中堅呪術師変身系 作:でんでんむし
ストーカーの不審者もとい、五条悟と名乗った彼は、僕に呪術高専なる学校に入るように強制してきた。
だが、僕にも通っている高校があるのだ。それも両親の保険金と遺産で通わせて貰っている高校が。僕一人の判断でどうにかなる話では無いし、折角通っている今の高校を辞めたいとも思っていない。何のために学校に通っているのか、この男は考えたことがあるのだろうか。
そう考えていたのだが、事態はそう単純なものでは無いらしい。
なんでも、僕の術式(特殊な力の事をそう呼ぶのだと言う)が危険だとか言う事で、呪術師とか言う人たちのお偉いさんに目をつけられてしまったそうだ。
「ほら、要らないのでいいからさっきの水晶一個ちょうだい」
「良いですけど……はい」
五条さんに言われるままに、あまり質の良くなかった無色水晶を取り出して彼に手渡す。
すると、彼はその水晶を太陽にかざしてじっくりと眺めた。
「ふぅん。やっぱりね」
「? 何がですか」
「これ、呪物になってるよ」
「ジュブツ……て、何です?」
「ま、簡単に言えば『呪いが籠った物体』の事だよ」
なんて事は無いように彼はそう話すけれど、術式やら呪術師やら呪物やら、知らない単語ばかりでいまいち飲み込みにくい。『呪い』と言うのだから良くないものなのかもしれないが、そこら辺の良し悪しの度合いもいまいちわからない。
「君が祓ったものが呪物になってるからかな? 今はこの中身が死んでるし呪いを周囲に振り撒くようにはなってないけど、何かのはずみで周囲に人を殺しかねない呪いを振り撒く呪物になるかもしれない。特に、時間の経過によって強くなる呪物もあるから、上の連中はそれを怖がったんだろうね。要は君にポンポン呪物を作られてる現状が怖いって事」
「悪い、ものなんですか。それは」
「いやぁ? 一概に悪いとも言えないよ。わるーい呪霊を祓うのに役に立つ呪物だってあるわけだし。使い方次第で呪いは人の役に立つ。まあ僕には必要ないけどね」
そうして彼は水晶を眺めるのをやめ、「ハイこれ返すね」なんて言いながら水晶を投げ返してくる。
「だからさ、君がこのまま高専に来てくれないと、上の連中に派遣された呪術師が君を殺しに来るかもしれないわけ」
「……僕がこの力を使うのをやめたら、見逃してくれたりとかは?」
「うーん、そうなったら殺すのは無しになるかもだけど、君の術式って珍しい部類だし君の種欲しさに誘拐しに来たりはするかも」
「誘拐って……」
死ぬか種馬にされるか。どちらにしても死んだも同然では無いだろうか。
それに、そんな事になったら僕は祖父母への恩も返せなくなってしまう。欲を言えば高専とやらにだって行きたくない。今通っている学校から離れて遠い学校に行くと言うことは、祖父母の回りの呪霊(何かと呼んでいたあれらの事)を祓う事も出来なくなってしまう。
やっと、恩を返すことが出来る力を手に入れたのに。
「呪術高専に行ったら、お爺ちゃんとお婆ちゃんは、もう守れなくなりますか」
「まあ、確かに君はもう無理だろうね」
「やっぱり……」
「でも、君以外の呪術師に守らせることも出来るよ? 僕、ちょーっとばかし権力はあるからね」
だから安心だぜと言われても、そもそも呪術師とやらが何なのかまだハッキリしていない上に信用が無いから何とも言えない。祖父母の守りを頼むと言うことは、それこそ命を預けることになるのだから、信用の無い今の状態で、はいお願いしますとは言えないのだ。
「正直、今すぐに返事は出来ないです」
「やっぱり?」
「申し訳無いですが、まあ」
今すぐに答えは出せない。
最終的にその呪術高専という所に僕は行くことになるのだろうが、その決定までにやらなければならない事や祖父母と話し合わなければならない事が沢山ある。
呪術高専に行くと答えを出すのは、それらを全て片付けてからだ。未だ未成年である僕が、最低限自分の事に責任を持つにはその程度はしなければならない。
「まあ、ここで話してるのも何ですし、とりあえず家に来ませんか? 祖父母とも話すことはあるでしょうし」
取り敢えず、こんな路上で話し続けていても答えはまとまらない。先程の呪霊との戦いでボロボロになった周囲を眺めながら彼に提案した、が。
「あっ、でもね、今日は君と一回だけ顔合わせしとこうって言う予定だったから。この後また用事があるんだ。君みたいに面倒な事になっちゃった子が居て、そっちもどうにかしなきゃいけなくてね」
「え"」
「それじゃ、また二日後の午後五時くらいにこっち来るから、またね!」
彼は自身の回りに円を描くと、コンクリートの表面を削りながらその場からパッと消え失せてしまった。向こうからいきなり会いに来て、勝手に話を進めて、こちらの予定も聞かずに勝手に次回の予定を決めて帰ってしまった。随分と勝手な人だ。
こうして五条悟との初邂逅は唐突に終了したのだった。
「戻ったか、五条悟。冬樹蓮司はどうだ。見立て通り、呪いを振り撒きこの世に害を為す存在になり得るか」
