刻むぜ波紋のビートッ!!   作:ベリアロク

4 / 10
1話の量が多く更新が遅くなってしまいますね……
余計な文章が多いのでしょうか。


第4話 雄英入試 その3

全国でもトップレベルの偏差値を誇る雄英高校。

数多の受験生が挑む入学を賭けた実技試験も制限時間の半分が経とうとしていた。

 

 

「これで……11P!」

 

「なんの! こちとら13よ!」

 

「くそッ、負けてられるか!」

 

 

受験生らは競い合いながら敵を倒し、着実にポイントを稼いでいく。

最初は手こずっていた者も多かったが、流石雄英受験生15分も経過しそうな今では倒すのにかかる時間は大幅に減ったのだろう。通りにはもの言わぬ鉄の塊となった仮想敵の残骸があちらこちらに転がっていた。

 

 

(やれる、やれるぞ!)

 

(このままならいける! あの雄英に入れるんだ! ……このままなら)

 

 

敵を倒すことにも慣れ、心の中にわずかばかりの余裕と受験に受かるという闘志を秘めた彼らには二つばかり、不安に思うことがあった。

一つはお邪魔虫として配置された0P敵。試験開始から時は経ったのに未だその姿は見えていない。試験説明においても「戦うのは不合理の極み」とまで称されたものである以上接敵は避けたく、高ポイント敵ほど強靭なこの試験において”0P”を持つ敵は果たしてどれだけの強さなのか、1Pより弱いのか……それとも規格外の強さなのかという不安があった。

そしてもう一つ。彼らが持っていた不安……それはある男の姿が見えないことだった。

いち早く敵を倒し、いち早く敵から逃げた男。その男の存在、行動で多くの受験生が想定していたプランは砂の城のように崩れされたのだ。

 

 

(また、アイツが来たら……)

 

(ノリに乗ったこの状態を崩されたらたまらねェよ!)

 

(勘弁してくれェ……)

 

 

試験とはいかに自分のペースを掴み、発揮できるかが肝。普通の筆記のように決められた数の問題を解く試験とは異なり、どれだけ倒せるかが問われるこの試験においてはこと重要であると言えるだろう。

だからこそその場にいる受験生は皆願った! 『神よ、どうかあの男をこの場に寄せ付けないでください』と。

だが試験において神は皆に対し平等、そして何よりその男の手綱は神にも握ることは出来ないのだ。

 

 

『ハッシャ用意。』

 

「2P敵か、俺が倒して……なんだ?」

 

「金属を地に擦り付けたり離したりするようなこの音は一体……?」

 

 

突如通りに反響するその音に受験生はおろか、仮想敵までもが周囲を見渡す。

反響のためかどこからの音か皆わからなかったが次第にその音はこちらに近づき、大きくなっていき反響も意味を為さないほどの音を捉えた者は皆その音の先に顔を向ける。

そこにあったのは仮想敵のボディを成す装甲の一部が地を滑るように動いている姿だった。

そしてその裏には大きな鉄板でも隠し切れていないピョコっと飛び出した髪の毛。その髪一つで彼らの大半は顔の血の気が引き、青ざめたという。

 

 

「あの髪……まさか!?」

 

「どいたどいたァ! この鉄板と銃弾のサンドウィッチになりたくなかったらなァ!!」

 

「「「あいつだァーーー!?」」」

 

『ハッシャ!!』

 

 

自走するかのように見える鉄板に気を取られた受験生はハッシャの音声を聞き、咄嗟に横に飛び出し射線を避ける。そして仮想敵から放たれた弾丸はその直線上にいたその鉄板へと向かっていく。けれどその鉄板はたらいにスーパーボールをぶつけたかのような軽い音を出すのみで打ち出された弾丸を受け流した。

 

 

「さっすが天下の雄英! 走りながら持ててしまうこの軽さでこの防御力とは大したモンだぜ!」

 

『弾切れ、リロードシマス』

 

「悪いが隙は与えないぜ!」

 

 

ジョジョは走りながら鉄板をボウリングのように地の上を滑らせると2P敵目掛け飛び上がる。

そこで彼が手にしていたのは先ほどのスタンガンではなく、先ほどと同じような緑色をした鉄板を継ぎ接ぎした斧のような何かだった。

 

 

「うおォォッ!! 食らえッ!!」

 

 

波紋により身体能力を底上げしたジョジョの振りかざした斧は2P敵の装甲をメキメキと音を立てながら大きくへこませ、同時にその衝撃は内部まで達したか仮想敵は数秒身体をジタバタさせるとその場で動きを止めた。

 

 

