オリキャラ(?)視点で見るネオンジェネシス後の渚カヲル。

一部シン・エヴァンゲリオンのネタバレありの為未視聴の方注意。
カップルネタ有のため苦手な方注意。(カヲル×レイ)
レイは出てきません。


?の理由は読めば分かります。

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秘めた想いは波打ち際へ

「お待たせしてごめんね」

 

そう言って控室に入って来たのは昔から私のメイクを担当している人。

 

「いえ、こちらこそ、毎回呼び出してしまってすいません」

 

「そんなことないよ、ゼーレのトップアイドルにご指名頂くなんて光栄さ」

 

その眩しい微笑みが今の私がここにいる理由。

 

 

 

私が所属するゼーレの他にネルフ、マルドゥックという人気グループを抱える芸能プロダクション【リリス】。

かつては小さな無名プロダクションだったのにプロデュースしたアイドルが次から次へと人気となり今では大手と呼べるまでに急成長した。

そんな激動を肌で感じていた最中で目に見えて様変わりしたのは私達タレントの扱いだった。

 

現地集合、現地解散だったのがしっかりと送り迎えをする運転手が付き、衣装は使いまわしからコンサートごとに仕立てられ、宣伝広告も街を歩けば駅やコンビニ、ビルの外壁なんかで誰かしら所属タレントの顔を見るようになった。

ここへ来る途中、交差点の信号で止まった車の窓からふと外を見たら、セントラルビルに備えられた巨大なモニターで後輩ユニットのヴィレがリリースしたばかりの新曲【想いヤリ ─気になるアイツにジャベリンアタック─ 】を歌っている映像が流れていたのは記憶に新しい。

 

でも個人的に一番変わったのはメイクだ。

メイク担当者は会社の顔であるアイドルに直接関わるため第一に人柄やコンプライアンスがしっかりとした人でなければならない。

なによりアイドルの容姿に手を加える超重要な役割を担うため、確かな技術力も持ち合わせた者でなければプロダクション(リリス)の審査をクリアすることは不可能だ。

そんな狭き門を潜って契約を勝ち取るメイクさん達だけど、たった一人だけプロダクション(こっち)から契約をお願いしている方がいる。

それは鏡の前に座った私の背後でメイク準備をしている渚カヲルさんである。

 

「今日が最後になっちゃいますね」

 

「キミが一番美しい姿でファンの心に残るようにしなくてはならないね」

 

今日、私は引退する。

ゼーレとしての最後のステージ。

 

「引退する理由、聞かないのですね……」

 

「僕はあくまでも一介のメイク。

 アイドルだけじゃなく芸能界からも引退するキミのプライベートには無暗に立ち入らないさ」

 

「そう…ですか…。

 なら勝手に独り言をいうのは構いませんね」

 

「フフフ、ご自由に」

 

準備が終わったのか鏡越しにアルカイックスマイルで私と目を合わせたカヲルさんが髪に手を触れる。

櫛を使って丁寧に梳かれた後、ひとまとめにされた髪は後ろで束ねられ私の顔があらわになった。

 

「私、ずっと好きな人がいたんです。

 でもアイドルだから恋愛は禁止だし……。

 何よりその人は既に結婚していて、どうやっても叶わない想いを持ち続けてこの芸能界(セカイ)に居るのが辛くて……」

 

カヲルさんは何も言わず、ただにこやかな表情を浮かべたまま、美容スチームで私の顔を温めていく。

その後、コットンに拭き取り化粧水をたっぷり含ませて丁寧に私の顔を拭っていった。

 

「その人は私が拒否しない限り、結構な頻度で出会う人なんです。

 何度も諦めようと思ってたんですけど、会うたびにやっぱり諦めきれなくて……」

 

拭われ、すっぴんとなった私の顔が鏡に映し出された。

そのあとカヲルさんが両手をしっかり消毒し、美容液を掌に滴らせる。

私の顔を彼の手が優しく包み込み、マッサージも兼ねるようゆっくりと撫でられて、人肌に温まった美容液がしっかり馴染んでいくのがわかった。

 

「でもトップになってドラマとかバラエティとか色々経験して……なんていうか年を取ったのもあるのかなぁ。

 折り合いがついてきたというか、とにかくそうなるとこの芸能界(セカイ)に全く未練が無い事に気付いてしまったんです」

 

本当は違います、強がりです。

芸能界に未練はありません。

でも好きな人はまだちょっと心残りがあります。

 

「だから引退しようと決めたんです」

 

いつの間にか乳液まで塗り込まれ、張りのある肌が証明に照らされ輝いてる。

いよいよこれから最後のメイクが始まる。

下地クリームの容器を開けながら彼は言った。

 

「さぁ最後のメイクだ。

 美しく、そして綺麗に、ファンの永遠となるようにしなくてはね」

 

