迷走デステニー   作:Cr.M=かにかま

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連続投稿です(^^)


メカクシコード Ⅱ

 

(悪いなマミ、一旦切らせてもらう)

 

作戦が始まると同時にホタカはイヤホンを外して通話を一方的に終了させスマートフォンの電源を切る。

一人だけならば付けたままでも良かったのだが今回はキド達がいる。しかも今回の作戦は金髪少女のタイミングが全てみたいなので片耳でも塞いでるわけにはいかない。

 

「お兄ちゃん!」

 

「どうした、合図か!?」

 

「違います!」

 

ホタカは金髪少女の見ている方向に目を向けるとテロリストのリーダーが赤いジャージを纏った黒髪の青年の頭を掴んでいた。

 

(あれ、あれってシンタローじゃね?)

 

よく見てみるとホタカの高校時代の親友の如月伸太郎(きさらぎしんたろう)がテロリストに捕まっていた。

そしてこの金髪少女はシンタローの妹らしく兄を救おうと走り出すがキドによって腕を掴まれて阻まれる。

 

「キサラギ、お前が行ってどうするんだ!さっきの作戦はお前の合図がないとわからないんだぞ!」

 

「で、でも!」

 

「大丈夫だ妹君、シンタローは何だかんだで頭だけはいいからな。多分打開策もすぐに考えつくはずだ!」

 

「だ、だけど...!」

 

キドとホタカは如月妹を必死に説得して止めるがバツを悪そうな表情を浮かべている。たしかに如月妹にとってはシンタローも大事な家族の一人であり相手は馬鹿とは言え本物のテロリスト、心配するなと言う方が難しいが今回の作戦の要は如月妹であることも事実である。

 

「大丈夫だよキサラギ!」

 

「マリーちゃん」

 

白い髪の少女、マリーは如月妹の手を握りしめる。マリーの表情は先ほどのおどおどした表情とは違って力強いモノとなっていた。

マリーは続ける。

 

「よくわからないけど、きっと上手くいく!絶対に大丈夫!」

 

「マリー」

 

キドも思わず感嘆な声を漏らす、マリーという一人の少女は普段こそ引っ込み思案でコミュ症で小柄な少女だがホタカにもキドにも如月妹にも負けない勇気を持っていた。

マリーの言葉に頷くように如月妹は力強い笑みを浮かべる。

 

「うん!」

 

如月妹は集中するように目を閉じて深呼吸をする。如月妹の能力はキドの人の目に映らなくする能力に対して人の目を奪う能力、いわば注目を浴びるというキドとは真逆の能力である。

そして能力の本質としてあらゆる人の視線がどこに向いてるのかも判断できるらしく、どうあっても目立ちたい能力のようだ。

 

「団長さん、左から三番目の42インチのテレビ。まずはあそこにします!」

 

「わかった、行くぞ!マリー、ホタカ!」

 

「う、うん!」

 

「了解!」

 

ホタカ達は如月妹の指差したテレビの後ろに一斉に移動する。かなり大きなテレビだが近年の科学技術の進歩の結晶の薄型テレビなので倒すのに力も時間も掛かりそうにはない。

 

「これ倒すくらいなら欲しいな」

 

「我慢しろホタカ、今はそれどころじゃない」

 

思わず緊張感のない本音が漏れてしまったホタカにキドが注意を促す。後は如月妹の合図を待てばいいだけなのだがタイミングが見つからないらしく焦ってはいるのだが中々合図が来ない。

目の前ではシンタローとテロリストによる口論が行われていた。

このままテロリストを刺激してしまえばシンタローが殺されかねないと判断したホタカは飛び出そうとしてしまうが、瞬間にシンタローが今まで以上に過去最大の大声をテロリストに向ける。

 

「お前みたいなクソ野郎こそ、一生牢屋に引きこもっていろよッ!!」

 

(シンタロー、お前、結構やるじゃねぇか!)