「いやぁ、無いんじゃないですかね。とりあえず彼の祖父母に手を出さない内は平気だと思いますよ」
あの後、冬樹蓮司の元を離れた五条はある場所を訪れた。
彼が大嫌いな、前時代的な実に呪術師らしい考え方を持つ、野暮な老人ばかりの空間だ。
本来なら一瞬だって訪れたくもない場所だが、まあ理由が理由である。彼が気に入った二人の若者の青春を下らない事で奪わせない為にも、不本意ながらこの場所に立っている。
「彼の作った水晶。手にとって見せて貰いましたけど、中身はとっくに死んでました。彼の術式は『呪霊操術』とよく似てますけど、その本質はかなり違う。倒した呪霊から、力だけを抜き取って呪物って形にしてるんですよ」
「つまり、彼の作った呪物は年を経ても強力な呪物に変貌する事は無いと?」
「ええ。確かにあの中身に呪いが詰まっているのは確認しましたが、水晶に全て閉じ込める形での封印の技術に関しては今いる術師でも一番上手いんじゃないですかね。下手に封印を解こうとすれば全部ダメになるようなオマケ付きでしたよ」
まともに呪術について学んでいないにも関わらず、準1級クラスの呪霊を祓うその力量と、産まれ持った術式によるものとは言え完璧に近い封印の技術。
実際のところ、冬樹蓮司は上の連中が怖がっていたような危険因子どころか、呪術師として引き込めば即戦力にもなり得る優等生。五条からすれば、こんな下らない事で大騒ぎしていたのかと呆れる内容だ。彼を監視していたと言う呪術師は、本当にちゃんと調べていたのだろうか。きちんと情報が伝わっていれば、こんな面倒な事にはならなかっただろうに。それとも非術師の家系から突然現れた才能の持ち主に嫉妬して、わざと消させようとしたのか。
「それに……成長性は未だ未知数ですが、正直『特級』レベルまで強くなれるかと言えば、たぶん無理でしょう。瞬間的に『特級』レベルの力を発揮する事は出来ても、常にって言うのは彼にはちょっと難しいと思いますよ」
そう、彼の術式の性質上、一度に使用できる呪霊は一体まで。特級の呪霊でも、一級や準1級の術師が祓うこともあるし、特級の呪霊を使えば術師としても特級クラスとはならない。彼が特級呪霊を倒し、その力を手にしたとしても『究極の個』にならない限りはどんなに頑張っても一級術師レベルだろう。
「ま、汎用性はぶっちぎりですよ。取り込んだ呪霊の能力をそっくりそのまま使えるんですから。こっち側に引き込んでおいて損は無いんじゃないです?」
「そうか。なら良い。お前の話したことが本当かどうか、再び別の術師を派遣して調べさせる。後は、好きにすると良い」
「ええ、彼は呪術高専で預かります」
ひとまず冬樹君の件は穏便に済みそうで安心する。少々特殊な術式とは言え、『呪霊操術』ほどの危険性は無かった訳だから妥当といえばそうだが、あいつの事があったから上の連中も手を出すべきかどうか決めかねていたのだろう。あちら側としても丁度良い受け皿に危険性が未だ曖昧な爆弾が収まってくれると言うのだから、その話には乗っておこうといった所だろうか。
とにかく、彼についての話は終わった。彼が大変なのはこれからだ。呪術師として有能か無能か、それによって御三家からの見られ方や扱いも変わる。後は面倒な事にならないことを祈るだけ。
本題は、これからだ。
「さて、次だが……『特級被呪者 乙骨憂太』の処遇についてだ」
【融合呪霊鎧『夜行』】
準一級仮想怨霊『夜行』から作り出された水晶を元に作られた融合呪霊鎧。身体能力の強化と術式共に単純かつ強力で、大変優秀。特に術式に関しては、身体への反動というデメリットに対してリターンが大き過ぎる。
術式『閃光踏破』は『開始点と終着点を設定してその間を光を越える速さで移動し、その間にあったものを全て蹴りつけると言うもの』。実はこの術式、黒閃が発現する条件を狙って・確実に満たす事が出来るぶっ壊れ。蓮司は先の呪霊に対してこれを二回連続で使用した為に、自身では気付いていないが二回連続での黒閃を発生させている。そしてそれを一回は耐えた呪霊も準一級の割にかなりタフ。
メタ的には配布SSRみたいな存在。
※呪霊操術に対する神衣のメリットとデメリット
メリット:
呪霊を取り込む際のストレスが無い。
取り込んだ術式も努力次第で成長させられる。(ただし大変成長させにくい)
主従契約されている呪霊でも倒した直後のみであれば使用可能。(式神も倒した直後のみであれば可能)
フィジカル面のバフがでかい。
デメリット:
同時に複数の呪霊の力を使うことは出来ない。
鎧一個壊されるだけで急激に弱体化。
雑魚呪霊は取り入れてもあまり意味がない。
呪霊そのものを使役できない。(手数が少ない)
どんなに弱い呪霊でも祓わなければ取り込めない。
融合呪霊鎧の装着・換装時にタイムラグがある。
鎧にして力を得ると言う性質上、肉弾戦になりがち。
呪霊同士を混ぜ合わせる(呪霊操術ならうずまき)動作は2体までしか同時に混ぜられず、呪力は足し算にならない。強くするには根気よく混ぜ続けなければならない。