ある日、颯爽と現れた男―――ジョセフ・ジョースター。
かなりのやんちゃ者だった彼は祖母であるエリナを安心させるべく、また少しばかりの祖父への憧れから雄英高校を受験することに決める。
耳郎を始めとした様々な者との出会いを通して無事に雄英高校に入学…と思えば当日から除籍の危機が訪れる。
ジョセフはこれに反抗、プロヒーローであるイレイザーヘッドとの条件付きの戦いに挑み辛くも勝利。
除籍者は一人もなく無事に学校生活を送る中、八百万から語られたのはジョースターの血縁とその過去。
当然気になるジョセフらだったが詳細は分からず、その場は一旦お開き
。
ジョセフ達は急いで授業へと向かい、その後は何事もなく一日を終えるのだった。
更に数日が進んだある日の昼休みの終わりごろ。
授業準備時間に突入し静かな無人の廊下をジョセフは駆けていた。
「やっべェ⁉ 授業始まっちまう‼」
「ちょっとジョジョ!、もう授業のチャイム鳴るよ!」
「早く席に着きたまえジョースター君! 5分前には授業準備に移ってなくてはいけないんだぞ!」
「分かってるっての! だから今全速力で走ってるんじゃあねェか!!
クソ……あんなの頼まなきゃ良かったぜ……」
横っ腹を抑えながらジョジョは廊下をただただ走り、遂に教室の扉まで数メートルのところまでたどり着く。
扉の前に立ち急かす二人の姿もすぐそこまで近づいていた。
「うおおおおおお間に合えェェェェェ!!」
教室の前まで全速力で駆け、廊下から開いた教室の扉へと頭から飛び込む。
それと同時にデッドラインである本鈴が校内に鳴り渡った。
「フー……間に合ったぁ」
「この間のマスコミの件があったから時間内行動は徹底するようにって言われたばっかなのにさぁ。
先生の話ちゃんと聞いてた?」
「も、勿論だぜ! 一から百まで全部ちゃあンとな!」
「絶対ウソだね……はぁ……。何か言われても知らないよ?」
「何も言われねェよ! バレるわきゃねェしな!」
キヒヒと笑いながらジョジョがそそくさと自分の席に向かう。
それから少しして教室の扉から相澤が顔をのぞかせた。
「皆席に座ってるな、合理的で結構」
(ホッ)
「が、合理的じゃないジョースターは放課後俺のところに来るように。チャイムが鳴る前には座っとけよ」
「やっぱバレてんじゃん……」
「にゃにぃ⁉ 何でわかったんだこの野郎⁉」
「一人だけ不自然に息上がってたらわかる。というかお前は目立つことをもう少し自覚しろ」
「身体デカいしねー」
「電動纏う巨影……」
「チッ……それで? 今日の授業は何やるんだよ? アンタが次の講師だろ?」
次の授業はヒーロー基礎学。その名の通りヒーローの基礎を培う授業だが講師が誰なのかまだ明らかにされていなかったのだ。
舌打ちをし不快感全開にしながらもジョジョは相澤に問う。
その問いに対し相澤は言葉を返すよりも先に首を横に振った。
「あくまで俺はお前らがちゃんとクラスにいるか確認しに来ただけだ。
詳しい話は……これから来るあの人に聞け」
「あの人?」
「お前らも良く知るあの人だ。しっかりやるように」
そう言い残し相澤は廊下を一人歩いて行ってしまった。
教室内は相澤の言い残した『あの人』が誰なのかで少々ざわめき立つがそのざわめきが大きくなるよりも先に
その存在は現れた。
「わ~た~し~が~」
「普通にドアから来たァ!!」
「「「「「オールマイトォォォォ!!」」」」」
およそ靴で鳴るのかと思えるような急ブレーキ音とともにNO1ヒーロー、オールマイトがその場に現れる。
普段目にするコスチュームを纏い、崩すことのない不敵な笑みを浮かべる彼の登場は大いに教室を沸かせた。
「オールマイト!!」
「ホンモノだぁ!」
「画風が違いすぎて鳥肌が…」
教室の扉を潜り抜け露わになったオールマイトの姿に皆口々に感嘆の声を漏らす。
身長は優に2mを越え、筋肉という名の鎧を身に纏っている全人類の憧れと言っても遜色ない彼の登場を目にし教室が更に沸き立った。
歓声に応えるよう手を振りながらオールマイトは壇上に立つと軽く咳ばらいをし、説明を始めた。
「皆も既に把握していると思うが私の担当はヒーロー基礎学。
ヒーローの素地を作るため様々な訓練を行う授業だ。単位数も多いから張り切っていくように!