「い、一発……」

 

「俺らどれだけ早くとも2、3分はかかるってのに……」

 

 

「ふぃ~……ここに来るまで何体か倒してきたが即席にしては中々上出来じゃあないの? 倒した敵の残骸を持ってきた瞬間接着剤やらで固定して、最後に糸で縛って作ったこの即席斧。見た目はちと不格好だが威力は悪くねェな。何より素材が良かったってのが幸運だったぜ。」

 

 

ジョジョは先ほど地を滑らせた鉄板を拾い上げると両手に持つ矛と盾を眺める。

どちらも切島との共闘の際倒した敵から回収した残骸で作ったものであり、これを使いジョジョは先ほどの倍以上のポイントを得ていた。

仮に並みの学校でこのような試験が行われてた場合、機械の素材はどれも重くジョジョは扱いきれなかっただろう。

だがここは雄英、優秀な生徒を求めるためその壁である仮想敵もより軽快な動きを、より強固な身体を持たなくてはならない。それ故軽量で頑丈な装甲を用いており、その素材と”個性”そのものを揺らぎない武器として考えがちなこの世界において「敵の装備を自らの武器に変える」というジョジョの発想力が新たな展開を生み出したのだ。

尚、その装甲の製造にスピードワゴン財団が関わっているのは言うまでもない。

 

 

『標的ロックオン、ハッシャ準備』

 

「何でかは知らねぇがここは敵がわんさかいやがるなァ!」

 

 

ジョジョの突然の登場に多くの受験生が動きを止めたため通りに居る仮想敵の標的がジョジョに集中し銃口は向けられ、何体かはジョジョに向け突っ込んでいく。

 

 

『ブッコロス!!』

 

「いいぜ! 纏めて相手にしてやらァ!!」

 

 

ジョジョは近づいてきた一体に向け飛び上がり斧を振り下ろし破壊すると、まるで棒高跳びかのように斧を振り下ろした勢いを使ってまた飛び上がり次の標的に向け再び斧を振り下ろす。

ジョジョの身体能力だからこそ為せる技であり、その様子はまるで空を走る車輪のようであった。

 

 

『ガ、ガガガガ……』

 

「へへへ、ポイントボロ儲けよォ!」

 

 

「お、俺らが戦ってたやつらが……」

 

「またアイツのせいでよォ……」

 

 

「な~んか嫌な視線を感じるんだが、まぁいいか。それより今は敵を倒すこと優先だぜ!」

 

 

周囲の目線を気にすることなくジョジョは次の標的目掛け走り出す。

通りに敵が集まっていたのは他の受験生が路地裏など狭い場所で邂逅した敵と開けた場所で戦おうと考え、通りに移動したからであり、他の受験生が誘導したその敵たちをまとめてかっさらったということにジョジョは気づいていなかった。

 

 

「見てる場合か! もう残り時間10分もねェぞ!」

 

「そう……だな」

 

 

とある受験生の声にジョジョが敵を破壊していく様を傍観していた数人が応じ、走り出そうとするもすぐに走るのを止め、その場に再度立ち止まった。

 

 

「オイオイ、今度はどうしたって言うんだよ!」

 

「いや……何か揺れてないか? 地震か?」

 

 

今に限ってそんなことないだろと少年が笑い飛ばそうとする。

けれど視界の隅に映った標識は揺れ、窓ガラスがガタガタと揺れだし何かが起きていることは間違いなかった。

 

 

「よぉし、結構稼いだろ。この斧もそろそろ限界そうだ――」

 

 

ジョジョが攻撃の手を一旦止め、一息ついた瞬間爆音と鳴り響き砂煙が立ち込める。

 

 

「うぉぉぉぉ!?」

 

「何だよ一体!?」

 

「誰かの個性か!? 威力高すぎだろ!」

 

 

会場にいる誰もが叩きつけるような風と砂に目を手で覆いながら叫ぶ。

やがて立ち込めていた砂煙は晴れ、吹き付けるような風は止んだ。

風が止んだことを肌で感じ受験生らが目を開くと、そこにあったのは一人の学生の仕業だったほうが良かったと思える程巨大な、自分たちがアリみたいなちっぽけな存在にでもなったかと錯覚してしまうほどの圧倒的スケール誇る緑色の装甲を持つ仮想敵が山のようにそびえ立っていた。

 

 

 

「おいおい……」

 

「デカ過ぎるだろ……」

 

 

