刻むぜ波紋のビートッ!!   作:ベリアロク

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第3話 雄英入試 その2

説明会場からバスで数分ほど離れた場所で他の受験生らとともにジョジョは巨大な扉の前に立ち開始の時を待つ。ちょっとしたビルくらいの高さのある門の開かれた先には紛れもない街そのものがあった。

 

 

「クッソォ……あの情報屋め! 何が『間違いない』だ! 対人なんて噓っぱちじゃあねぇか!」

 

 

ジョジョが頭を抱え叫ぶ。

先ほどの説明会にて今回の試験は機械を相手としたものだということが受験生らに伝えられた。

多くの受験生がロボットとの戦闘に気合を入れる一方で情報屋から仕入れた情報で対人だと信じ切っていたジョジョは見事面食らったというわけである。

 

 

「……いつまでも文句言ってても始まらないよな。早いとこ策を考えねぇと」

 

 

ジョジョは先ほど配られたプリントを取り出し目を向ける。

相手にする仮想敵は全4種類。そのうち3つは1~3ポイント振り分けられており、倒して得たポイントの合計を競う。尚残りの一つは0ポイント。倒すことに何もうま味は無い……いわゆるお邪魔虫。故に0ポイントは無視し、如何に効率よくポイントを持つ敵を倒していけるかが大切と言えよう。

 

 

「問題はどうやって戦うか、だ。道具の持ち込みがOKだったのはいいが機械相手にどうやって……」

 

『――スタートッ!!』

 

「なッ!?」

 

『どうしたどうした!!実戦にカウントダウンなんて無いんだよォ!!』

 

 

ジョジョが持ってきた道具を確認しようとしたその時、突如スタートの合図が出される。

陸上でいうなら「位置について」の予告もなしに出されたその合図に受験生らは皆反応が遅れるも一斉に街へと駆け出し、最後尾にいるジョジョも追いかけるように走り始める。

 

 

「クソ、出遅れた……けどスタートってのは何事も大事なんだよォ!」

 

 

純粋なスピード勝負での出遅れはかなりの痛手と言え、その差を埋めるのは至難の技。

けれどジョジョはぐんぐんと加速し他の受験生を抜き去り、トップへと躍り出た。

 

 

「なんだアイツ!?」

「速ェ!?」

 

「へへーん! ただでさえハンデ背負ってるってのに出遅れるわけにはいかないのよ!」

 

『標的ハッケン。ブッ殺す!!』

 

「あれが1P敵……よっし、まずは一発行かせてもらうぜ!」

 

 

標的を発見し動き出す仮想敵に向かってジョジョは立ち幅跳びのように前へ、上へ大きく跳躍する。

彼の走りやその跳びは決して長年特訓を積んだ陸上選手のように洗練されたものではない。技術のカケラもない素人と見られて当然の動きだ。

けれど彼のずば抜けた運動能力、中学生にして身長180cmという恵まれた体格、そして彼の『個性』がそれを実現させたのだ。

彼の個性は『波紋』。特殊な呼吸をすることで血液中に波紋が生まれ、それにより生まれた生命エネルギーを用いることが出来る。身体能力が向上し生体電気のようなものを操れ物体に流すことが出来る。尚参考にできる前例が無く、今だ謎多い個性である。

 

 

「食らってスクラップになりやがれェ!!」

 

 

仮想敵がアームによる攻撃を繰り出す前にジョジョの拳がロボットの骨格の間を貫く。

拳がケーブルに触れるとバチバチと音を出しながら火花を散らし、ロボットは装甲の内側に張り巡らされたケーブルからを黒煙を立てその場に沈黙した。

 

 

「これで1ポイント! 見た目で分かってたがこいつの装甲マジでかてェな……バカ正直に殴り掛からなくてよかったぜ」

 

「敵を一瞬で……」

「電気系の個性か?」

 

「急造ではあったが”こいつ”が十分使えたのは上々だな。『波紋』は機械相手に使えないからよォこん畜生め!」

 

 

ジョジョは倒れた機械の装甲を軽く叩くと手に持つ機械を眺める。

他の受験生はジョジョが電気を使ったと考えたがジョジョが使えるのは『波紋』。機械には効果がなくあくまで『波紋』とは性質上電気に近い何かであるが、電気そのものではない。ではどうやって敵を倒したのか……それを成したのはジョジョが対人戦で持ち込もうとしていた武器、スタンガン。それも対機械用にスタート前に軽く改造を施したものであり、それが仮想敵を中から焦がしたのである。