もう出会ってから何年の付き合いとなるだろうか。

コチラから何も伝えなくとも渚さんは完璧に仕上げてくれる。

私は「お願いします」と一言伝え全てを委ねた───。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

渚さんと出会ったのは初のテレビ番組に出演する時だった。

売り出し中の新人アイドルを何名か集めて雛壇トークする深夜番組の収録。

今でこそソロ活動も多い私は専属のマネージャーが付いているが、当時はプロダクション(リリス)の数ある新人グループでしかない。

その日はよりによってゼーレのメンバーが乗車する電車が事故で止まり、影響の無かった私だけが先に着いた。

マネージャーは大慌てで、このままでは到着が難しいと見るや否や真剣な表情で

 

『最悪、一人での出演になるかもしれない、でもゼーレのリーダーである君なら出来る、頑張れると俺は思っている』

 

とコチラの意見を聞くことなく励まされた。

 

『番組スタッフには話は通してある、準備だけは進めておいてくれ』

 

そして困惑している私を控室に押しやり車で各メンバーを迎えにいった。

今でこそ、売り出し中の大事な時期に土壇場で誰も出演出来ません、なんてのは最悪な事というのは理解出来る。

その場限りではなく、その後の仕事にも影響が出るだろう。

でも年端の行かない10代の小娘にそれを全て理解しろと言うのは酷な話だ。

 

控室とはいっても大きな会議室に数十名の新人アイドルがひしめき合ってる状態で私以外は皆、グループ同士で固まっている。

各々がこの番組に向ける意気込みやその先の展望などを語っては仲間内で元気付け、他のライバルに闘志を燃やす。

 

そんな中で私はただ一人。

今回、プロダクション(リリス)から出演するのはゼーレのみ。

見知った顔は何処にもおらず、一人ポツンと取り残された私は途方に暮れた。

現場スタッフの指示に従い、大人しくしていたが、内心はガチガチに緊張しており泣きそうだった。

 

(そうえいば、メイクは、着替えはどうすればいいの?)

 

今までのコンサートではスタイリストさんがメイクと髪も兼任してくれた。

聞きかじった知識だと本来は別々らしいんだけど、お金の無い無名プロダクションが出費を抑えるための苦肉の策(テクニック)なんだろう。

悩んでもしょうがないため、携帯電話でマネージャーに確認を取るべく控室をこっそり抜けて、人気のない場所で電話を掛ける。

 

『はい、こちらリリスの……ってなんだ君か、どうした』

 

数回のコールであっさりと電話に出てくれた事に私は安堵した。

 

「あのメイクとかどうすればいいですか?」

 

『あ、ごめん言い忘れてた。

 今回から専属のメイクを雇った。

 テレビだからね、会社も張り切ってるよ。

 既にそっちにいるからその人に頼んでね。

 名前は──』

 

電波状況が悪いのかメイクさんの名前を聞く前にプツッと通話が途切れてしまった。

もう一度かけ直すも耳元でコール音が鳴り響くばかりで一向に出ない。

そしてお決まりの『お掛けになった電話番号』(メッセージ)が流れた瞬間、私は悟り電話を切る。

 

仕方がないのでもう少し経ってからかけ直そう考え、控室に戻ろうとした時、背後から声を掛けられた。

 

「キミ、もしかしてリリスプロダクションの()かい?」

 

穏やかな男性の声で呼び止められ、一瞬強張ったけれど、すぐさま平静を取り戻し振り返る。

 

「はい、リリスのゼーレでリーダーを務めてる……」

 

相手の質問に答えながら顔を見上げて驚いてしまった。

信じられないくらいの美形。

全体的に色素が薄い人で、白に近いさらりとした銀髪に透き通るような肌。

カラーコンタクトだろうか、紅い瞳がこちらを見つめる。

 

「見つかって良かった、控室に行ったら居なくて探していたんだ」

 

「貴方は…出演者の方?」

 

美しいとさえ形容できる容姿に最初は同じ芸能人だと思った。

 

「はじめまして、僕は渚カヲル。

 キミを輝かせる為にリリスより遣わされた使者」

 

「えっと……つまり?」

 

「メイクアップアーティストさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───思いに耽り、気付けば、既に顔のメイクは終わっている。

正面に顔を向ければあの頃から時が経ち、少女から女へと歳を重ねた自分が鏡の中からこちらを見つめる。

チークもアイシャドーも今では色味は抑えられ、大人の魅力を引き立てる自然な仕上がりとなっている。

 

「キミは肌の手入れが活き届いているから、正直僕は必要ないのでは、とさえ思ってしまうね」

 

鏡の向こうで渚さんがヘアメイクをしながら称えてくる。

傍から見れば、お世辞を言ってるのと変わりない。

 

「ありがとうございます」

 

でも私は知っているんだ、渚さんはお世辞を言う人ではない。

 

「肌は渚さんから頂いたオリジナル化粧水のお陰です。

 たしか“米ぬか”で作った奥様の手作りでしたっけ?」

 

