急展開注意です!
8月15日、夕方...
徐々に太陽が沈み始めカラスが鳴き出す時間帯にホタカ達、メカクシ団一行は閉園時間を過ぎるまで遊び尽くしアジトに戻るためゆっくりと歩いていた。
「つ、疲れた...」
「でもそれ以上に楽しかったからいいじゃねぇか。久々の外出も満喫できたんじゃねぇか?」
「じょ、冗談じゃねぇよ。遊園地なんかもうこれっきりだ」
「.....このヒキニートが」
ホタカが冷めた目でシンタローを睨み溜息を一つ吐く。
久々の運動に今にも倒れそうなほどぐったりしているシンタローの背中でうつらうつらと舟を漕いでいるマリーがシンタローから更に体力を奪っていた。
「いやシンタロー君いいじゃないの!女の子をおんぶできる機会なんて今後一生訪れないかもしれないよ、冗談抜きで」
「最後の言葉はスルーするが代わってやってもいいんだぞ?」
「いやいや。ジャンケンで負けたシンタロー君にそんなこと言う権利あると思ってるの?」
「そうだぞ、要はお前が負けなければよかったんだ」
「お前ら絶対ワザと言ってるだろ!」
ニヤニヤとシンタローに向けて笑みを浮かべるホタカとカノはどこで意気投合したのかはわからないが妙に仲が良いように見られる。
隅っこの方で便乗してニヤニヤしているマミも彼らと同じくらいシンタローには嫌らしく映った。
「すまんなシンタロー、こいつときたら自分で舞い上がっておいて倒れるなんてな。おいマリー、シンタローも一応疲れてるんだ、ちょっとは歩いた方がいいんじゃないか?」
「うぅ、ね、眠い...もうちょっとだけ、セト〜」
「ハハハ、しょうがないッスね。マリーこっち来るッス!」
「わ、悪いなセト」
「ほーら!高い高ーい!」
「わーい!もっともっとー!」
「元気じゃねぇかよ!」
「子供か!」
「ホタカさん、私も...」
「.....冗談は口だけにしておけ」
何だかんだで元気なホタカ達は端から見れば年相応の子供らしく純粋に青春している姿に映っているだろう。
テロリストに立ち向かい撃退することができても、能力という世間一般から離れた特殊な力を宿していると言っても彼らはまだまだ子供である。笑って泣いて楽しんで悲しんで喜怒哀楽が最も表情に表すことのできる世代でもある。
ホタカとマミは彼らと出会ってまだ過ごした時間は少ないが最初僅かに芽生えていた敵対心や警戒心はすっかり無くなり彼らの中に溶け込んで共に笑いあっていることに気づかされる。
「おいエネ、どうしたんだ?珍しく静かじゃねぇか」
『なんでもありませんよ、ちょっと色々思い出していただけですよ。ご主人』
「色々??」
『まったく、ご主人が昔のことなんて聞くからですよ!」
「あれ?お前今昔のことって」
『だーかーらー!それは秘密なーんでーす!ホンット昔っからデリカシーないんですから!茶髪さんを見習ったらどうなんですか!』
「はぁ、んだよその言い方は!それに何でそこにハヤトが出てくるんだよ!」
「あれれ?もしかして喧嘩?仲がよろしいことですねぇ」
「違ッ、ニヤニヤんな!」
「どうせお兄ちゃんがまたエネちゃんに変なことでも聞いたんでしょ、いい加減懲りなよ」
「お前はなんでそんなに偉そうなんだよ!」
ギャーギャー騒ぐシンタロー達をホタカは少し離れた位置から見ていた、正確にはシンタローの携帯の中に住み着いているエネのことを。
「?どうしたホタカ?」
「いや、なんでもない」
キドがホタカに心配そうに話しかけるがホタカの表情は変わらず硬いままだった。
(.....榎本先輩。いや、エネさん)
※
数時間前...
「.....なんで俺らシューティングゲームやってんですか?」
『いや〜昔話をしたら久々にやってみたくなったんですよね。上手くハッキングできてよかったです」
「.....榎本先輩、さっきの話本当なんですか?」
『.....信じるも信じないも自由だけど今の私はエネ。間違ってもその名前は皆の前で言わないでよ』
画面の中の敵キャラが血飛沫を出して倒れる。
中々グロテスク表現のあるシューティングゲームでホタカとエネの好みでもあったのだが何故このようなスプラッタ系シューティングゲームが遊園地にあるのかはわからなかった。
『正直言えば私でも何が起こったのかまだ理解できていないの。あの時なんで先生が現れてコノハがいたのか、あれはどこだったのか』
「どうして俺に話したんですか?別にシンタローでもよかったんじゃないですか?」
『あいつはまだ立ち直ってないみたいだからね。これ以上重荷を背負わせたくなかったの』
「エネさん」
『ほらほらほらほら!油断してると一気に点差開いちゃいますよー!』
「なっ、ちょ、それ卑怯ッスよ!」
※
(まぁ、今が楽しいならそれでいいや)
ホタカはマミの頭に手をポンと置いてくしゃくしゃと撫で回す。
突然のことでマミはよくわからないと言った表情と何するんだこの変態野郎、と言った何とも言えない目でこちらを睨んできていた。
「あれ、あの人こっち見てない?」
「え?」
唐突にモモが車道を挟んだ歩道に一人の青年が立っていた。たしかに視線はこちらを向いているようにもホタカも感じ取れていた。
一言で青年のことを表すなら『黒』だった。
黒い髪に黒い服、黒いズボンに黒い靴と所々に黄色の模様が入っていた容姿の青年はズボンのポケットに両手を突っ込みながらこちらを凝視していた。
「もしかして私が見えてるとか?」
「いや、それはないはずだ。俺の目を隠す能力でキサラギの存在は極限まで薄めているからな」
「見るからに怪しそうな野郎だな」
「同感ですね」
ホタカとマミは無意識に警戒心を芽生えさせて黒い青年に軽蔑と敵意の眼を向ける。
すると...
