大ピンチのアエルスドロ達を助けたのは……?
「……ここは……?」
気が付くと、アエルスドロ達は洞窟の中にいた。
自分を含め、マリアンヌ、ルドルフ、エリー、ミロ、ユミル、驟雨、茜は布団の中で寝ていた。
「そうだ……邪神アラネアが復活して、それから彼らに私達が吹き飛ばされて……」
「お目覚めのようですね」
「!?」
突然、女性から声をかけられ、アエルスドロは驚いた。
「誰だ……。ここは、どこだ……? 私達は、死んでいるのか……?」
「いいえ、あなた達は生きています」
「何故だ」
アエルスドロの言葉に、女性は首を横に振った。
八人が何故生きているのかを、アエルスドロは女性に質問した。
「アラネアに吹き飛ばされる直前に、私が転移魔法をかけたのです。間に合って良かった……」
「……それで、ここは?」
「ここは、地母神の島。そして私はこの島を治める者です。
詳しい事は北にある神殿で話しましょう。全員が目覚めたら来てください。
では、後の介抱は宿の主に任せるとしましょう……」
女性はここが地母神の島だという事をアエルスドロに伝えると、煙のように姿を消した。
「地母神……まさか、彼女は……」
アエルスドロは、何となく女性の正体に感づいていた。
猛吹雪を起こし、八人全員を転移させるほどの魔力……明らかに人間ではないと読んでいた。
すると、布団から声が聞こえてきた。
「……はっ!」
「んん……?」
「ふわわ……」
「う、ん……」
「んあぁ~~~!」
「はふうぅ……」
「あーーー……ここは?」
マリアンヌ、ルドルフ、エリー、ミロ、ユミル、驟雨、茜が起き上がったのだ。
体力と精神力が全快しているのが、表情から読み取れる。
「みんな、無事だったようだな。よかった」
「あ……アエルスドロ? 何がどうなっておりますの?」
「その事だが、さっき……」
アエルスドロは、マリアンヌにこれまでの事情を話した。
地母神の島の主に助けられた事、北にある神殿で彼女は待っているという事など……。
彼の話を最後まで聞いたマリアンヌは首を傾げた。
「それは本当ですの?」
「私も信じられない。
だが現段階では、私達は右も左も分からない状況にいる……従わざるを得ないのだ」
「そう……」
また、短時間で様々な出来事があったため、八人は上手く整理ができなくなった。
そのため、今は女性の言葉に従うしかないのだ。
「……じっとしていても始まらない。動くぞ」
「ええ!」
そう言って、アエルスドロとマリアンヌは宿を後にした。
「あたし達も、そろそろ出るわよ。あいつの正体を知りたいしね」
「はい、ミロさん」
こうして、八人は宿を出て、神殿がある北に向かっていった。
「神殿は、確か北だったな」
道中には凶悪な魔物はおらず、魔物がいたとしても友好的なものばかりだった。
ここは、地母神の島という名の通り、危険なものが何一つない島である。
八人は安心して、神殿がある方角に向かっていった。
「まだ神殿は見えないけど、魔物はいないから楽ちんだね」
「自然も豊かで、まるで、天国みたいですね」
「私達はまだ死んでいないがな……」
ルドルフ、エリー、茜がそんな掛け合いをするうちに八人の目の前に荘厳な建物が見えてきた。
あれが、女性が示していた神殿だろう。
「見て、神殿よ!」
「本当だ……眩しい」
アエルスドロは眩しそうに手をかざす。
ダークエルフにとって、この神殿は毒と言えるほどの眩しさであった。
「……」
茜は入り口に立つと膝をつき、祈りを捧げた。
神官戦士の彼女は、これを見ると反射的に祈るのだ。
「……眩しいな。だが、彼女が指し示した場所だ。入らないはずがないだろう」
「そうですわね……。行きますわよ、皆さん」
八人の表情に迷いはなかった。
アエルスドロとマリアンヌを先頭に、八人は神殿に足を踏み入れた。
「う……苦しいです」
半吸血鬼のユミルは、吐き気を抑えながらであったが。
「来ましたね」
八人を出迎えてくれたのは、アエルスドロが先程宿で見たあの女性だった。
「……私達に何か御用でもありますか?」
「もちろん、あります。そのために貴方達を呼んだのです」
神秘的な雰囲気を漂わせた女性は微笑んだ後、すぐに真剣な表情に変わる。
「……まずは、私の正体から言いましょう」
「正体?」
「私は……」
女性がそう言うと、彼女の身体が眩く光り出した。
「眩しい!」
「……!」
「なんだ、これは……」
全員、女性が発する眩い光に耐え切れず、目を覆ってしまった。
神殿全体が光に覆われ、窓も扉も、神秘的な光に包まれていた。
五分後、光がようやく消えると、八人の目の前には、
多くの装飾が付いた鹿の角を生やし、白い服を纏った豊満な女性が立っていた。
