ダークエルフと悪役令嬢   作:アヤ・ノア

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最後の休息回その2。
短いですが、重要な回となっております。


第56話 最後の休暇:後

 決戦の時まで、残り一時間。

 

「今日は邪神と戦うみんなのために、こんな昼食を作ったよ!」

「あら、ファルナ。これは?」

「倭国から伝わった料理、かつ丼さ!

 邪神に『勝つ』というゲン担ぎのために、張り切って作ったよ!」

 ファルナは邪神に挑む八人のためかつ丼を作った。

 しかも、その量はかなりたっぷりあり、一人で食べるのは時間がかかりそうだった。

「そ、そんなに作りまして?」

「当たり前じゃないか。相手は神様なんだよ? あんた達は、この世界の希望なんだから」

「おほほ、希望だなんて悪役令嬢に言う言葉ではございませんわよ」

「それでも、あんたが堂々としている姿は、あたし達にとっては希望だよ」

 小さくも強く光り輝いているマリアンヌに、ファルナは「惚れて」しまったようだ。

「さあさ、たんとお食べ!」

「いただきます!」

 ファルナの思いがこもったかつ丼に、八人は箸をつけた。

 

「美味しいわ、このかつ丼」

「ええ……僕も食べやすい肉です」

 ミロは嬉しそうにかつ丼を食べる。

 肉が苦手なルドルフも箸が進んだほど、ファルナのかつ丼は美味しいようだ。

「美味しい~♪」

 エリーは妖精サイズのかつ丼をほおばる。

「……なかなかの味だな」

「肉も、私の口に合う硬さだ」

 驟雨と茜の倭国組は、懐かしそうな表情でかつ丼を食べていた。

「あの、肉食べてもいいんですか? 茜は確か、神官でしたよね?」

「残すのはファルナに悪いからな、この際、戒律は不要だ」

 茜は基本的に戒律を守っているが、他人のために戒律を破る事はある。

 堅苦しく見えるが、本当は他人思いなのだ。

「ちゃんと食べて元気になろう。あの人はそのために、これを作ったと思うからな」

「……そうだな」

 このかつ丼を食べて、英気を養おう。

 八人はそう思いながらかつ丼を食べるのであった。

 

 決戦の時まで、残り二十分。

「住民の皆様……」

「マリアンヌ様」

「「「ひゃっはーーーー!!」」」

 決戦前に、マリアンヌは副官のディスト、住民のラメン三兄弟などを呼んだ。

「わたくしは、これより最後の戦いに向かいますわ。

 あなた達の命を授かるわたくしが、ここを開けるのはもう何回やったのでしょう。

 ……まずあり得ませんけど、この戦いに負けた時が、あなた達の破滅と思いなさい」

 依頼のためとはいえ、マリアンヌは何度もナガル地方を開けてきた。

 しかも、最後に挑むのは蜘蛛の邪神で、これまでとは比較できないほど強大な相手だ。

 勝ちたいのではなく、必ず「勝つ」必要があるほど、野放しにした時の悪影響が極めて大きいのだ。

「マリアンヌ様、本当に勝てるのですか……?」

「ディスト! わたくしはあなたを信じていますわ!

 なのにどうして、わたくしを信じませんの!?」

 不安になるディストを、マリアンヌは叱責した。

 自分は必ず邪神に勝つ事ができる、それを信じないのをマリアンヌは嫌っているのだ。

「しかし! 相手は神ですよ!?」

「神? それがどうかしましたの? わたくしの邪魔をする者はみんな同じですわよ」

「……マリアンヌさん……」

 マリアンヌは神であっても邪魔者は邪魔者と切り捨てた。

 ある意味で裏表のない彼女の言動を見て、ディストは安堵した。

ひゃっはーーーー!!」

忘れるなよーーー!!

ここは守ってやるからなー!!

 ラメン三兄弟も、ひゃっはーと言いながら、ナガル地方の留守を守る事を誓った。

 三人の、嘘偽りのない純粋な行動に、マリアンヌもまた、安堵した。

 

 そして、決戦の時まで、残り十分。

 アエルスドロ、マリアンヌ、ルドルフ、エリー、ミロ、ユミル、

 驟雨、茜はナガル地方の出口へ向かう。

「みんな、ここを出たらもう、邪神アラネアとの戦いが終わらなければ戻る事はできないぞ」

「エマが苦しんでおりますもの、助けますわよね? もちろん、わたくしは覚悟できてますわよ」

 アエルスドロとマリアンヌは仲間に確認を取る。

 六人は迷いのない表情で二人にこう言った。

「当たり前ですよ。僕はあなたの部下ですから」

「あたしも、生きて帰りたいんだ」

「ま、棄権するわけにはいかないからね」

「右に同じです」

「……俺はもう、迷わない」

「ようやく居場所が手に入ったんだ。ここで死ぬわけにはいかない」

 六人の表情を見たアエルスドロとマリアンヌは頷き、空を真っ直ぐに見上げ、こう言った。

 

「私達は必ず、生きて帰ってくる」

「だから、わたくし達を信じなさい!」




次回はいよいよラストダンジョンです。
アエルスドロ達の活躍を、最後まで見守ってください。
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