刻むぜ波紋のビートッ!!   作:ベリアロク

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かなり間が空いたけど許して……


第9話 ジョースターの過去

前代未聞の入学初日除籍の危機から1夜明けた翌日の学校では至って普通の授業が行われており、既に終了のチャイムを迎えていた。

 

 

「チャイムか……仕方ない、授業はここまで。よく復習して定着させておくように」

 

「「「疲れたぁ……」」」

 

「流石は雄英、授業スピードも最高峰だ! 5時限目も集中できるよう皆英気を養おう!」

 

「おー……この調子だとうちヤバそう~ デク君は?」

 

「何とかついていけてる……かな。板書だけじゃなく先生の話も良く聞くようにしないと」

 

「お前らすげーな……俺なんか話す余裕すらないぜ……」

 

 

教員が教壇を降り教室を後にすると同時に生徒らの緊張の糸が途切れ、口々に言葉を漏らし静かだった教室が学生相応のざわめきを取り戻した。扱う内容は初日ということもあり中学の範囲のものが多く、その点については余裕があったものの昨日の除籍勧告が尾を引いただけでなく、雄英教師陣にも強面がいたりしたことが原因である。授業の愚痴をこぼすものもいれば、意気消沈する者もおり彼らの様子は様々だった。

 

 

「ふぁぁぁ……やーっと昼休みだぜ。雄英の授業ってのも案外普通なんだなぁ……」

 

 

けれどそんな中でもこの男は一人あくびをかましていた。天下の雄英に入学できるのは優秀な生徒のみであるから過去に初日の授業から見るからに退屈な様子を見せる生徒など過去にはいないことだろう。そんな雄英初とも言える男が眠気から半開きになっている瞼を擦っていると耳郎がジョジョの机の前までやってきていた。

 

 

「ご飯行こうよジョジョ! 1年生今日からだし、食堂使えるの」

 

「そういやそうか……切島と上鳴はどうする? 一緒に来るか?」

 

「ちーとばかし頭休ませてから行くわ! すまん!」

 

「俺もー……受験の後勉強しなさ過ぎたぜ……」

 

「わかった、それじゃ後でな」

 

((あいつらなんで余裕そうなんだ……))

 

 

机に倒れ伏す二人の視線など気にせず、二人は立ち上がり教室の扉を開ける。多くの生徒が在籍する雄英高校には生徒数に対応できるよう設置された食堂が存在し、三ツ星ホテルに勝るとも劣らない食事を安価で頂けると話題である。入学式も無事に終えた彼らは無事雄英高校の一員となったことで本日から使用許可が下されたというわけだ。

 

 

「何あるんだろ……噂だとホテルレベルっていうからやっぱステーキとかそういう感じのなのかな?」

 

「幾らホテルレベルって言ったって学食だぜ? こういうのは何でもあるもんだろ。それこそファミレスみたいに―――「あの!」……ん?」

 

 

いざ食堂へ行かんとするところを背後からの小さな声に呼び止められる。

振り返ると髪を後ろで一束ねにした長身の女子が少し不安げな表情を浮かべて立っていた。

 

 

「アンタ確か……八百万だったよな」

 

「お名前覚えていただけたようで光栄ですわ、ジョセフ・ジョースターさん」

 

「へぇー、まだ会って数日しか経ってないのにジョジョが人の名前覚えてるなんて……気でもあるの?」

 

「気……? 私昔から皆様の会話についていけないことが多く……よろしければ耳郎さん、教えていただけませんか?」

 

「いいよー、今言った場合の気っていうのは……」

 

「オイやめろバカ! 俺が会って数日の奴をすーぐ好きになるような薄っぺらい奴だと思われちまうじゃあねぇか!」

 

 

生徒の多くは既に食堂へと向かい、あらゆる個性に対応する広々とした廊下で二人は睨み合う。

 

 

「あ……あの……」

 

「あ、ごめんね八百万さん! このバカは無視していいから!」

 

「てめェ……誰が馬鹿だってェ!?」

 

「誰ってアンタ以外いないでしょうが! わからないなら今までの馬鹿エピソード晒してあげようか!」

 

「いいぜ、やってみろよ! そんなエピソードねェからな!」

 

「む……!」

 

「むむむ……!」

 

「……その、やっぱりお邪魔なのでしょうか」

 

「「あ……」」

 

 

二人の目線がぶつかり合い、その間に火花が散るも八百万の言葉に二人はハッとし、我を取り戻す。

 

 

