汝、皇帝の冗句を見よ 作:ウマ娘の耳飾りになりたい
夢には2種類ある。見る夢と魅せる夢だ。まるで街灯に群がる蛾の様に、魅せる夢は人を惹きつける。気づけば『貴方の夢が私の夢』になっている。
かくいう私も夢に魅せられた一人だ。そしてその夢がウマ娘のものならば、私が取る選択肢など1つしかないのは自明の理である。
そう、トレーナーだ。
▽
喧しい目覚まし時計の音が私を叩き起こし、思わずそいつを叩き返しそうになったところで意識がはっきりしてきた。
「あーー……5時、か。全然寝た気がしない」
僅かに残った眠気を洗い流す様にシャワーを浴び、こいめのコーヒーを飲みながら今日のトレーニングメニューと資料を纏める。朝食は……まぁトレーナー室で栄養食品でも齧ればいいや。時刻は5時40分、私は寮の自室を飛び出した。
ここまで急いでいるのには訳がある。もし私が彼女より遅く起きて、彼女の業務が滞ろうものなら……考えるだけで恐ろしくなってくる。彼女の夢を邪魔するのだけは耐えられない──この感情も妨げになるだろうから死んでも本人には言わないが。向こうは早起きなことだ、とでも思っているのだろう。
心持ち急足でトレーナー室へ続く廊下を歩いていると、向かいから見知った顔がやって来た。おかしい、いつもより20分ほど早い。向こうも私に気づいたのか、片手を上げた。
「やあトレーナー君」
「いつもより早いね、ルドルフ」
「なに、少し早起きしたものでね。しかし……君はいつもこの時間に起きているのかい?
当然暗闇程度で泣くルドルフではない。ルドルフの様子がおかしいときは大体駄洒落が組み込まれている時である。ふーむ…………なるほど?
「じゃあ怖くない様に雄叫びでも上げてみたら?『うぉー、暗い!』って」
「! ふふ……それは良いアイデアだ」
「
「ふ、ふふっ、やめてくれ、もう腹筋が持たん……」
勘違いしないで欲しいのだが、私の夢はルドルフに芸人になってもらうことではない。ルドルフが親しみやすい印象を持たれる様にジョークのトレーニングに付き合っているだけだ。
「いやしかし、良く返しをすぐ思いつくものだ。『シーザーの視座』然り、『ションボリルドルフ』然り……」
「まだ覚えてたの? それ言ったのだいぶ前だと思うんだけど」
「君の冗句は銘肌鏤骨、忘れることは無いとも」
出来れば恥ずかしいのでやめて欲しいと思いつつ、私はトレーナー室のドアを開いた。
ジョーク思いついたら更新します