 

 

「のんびりしてる暇はねぇな。この調子で次の奴も……」

 

『……』

 

「……ワーオ、いつの間に……」

 

 

次の敵を探そうとジョジョが振り返るとそこにあったのはビルを挟んで広がる道路の光景ではなく、緑一色の鉄の塊……仮想敵が正に目と鼻の先にあった。

敵は機銃のようなものの砲口だけジョジョに向け無言を貫いている。

 

 

「あーその~……ハ、ハロー?」

 

『標的ハッケン、ハッシャ!!』

 

「オ―ッノー!!」

 

 

「速攻突っ込んで、速攻撤退したな」

「忙しい奴だな……」

 

 

機械から音声が出されるとともにジョジョは発射される銃弾を背に一目散に来た道を駆け戻る。

その様子は他の受験生だけに限らず試験を見る者皆に道化のような存在だと感じさせたのだった。

 

 

 

 

 

「いててて……ゴム弾とはいえ結構痛いなオイ。痣になってら」

 

 

路地裏へと一時撤退したジョジョは路地裏に潜んでいた1P敵を一体一体倒していきながら他の通りへ向かって走る。

そんな中改めて手持ちの道具を確認し、戦法を考えていた。

 

 

 

「あれが恐らく2P敵……とすると3Pはより面倒だろう。ならスタンガンだけってわけにはいかねェな。何かリーチを補強出来るようなものを「キャーッ!!」――何だァ!?」

 

 

新たな武器が必要だと思考を凝らしていると通りから悲鳴が聞こえ、ジョジョは突然の悲鳴に驚きながらもその声の下へと駆け出していく。

暗闇の中を抜け、陽の光の下へ出たジョジョが見たのは複数の敵に壁へと追い込まれ腰を抜かしてしまっている少女と少女を守ろうとその間に立つ黒髪の男がいた。

 

 

「あ、あぁ……」

 

「落ち着け! 俺がアンタを守ってやるからよ!」

 

『ハッシャ!!』

 

「オイ、危ねぇ!!」

 

「うおおおおお!!」

 

 

敵から発射された弾丸の雨が少年と少女を襲う。

いくらゴム弾とはいえその痛みはかなりのものだ、普通の人間ならここで咄嗟に回避行動をとってしまうだろう。

けれどジョジョの声に合わせるように少女の前にかばうように立った少年は弾丸に対しあろうことかボクシングガードのように腕で少女の盾となったのだ。肌は角ばった形となり大きな痣を残すであろう弾丸はその変化した皮膚に当たると軌道をずらし少女一人を避けるよう背後の壁へと飛んでいった。

 

 

「な、なんてタフな奴……」

 

『弾切れ、リロードシマス』

 

「大丈夫ですか!?」

 

「ハァ……ハァ……問題ねぇぜ。俺は()()からよ。ただこのままだとハチの巣になるだけっぽいんだけど……立てそうか?」

 

 

少年は息を荒げながらも背後にぺたりと座り込む少女に向け声をかける。

鎧は強靭といえどそこには疲労の色が少し見えた。

 

 

「すみません……まだ腰が抜けてて動けそうにないです…」

 

『リロード完了、ハッシャ準備』

 

「これで3度目だが仕方ねぇ。俺の鎧が砕けるのが先か、てめぇの弾が完全に切れるのが先か……やってやろうじゃねぇか!!」

 

「その必要はないぜ!」

 

 

敵が弾倉補充した銃口を赤髪の少年に向け、少年もそれに対し身構える。

それと同じくして少女を庇う少年の前にジョジョが飛び出したのだ。

 

 

「おい危ねぇぞ! 俺の後ろに隠れとけ!」

 

「心配すんな!俺がまとめて守ってやるからよォ!」

 

『ターゲット捕捉、ハッシャ!!』

 

 

機械音声の合図に合わせジョジョの目の前に並ぶ3台の2P敵の銃口から無数の弾丸が雪崩のように発射される。

それに合わせてジョジョは自らの髪の毛を抜き、それを宙へとばらまく。

一見血迷ったかのように見える光景だが宙に投げられた髪は地に落ちることなく、光を放ち銃弾を遮る壁となったのだ。針金のように一本一本がまっすぐ伸びた髪は信じられないことに銃弾をはじいていく。

 

 

「名付けて『波紋ヘアーバリアー』!! 俺の潤った髪の毛は水分たっぷりだから波紋は良く通る。弾丸だろうが防いでみせるぜェ!」

 

