こうして、八人は神の塔の五階に上がった。
部屋の中央に募金箱が設置されているが、エリーがスられた分もあり、もちろん無視した。
途中でサラマンダーやウンディーネなどの精霊や、
巨大なキノコの姿をした魔物、ファンゴサウルスも襲ってきたが、
それらは皆、マリアンヌの的確な指示で撃破した。
「まったく……ダークエルフ達はこんな魔物も送り込みますのね」
「しかも、精霊も凶暴にして……」
「同族とはいえ、これはどうしても……」
善のダークエルフ、アエルスドロは、同族の非道な行為に心を痛めていた。
だが、ダークエルフにとっては、この非道こそが普通であるため、
彼の苦悩が分かるのは仲間達だけだった。
そして、マリアンヌのライバルも、邪神の肉体になろうとしている。
それを阻止するためにも、塔の最上階を急がなければならない。
「でも、どこに階段があるんだ?」
「この部屋にはなさそうですね」
六階へ行くための階段は見えなかった。
しかも、部屋中に大量の埃が舞っていて、気を抜くとくしゃみをしそうだった。
「今、ここでくしゃみをしたら、魔物が寄ってきそう……」
「しないでくださいよ、しないで……」
「ふぇ、ふぇ、ふぇっくしゅい!」
エリーは、埃を取るためにくしゃみをしてしまう。
その音を聞いた中位魔族、フォルネウスとディブロウが現れ、八人に襲い掛かってきた。
「ああ、こんな時に!」
「仕方ありませんね。水の精霊よ、彼の者を水に染めたまえ!
レインボーカラー・ウォーター!」
ルドルフは水の精霊ウンディーネを召喚し、その場にいた魔族達を水属性にした。
驟雨は飛び上がって壁に張り付き、魔族達に苦無を投げて牽制した。
「そこですわ! サンダーバレット!」
マリアンヌは雷の弾丸を撃って、水属性になった魔族の弱点を突き、大ダメージを与えた。
「さあ魔族よ、倒れなさい」
マリアンヌの挑発に乗ったフォルネウスは、彼女に水のブレスを吐こうとした。
しかし、水のブレスが当たる直前で、マリアンヌは煙幕で標的をアエルスドロに逸らす。
結果、水のブレスはアエルスドロに直撃した。
「ぐふっ! 何故私に当てた、マリアンヌ」
「あなたの方が硬いからですわ」
くすっと笑うマリアンヌ。
そんな彼女に苦笑いしながら、ミロはフォルネウスを爪で引き裂く。
「デ・ゲイト・ド・イグニ!」
「聖撃!」
ユミルは炎を発生させ、ディブロウ達を薙ぎ払い、
二体のディブロウを倒して角と剣を入手した。
茜は、ユミルが倒し損ねたディブロウをハンマーで仕留めた。
「フルスラスト! ……う」
アエルスドロは剣をフォルネウスに勢いよく突き刺し、硬い鱗を貫いた。
「生命の精霊よ、この者の傷を癒し給え! ライフヒール!」
攻撃の直後、アエルスドロがふらついた事に気づいたエリーは生命の精霊を召喚し、
傷ついたアエルスドロを治した。
「気付いたのか。助かる」
「あたし、怪我には敏感なんだよ」
エリーはアエルスドロに感謝され、えっへんと胸を張った。
「後はお前達だけだな。陰陽連斬」
驟雨は二本の短剣をフォルネウス達に振るい、彼らの鱗にさらに傷をつける。
「覚悟なさい! デスペラード!」
「破壊の爪!」
マリアンヌはフォルネウス達の群れに突っ込んで二丁拳銃を乱射し、鱗に穴を開ける。
ミロは爪で瀕死のフォルネウスを易々と引き裂き、その身体から魔力の結晶を手に入れた。
「ラ・ロタ・ド・イグニ!」
ユミルは杖から火炎弾をフォルネウスに放って爆発を起こす。
「とどめだ! 活殺重力破!!」
そして、茜が渾身の力を込めてハンマーを振り下ろし、フォルネウスにとどめを刺した。
魔族達が全滅すると、目の前に階段が現れた。
「まったく、この塔はどこまであるんですの?」
「多分、次で最後になると思うが……」
「はぁ……」
マリアンヌは長く足止めされた事で溜息をつく。
ルドルフは彼女の表情から、イライラが溜まりすぎている、と察した。
これが爆発すれば、マリアンヌがどうなるかは言うまでもない……。
急いでエマのところに向かわなければ、とアエルスドロは階段を上がり、
ルドルフ達も彼の後を追うように上がった。
マリアンヌは、最後に階段を上がった。
「来たぞ!」
ついに、八人は神の塔の六階に辿り着いた。
部屋には空が見える窓があり、どうやらここが最上階のようだ。
「エマ!!」
マリアンヌは真っ先に、魔法陣の上で眠っている少女――エマ・クレーシェルを発見した。
彼女の周囲には、操られたエルフが魔法陣に魔力を捧げている。
今まさに、エマの体に邪神が降りようとしていた。
「今、助けますわよ!!」
マリアンヌが魔法陣に近づこうとすると、バリアが彼女を弾いた。
「う……」
「マリアンヌ……」
「なんですの……? こんな場所にバリアを張って……。
わたくしの邪魔をするつもりですの……?」
マリアンヌの表情がだんだん黒くなっていき、腰からゆっくりと二丁拳銃を抜いた。
そして、両手を交差させ、今まさに発砲しようとした時、
ドスンという音と共に土煙が舞い、何かが落ちてきた。
「うわ!」
「きゃ!」
「ひゃ!」
マリアンヌを除く七人は、潰されないために飛び退いた。
しばらくして土煙が治まると、そこには、鎧兜に身を固め、
モーニングスターを持った戦士が立っていた。
戦士の目は赤く光っていて、人間というよりも機械を連想する外見だ。
「ギ……ギギ……」
「……」
戦士は、ゆっくりとアエルスドロ達に近付く。
神の塔の侵入者であるアエルスドロ達を、その武器をもって排除するようだ。
ルドルフと驟雨がじりじりと後ろに下がる中、
マリアンヌはその戦士――ガーディアンに殺意を持っていた。
最早、彼女の堪忍袋の緒は、切れようとしていた。
「……覚悟しなさい。わたくしが屠って差し上げますわ……!」
そして、マリアンヌの両手の拳銃から、
鉛の弾丸がガーディアンの鋼鉄の身体に当たると、戦いが始まった。
アエルスドロ達はついにエマを発見、救う行動に出ます。
次回はボスとなるガーディアンとの戦いです。