 

ホタカは思わず笑みを零した。

 

「今です!団長さん、マリーちゃん、ホタカさん!」

 

合図、如月妹の声が響いた。その直後、後方からの重量に耐え切ることができなくなったテレビは重力に従い倒れる、勿論テロリストにも人質にもホタカ達の姿は見えていないためテレビが勝手に倒れるように見えるだろう。

 

「次、下のスピーカー!ホタカさんは隣のテレビをお願いします!」

 

キドとマリーは先ほどの下にある大量のスピーカーを、ホタカは隣にある先ほどと同じサイズのテレビを押し倒す。

 

「おい、次はどこだ!?」

 

「次はあそこです!」

 

如月妹が次に示したのはテロリストの背後にある大きな棚だった。

 

「.....お前、あれは視線とか関係なく恨みと悪意でしかないだろ。あいつに直撃するぞ」

 

「まぁ、少し」

 

「だが、俺も賛成だ。テレビは抵抗あったがアレなら遠慮なくぶっ倒せる!」

 

ホタカは悪意ある笑みを浮かべる、棚には多くのブルーレイプレーヤーが並べられており恐らく商品棚に並ぶ前の商品なのだろう。一つくらい持って帰ってもいい気がする。

 

「そこに誰かいるのか!?」

 

テロリストは銃をあちこちに向けながら叫ぶが誰一人として返事はしない。

 

「いくぜ、せぇー、の!」

 

ホタカ、キド、如月妹の力により商品棚は勢いよく倒れテロリストを下敷きにする、ギャグにならないほど痛そうだった。

 

「あとは...よろしくね、エネちゃん」

 

如月妹の横をシンタローが通り抜ける、ホタカもシンタローとすれ違うような形の位置に移動して聞こえはしないだろうが一言贈る。

 

「頑張れよ、親友」

 

これでホタカの役目は終わった、後は如月妹とマリーの仕事だ。

シンタローはパソコンのある場所まで走り抜けてプラグを接続させる。

 

「後は頼んだぞ、エネ」

 

瞬間、一つの銃声が響き渡りシンタローはその場に倒れる。

 

「まさか、撃ちやがったのか!?」

 

「お兄ちゃん!?」

 

ホタカが振り返ると銃を持ったシンタローに向かう黒いパーカーを着た少年が近づいてるのが見えた。ホタカは怒りの形相でパーカーを着た少年に迫ろうとするがキドによって止められる。

 

「大丈夫だ、あいつは俺たちの仲間だ!」

 

「キサラギ、シャッターが開くよ!」

 

シンタローが倒れるのと同時くらいにゆっくりとシャッターが開いていく。シャッターの向こうでは恐らく武装した警官が大量に待機しており人質をも巻き込んだ銃撃戦に発展してしまう可能性もある。

 

「おい妹君、急ぐんだ!このままじゃ銃撃戦になりかねない!」

 

「急げキサラギ!」

 

「....わかってます」

 

如月妹は覚悟を決め胸に手を当てる。そしてマリーに声をかけて準備を整える。

 

「団長さん、お願いします!」

 

「よし、行くぞ!」

 

瞬間、キドの瞳が真っ赤に染まり能力が発動する。如月妹とマリーにかけられたキドの能力が解除されたのだ。

すると、人質、テロリストと関係なく視線が如月妹に集まった。

 

「後はよろしくね、マリーちゃん」

 

如月妹は静かに目を閉じる、今度はマリーの瞳が真っ赤に染まる。

マリーの能力は目を合わせた者の動きを一時的に止める能力。

如月妹の集めた視線を活用してこの場にいる者全ての人物の目とマリーの目が合う。

 

「ごめんね」

 

マリーと目の合った全ての人間の動きが止まり、シャッターは完全に開かれた。

 

「突撃ィ....?」

 

「何だ、何で誰も動かないんだ??」

 

突入してきた警官は人質もテロリストも固まっていることに疑問を抱いている。

 

「お兄ちゃん!」

 

「シンタロー!」

 

ホタカと如月妹はシンタローが銃で撃たれたことを思い出す。

 

「カノさん、お兄ちゃんは...」

 

カノ、と呼ばれた黒いパーカーを着た猫目の少年は目を閉じて暗い表情を浮かべていた。

 