早速だが……今日はコレ、戦闘訓練さ!!」
オールマイトが素早くカードを握った拳を生徒らのほうへ向ける。
それは白色の背景に”BATTLE”とだけ赤く書かれたカードだった。
「戦闘ッ!!」
「訓練……!!」
「そしてそいつに伴って…コチラ!
入学前に送ってもらった個性届と要望に沿って誂えたコスチュームだ。」
「「「おおぉ!!」」」
オールマイトが手元のリモコンのスイッチを押すと教卓の隣の壁からコスチュームの入ったケースを乗せた棚がせり出してきた。
自らの個性や各々の要望を基にプロの手によって作り上げられたヒーローの原点とも言えるそのコスチュームの存在に生徒らは更なる盛り上がりを見せた。
「俺たちのコスチュームがあの中に……」
「そうだとも! 各自コスチュームに着替えてグラウンドβに集合だ!」
「「「「「はい!」」」」」
「よし……悪かねェな。概ね注文通りだ」
「ジョジョのコスチュームイカしてんな! そのマフラーみてぇのは熱くないの?」
「やっぱそれもサポートアイテムとかじゃねぇか? なんかこう……縛ったりする用でさ」
「そーかぁ? どうせ全部かっこつけだろ? 指だしグローブとかもさぁ」
「へへーん……そいつはどうかなァ?」
「……やっぱカッコつけじゃないわ。コイツのこの言い方は絶対何かあるってオイラ知ってるし」
他愛の無い会話をし映画の劇場のような薄暗い通路を通り抜けると陽の光がジョジョたちを照らす。
校舎内からつながる通路の先に待っていたのは入学試験の時にもあった小型のビルやマンションなどが立ち並び、
信号や標識までもが設置された模擬市街地であった。
それこそが雄英高校のほこるグラウンドβである。
眩しさから目をすぼめながらも道の先を見やるとそこには道路の中心に堂々と立つオールマイトの姿があった。
「待ってたぜ皆、かっこいいじゃあないか! 正に十人十色だ!」
オールマイトは腕を突きだしグッと親指を立てる。
生徒らは全身を鉄鎧で覆ったものから肌を大きく見せるものまで多種多様な装いを身に纏い、
太陽という名のスポットライトに照らされた姿はまさに『ヒーローの卵』と形容するに値するものである。
「爆豪少年の武器を露わにする戦闘派スタイルもあれば緑谷少年のように己こそヒーローであると示すコスチュームの者もいる。
ジョースター少年や耳郎少女のような普段のファッションを取り入れたかのような者もいるね。実に良いことだ!」
「……だってさ」
「ケッ、お前の着てるのは普段着にしか見えなかったけどな」
耳郎が身に付けるのは赤いダメージの入った薄着の服に被せるように着る黒いジャケット、黒いズボンに角ばった黒いブーツ。
目の下には赤い雫のようなものをペイントしておりロックを基調とした彼女らしいコスチュームだった。
「へぇ~? ウチのコスチュームが普段着に見えたのならアンタのも大概だけどね!」
対するジョジョが纏うのは両腕を露わにしたカーキ色のタンクトップ、紺色のズボンに膝下までの高さのある茶色のブーツ。
そして首に巻くのは黄緑色をベースとして黄色がストライプとして入るマフラーであり、
他の生徒がつけるような特殊な装甲は無いもののジョジョと相性ピッタリな服装だった。
ちなみに両者とも異なる色の指ぬきグローブを身に付けているがこれは偶然そうなっただけである。
「にゃんだとォ~!!」
「至極当然のことを口にしただけなんだけどぉ?」
「二人とも静かにしたまえ!! 授業中だぞ!!」
「……ウン、アリガトウ飯田少年……」
いがみ合いながらも飯田の静止により喧嘩は何とか収束する。
仲裁が中々出来なかったために心無しか小さくなったように見えたオールマイトだったが軽く咳ばらいをして説明を始めた。
「さぁ、始めようか有精卵ども!戦闘訓練のお時間だ!!……ではこいつを見てくれ!」