「団長さん、あの人こっちに来てませんか!?」
「なっ...!?」
青年はニヤリと小さく笑みを浮かべて車道を堂々と歩きこちらに向かって来た。
『どうしましたご主...』
エネの言葉が途切れる、そして驚きで言葉が出ないといった表情を浮かべ、やっとのことで言葉を口に出す。
『コノ...ハ...なの?なんで...』
青年は車道を越えて何故かメカクシ団の行く手を阻むように立ち塞がる。
驚くほど自然でゆったりと迷いのない行動だった。
あまりに突然の登場だったため誰も彼もがその場を動くことも言葉を発することもできなかった。
「いやーすみませんねぇ!」
そんな中、カノが青年に謝罪するようにいつもの軽い調子で話しかける。
「なんか大勢で道塞いじゃったみたいで、邪魔でしたよね?すぐにどきますの」
「あぁ」
カノの言葉を遮り青年は初めて言葉を発する。
その表情は暗く冷たいモノだった。
「あの時の『欺く』の子か」
青年はゆったりとした調子で言葉を続ける。
カノは呆気に取られ返す言葉を失っていた。
「随分上手に扱えるようになったものだな...」
青年は笑った、笑顔ではなく狂気に満ちた狂笑。
その言葉が今の青年の表情を表すのに最も当てはまる言葉だろう。
カノはホタカ達に何か言おうとこちらを振り向くがそれがいけなかった。
決してカノは青年から目を離してはならなかった。カノの背後でガチャという金属音が小さく鳴る。
「君の大嫌いな傷がまた増えるね」
パァン、と決して鳴ってはならない音が鳴り響いた。
あまりに一瞬の出来事だったので目の前の現実を理解し行動することが遅れてしまった。
目の前に映るのは頭から血をボタボタと垂らすカノの姿、ホタカはその姿を見て目頭が熱くなるのを感じ取った。
「修哉ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
最初に動き出したのはキドだった、倒れたカノの体を支えて何度も何度も呼びかける。
「おい、しっかりしろ!修哉、嫌だ嫌だ、頼むから私の側から離れないでくれ、修哉!」
キドが何度も呼びかけるがカノが返事をすることはなかった。
キドの呼びかけも虚しくカノの両目は静かに閉ざされようとしていた。
『お母さん!』
『よろしくね、つぼみ、幸助』
『姉ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!』
「な、何だ?コレ??」
一瞬、遅れて動き出すセト達とは違いホタカはその場に両目を抑えてうずくまっていた。
ホタカの両目は真っ赤に染まっており能力が発動している状態だった。
ホタカの意思で発動したのではなく能力が発現した当初のように無意識に発動したと思われる。
パァン、と再び銃声が鳴り響く。
青年に向かって走り出したセトの脇腹が撃たれたようだ。
セトは脇腹を抑えながら興奮状態にあるためか目が真っ赤に染まり能力が発動しているのがわかる。
「なっ、お前は...」
セトが必死に言葉を繋ごうとするが接近してきた青年により髪を乱暴に掴まれ銃口を口に向けて黙らされる。
その後、無情にも三回目の銃声が鳴り響いた。
『お願い、何でもするから!はなこだけは助けて!』
『世界は案外、怖がらなくてもいいんだよ』
『.....兄弟なんだから』
「ま、た...だ...!」
再度ホタカの目に視界に映る別の何かが映る。
ホタカが顔を上げると青年はキドに拳銃を向けてニヤリと笑みを浮かべていた。
「ヒッ...!」
「キ、ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」
バァンバァンバァンバァンバァン!とホタカの叫びも虚しく五度の銃声が鳴り響いた。
『もう、嫌だ。消えたいよぉ』
『こ、怖くなんかないもん』
『俺が団長か?フッ、悪くないかもな』
再度ホタカの目にナニカが映るが目の痛みを抑えながら勢い良く立ち上がる。
ホタカの両目からは涙が流れていた。
「おぉ、おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「そうか、君が女王の希望か」
ホタカは勢い良く青年に飛びかかるが呆気なくかわされる。
ガチャリ、と向けられた拳銃に気がつくことができずに。
「次の世界では別の出会い方をしたいものだ」
バァンバァンバァン!と三回銃声が響き渡った。
「ホ、タカさん?」
マミはゆっくりと倒れたホタカに歩き寄った。
今の彼女の瞳に生気は感じられず絶望感に浸っている様子だった。
「マミちゃん、そっちはダメェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!」
モモがマミに叫ぶが手遅れだった。
既に青年はマミに向けて拳銃を構えていた。
(あぁ...)
マミは青年を見上げながら抑えていた涙を流し始めた。
(あの時も、こんな感じだったなぁ)
青年は口が裂けるくらいに狂笑する、とても嬉しそうに。
(あの時みたいにまた助けてよ、ホタカさん!)
マミの想いは届くことはなく、無情にも銃声は鳴り響きマミの頭を確実に撃ち抜いた。
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