さっきの突然の爆発のせいでデパートの警備システムが作動してしまいシャッターが次々と閉まってしまいホタカは七階に閉じ込められてしまう。
(連中に見つかったら終わりだな、とりあえずどこか隠れる場所...)
ホタカは男たちに見つからないように気配を殺して偶然近くにあった男子トイレに駆け込んだ。
意表を突いて女子トイレに逃げ込んでもよかったのだが、もし人がいた場合のことを考えるとホタカは女子トイレに入った変態というレッテルを貼られて社会的に死んでしまう上に後からマミに何を言われるのかもわからない。
やはりというか案の定男子トイレの中に人はいなかった、しかしもしものことを考えて洋式トイレの中ではなく清掃具入れの中に身を隠す。
もし男たちの中の誰かがやって来て洋式トイレの扉と鍵が閉まっていては不自然に思われて捕まってしまうだろう。しかし清掃具入れの中ならば仮に見つかったとしてもデッキブラシやバケツを駆使して人一人を気絶させることくらい訳はなかった。
ホタカはポケットからスマートフォンを取り出してインターネットを開く、情報を手に入れると同時に外の状況も把握しておきたかった。
やはりこのデパートで起こっていることは騒ぎになっており、ニュース速報としても取り上げられている。
「何々、午後一時現在犯人側の要求としては30分以内に十億円用意?出来なきゃ人質は殺す、か」
巨大なデパートの七階に立て籠もっている犯人の人質解放の条件にホタカは一言、簡潔に感想を述べた。
「.....こいつら馬鹿なの?」
捕まってしまっている人質諸君にはとても悪い気がするのだが、どうやら犯人は相当な馬鹿らしい。
何を思って十億円を要求したかは知らないが30分以内に用意など不可能である。
本当に失礼だがこんな頭の悪そうな連中の言うことを聞く警察も警察だと思う。仮に勝負を挑んだとしても負ける気は一切しなかった。
「さて、そろそろこの目で外の様子を確認しに行きますか」
ホタカは清掃具入れの扉を開けて外に出る、一応手は洗ってから男子トイレの外に行く。
(あそこか、結構遠いな)
犯人の数は目測として五人、一番体格がよくて奇抜なヘアースタイルの無精髭がリーダーだろう、非常に頭悪そうな雰囲気が出ていた。
どうやって飛び出そうか、とホタカが考えを巡らせているとポケットからマナーモードに設定しておいたスマートフォンがヴヴヴヴヴ、と振動する。マミからの電話だった。
「もしもし?」
『あ、ホタカさん!良かった繋がって、今どこにいるんですか?』
「七階、目の前にヤバそうな連中が見える位置」
『何でそんなに冷静でいられるのかはわかりませんが大丈夫なんですか!?ていうか七階って立て籠もり犯のいるフロアじゃないですか!?』
「そうだよ、何とか捕まらずにはいるが状況は緊迫している」
ホタカはそこまで視力がいい方ではないので障害物が妨げる中なので余計に視界が悪かった。更に先程の爆発によって発生した煙も少しではあるが立ちこもっているため視界自体が良好ではない。
「ま、警察が来れば何とかなるだろ。マミは先に帰っといてくれ」
『そういう訳にはいきませんよ、ホタカさんって私がいなくなった途端に無茶するんですから!それに一階も人が多くてとても外に出れる状況じゃありませんし』
それもそうだ、入り口付近には多くの警察が来ていることは先ほどの画像でもわかったし防災システムの作動が七階だけとは限らない。
それにまだ頼まれていたフライパンを買えていない。
「マミ、しばらく通話状態にしておこう。何か変わったことがあったら俺に知らせてくれ」
『でも、そんなことしたら犯人に気づかれるんじゃ...』
「大丈夫だ、片耳にイヤホンしておくしお前の声が聞けるだけでも十分俺の力になる」
『え、ちょ、それってどういう...』
「何だ、後半がゴニョゴニョしてて聞こえづらいんだが」
『ホタカさん今イヤホンしてるんですよね?爆音で砂嵐のノイズ音鳴らしてもいいですか?』
「地味な攻撃はやめてくれませんかマミさん。俺はまだ死にたくありませんので」
※
(結構あっさり近くまで来れたな)
商品棚の影を転々と移動したホタカは人質一人一人の顔を確認できる距離にまで近づいていた。
マミからは何の連絡もないところからまだ警察に目立った動きはないようだ。人質の数はかなり多く子供から老人までと年齢層の幅も広かった。
「痛ッ!」
「なんだ?」
突然、テロリストのリーダー格らしき男が頭を抑えて痛みに耐えている様子だった。
「おいお前、誰の頭殴ってんだよ!あァ!?」
「じ、自分じゃありませんよ!」
「だったら他に誰がいるってんだよォ!」
ズムッと中々爽快な音が響き渡った。
ホタカはテロリストの仲間割れに少しおかしな点、というよりもかなりの違和感を感じていた。
ずっと彼らの様子を観察していたホタカだからこそわかったことだが殴られた男はリーダーのことを決して殴ってはいない。しかしリーダー格の男は殴られたと感じていた。
たしかに殴ったような音は聞こえたのだが実際部下の男は殴っていない。
(どういうことだ、一体何が起こってるんだ?)
