迷走デステニー   作:Cr.M=かにかま

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ほぼオリジナルです(^^)




追想フォレスト Ⅰ

 

何か悪いことでもしたわけでもないのに警官から逃亡という人生で二度と味わえない、というか味わいたくないスリルを体感したホタカ達はキドの能力で姿を消してデパートを脱出した。ちなみに気絶したシンタローはホタカが背負っている。

何度か突っ立ってた警官や一般人にぶつかりそうになり能力が解除されてしまうのではないかとヒヤヒヤしたのも、またあまりいい思い出とはならないだろう。

デパートから少し離れた住宅街でキドは一旦能力を解除する。

 

「.....な、何とか逃げれたな」

 

「そうだな、キドの能力がなかったらマジで危なかったぜ」

 

ゼェーハァー、ゼェーハァーと激しく息を切らすホタカ達、マリーに至っては言葉を発する元気もないくらいまで疲れ果てている。

 

「それで、あんたらはこれからどうするんだ?俺はもう一回デパートに用があるから戻りたいんだけど」

 

「デパートに?忘れ物でもしたの?」

 

「まぁ、連れがいたんだよ。それで何やかんやで入れ違いになって別行動になっちまって...」

 

「それって黄緑の髪をツインテールにした中学生くらいの女の子?」

 

「そうそう、って何でお前はマヤのこと知ってるんだよ?」

 

「僕たちも一回デパートで会ったからね。テロリストが来る前階段で」

 

カノは人差し指を立てて説明する。どうやらホタカが階段でキドと出会う前にマヤと出会っていたようで彼ら全員に一方的な面識があった。

一方的というのはキドの目を隠す能力によってカノ達の姿も見えなくなっていたのでマミからは彼らの姿は見えていない。それを証拠にホタカもキドとぶつかった時、一緒にいたカノ達の姿を見ていない。

 

「俺たちは一旦アジトに戻るつもりだ。できることならホタカにもついて来てほしかったんだが、そういうことなら仕方ないな。連絡先だけでも交換しておこうか」

 

「だな、俺もあんたらには色々と聞きたいことがあるからな。マミを連れて一旦家に戻ったら連絡するよ」

 

そう言いながらホタカとキドは自然な流れでお互いのアドレスを交換する。隅っこの方でカノが体育座りしながら「僕なんて、キドとアドレス交換するのに半年近くかかったのに...」とかどんよりとしたオーラを醸し出しているがキドは反応どころか見向きもしなかった。

ちなみにホタカは汗を流しながら苦笑いを浮かべる。さり気なくモモがフォローに行っている気もするが彼女がフォローした所でカノの心が満たされる、それどころか逆にズバズバと心に痛手を加えそうなのは気のせいであろうか?

 

「じゃあ俺は一旦マミに連絡してからデパートに行くよ。マミに事情話してできるだけ早くそっちに行くよ」

 

「そうしてもらえると俺としても助かる。連絡待ってるぞ」

 

キドは必要なことだけ言うと瞳を赤く染めて能力を発動する。

目の前からキド、カノ、マリー、モモの姿がフッと消える。

ちなみに先程までホタカが背負っていたシンタローはカノが代わりに背負うこととなった。

 

ホタカは手に持ったスマートフォンを操作してマミに電話をかける。待つこと三コール目でマミは電話に応じた。

 

『もしもしホタカさん?今どこにいるんですか、もうデパートにはいないですよね?』

 

「出て早々察しがいいなマミ、ご明察の通り俺はもうデパートから脱出している。一旦合流しよう、お前こそ今どこだ?」

 

どうやらマミもデパートには既におらずデパートから少し離れた公園のベンチで休んでいるらしい。

 

「了解、今すぐそっちに行くよ」

 

ホタカは通話を切って公園へと足を進めた。

 

 

 

「あれ?何でセトがいるんだ?」

 

「どうもッス、ホタカさん。実は知り合いがデパートに行ったって言うもんッスからデパートに行ってみれば立て篭もり事件でしたからね、一階にいたらマミさんと偶然出会って色々あって意気投合したんッスよ」

 

公園に行くとバイトで良く顔を合わせるセトが何故かマミと一緒にいたことにホタカは驚きを隠すことができなかった。

何がどうなってこの二人が出会う羽目になったかは気になりすぎるが長い話になりそうなのでここでは言及しなかった。

 

「にしても驚いたッスよ、まさかマミさんが探してた人がホタカさんだったなんて」

 

「私としてはセトさんがホタカさんのこと知ってることに驚いてるんですけど」

 

「そこは知らなかったのかよ!」

 