その特徴は、まさしく豊穣神イーファのそれであった。
「イ、イーファ様……!?」
アエルスドロは神を目にした事に驚きを隠せなかった。
正体は薄々ながら感づいていたが、それ以上に神が現れた事に驚愕していたのだ。
「あ……ああ……あ……」
「うわああああああ!」
その場にいた、茜を除く全員が錯乱した。
七人は訳の分からない行動を取って、神殿の中でイーファを困らせていた。
「私は正確には
この結果はイーファにとっては本意ではなかったらしく、
柔らかい光を発して精神を正常に戻した。
「そ、粗相をして、も、申し訳ありません、イーファ様」
「いえ、それはもうよいのです」
「それでイーファ様……アラネアについて、何か知っている事はありますか?」
正気に戻ったアエルスドロが、イーファにアラネアについて問うと、
イーファ(の
「確かにアラネアは神の塔にて少女の身体に宿って復活しました。
しかし、少女の魂は、まだ身体の中に残っています」
「……何か打つ手はないのか?」
「あります。私がアラネア復活を予知して作った、これを見てください」
そう言って、イーファは緑の水晶玉を取り出した。
「これは?」
「大地の水晶です。私が地上で活動できるギリギリの力を注いで作りました。
この水晶玉を使えば、少女を傷つけずにアラネアの魂を少女の身体から追い出せます。
神は不死ですが、封印する事はできます」
「構いませんわ。エマが助かればいいんですもの。
世界を救うつもり、わたくしには毛頭なくてよ。それ、もらいますわ」
「ありがとうございます」
マリアンヌは大地の水晶を受け取った。
あくまで彼女が救うのは、世界ではなくエマなのだ。
彼女の強い意志を秘めた表情を見て、イーファは安心した。
「……しかし……」
「しかし?」
「時が経てばアラネアと少女の魂は完全に融合し、弱い少女の魂は消えてしまいます。
そうなれば、アラネアを封印しても、残るのは抜け殻、すなわち死体のみ」
つまり、時間が経ってしまえば、アラネアを封印してもエマは死んでしまうのだ。
「何ですって!?」
「だが、場所が分からなければ始まらない。アラネアはどこにいる」
肝心のアラネアがどこにいるのかを、驟雨はイーファに聞いた。
「アラネアは地下神殿に居場所を構えています。
そこは瘴気と、それで凶暴化した魔物で溢れています。貴方達では耐え切れないでしょう。
ですが、貴方達が大地の水晶を持てば、瘴気の影響を避ける事はできます。
世界が闇に覆われるのも、自然ではない死も、私は認めません。
お願いします。どうか、アラネアをもう一度封印してください。
その水晶を掲げればここから出る事ができます。私から言える事は、ここまでです……」
イーファがそう言うと、彼女の全身が光の粒子に変化していき、
15秒で光の粒子となって消えた。
「……イーファ様……」
アエルスドロは、掌にある大地の水晶をじっと見つめていた。
イーファから授かったこの水晶は、アラネアに対抗できる唯一のアイテムだ。
これが、この八人にとって、希望の光となるだろう。
「……時間はありませんわ。
一度、ナガル地方に戻りますけど、ナガル地方でできる休憩は三時間が限界ですわ」
マリアンヌが現在の状況から判断した結果、これが最後の休暇である事が分かった。
つまり、休憩を終えて地下神殿に行けば、倒すか倒されるまで、もう後には引き返せないのだ。
しかし、アエルスドロ達の表情に、迷いは見られなかった。
「行こう、マリアンヌ。私達は君のために集まったんだ。進まないはずがない」
「そうですよ。僕は最後まで、あなたについていきますから」
「エマを助けたいんでしょ? あたしも頑張るよ!」
「あたし達はただの部外者だけど」
「乗りかかった船です。この試練、必ず乗り越えます」
「……相手が神であろうと、お前にとっての邪魔者は排除する」
「私がお前についたのは、神の導きではない。私自身が考えて出した結論だ」
「皆様……」
七人は確かに自分の意志で、マリアンヌに付き従っている事を、彼女は実感した。
そして、マリアンヌは腰に手を当てて、大きく高笑いした。
「おーっほっほっほっほっほ! 待ってなさいなアラネア!
わたくしは、あなたを必ず封印しましてよ!!
おーっほっほっほっほっほっほ!!」
「……そろそろナガル地方に戻るぞ、いいな?」
「ええ……」
「では、いくぞ!」
そう言ってアエルスドロは大地の水晶を掲げ、八人をナガル地方に転移した。
決戦の時は、着実に近づいていた。
次回はアラネアを倒すために、最後の休息をいたします。
物語もクライマックスです。