「本当にごめん! 別に八百万が邪魔とかじゃなくてね……ほらアンタも謝って!」

 

「痛って!? なんか釈然としねぇが……悪かったよ八百万」

 

「いえいえ……お二人はとても仲がよろしいのですね、羨ましいですわ」

 

「「仲良くないわ!!」」

 

「フフッ……そういうことにしておきますわ」

 

 

二人が顔を赤らめ、その姿を見て一人がクスクスと笑う。八百万の顔にはもう不安げな表情は浮かんでいなかった。

 

 

「それで何か用があるんだっけ?」

 

「ええ、昼食をご一緒出来ればと思っていたのです。お昼休みもそれほど長くありませんから」

 

 

 

砕けた表情となった八百万が腕に付けた時計の方へ目をやる。その時計の針は既に昼休みが4分の1が経過していることを示していた。

 

 

「……よろしいでしょうか?」

 

「大歓迎だよ! ねぇジョジョ?」

 

「勿論だぜ! 食事ってのは皆で駄弁りながら食うのが一番だからな」

 

「ありがとうございます! お恥ずかしい話まだお友達が出来ておらず……」

 

「まだ2日目でしょ? 出来ないのが普通だって! それより早く食堂行こう!」

 

 

3人は駆け足で食堂へと向かっていく。やや時間を要してたどり着いたのは食堂というにはやけに大きく、体育館と見間違えるほどの奥行があり、大学や高速のSAと比較しても遜色ないほど様々な料理を美味しそうに食べる学生たちでにぎわう場所だった。

 

 

「すっごい……! ここが雄英の食堂なんだ!」

 

「食堂とはこのような場所なのですね……席に座ればウエイトレスさんが来てくれるのかしら」

 

「いや、見た感じ食券買って料理を受け取るタイプだな。ほらささっと買って食べようぜ」

 

「そうだね、時間もないし。これから混んだらやだし早いとこ注文しちゃおう」

 

 

3人は食券購入の列に並び各々の食べたいものの券を購入し、料理と引き換え席へと運んでいく。八百万は少々手こずった様子だったが何とか購入でき、3人とも同じ机を囲んで席に着いた。

 

 

「それじゃ改めて……私は耳郎響香。まぁ好きに呼んでよ」

 

「俺はジョセフ・ジョースター。昨日も言ってたとは思うがジョジョって呼んでくれ」

 

「八百万百と申します。3年間よろしくお願いいたしますわ」

 

「よし、自己紹介はここまでにして冷めないうちにご飯食べちゃおう!」

 

 

耳郎の言葉に二人は頷き、各々注文した食事を食べようと箸やフォークを手に取る。机に並ぶは和牛のステーキにバジルが程よくかけられたスパゲティ、形崩れの無い綺麗な生卵が乗せられた魚介丼でどの料理も香ばしい香りを漂わせ食欲をかき立たせていた。

 

 

「あーん……おいし~! ほら、やっぱり噂は本当だったじゃん!」

 

「確かにコイツぁオイピーぜ! 学食だって馬鹿にしたらバチが当たっちまうくらいにはなァ!」

 

 

ま、エリナおばあちゃんの料理には勝らないがな!……なんて考えながらスパゲティをくるめたフォークを口へと運ぶ。本人にその意識はないがおばあちゃんッ子であるジョジョにとってエリナの料理に勝るものはないのである。

 

 

「ヤオモモも早く食べな、おいしいよ!」

 

「では……」

 

 

八百万は少々ためらいを見せながらもスプーンを口へと運ぶ。

 

 

「どう、おいしいでしょ?」

 

「……確かに美味しいですわ!」

 

「でしょー! やっぱ―――「普段食べているものよりグレードは落ちますがこのお値段でこれほど美味しいとは……流石は雄英ですわね」

 

「……ん?」

 

 

それぞれが食した料理に舌鼓を打つ中、八百万の言葉に違和を感じ二人の口へ食事を運ぶ腕がピタリと止まる。

 

 

「? どうかされましたか? もしかして私何かお気に障るようなことを発してしまったのでしょうか?」

 

「別にそういうわけじゃないよ、全然! ただ『グレード』がどうこうって……もしかしてヤオモモの家って結構豪邸だったりする?」

 

「そうですね……豪邸かどうかはわかりませんが使用人の方なら屋敷に何人かいらっしゃいますわ」

 

「なるほどね、流石は雄英だ……」

 

 

「あなたのご親族……祖父か曾祖父に『ジョナサン』という名前の方はいらっしゃいませんか?」

 

「ジョナサンって……」

 

