ダークエルフと悪役令嬢   作:アヤ・ノア

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ちょっとした衝撃回。
アンダーダークでのシーンも、少しだけ入れました。


第7話 闇の使者

 その頃、アンダーダークでは、

 ここを出ていったアエルスドロの処遇についてダークエルフが話し合っていた。

「さて、アエルスドロはどうする?」

「当然、処刑だ」

「賛成!」

「賛成!」

 その場にいたほぼ全てのダークエルフは、アエルスドロの処刑に賛成した。

 第四分家のツリーンマチャス家に、善の属性を持つダークエルフが生まれたため、

 女神アラネアの寵愛を失う可能性が高いからだ。

「アラネア様はこのような事態を決して許すはずはない!

 このままではツリーンマチャス家は下の分家に滅ぼされるだろう!」

「しかし……」

「しかしもくそもあるか! 裏切り者の末路は『死』のみなのだ!」

 ダークエルフは裏切りを美徳としているが、その裏切りがばれるのは許されない。

 ツリーンマチャス家の存続のためにも、アエルスドロの処刑が必要だという。

「……して、処刑した後はどうします?」

「無論、亡骸をアラネア様の贄とする。アラネア様は喜ばれる事だろう。

 では、今日はここまでだ。解散!」

 

 その頃、ナガル地方では。

「……また農作物が荒らされておりますわ」

 農作物が荒らされた事をマリアンヌが嘆いていた。

 恐らくは夜行性の魔物の仕業だろう。

「退治しますか?」

「いいえ、夜行性のあなたならともかく、こんな時間に人間が出歩くのは良くないと思いますわ」

 意外にも、マリアンヌは住民思いであった。

 マリアンヌは悪役令嬢とはいえ、ある程度の良識は持っている。

 それは悪役令嬢というより「どこか憎めないお嬢様」のようだ。

「そうだ、私に良い考えがあります。石を持ってきてください」

「石?」

「私、かじった程度なら魔法は使えますので……」

「わたくしに命令するなんてなんと無礼な! 自分で取ってきなさい!」

「……はい」

 アエルスドロは、渋々自分で石を取ってくる事にした。

 やはりこういうところは悪役令嬢らしいな、とアエルスドロはこの時思った。

 

「これくらいでいいですね」

 アエルスドロは、いくつかの石を持ってきた後、洞窟にその石を並べ、魔力を付与した。

「何をしましたの?」

「石に呪文をかけたのです。眠っていても、誰かが石を動かした事に気が付きます」

「なるほど……これなら、犯人が分かりますわね」

「安心してください、マリアンヌさん」

 

 そして、夕食を食べ終わった後の夜。

 アエルスドロは何かに気づいたのか起き上がった。

 そして、壁にかかっていた剣と盾を取り、石を置いた場所に向かった。

「……やはり、誰かがここに来たか」

 魔法の効果か、アエルスドロは誰かが石を動かした事を感じ取ったようだ。

 農作物を荒らしたのは石を動かした奴に違いない。

 アエルスドロは意を決して、単独で洞窟に入った。

 

「しかし、暗いな……」

 アエルスドロは、暗い洞窟の中を明かりなしで探索していた。

 辺りは暗く、よく周りを見なければ障害物にぶつかり、魔物に見つかってしまう。

 アエルスドロは精神を集中させ、敵の居場所を察知した。

 だが、敵を見つける事はできなかった。

「……いないな。一体どこにいる……っ!?」

 その時、アエルスドロは足に痛みを感じた。

 誰が来たんだ、とアエルスドロが身構えると、そこにゴブリンアーチャーのゾンビがいた。

 暗闇からアエルスドロに矢を放ったのだ。

「く、アンデッドか……!」

 アエルスドロは急いで剣と盾を構え、ゴブリンアーチャーゾンビを斬りつける。

 しかし足の傷が響いたのか、上手くダメージを与えられない。

ぐあぁぁぁぁぁぁぁ!

 さらに、ゴブリンアーチャーゾンビの連続攻撃を受け、

 アエルスドロは瀕死の重傷に陥ってしまった。

 

「ああ、すまない……。私一人で退治をするのは、いけなかったのか……」

 アエルスドロは、そのまま意識を手放そうとした。

 

「……ん」

 その頃、マリアンヌは、何故か寝付けずに起き上がった。

「……眠れませんわ。何故でしょう? わたくしでも、分かりませんわ」

 マリアンヌには、その理由が分からなかった。

 しっかり寝る準備はしたにも関わらず、どうしても眠れない……。

「……仕方ありません、外に出てみましょう」

 マリアンヌは仕方なく、小屋を出て外に行くのだった。

 

「落ち着けますわね」

 外に出たマリアンヌは、夜風を全身に浴びる。

 その風は彼女にとって心地よかったらしく、しばらくそれに身を委ね落ち着いていた。

「あら……?」

 マリアンヌは、不意に誰かの気配を察した。

 急いでマリアンヌは腰から二丁拳銃を取り出す。

 そして、洞窟の中に入ると、彼女は倒れているアエルスドロと、

 彼を射抜こうとしているゴブリンアーチャーゾンビを発見した。

「アエルスドロじゃない! どうしましたの?」

「逃げてください……!」

「逃げてって、どうし……!?」

 マリアンヌはゴブリンアーチャーゾンビを改めてしっかりと見た。

 ゴブリンアーチャーゾンビは知性を持たないながらも、

 瀕死のアエルスドロにとどめを刺そうとしていた。

「危ないですわ!」

 マリアンヌは二丁拳銃でゴブリンアーチャーゾンビを怯ませた。

「ほら、行きますわよ!」

「あ、はい……!」

 マリアンヌは大急ぎでアエルスドロを背負った後、彼を小屋に運んでいった。

 

「……大丈夫ですの? アエルスドロ」

「……いえ」

 マリアンヌは、大怪我をしたアエルスドロを手当てしていた。

 幸い、命に別状はなかったものの、しばらくの間戦線離脱する事になった。

 このままでは、農作物を荒らす魔物を退治できなくなってしまう。

「どうすればいいのかしら……。ルドルフとエリーは寝ているし……。

 あぁ、どうしましょう……!」

 マリアンヌは、途方に暮れていた……。

 

「……仕方ありませんわね、ここはわたくし達ではなく……」

 マリアンヌは、渋々武官達を起こしに行くのだった。




~モンスター図鑑~

ゴブリンアーチャー
拾ってきた弓を使うゴブリン。

ゾンビ
下級のアンデッドで、動く死体。
生前の記憶も知能も全くなく、ただ生者に襲い掛かるのみ。
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