本当に一体何がどうなって意気投合したんだろうか、予想の斜め上をいくこの二人の関係に再び謎が深まってしまう。

 

「じゃあ俺はこの辺で失礼するッス、俺の知り合いもきっと今頃デパートから出てるはずッスから」

 

「そうか、じゃあなセト。またバイト先で」

 

セトは手を振り上げて返事する。そして何故かデパートにもう知人はいないと本人は言っていたのにデパートの方向に足を進めているのは気のせいだろうか、きっとデパートの近くで待ち合わせているに違いない。ホタカはそう自分に無理矢理言い聞かせた。

 

「マミ、俺らもそろそろ帰るか。ちょっと大事な話もあるし」

 

「.............もしかして告白?」

 

「ごめん、一体何を期待しているの?」

 

 

 

ホタカとマミは石橋、と表札の書かれた家の前に立っていた。

そう、二人は重要なことを忘れて戻って来てしまったのだ。テロリスト達がやって来なければ穏便に買い物を済ませれたはずなのに、という思いが二人の頭を支配する。

 

((.....どうしよう、フライパン買ってない))

 

お使いを完了させていなかったのだ。マミの母親は普段温厚で年中ふわふわしている性格だが、こういう約束事や頼み事には人一倍うるさくキレさせてしまえばヤンキーすらも睨み殺すほどの殺気の持ち主となってしまう。

ホタカとマミはお互いにインターホンを押すことを躊躇い譲り合う。

 

「マ、マミ早く押せよ。いつまでも突っ立ってるわけにはいかないだろ?」

 

「それならホタカさん押してくださいよ、私まだ死にたくないです」

 

.....こんなやり取りが先程から十分近く続いているのだから二人の忍耐力は表彰するに値する。

結局、どちらか押すかのジャンケン一発勝負に負けたホタカが押すこととなった。

太陽の暑さのせいで流す汗とは別の冷や汗をダラダラと流し覚悟を決めて目を開く。

 

「はいはーい。っておかえりホタカ君、マミも」

 

「私ついで!?」

 

ほんわかな笑顔を浮かべてニコニコとしているこの女性こそがマミの母親である石橋佳奈(いしばしかな)である。エプロン姿なのはまた料理の試作品でも作っているのだろう。

 

「それで、どんなフライパンを買ってきてくれたの?」

 

佳奈の一言により空気が凍りつく。ホタカとマミは佳奈に悟られないようにダラダラと汗を流しながら状況を打破する術をあれやこれやと考える。

 

「ホ、ホタカサンアレ使いましょうよ。そうすれば」

 

「いや、アレはこんな所では使えない。目が赤くなっちまうからバレる可能性が高い、危険だ」

 

「じゃ、じゃあ脱ぎましょう!上半身抜いじゃいましょう!」

 

「意味がわからねェよ、どうやったらそれが打開策になるんだよ」

 

「ねぇ、何ヒソヒソ話してるの?」

 

『はい!すみません!』

 

ビシッと綺麗なくらい垂直に飛び上がり綺麗な気をつけを二人は無意識に披露する。息もぴったりで事前に打ち合わせをしたような動きだった。

 

「それでフライパンは?デパートは大変なことになってたみたいだけど買ってこれた?」

 

「すみません、実は買えなかったんです」

 

...................あ

 

「ちょ、ホタカさん!?何サラッと普通に暴露しちゃってんですか!?」

 

「だ、だだだだだだってよ、会話の流れからしてだな、あ、いや佳奈さん、これは.....!」

 

ホタカが声を出す前に佳奈は怒鳴るわけでもなく拳骨を振り下ろすわけでもなく回し蹴りを放つわけでもなく、ホタカとマミを抱きしめてた。

 

「そう、無事でよかった。巻き込まれでもしたらどうしようかと思ったわ」

 

「お母さん...」

 

「佳奈さん...」

 

それは母親の温もりそのものだった。ホタカもマミも佳奈の恐ろしさが印象に残りすぎて第一の前提を考えていなかった。

テロリストの件はニュースにもなったくらいだ、それが子供の向かったデパートで巻き込まれたかもしれないと思い心配しない母親は果たしているだろうか。

ホタカもマミもそのことをすっかりと忘れていた、母親の温もりというモノを。

 

そう、油断したその瞬間だった。

 

「でも、それとこれとでは話は別よ☆」

 

『え?』

 

この時より後の記憶はホタカもマミも憶えておらず、佳奈に尋ねても微笑んで何も答えなかったという。

こうして彼らの8月14日は終わりキドには今日は行けそうにない、と短くメールを送った。

 

 




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