持ち出し、罠を調べた。

 驟雨は、器用な指先で、どんな罠があるのかを探知する。

 1分後、驟雨は罠の種類が分かったようで頷く。

「開けると爆発するエクスプロージョンの罠が宝箱に仕掛けられている。こうして外せばいい」

 驟雨はそう言って、爆発する罠を外した。

「大丈夫でしょうかね……?」

 ユミルはそっと宝箱を開けたが、罠は発動しなかった。

 よかった、と言った後、中身である霊水を4つ手に入れた。

「流石は『忍びの者』ですね」

「それほどでもない」

 驟雨は自分の機能を果たすためだけの存在だ。

 なので、ユミルが褒めても、大して喜びはしないのだ。

「では、行くぞ」

 アエルスドロはそう言って、階段を上り、二階に上がった。

 二階では、部屋の中で様々な妖精達が賭け事をしていた。

「ねえねえ、一緒に私達と遊ぼうよ!」

「楽しいよ!」

「うん! やるー!」

 エリーはその輪に混ざって、一緒に賭け事をする事にした。

「あ、こらこら、エリー。せっかくエマさんを助けるために来たのに、遊ぶのはいけませんよ」

「まあまあ、いいじゃないですか。たまには娯楽も、息抜きにいいでしょう?」

「……仕方ありませんねぇ。一回だけですよ」

「はーい」

 ルドルフに許可を貰ったエリーは、妖精達の賭け事に参加した。

 

「よっし! スリーカード!」

「残念でした~、あたしはフラッシュです」

「うわぁ~」

 エリーが参加した賭け事は、ポーカーの三連続勝負だった。

 結果は、三戦三敗で、エリーは掛け金を全て取られてしまった。

「あ~あ、ダメだったよ」

「まあ、賭け事なんて、こんなものでしょうからね。気を取り直して、三階に行きましょう」

 エリーはがっくりしながらも、ルドルフ達と共に、階段を上って三階に行った。

 三階には炎の精霊と水の精霊がいて、八人に力試しを挑んでくる。

 しかも、部屋全体に守護の加護を受けられない結界が張られていた。

「戦いが長引けば死ぬ……短期決戦でいくわよ」

 やられる前にやる、それがミロの作戦だった。

 アエルスドロ達は武器を抜き、戦闘態勢を取った。

 