通りを封鎖し、周りの建物の高さも優に超えるその敵に受験生らは思わず後退る。

彼らが気付いたことは二つ。一つはこの存在こそお邪魔虫として配置された0P敵であるということ。そしても一つは奴には絶対に勝てないという恐怖や本能からの確信であった。その想いは今までの奴らが玩具であったと感じてしまうほど圧倒的なものだった。

 

 

 

『――――』

 

「やべぇこっち来てるッ!?」

 

「逃げろォォ!!」

 

 

その巨大な仮想敵は他の敵とは異なり何も言葉を発さず鈍重な動きを見せる。けれどその一歩一歩の動きだけで地響きが起こり窓は割れ、それを身で感じ見た受験生らは一斉に敵とは真反対の方向へと走り出していく。

 

 

「ワーオ、結構ヤバそうなの出てきたな。ま、でもあの遅さなら大した問題にはならないだろうよ。時間もあと少しだし、ここは逃げ一択だぜ」

 

 

 

他の受験生らがこちらへと向かってくるその様子をジョジョは眺めると、自らも他の敵を探そうと巨大敵とは異なる方へ身体を向けようとする。

だがその時、OP敵から逃げ惑う彼らの姿が映る視界の片隅に地に座ったまま動かない人の影が映る。

ごく一瞬、まさにコンマ何秒とも言えるわずかな時間だったがジョジョはそれを見逃さず、気づけばジョジョの身体は自然と巨大敵に向けて走り出していた。

 

 

「クソッ、間に合えェェェェ!!」

 

 

目の前の巨大な敵は鈍い駆動音を立てながら周辺の建物の2倍はあろう巨腕を振りかぶる。

そんな様子を見ても地に座る金髪の少年は身動きひとつ取ろうとせず、ただガクガクと身を震わせていた。

 

 

『――――』

 

「ウェ、ウェーイ!!!???」

 

「うおおおおお!!」

 

 

地を削りながら繰り出される敵のアッパーのような攻撃が金髪の少年に直撃すると思われた正にその時、ジョジョがその身を犠牲に少年を突き飛ばした。

 

 

「――ウェ…」

 

「うわああッ!?」

 

 

0P敵の薙ぎ払いは風を生み、その風圧で建物の窓を割りながら繰り出された一撃は咄嗟にガードの姿勢をとったジョジョの身体を野球のボールかのように軽々と吹き飛ばした。

 

 

「ぎぎぎ……何とか着地の体勢をッ!」

 

 

住宅なんぞより高い空中をきりもみ上で飛ぶジョジョは揺さぶられる衝撃から意識を手放しかけるもいつかは地に落ちるこの身を守るため姿勢を整えようとする。

けれどあまりの勢いと衝撃に身体は彼の意思に沿おうとせず、錆びついたように動かない。

そして空の青と地の灰色に切り替わる視界も回転の勢いが弱まるにつれ次第に青は遠ざかり灰がどんどんと近づいているのが揺さぶられる視界の中でもジョジョにははっきりわかった。

 

 

「まずいッ! 地面にッ、ぶつかるゥーー!!」

 

「ジョジョ!」

 

 

ジョジョは誰かに抱えられた感覚を感じながら服と肌を削りながら地を滑る。

相当の衝撃を覚悟したジョジョだったが思ったほどのダメージは無く、重い瞼をゆっくり開くとジョジョの身体は切島に抱えられていた。

 

 

「切…島か?」

 

「おうよ、大丈夫か? ぶっ飛んでるお前見て飛び出したけど何とか間に合ったな」

 

「ちーとばかし腕と足が痛ぇが問題ねェ。全くナイスだぜ……あのままだと顔面からグシャッとなってただろうしよォ」

 

 

ジョジョは切島の下から立ち上がると自分を飛ばした存在の方へと目を向ける。

その巨大な存在は鈍足ながらも大通りの一本道を進行しこちらへと向かってきており、建物は崩れ地下水が溢れていた。

どうやらアレはその場に鎮座し、障害物となるわけではなく逃げる者を追う敵として設定されてるらしい。

 

 

『残り5分!!』

 

「さて、どうしたもんかね……」

 

「おーーーい!!」

 

 

これからの動きをジョジョが俯きながら考えていると巨大敵の方から人の声が聞こえる。

巨大敵がいる前方から声がしたことに驚き顔を見上げると、ジョジョが先ほど助けた金髪の少年が大きく腕を振りながらこちらへと駆け寄ってきていた。

 

 

「お前は……さっきの奴!」

 

「はぁ……はぁ……、さっきは助かったぜ! 電気の使い過ぎで馬鹿になってたからさ」

 

「なーんだ、敵にビビり散らかして腰抜かしてたわけじゃないのね」

 

「ビ、ビビってねぇよ!」

 