「ああ、俺の爺さん……祖父の名前だ」

 

「昔お父様から聞いたことがありますの。ジョースター家にまつわる因縁……そしてジョナサン・ジョースターについて」

 

「なんでお前が……いや、それはどうでもいい。話してくれ俺の爺さんのことを」

 

ジョナサンについてジョジョが持ちうる情報はほぼゼロと言っていい。一度エリナからどのような人だったかを聞くことが出来たのみでそれ以降はいくら聞いても語ってくれることは無かった。それはもう一人の家族であるスピードワゴンも同じであり、ジョジョは目標とする人の人物像のみしか知らないのである。それ故今のジョジョにあるのは突然祖父ジョナサンのことがたった今友人となった者から話題に上がったことによる驚きよりも話を詳しく聞きたいという欲求の方が勝っていた。

 

 

「わかりましたわ。ご存知だとは思いますが今から数十年前の世界はまだ個性による暴動などの混乱が跋扈する時代でした」

 

「…流石に誰でも知ってるよね」

 

「こっち見て言うな。流石に知ってるぜ、なんせ平和の象徴もいない敵全盛期だったって話だからな」

 

 

今から数十年前、個性というものが発現する以前は至って平和で戦争もない世界が地球にはあった。人間知恵あれど非力……けれど個性の発現という種としての進化により力まで手にしてしまったのだ。

 

 

「当時はまだ個性使用に関する法は整備されておらず、ヒーローという仕事も完全には確立していませんでした。対して夢のような力を手にしたものたちは己が欲望のために動き事件や事故は増していくばかり…」

 

「敵を縛るものは何もなく、人が欲望のままに生きるが故つけられたのが『敵全盛期』。映像を見たことあるが正に世紀末って感じだったぜ」

 

 

ジョジョは幼い頃スピードワゴン財団の施設に忍び込みとある映像を見たことを思い出す。その映像がジョジョに見せたのはかろうじて都市の面影は残り、文明としての形は保たれてはいたものの人々の争いによりそれまで確かにあった平和な暮らしなど微塵ものない光景がだった。女子供がいようといまいと次の瞬間には瓦礫の山に消える……そんな光景だった。

 

 

「ええ、当時の世界はどこも無法地帯でした。けれど闇あるところに光もまたあると言うようにジョースター家の人々は法もヒーローも今ほど整備されない中でも善良な人々のために立ち上がった、ジョナサンさんも立ち上がり巨悪と戦ったお一人だとお父様から聞いております」

 

「へぇ~、ジョジョのおじいさんってめっちゃくちゃロックな人じゃん! 敵全盛期を終焉へと導いた一人ってことはオールマイトとかとも一緒に戦ったりしたのかな?」

 

「どうでしょう……詳しくは聞かされていないので私には何とも……申し訳ございません」

 

「アンタが謝ることないさ、話聞かせてくれてありがとうよ」

 

 

申し訳なさそうにする八百万に感謝を告げ、皿に残った料理を一気に平らげる。八百万から伝えられた情報は決して多くはなかったがジョジョにとっては祖父のことを少しでも知れたことは僥倖だった。

 

 

「……うっし、ごちそうさん」

 

「一気に食べたねアンタ……何もそんな急いで食べなくても」

 

「ええ、他にもお友達としてお話したいことがいくつもあるのですが……」

 

「俺だってそうだけどよォ……ヤオモモ、アンタ自分の時計見てみた方がいいと思うぜ?」

 

「え?」

 

 

ジョジョに言われるままに八百万が腕に付けた時計に目をやる。時計が指し示すのは昼休み終了の時、すなわち今がもう授業開始5分前であることであり、ほぼ同時に食堂内にも授業開始5分前を知らせるチャイムが鳴り響いた。

雄英は自由が売りで、教師もまた然り……授業に遅刻でもすれば何が待っているかは検討もつかない。

 

 

「え……チャイムってやばくない!?」

 

「早く食べきりますわよ耳郎さん! 次の授業は相澤先生です、本当に除籍にさせられてしまうかも……」

 

「除籍はマズイって! ジョジョなんでアンタ時間無いって言わなかったんだよ!」

 

「俺だってさっき気づいてって痛ッ!? ムカつくからってプラグ刺してくんじゃねェよ! 普通に痛ェんだからな!」

 

「二人とも早くしないと授業が……」

 

 

八百万が声をかけるもいがみ合う二人の耳には届かない。そのまま数分はいがみ合い、授業には無事遅刻した3人は放課後長時間説教を受けるのだった。

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