行くなら今か、とホタカが飛び出す準備をした時だった。突然目の前に階段でぶつかった人物が現れて待ったをかけた。
「すまないがもう少し動かないでくれ。俺たちにも奴らを倒す段取りがあるからな」
「ッ、一体どこから!?」
ホタカは思わず声を張り上げてしまう、そして気づかれたと思いテロリスト側を見るも誰もこちらを見向きすらしなかった。
「あれ、気づいてない?」
「何とか間に合ったようだな。少し君に手伝ってほしいのだが構わないか?」
「どういうことだ、一体何がどうなってるんだ。その前にあんたは一体誰なんだ?」
「俺はキド、今は時間が惜しい。説明は後でするから俺たちに協力してほしい」
自らをキドと名乗った人物はゆっくりと立ち上がった。
どうやら本当に奴らを止める気らしい。ホタカとしてもそれなら構わないがやはり見ず知らずの人物に協力するのは少し気が引ける。だが説明はしてくれると言う。
キドの言う通り時間も惜しい。
「俺はホタカ、今はあんたが何者で何が起こっているのかは関係ない。あんたに協力させてもらおう」
キドはホタカの応答に笑みを浮かべて互いに握手を交わした。
ホタカもゆっくりと立ち上がる。
「よし、任務続行だ」
※
ホタカとキドはテロリスト達の近くまで一気に移動した。テロリストとの距離は目と鼻の先なのに気づかれないのはキドの能力のお陰らしい。
「胡散臭い話だが事実だ。このようにな」
「みたいだな、一体どういう仕組みか知らねェが願ったりな能力だ」
「理解が早くて助かるよ」
そしてキドの仲間のいるところにまで移動する。
一人は白いふわふわした髪に青と白のエプロンドレスを身につけた少女でホタカの姿を見るなりキドの陰に隠れてしまう。
もう一人は...
「.....今朝振りだな」
「ソ、ソウデスネー」
軽い認識のある少女だった、ホタカが早朝ランニングをしているところで塀を飛び越えたこの少女がドロップキックをホタカに直撃させたご本人様だった。金髪の髪にピンクのパーカーを着た少女は苦笑いを浮かべている。
「あの時は本当にすみませんでした」
「もういい、とりあえず今は奴らを倒すことに集中するぞ」
俺はホタカだ、と短く自己紹介をしてテロリスト達に再び目を向ける。
「あー、聞こえるか?もう待つの疲れたから金を準備する時間を10分短縮する、よってあと10分だ」
「やっぱあのテロリスト相当馬鹿だろ!」
ホタカは軽く舌打ちをする、想定外の出来事に焦りすらも覚える。
「クソ、ホタカ!お前に簡単に作戦を説明する、よく聞」
「必要ねぇ」
ホタカはキドの言葉を遮って瞬きを一つする、次にホタカが目を開いた時には一瞬だが普段の茶色の目が赤く輝いた。キドはホタカの目を見て驚きの表情を露わにする。
「なるほど、俺たちが電化製品を倒して視線を集めてそこからシステムをハッキングしてシャッターを開く、それでキドの能力を解除して突然現れた俺たちに全員の視線を集めて、そこのチビの能力で動きを止めて一件落着か。間違いないかキド」
「あ、あぁそうだ」
「時間もなさそうだ、急ごう!」
ホタカは立ち上がり準備に取り掛かった。
「急ぎましょう団長さん!」
「キド!早く早く!」
「お、おう!」
少女達に続いてキドも立ち上がる。キドが移動の際ホタカに話しかけてきた。
「ホタカ、まさかお前も」
「詮索は後でいいか?俺もあんたに聞きたいことがあるんだ」
「わかった」
少年少女は立ち上がり子供達の作戦が今始まった。
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