「フフフッ、そう言ってもらえると妻も喜ぶよ。

 僕もとても嬉しいね」

 

そして私はもう一つ知ってる。

渚さんは自分の事よりも奥さんを褒められたほうが幸せに感じるという事。

 

私が出会ったときには既に結婚していたという奥さんを見た事はない。

でもきっと、素敵なヒトなのだろう。

私に褒められて今日一番の笑顔を浮かべる渚さんを見ればわかる。

今まではあまり聞きたくなかったが最後なのだからどんなヒトか聞いてみようと思った。

 

「奥様ってどんな方なんですか?」

 

「お世話になってる農家の方は僕たち夫婦が似てるってよく言われるね。

 あと田植えが凄く上手いね」

 

「た、田植えですか。

 じゃ、じゃあどんな所に惹かれたんですか?」

 

「普段はおっとりしてるけど芯の強いヒトって所かな。

 あと味噌汁が美味しい」

 

「惚気ますねぇ」

 

悔しいなぁ……。

羨ましいなぁ……。

 

若い頃はそんな事ずっと思っていたっけ。

 

渚さんは実は芸能人の間でファンが多い。

それは女性男性限らずだ。

既婚者という事を知ってショックを受ける若い子も居るけど。

イケイケのノリが強いこの業界で、物腰が柔らかく話していると落ち着いてしまう彼は不思議な魅力で溢れている。

私はこの芸能界(セカイ)に足を踏み入れて結構立つけど、渚さん以上に魅力的な男性は見たことがない。

 

私も大分お世話になった。

初めてのテレビで緊張を解いてくれたのは彼だった。

アダムプロの人気男性アイドルグループ、【ライフ・ベリー】のゼルと熱愛という変な噂が立った時も探るような事はせず普通に接してくれた。

ゼーレのメンバーはみんな彼に助けられている。

でもゼーレは私が引退すると同時に解散でもある。

 

「さて、へアメイクも終わったよ。

 どうだい?」

 

「いつもどうり、カンペキですね」

 

ハニカミながら仕上がりの感想を伝えれば、彼は私の言葉に微笑み、「良かった」と返事をくれる。

 

「こんなに素敵に仕上げてくれるんだからもっとメイクのお仕事増やせばいいのに」

 

「僕は農業も営んでるからねぇ、妻は応援してくれてるけど、やっぱりなるべくは手伝いたいのさ。

 それでも贔屓にしてくれ人達がいるから僕はやっていけるんだ。

 プロダクションリリスには足を向けて寝る事は出来ないね」

 

渚さんはメイクアップアーティストとしてはフリーであり、他のメイクさん達のように化粧品メーカーの社員でもサロンを経営してるわけでもない。

そして珍しい事に農家でもある。

 

何時もお世話になっているお礼にと、西瓜を貰った事があった。

みずみずしくて、でも実はしっかりと歯ごたえがあり甘くて美味しかったのを覚えている。

なんでも農業仲間と一緒にブランド品の西瓜として出荷するとか言っていたっけ。

 

最近は農業を主としているらしく、だからメイク仕事は量は一般的なメイクさんに比べたらずっと少ない。

それなのに指名で引っ張りだこなのは人柄、魅力もさることながら技術力も高いという事だ。

でも現在受けている仕事がすべて終わればメイク業の方は引退すると言っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

控室の扉が開き、マネージャーが「そろそろお時間です」と呼びに来た。

分かりましたと返事をして、椅子を立つ。

後ろを振り向いて、渚さんと今日初めての対面を果たす。

 

「うん、今までで一番綺麗だね」

 

「渚さん…今日のステージ見てくれますか?」

 

「もちろんさ、キミの歌は素晴らしい。

 最後の歌声を心ゆくまで歓楽させてもらうよ」

 

伝えられなかった想いがある。

 

伝えてはいけない想いでもある。

 

「全てのファンにありがとうの気持ちを伝えてきます」

 

「いってらっしゃい」

 

「はい、行ってきます」

 

渚さんを残して控室を後にする。

涙は見せない。

 

今は、応援してれたファンと支えてくれたスタッフ達が第一だ。

 

でも最後の歌は貴方に捧げます。

その笑顔、今日だけは私に向けてください。

 

「カヲルさん、ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ステージ下の(セリ)に待機する。

上がればそこは満員御礼のコンサートホール。

深呼吸してデビュー当時からのトレードマーク、細いラインが入ったバイザーを装着する。

暗闇となったホールの様子を映してる画面には7つのモノリスが浮かび上がる。

真ん中の№01が私が立つべき最後の舞台。

ゆっくりと昇降機が動き出せば、スポットライトが私達を照らし出し、ファンの歓声に包まれる。

 

 

ゼーレのラストステージが開幕された。

 

 

 

 

 

 




渚カヲルのメイクアップアーティストは新世紀エヴァンゲリオン2 造られしセカイというゲームに出てくる話です。
将来の夢としてカヲル君がシンジ君に語ります。


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