アンダーダークでのシーンも、少しだけ入れました。
その頃、アンダーダークでは、
ここを出ていったアエルスドロの処遇についてダークエルフが話し合っていた。
「さて、アエルスドロはどうする?」
「当然、処刑だ」
「賛成!」
「賛成!」
その場にいたほぼ全てのダークエルフは、アエルスドロの処刑に賛成した。
第四分家のツリーンマチャス家に、善の属性を持つダークエルフが生まれたため、
女神アラネアの寵愛を失う可能性が高いからだ。
「アラネア様はこのような事態を決して許すはずはない!
このままではツリーンマチャス家は下の分家に滅ぼされるだろう!」
「しかし……」
「しかしもくそもあるか! 裏切り者の末路は『死』のみなのだ!」
ダークエルフは裏切りを美徳としているが、その裏切りがばれるのは許されない。
ツリーンマチャス家の存続のためにも、アエルスドロの処刑が必要だという。
「……して、処刑した後はどうします?」
「無論、亡骸をアラネア様の贄とする。アラネア様は喜ばれる事だろう。
では、今日はここまでだ。解散!」
その頃、ナガル地方では。
「……また農作物が荒らされておりますわ」
農作物が荒らされた事をマリアンヌが嘆いていた。
恐らくは夜行性の魔物の仕業だろう。
「退治しますか?」
「いいえ、夜行性のあなたならともかく、こんな時間に人間が出歩くのは良くないと思いますわ」
意外にも、マリアンヌは住民思いであった。
マリアンヌは悪役令嬢とはいえ、ある程度の良識は持っている。
それは悪役令嬢というより「どこか憎めないお嬢様」のようだ。
「そうだ、私に良い考えがあります。石を持ってきてください」
「石?」
「私、かじった程度なら魔法は使えますので……」
「わたくしに命令するなんてなんと無礼な! 自分で取ってきなさい!」
「……はい」
アエルスドロは、渋々自分で石を取ってくる事にした。
やはりこういうところは悪役令嬢らしいな、とアエルスドロはこの時思った。
「これくらいでいいですね」
アエルスドロは、いくつかの石を持ってきた後、洞窟にその石を並べ、魔力を付与した。
「何をしましたの?」
「石に呪文をかけたのです。眠っていても、誰かが石を動かした事に気が付きます」
「なるほど……これなら、犯人が分かりますわね」
「安心してください、マリアンヌさん」
そして、夕食を食べ終わった後の夜。
アエルスドロは何かに気づいたのか起き上がった。
そして、壁にかかっていた剣と盾を取り、石を置いた場所に向かった。
「……やはり、誰かがここに来たか」
魔法の効果か、アエルスドロは誰かが石を動かした事を感じ取ったようだ。
農作物を荒らしたのは石を動かした奴に違いない。
アエルスドロは意を決して、単独で洞窟に入った。
「しかし、暗いな……」
アエルスドロは、暗い洞窟の中を明かりなしで探索していた。
辺りは暗く、よく周りを見なければ障害物にぶつかり、魔物に見つかってしまう。
アエルスドロは精神を集中させ、敵の居場所を察知した。
だが、敵を見つける事はできなかった。
「……いないな。一体どこにいる……っ!?」
その時、アエルスドロは足に痛みを感じた。
誰が来たんだ、とアエルスドロが身構えると、そこにゴブリンアーチャーのゾンビがいた。
暗闇からアエルスドロに矢を放ったのだ。
「く、アンデッドか……!」
アエルスドロは急いで剣と盾を構え、ゴブリンアーチャーゾンビを斬りつける。
しかし足の傷が響いたのか、上手くダメージを与えられない。
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁ!」
さらに、ゴブリンアーチャーゾンビの連続攻撃を受け、
アエルスドロは瀕死の重傷に陥ってしまった。
「ああ、すまない……。私一人で退治をするのは、いけなかったのか……」
アエルスドロは、そのまま意識を手放そうとした。
「……ん」
その頃、マリアンヌは、何故か寝付けずに起き上がった。
「……眠れませんわ。何故でしょう? わたくしでも、分かりませんわ」
マリアンヌには、その理由が分からなかった。
しっかり寝る準備はしたにも関わらず、どうしても眠れない……。
「……仕方ありません、外に出てみましょう」
マリアンヌは仕方なく、小屋を出て外に行くのだった。
「落ち着けますわね」
外に出たマリアンヌは、夜風を全身に浴びる。
その風は彼女にとって心地よかったらしく、しばらくそれに身を委ね落ち着いていた。
「あら……?」
マリアンヌは、不意に誰かの気配を察した。
急いでマリアンヌは腰から二丁拳銃を取り出す。
そして、洞窟の中に入ると、彼女は倒れているアエルスドロと、
彼を射抜こうとしているゴブリンアーチャーゾンビを発見した。
「アエルスドロじゃない! どうしましたの?」
「逃げてください……!」
「逃げてって、どうし……!?」
マリアンヌはゴブリンアーチャーゾンビを改めてしっかりと見た。
ゴブリンアーチャーゾンビは知性を持たないながらも、
瀕死のアエルスドロにとどめを刺そうとしていた。
「危ないですわ!」
マリアンヌは二丁拳銃でゴブリンアーチャーゾンビを怯ませた。
「ほら、行きますわよ!」
「あ、はい……!」
マリアンヌは大急ぎでアエルスドロを背負った後、彼を小屋に運んでいった。
「……大丈夫ですの? アエルスドロ」
「……いえ」
マリアンヌは、大怪我をしたアエルスドロを手当てしていた。
幸い、命に別状はなかったものの、しばらくの間戦線離脱する事になった。
このままでは、農作物を荒らす魔物を退治できなくなってしまう。
「どうすればいいのかしら……。ルドルフとエリーは寝ているし……。
あぁ、どうしましょう……!」
マリアンヌは、途方に暮れていた……。
「……仕方ありませんわね、ここはわたくし達ではなく……」
マリアンヌは、渋々武官達を起こしに行くのだった。
~モンスター図鑑~
ゴブリンアーチャー
拾ってきた弓を使うゴブリン。
ゾンビ
下級のアンデッドで、動く死体。
生前の記憶も知能も全くなく、ただ生者に襲い掛かるのみ。