「まさか...」

 

「残念だけど...」

 

カノは次第に表情を明るくしていきシンタローを指差して苦笑いを浮かべながら話す。

 

「この人、ちょっと弾が掠っただけで気絶してるみたいだよ。よっぽど怖かったみたいだね〜」

 

『.........』

 

もぅ勘弁してくださぃほんの出来心だったんですぅ、とか小声でボソボソと言っているシンタローに安堵の表情を浮かべる。

 

「まったく、コイツは」

 

「フッ、メカクシ完了...だな」

 

 

 

「おい大丈夫か、おい!」

 

「とにかくテロリスト共は拘束しろ!」

 

「棚の下にも血を吐いてる奴が一人倒れてるぞ!」

 

テロリスト達を倒すことに成功したホタカ達は一先ずは勝利の余韻に浸っていた。

 

「そういえばその人誰なの?気づいたらいたから僕結構ビックリしたんだけど」

 

「なんだキド、伝えてなかったのかよ」

 

「こいつも人質としてここにいたからな、伝えるに伝えれなかったんだ。まぁ、その必要もなかったけどな」

 

「酷い!?」

 

落ち込んだカノを慰めながらホタカは簡単に自己紹介を済ませる。

 

「そういえばホタカさん、どうしてお兄ちゃんのこと知ってるんですか?」

 

「あぁ、あいつと俺同級生なんだよ。中学も高校も同じで結構仲良かった方だと思うぜ」

 

「それにしてもあんな作戦よく思いついたよね。マリーの目に全員の目線を注目させるなんて」

 

カノは感心したようにモモ(さっき名前を教えてもらった)に話しかける。どうやらモモはこの中でも新参者らしくキドからは新入りと呼ばれていた。

 

「.....とりあえず一件落着ですかね?」

 

「だな」

 

モモとキドは笑みを浮かべる。

ホタカはスマートフォンの電源を入れる、するとメールBOXがマミのメールだけで満タンになっており着信履歴も十件以上来ていた。

ホタカはとりあえず無事だとメールを送ってスマートフォンを仕舞う。

 

「なぁキド、マリーはどうしたんだ?」

 

「マリー?」

 

「そういえばマリーちゃ...!」

 

モモとキドは目を疑ったように目を大きく見開いた。何故かはわからないがマリーが警官に質問攻めに合っていた。

 

「あの馬鹿、電気アンマを返しに行って...」

 

「ていうか何でそんなモノ持ってるんだよ...!」

 

「あ、あれが無精髭をぶっ叩いたっていう例ので、電気アンマ?プクククク、でも何であんなモノなんかで...ひぃ、お腹痛い...」

 

「お前は少し黙れ!」

 

「ぶほっ!?」

 

ケラケラ笑うカノにキドがボディーブローを炸裂させる。あまりの重い一撃にカノは腹を抑えて倒れてしまう。

一方、マリーの方はというと警官の数が先ほどよりも更に増えてぞろぞろと警官が集まってきている。

すると、マリーはついに耐えきれなくなったのかこちらを指で差してきた。

 

「おい、これヤバイんじゃないのか?」

 

「おい、ばか...よせ!」

 

キドの願いは虚しく、警官はマリーの指差した方向、つまりこちらへとやって来た。

 

「ちょ、おいカノ!そこ邪魔だぞ、どいとけ!」

 

「うぅ、キドにみぞおち、殴られた....」

 

「何か身体的ダメージより精神的ダメージの方が大きくないか!?」

 

「ちょ、おま、早く立て!」

 

しかし、カノのライフは既にゼロだったらしく立ち上がることはなかった。キドの能力は人にぶつかったりしたりすると能力の効果がなくなってしまい普通に見えるようになってしまうらしい。

つまり、警官がこちらにやって来るということはカノが倒れている道を通るというわけで...

 

「うわっ、なんだ!?急に人が...」

 

カノにかけられたキドの能力は解除されてしまった。

 

「に、逃げるぞ!」

 

「逃げましょう!」

 

警官からの逃走劇が始まった。

 




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