「社長さん、新しいベルトができたんですか?」
「渡す前に、一つ話を聞いてくれないか?」
「どんな話なんですか?」
「遠い昔の話さ。その村では、人類に言葉を与えた神に対して強い信仰を持っていた。その村は神から知恵を恵んで貰う代わりにその土地で取れた作物を供えていた。それは、子孫達へと習慣として受け継がれた。そんな子孫の1人はこう言った『恵みをもらったのは先祖であって自分達が奉公し続ける必要はない』と。その言葉に賛同した若者達が神に対して戦争を仕掛けた。しかし、彼らは神の加護を得た始まりの巫女によって封印された。神もこの事態に考え自身も封印する事を決意し姿を消した。」
「その話って…ワードの?」
「そうだ。これからもワードの事を監視を続けてくれ。国山君は少々感情的になりやすい。」
「分かりました。」
第11話 嘘偽の善行者
季節も変わり、冬の足音がすぐそこまできている11月のある日。
塾屋ゴンはその期間の間ずっとワードと共に時を過ごしていた。そんなワードに対して彼は最近違和感を感じていた。
出会った頃は事あれば自分に話しかける声は徐々に回数を減らし、本当に自分の中にいるのかと感じさせるほど不気味に大人しい。ワードはゴンの心を読むことはできるが、その逆はできない。だからなぜ黙ったままなのかは到底分かることはない。
「って感じで、どうすればいいんだろうか。」
ゴンは遂に思い切って勝治と神楽に相談した。
「その前に一ついいか?」勝治が答えを切り出す前に聞いた。
「俺達の会話って全部
「私も思った、そんな状況で聞いていいの?」続けて神楽も聞く。
「俺もそうは思った。だけど、それ以上にワードが心配なんだ。もしかしたら怒らせているかもしれないし。」ゴンはそう答えた。
「…相手は簡単に言えば引きこもりみたいなものだからな。出てくるまで待っていてあげるしかないんじゃないのか?」
「私も勝治と同意見だわ。無理矢理話すことができる訳でもないし。いずれ話してくれると思うよ。」
「分かった、待ってみるよ。時間をかけてでもワードと話してみる。2人ともありがとう。」
2人の意見を聞き入れた彼は、澄み切っている空を見上げた。
別地点、同じように空を見上げていたのは哀だった。その瞳には消えかかっている生前の記憶を映していた。
幸せだったあの頃、だがもう戻ることはできないと瞼を瞑り消した。
「哀、次に行動を起こす時力を貸してくれないか?」
そう言って後ろから声をかけたのは喜だった。
「今度は何をするんだ。」
「始まりの巫女を探す。それだけだ。」それ以外に何があるという顔を喜は向けた。
「…前から気になっていたのだが、始まりの巫女というのはなんだ?」
「…それは遠い昔の話。ワードと唯一密接に繋がっていた人間が居た。その人間はとある村の少女だった。彼女は、ワードから恵みを受け、それを俺達の先祖であるその村人達に分け与えた。始まりの巫女の血を受け継いでいる者はワードをこの世界に繋ぎ止める唯一の存在、それを探し出し我々の手中に収まることが出来ればワードをこの世界から葬ることができる。」
哀はあまりにも壮大な話に唖然としていた。
「目星は付いているのだろう?この街のどこかにいると。人陰は救いを求めて始まりの巫女へと近寄る。それを今回は最大限に利用する。」
喜は他の仲間を呼んだ。哀は大きな歯車が少しずつ動き始めていると感じた。
「ゴン、一緒に帰ろう?」
放課後、いつものように言葉はゴンに声をかけた。
「ああ、少し待ってて。」
ゴンは急いで机の中の教科書をカバンの中にしまい、背負った。
2人は特にどこか寄る訳でもなく真っ直ぐ家に向かっていた。
家までおよそ5分のところまで差し掛かった。2人は世間話に花を咲かせていた。そんな時、目の前で還暦近い女性がポケットから財布を落とした。しかし、女性はそれに気づくことはない。
それに気づいた2人は財布をすぐさま拾うと、女性に声をかけた。
そこで初めて財布を落としたことに気づいた彼女は2人にお礼を言って財布を受け取るとその場を後にした。
「またそれか…飽きもせずに、そんなに感謝されることが嬉しいのか?」
そんな2人、というよりもゴンに向かって声をかけた人物がいた。ゴンは聞き覚えのある女性の声に振り返った。そこにいたのは刹那だった。