「やるじゃねぇか! よっし……お前が盾になってくれるなら俺は”矛”になってやる!」

 

 

全ての銃口がジョジョへと向けられていることから赤髪の少年は横に大きく飛び出し、機械の側面から硬化した腕を何度も叩きつける。

打撃の猛攻により敵はバランスを崩し、何度も叩きつけられたことで敵の本体から分離した銃は地で一人でに踊りそこから撃たれる弾丸は四方八方へ飛んでいく。

 

 

『バランサー、故障、ターゲットロスト』

 

「黒髪ィ! そいつの銃使って他の奴を撃ちまくれ!」

 

「おうよ!」

 

 

ジョジョの言葉に黒髪の少年は頷くと地で暴れる銃を掴み上げ、弾丸を残る2体に向け発射する。

 

 

「おおおおお!!」

 

『ガ、ガガガガ』

 

「電流を食らって大人しくやがれェ!!」

 

 

故障によりリミッターが外れたその銃撃で仮想敵の装甲は剥がれ、丸見えとなった精密部分に向けて飛び出したジョジョがスタンガンをぶつけたことで沈黙し、銃がもがれた残る一体も赤髪の少年によりその場を動かなくなった。

 

 

「ふぅ~疲れたぜ……」

 

「助かったぜ、お前中々やるな! 髪の毛を操る個性か?」

 

「うーん、まぁそんなトコ。……結構髪の毛抜いちまったからハゲねーか心配だぜ。ここは…ハゲてねーよなうん。ここは……」

 

 

建物に張られた銃弾によりひび割れたガラスを見ながら自身の髪をいじり、一喜一憂するジョジョの姿に赤髪の少年は変な奴と思いながらも笑みを浮かべる。

 

 

「あのー……」

 

「お、もう大丈夫なのか? 」

 

「ええ、おかげさまで怪我無く。ありがとうございました!」

 

 

少女は何度も頭を下げるとぴゅうと吹く風のように颯爽と走り去っていった。

 

 

「もっと感謝してくれていいのによォ~。こちとら身体張ったんだだぜ。なぁ……その、黒髪クン?」

 

「切島だ。それもしょうがないさ、これはあくまで試験で時間制限があるからな。」

 

「オ―ッノー! 時間のこと完ッ全に忘れてた!」

 

 

ジョジョは慌てて腕につけた時計に目を向ける。

時計の針は試験開始から10分近く過ぎたところを指していた。

 

 

「試験開始から10分、試験時間は30分……ってことはもう3分の1経過してんのかよ! 切島、お前何ポイント稼いだ!?」

 

「数え間違いしてなきゃ13ポイントくらいだと思うぜ。他の奴らはもっとポイント稼いでるだろうし、ここで結構時間使っちまった分気張ってかないとな」

 

「13!? こちとらまだ片手とちょっとくらいしか稼いでないっていうのによォ! あの情報屋絶対許さねェ!」

 

 

今置かれている状況にジョジョは頭を抱え叫ぶと、情報屋への怒りを持ちながらその怒りをぶつけようと新たな標的のもとへ駆ける……ことはなくそれと真反対の方向へ進んでいく。

標的がいるであろう方向ではなく先ほど沈黙し鉄の塊となった仮想敵の下へジョジョは駆け寄ると吹き飛んだ破片などを用いて機械の装甲を取り外していった。

 

 

「何やってんだ? 倒した奴いじったってもうポイントは入らないし意味ないだろ?」

 

「いや、大いに意味はあるぜ。このジョジョが試験を突破して雄英に入学するためにはな!」

 

「そうかい。にしてもアンタジョジョって言うのか? 変わった名前だな。見た感じ外人さんっぽいけど海外ってそんな名前もあるんだな」

 

「所謂ニックネームって奴よ。お前は苗字、俺はニックネームでお互いにフルネームは知らねェ。自己紹介はお互いが受かったその時にでもゆっくりとしようぜ。終了のチャイムは刻々と近づいているからよォ」

 

「……確かに悠長に話す時間はねぇか。……うっし、また会おうぜジョジョ!」

 

 

切島はジョジョに別れを告げるとその場を立ち去り、その場に残るはジョジョ一人。

ジョジョの手元には持ち込んだスタンガンや糸などの道具、機械の装甲が地に並べられていた。

 

 

「残るは20分……こいつらを使って挽回してやらァ!」

 

地の文におけるジョセフの名前

  • ジョセフ
  • ジョジョ
  • jojo
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