というわけである程度構想練れたので、続きです
─蛇が囁きかけてくる。
『─ようこそ、我が胎内へ』
─蛇が囁きかけてくる。
『貴様には使命がある』
─蛇が囁きかけてくる。
『焼き付けるにはまだ早い。 貴様の役目は通すことだ』
─蛇が囁きかけてくる。
『一度だけでは足りぬ、何度でもだ。 この繰り返される日々が続く限り、貴様は目を通し続けるのだ』
─蛇が身体に馴染んでくる。
『俺も貴様の目を通る。 貴様はこの世界に目を通せ、それこそが貴様の積むべき善行である』
─蛇が目に通ってくる。
『目が冴える前に焼き付けろ、欺きながら盗め、隠しながら集めろ、合わせながらも凝らし続けろ、貴様は目をかける必要はない。 さぁ、目を覚ませ、目を醒ますのだ』
─蛇に言われるがまま目を開く。
『─それでいい、我が主よ。 貴様はそのままでいいのだ』
─瞬間、目を通す蛇が噛み付いてきた。
※
日が暮れた遊園地。
その近くで七人の若い男女の亡骸が発見される。
死因は銃殺。 即死の者もいれば、そうでない者もいる。
明らかな殺意を持って行われた犯行として捜査が進められることだろう。
第一発見者は不明。
しかし、警察に情報が行き届いているということは第一発見者、通報者もいることになる。
監視カメラの映像には一人の黒い青年が一人で銃を撃っている様子しか映っていなかった。
不可解な事件だが、この事件には始まりも終わりもない。
─その前に世界が巻き戻ったのだから。
8月15日は終わりを告げる。
そして、8月14日がまた訪れる。
※
8月14日の朝。
真夏の暑さが襲い来る一室で穂高颯斗は目を覚ます。
また妙な夢を見た気がする。
バスで行ける距離の遊園地で人が死ぬ夢だ、それはとても鮮明でまるで昨日の出来事のようだ。
もちろんそんなニュースは一切ない、この平和ボケした島国で拳銃が凶器に使われたとあれば、それだけでラジオもテレビも大騒ぎだ。
そして─
「.....女王」
無意識に口が動いた。
それが何を指しているのかはわからないが、ホタカは知っている。
矛盾した思考に頭がおかしくなりそうだった。
「あ、ホタカさん起きてましたか」
「マミ」
居候させてもらってる石橋家の一人娘舞美が人の部屋に遠慮なく入ってくる。
─とてもではないが、マミは女王ってガラではない。
「どうしたんですか? 朝ごはん、お母さんが作って置いてくれてますよ」
「いや、女王について考えてた。 朝ごはんはもらう」
「.....まだ寝惚けてます? 目がめっちゃ充血してますよ、超真っ赤なので先に顔洗ってきた方がいいんじゃないですか?」
「まじか」
─またか。
ホタカがマミの家にお世話になってから、目がよく充血するようになった。
三年前、銀行強盗の人質に取られてたマミをホタカが無謀にも助けた。
二人共、危険な状態で一回心臓止まったらしいが、奇跡的に回復できたというのが医者の話だ。
それからだ。
妙な夢、充血する目。
ホタカはこの現象のことを夢の中で囁かれる言葉を取って“能力”とひとまず呼んでいる。
「.....超真っ赤だ、カラコンしてるみてぇだ」
朝ごはんを食べ、簡単な家事を済ませ一段落したのが昼前。
丁度マミも暇していたのか、リビングでゴロゴロしている。
「マミ、今日暇?」
「暇ですよ、見ての通り」
動きが二段階くらい早くなった気がする。
「遊園地行かね?」
─端から見れば、これはデートということになるのだろう。
マミの動きも一瞬だが止まった。
「.....ホタカさん、熱、ないですよね?」
「失礼な奴だな!?」
※
近所だったからもしれない。
夏の暑さにとうとう頭がやられてしまったからなのかもしれない。
気になることがあったからかもしれない。
意味もなくホタカという男が遊園地に誘ってくるなんてことはない、とマミは勘繰っていた。
三年前、颯爽とマミのことを助けてくれたホタカは紛れもないヒーローである。 病院に運ばれてからの記憶はかなり曖昧だが、それでも助けてくれたことに変わりはない。
そんなマミにとっては憧れとも言えるホタカから遊園地に行こうと誘ってくれることがどれだけ嬉しいことか、隣を歩く朴念仁は気がついていないことだろう。
「珍しいですね、ホタカさんからデートのお誘いなんて」
「別にデートってわけじゃねぇよ。 ただ、ちょっと、そう、気分がそうだったんだ」
「.....思いつかないなら普通にデートでよくないっすか?」
頬を膨らませるマミに構わず、ホタカは前へ歩き続ける。
バスに乗り、バス停から降りてすぐのところに目的の遊園地はあった。 たしか、この辺りで人が殺されてたんだ。
「.....ホタカさん?」
なんでもない、と返す。
入場券を買い、まずはジェットコースターに乗ることにした。
ホタカ自身、何故ジェットコースターを選んだのかはわからない。 まるで何かを辿るようにして自然に選んでしまったとしか言えなかった。
「ホタカさん、ジェットコースターって叫んでもいい系のアトラクションでしたよね?」
「なんだよその質問」
順番が回ってきた。
今年の8月14日は暑いが、それでも人は多く来園していた。
「いやぁ、やっぱ静かに楽しみたい系のアトラクションもあるっていうか」
「お前、たしか遊園地初めてだっけ?」
「そうですけど、それがな─」
コースターがいつの間にか登りきっており、マミの言葉が途切れた。
登ってしまえば後に起こるアクションはただ一つ、勢いよく元の位置まで戻るだけだ。
「ほ、ほほほほほほほホタカさん!? なんなんですか、こんなモンスターマシンに乗るのが、一体! どこで! 楽しむんですか、一体!!?」
「落ち着けマミ、お前はもうジェットコースターに乗るべきじゃない」
「私、乗りたいなんて一言も言ってませんけど!!?」
「.....そうだったか?」
あれ、じゃあ誰が乗りたいって言ったんだ?とホタカは首を傾げる。
たしかに誰かがジェットコースターに乗りたいと言ったから、乗ったとホタカは思っていたのだ。
ジェットコースターの後、マミを休ませるためにベンチで休憩を取った。
そのあとは若干スプラッタなシューティングゲーム、氷の大迷宮、お化け屋敷人形館、マミに誘われて観覧車。
今は観覧車の中から夕焼け空を眺めている。
(.....それにしても、今日行った場所は全部一回、いや、もう何回も行ってる気がする)
不思議と初めてという感覚にはなれなかった。
目の前で嬉しそうに外を眺めるマミを見ながら、ホタカは頬が緩んでるのがわかる。
夢のことで気が重くなっていたのも事実、でもマミがそれ以上に楽しんでいたということがわかった。
それだけでホタカは十分である。
「そろそろ帰るか」
「そうですね」
観覧車を降り、遊園地の外へ向かい二人は歩く。
メリーゴーラウンドの近くを通りかかったとき、ホタカは見知った顔を発見する。 向かい合う形になったので、向こう側もこちらに気がついたようだ。
そいつは本来そこにいるやつではない。
こんなところに一人でやってくる奴じゃない。
「─シンタロー」
不登校になった中学時代の友人が目の前に立っていた。
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