「刹那さん?こんな所で会うなんて奇遇ですね。」
言葉は影で知り合い?と聞く。ゴンはそうだよと簡単に答えた。こうして面と面で向かい合って話すのは初めてだが。
「気安く名前で呼ぶな。せめて…苗字で呼べ。」せめて氷華と呼べ、そう言いかけたが、正体を気安く話してはならないという上官の言葉を思い出し止めた。
「分かりました…でも、こうして感謝されることが嬉しいという訳では…」
「そんな訳があるか。どうせそれは偽善だろ、人は本心から優しくなることなんてできない。」
「ちょっと、いくらなんでもそんな言い方は無いんじゃないですか?」
言葉はそうやって口を挟む。
「なら君は彼の心が読めるとでも言うのか?」そう言い返されると、言葉は口を閉ざした。
「言葉、先帰ってて。」ゴンの言葉に食い下がろうとしたが、このままここにいても何もできないと感じ、表面的には先に進んだ。しかし、すぐ近くの物陰で2人の様子を見ていた。
「僕の行動を偽りだ、嘘だってあなたは何故そんな事を?」
「…私は、人に優しさなんて物はないと知っている。それは表の感情であって、裏を返せばそれは汚い感情となる。私の周りでは皆そうだった。」
彼女の脳裏には、父親の遺影のある部屋の隣から襖越しで話す親戚の声が何度も流れている。そう言い聞かせるように。
「…そんな事はない。僕はずっと誰かの助けになりたいと信じてやってきた。それも刹那さんにとっては偽善なんですか…?」
「…黙れ。そんな都合のいい話があるのか?」
「あるさ、何故ならこいつは馬鹿がつくほどのお人好しだからな。」
その時、自分とは別の男の声が聞こえた。その方向を振り返ると勝治と神楽の姿があった。
「勝治、神楽、何でここに?」
「暇だから遊びに来たらこうなってたって訳。」神楽が答えた。
「そんな事…ある訳…」
「その辺にしておけ。」さらに反論しようとした刹那をたまたま通りかかった鉱也が抑えた。
「鉱也…」刹那は止めに入った彼の顔を見て苛立ちを抑えた。
この場は第三者の力によって終わりになる、そう思っていた。
「ワードに氷華に地装、全員集合してるなんて珍しいこともあるんだね。」
そう言って陽気な声で近寄ったのは楽だった。その後ろには哀と見覚えのない新たな人物、そして2体の人陰の姿があった。
『喜…か。』ワードはそう呟いた。
「ワード、俺達と戦え。」そう言うと喜は自身の姿を変えた。シャンデリアのように煌びやかな装甲、金色に輝くマントを提げ、顔には喜んでいるように見える仮面がつけられていた。
その声に合わせ哀は怪人態へ、楽は蒼刃へと変身した。
怪人達を目の前にした勝治と神楽は物陰へと走る。そこに言葉がいると気づいた2人は彼女を連れて更に遠くへ走り出した。
「「「変身!!」」」
[核、読み取り][烈火を纏いしワード、烈火!]
[地層核!登上!][地を装う者、地装!]
[氷河核、登上!][氷の中に咲く華、氷華!]
ワード烈火の形、地装、氷華はそれぞれ変身すると武器を構えた。
喜はワードへ、蒼刃は地装へ、哀は氷華へと攻撃を仕掛ける。
「ベルトを奪われた借り、返させてもらうぜ!」
「楽しみだよ、その借りを返せるか!」
地装の打撃攻撃を蒼刃は軽く交わした。
「氷と水、相性が悪いな。」
「ならここで倒させてもらう。」
哀は次々と拳銃の引き金を引き氷華へと攻撃を仕掛ける。
「今回のワードはどのぐらいの能力の奴か測らせてもらう。」
金色の槍を喜は振り下ろす。ワードはそれを盾で凌いだ。
それだけでは喜の攻撃は収まらず次から次へと仕掛けられる。
「ワード、攻撃を!」
自由の効かないゴンは行動権のあるワードに攻撃を指示する。しかしワードは一切攻撃をしない。
「何でしないんだ!」
『…もう、お主の身体を傷つけるのは嫌だ。だから戦闘は…』
ゴンはここで初めてワードが考えていた事が分かり、それがどれだけ愚かなものかと思った。
「俺がいつ戦うのが嫌だと言った。俺はやりたくてワードとして戦っているんだ!それはワードが一番よく分かっているだろ!」
『だが…』
「話は終わりか?ならばこちらから終わらせる!!」
喜はそう言うと必殺の一撃を繰り出した。