「エレメント・ライト!」

 エリーは驟雨の武器に光を付与した。

「闇の精霊よ、彼の者を闇に染めたまえ! レインボーカラー・ダーク!」

 ルドルフは闇の精霊シェイドを召喚し、サラマンダーとウンディーネを闇属性にした。

 驟雨の武器が光を帯びているため、彼らの弱点を突く事ができるようになった。

「陰陽連斬」

 驟雨は光を纏った二刀の短剣でサラマンダーとウンディーネを斬りつけた。

 ルドルフの魔法で二体は闇属性になっているため、それが弱点となり大ダメージを受けた。

 サラマンダーは吹き飛ぶが、ウンディーネは吹き飛ばなかった。

「ウフフ……」

「うぐぅ!」

 ウンディーネは微笑んで茜に水の弾丸を放った。

 水の弾丸が茜に命中すると水柱となり、茜を飲み込んでダメージを与えた。

「デスバレット!」

 マリアンヌは二丁拳銃を撃ってサラマンダーとウンディーネの身体に穴を開ける。

「おっと、こんな攻撃、ボクには……うあぁぁぁ!」

 ユミルはサラマンダーの攻撃を避けようとするが、獄炎に包まれて重傷を負ってしまう。

「うぅ……まるで太陽に焼かれたみたいです……」

 サラマンダーの炎の熱さによろめくユミル。

 ユミルは、まるで火あぶりの刑にされたようだという顔をしていた。

「ブラッディポーション!」

 ミロは自らの魔力を使ってポーションを作り、重傷を負ったユミルの傷を癒す。

「ちょ、なんであたしの魔法を使わないのよ」

「ユミルにはこっちの方がよく回復すると思って」

 ミロの言う通り、彼女のポーションを浴びたユミルの傷が見る見るうちに癒えた。

 ユミルは半吸血鬼なので、通常の回復魔法よりも吸血鬼の力を使った技の方が多く回復する。

「バッシュアンドバッシュ!」

「ガトリングショット!」

 アエルスドロはサラマンダーに連続で剣を振り、

 マリアンヌが二丁拳銃を乱射してサラマンダーを撃破した。

 倒れたサラマンダーの身体から、結晶がぽろぽろと溢れ出る。

 マリアンヌはそれを全て拾って、コネを利用して全てゼニーに変えた。

「金になるものは全て金に換えますわ」

(強欲な……)

「水と風の精霊よ、雷光となり敵を打ち砕け! ボールサンダー!」

 ルドルフは水と風の精霊を召喚し、雷の玉にしてウンディーネに飛ばした。

 雷に弱いウンディーネは大ダメージを受け、怯む。

「とどめよ! 鮮赤の刃!!」

 そして、ミロは腕を赤く光らせ、

 勢いよく振り下ろしてウンディーネを真っ二つにし、戦闘を終えた。

 もちろん、ウンディーネが落とした欠片を、マリアンヌは残さず全て換金した。

 

「結構溜まりましたわね。この調子で行きましょう」

(……結局、あなたは金儲けが好きなのね)

 精霊の身体の一部を換金するマリアンヌを、ミロはあまりよく思っていなかった。

 というより、自然そのものである精霊を、道具のように扱う人間をよく思わなかった。

 

 四階は、本がたくさんある部屋だった。

 それ以外に、五階へ行くための階段も見受けられなかった。

「わあ、本がたくさんありますね!」

 ルドルフは、たくさんの本を見て興奮する。

 流石はエルフの魔導師、知識の宝庫であるこの部屋は彼にとって楽園のようだ。

「一体どんな本があるんでしょうか……」

 そう言ってルドルフが本を取ろうとすると、

 突然、本が宙に浮き、他の本もそれに合わせて本棚から飛び出た。

「うわあああ!? 本が襲い掛かって来た!?」

「この本には魔力が宿っていたみたいだな。こいつらを倒すぞ!」

 アエルスドロは剣と盾を構えて、本の魔物、ブックモンスターの相手をした。

「エアスラッシュ!」

 アエルスドロは飛び上がって二連続でブックモンスターを斬りつけ、打ち落とす。

 続けてその勢いに任せて回し蹴りを行い、ブックモンスターを地に落とし、斬り倒した。

 二体のブックモンスターは攻撃を仕掛けてきたアエルスドロに体当たりしてきた。

 攻撃は命中するが、盾で攻撃を防ぎダメージは最小限に留めた。

「この一撃を受けろ!」

 そして、アエルスドロは回転斬りで襲ってきたブックモンスターを全て薙ぎ払い、

 とどめに瘴気の嵐を起こしてブックモンスターを衰弱死させた。

 アエルスドロが本の魔物を全滅させると、本棚は全て消え、代わりに階段が現れた。

 

「この本棚は、罠でしたか」

「罠にかかりはしたが私が全て倒したから安心しろ」

 そう言って、アエルスドロは剣を鞘に納めた。

「ありがとうございます」

 胸を撫で下ろすルドルフの横で、マリアンヌは鋭い目で階段を睨みつけていた。

「……エマ。あんな奴なんかに利用されるんじゃありませんわよ。利用し返しなさい」

 マリアンヌは、エマを束縛から解放したいと決めていた。

 ――最後に言った言葉は、余計だったが。

「余計、ですって? 撃ちますわよ」

「いや、ナレーションに口出ししても意味はないと思うぞ。……さあ、行くぞ、みんな」

「ええ」

 八人は、ゆっくりと階段を上るのだった。




~モンスター図鑑~

ブックモンスター
本に邪悪な魂が宿ったモンスター。
ミミックの一種で、本棚を調べた者に襲い掛かる。
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