オールマイトはどこからか端末を取り出し、宙に一枚の画像を映し出す。
そこには4階建ての小型ビルの断面図が表示されていた。
「今回の訓練は対人戦闘訓練! 敵退治は主に屋外で行われるが凶悪な敵に関しては屋内の方が現れることが多い。
これは統計で出ている確かな情報だ」
「真に小賢しい敵は
「その通りだ八百万少女! これから君たちにはヒーローと敵の2チームに分かれ2対2の屋内戦を行ってもらう!」
オールマイトは生徒らに告げると手元の端末を操作し、映し出す画像を更新する。
先ほどは訓練の地形の紹介だったが今度のものは文章がつらつらと並べられていた。
内容を要約すると以下のとおりである。
・状況設定は『敵』がアジトに『核』を隠しており『ヒーロー』がそれを対処しようとしている
・ヒーロー側の勝利条件は制限時間内に『敵』の確保か敵が屋内に隠している『核』を回収。
・敵側の勝利条件は制限時間まで『核』を守り切るか『ヒーロー』の確保。
しばらく時間を取った後、皆が見終えたと判断したオールマイトは手元の端末を操作し映像を停止し端末を懐へとしまい生徒の方へと向き直す。
「見終わったかな?では皆が気になるコンビ及び対戦相手の決め方だが……これだ!」
オールマイトの言葉に皆唾をゴクリとのむ。
ヒーローとは迅速な対応が求められる存在であり、その場にいる見知らぬヒーローとも即時連携を取って行動しなくてはいけないのだ。
(初日からスパルタ教育の片鱗を見せる雄英高校。一体どんな方法を……)
皆が不安に思う中、オールマイトは地面に置かれた箱を片手でひょいと持ち上げると皆に見えるように上に掲げて見せる。
そこそこの大きさで6面ある内の一つには大きな穴が空いた箱。中には幾つかのアルファベットの書かれたボールが入っておりその手段は古来より様々な国・場面で用いられてきたもの。
一言で言い表すならくじ引きである。
「これで決めようと思う‼ くじ引きさ‼」
「「「えええぇぇぇ!?」」」
「くじ引きなのですか!?」
「さっきまでハイテクだったのに急にアナログー!!」
「アナログにだって良さはあるのさ、HAHAHAHA!!」
初の訓練でのコンビの決め方が拍子抜けなものであったことに皆の緊張が一気に解かれ、阿鼻叫喚の嵐となる。
そんな中でも絶えずアメリカンスマイルで軽快に笑い続ける彼のメンタルは相当なものだろう。
疑問が飛び交う状態がしばらく続いていたものの、緑谷の「事件の際は急遽知らぬヒーローと共闘する場合があるからだと思う」という発言からその場は収束し、
一人一人くじを着実に引いていく。
そしてジョジョにもくじをひく順番が回ってきた。
「さぁ、ジョースター少年」
「ほいほい……っと。『G』だな」
「ジョースター少年は『G』か。となるとチームは……」
「ウチだね」
声の方にジョジョが振り向くと耳郎がボールを掲げており、そのボールにははっきりと『G』と描かれていた。
「……」
「そんな嫌そうな顔しないでよ。さっきのことはお互いにチャラで良いでしょ?
子どもじゃないんだしいつまでも引きずってないでさぁ」
「引きずってなんかいねェよ。ったく……やるなら勝とうぜ響香!!」
「うん!」
お互いに拳を合わせ頷く。
そこには先ほどまでの仲の悪そうな様子などは一切なかった。
「―――これで皆チームに分かれたな。では最初の対戦カードを発表する!!
一戦目は……コレだ!!」
皆が固唾を呑んで見つめるそんな中、オールマイトがくじ引きの箱から新たにボールを二つ取り出した。
「Gチーム対Bチーム!!」
「Gチームって言ったら……」
「ウチらだよ。Bチームは……」
耳郎が目線を映した先にジョジョも目をやる。
そこに立っていたのは幾つもの腕や体の器官を生やす男、障子目蔵。そして半身を氷で覆う男―――轟焦凍の姿だった。