「お前ら……今試験ちゅ「助けてくれェー!!」」

 

 

ジョジョと金髪の少年の危機感の無いやり取りに切島は呆れていると突然助けを求める悲痛な声が通りに響く。

その声のした方にジョジョらは目を向けると巨大敵から数十メートル程手前で瓦礫の下敷きになっている老人が血を流しながらこちらを見ていた。

 

 

「何でこんなところに爺さんがいるんだ!?」

 

「知らねぇよ、けど……ここで動かねきゃヒーローじゃあねぇよなァ!」

 

 

ここに老人がいる理由がアクシデントであろうと故意のものであろうと。

ジョジョの言葉に切島は頷くと二人はほぼ同時に地を蹴り100以上離れた巨大敵に向かい駆けていく。

巨大敵は顔を一切地に向けることなく牛歩で進んでいるもあと数歩で老人との距離は埋まってしまいそうだった。

 

 

「で、どうするジョジョ? 引っ張り出すには時間がかかるだろうし何か策はあるか?」

 

「うーん……」

 

ジョジョは切島と共に全速力で駆けながら脳みそをフル回転させる。

ジョジョの個性は”波紋”、切島の個性は”硬化”。どちらも奴を破壊することはおろか、老人を救出するための十分な時間を作ることは不可能だろう。

加えて武器は先ほど吹き飛ばされた際に破壊されてしまい、動きを止める罠を張ろうにも時間もそのための道具も紛失したという二重苦に陥っていた。

 

 

「スタンガンが残ってれば何とかなったかもしれねぇが……」

 

(何か……あと1ピース、決定打となる何かが……)

 

「おーい!! 待ってくれよ!」

 

 

巨大敵まで後二、三十メートルほどとなり最悪無理やり瓦礫を吹き飛ばしてでも救助するかと考えていたその時、背後から声を掛けられる。

振り返ると先ほどの金髪の少年が息を荒げながら走っていた。

そしてその少年の顔を見た時、ジョジョの脳内にある言葉が浮かぶ。

それは少年が口にした『電気』をその身の力で使ったととれる発言だった。

 

 

「おい金髪! お前電気使えるか!? 使えるんだよなァ!?」

 

「お、おう。使えるけ「よし、切島! 足止め頼む!」」

 

 

ジョジョの言葉に切島は二カッと笑うと迷い問いただすこともせず、もう一段ギアを上げて巨大敵の目の前に立つとゆっくりと動く足を前に大きく深呼吸をする。

 

 

「俺が止められるのは恐らく一瞬だ! 頼んだぜ!」

 

「任せとけ!!」

 

「ねぇ俺は? 何もわからないんだけど!!」

 

「お前はトリだ! マックスの電気出せるよう準備しとけ!」

 

 

金髪の少年にそう言い残すとジョジョは歩道の柵を勢いよく乗り越え、建物傍に設置されたあるものへと近寄る。

その設置されたものとは『送水口』。消防のために設置基準が設けられており、それが機能していることは巨大敵の進行によりあふれ出ていた水からジョジョには既にわかっていた。

 

 

『――――!!』

 

「くるぞぉぉぉぉ!!」

 

「うぉぉぉぉ!! 波紋!!

 

 

巨大敵が駆動音を上げながら切島を踏みつぶそうと振り上げた足を振り下ろす。

それに合わせてジョジョは送水口を破壊し、噴水のように飛び出す水を波紋で操り濁流のように浴びせていく。

 

 

「ぐ、ぐがががががッ!!」

 

「いけェ金髪!!」

 

「行くぜ必殺! 人間……スタンガン!!

 

 

金髪の少年は電気をその身に纏いながら身体を巨大敵に思い切りぶつける。

彼の全力を賭しての電撃は敵の表面を流れる水とその表面の金属に良く伝導し、まるでその場に雷が落ちたかのように明暗を繰り返しスパークを放った。

 

 

「これで……ッ」

 

「終われッ!!」

 

 

切島は金属を、ジョジョはその表面を流れる放水されている水に触れているために電気を食らい続けながらも必死に意識を保ち己が役割を全うしようとする。

そして電撃が止むと巨大敵は黒い煙を上げ背から倒れ、同時にジョジョらもその場に倒れこんだ。

 

 

「ウェ、ウェーーイ……」

 

「もう動けねぇ……」

 

「終わった……のか?」

 

『試験ッ終了ーーッ!!』

 

 

事の顛末を見届けようと顔だけは起き上がっていようとした彼らであったが、試験終了の合図に緊張の糸が途切れたか皆その場で気を失ったのだった。

 

 

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