父が事故で亡くなってから数日後、私の家で葬式が行われた。
『お父さんが死んじゃって、悲しいよね?寂しいよね?でも叔母さん達がいるから寂しがらないで。』
来る人来る人皆同じような事を口にしていた。だけど、その言葉は父を事故で亡くした事を少しでも和らげてくれた。葬式が終わるまでは…
『知ってた?あの人相当お金を賭け事に注ぎ込んでいたらしいよ…』
そう言ってくれていた人達は皆、陰でそう言っていた。
『そんな人の娘なんだから、きっと…』
父さんは、電気工事士だった。電柱に登って機材を点検したり、取り替えたり…父さんは人に電気を届けるこの仕事を誇りに思っていたし、私も父さんが人の為に役に立っていると思うと誇らしかった。
しかし、そんな真面目な性格故に親戚から妬まれていたのだろう。葬式では嘘偽りの噂話ばかりが聞こえてきた。その声全てが耳障りで私は家を飛び出した。
それと同時に、この世に善意なんてものはないって。目に見える善意は全て偽善であると。
私は、私の思う善意を、嘘偽りのない正しい心を探す為に戦う。その為に剣を振り下ろす。
敵…哀は、拳銃を使い私と距離を取る。引き金を何度も引き、弾丸を放つ。
それらを全て回避しながら私は彼の懐へと迫る。
今度は水を利用した波の攻撃を放ってきた。それらは私が触れる事で次々と氷に変化していく。しかし、氷になったということは、一つの大きな塊になったということ、腕や足に氷が纏わり付き、それが重りとなって動きを鈍くさせる。これが目的だったのか。
「好機到来だ!」
哀は、足先から次々と蹴りを放つ。それを私は避けることに必死になる。間一髪で避けることができたが、このままでは…
「話は終わりか?ならばこちらから終わらせる!!」
槍に、金色の思念を纏った必殺の一撃はワードへと迫る。
『バーニングアタック』
必殺の一撃は、2人の身体が見えなくなる程の爆発を引き起こした。
「がっ…何、だと…」
爆炎の中、喜の左脇腹にはワードの槍に貫かれ、焼かれた後があった。それに対して喜の攻撃は、盾によって一寸ほど上にズレてワードの身体に命中していなかった。
『ゴン、ワシは勘違いをしておったようだ。お主は、最初から覚悟を決めておったな。覚悟が足りなかったのは、ワシの方じゃ。』
「ワード、一緒に戦おう。」
心の中で、ゴンはワードへ促す。
「ワード…君は相変わらず私の喜びの邪魔をする。許さん…絶対に。」
そう言って、痛む脇腹を我慢しながら、喜は迫る。
「アイツは弱ってる、叩くなら今だ!」
『分かっておる!』ワードは喜の無我夢中な攻撃をジャンプして回避する。そして、炎を両脚に纏う。
「『バーニングガイザー!!』」
ワードの強烈なキックは、喜の身体に激突すると、名前の通り間欠泉の様に炎を吹き上げた。
「随分と派手にやってるな…」
「あっちも楽しそうだな…」地装と蒼刃は共にワードの爆発を見ていた。
「これで氷が解けた!」
「ぐっ…喜の奴め、面倒な事を…」氷華は、ワードの熱によって体の氷が解け、哀が有利だった戦場に逆転の兆しが見えた。
喜は、地面に倒れたまま気絶していた。
「ワード、今のうちに人陰を。」
『ああ、そう遠くまで行っていないはず!』
烈火の形から跳速の形へと姿を変えたワードは、2体の人陰が向かった方へと走り出した。
「俺のベルト、返して貰うぜ!」[マウントグランド!]
「それなら、僕みたいに力づくで奪ってみなよ」[マウントリーフ!]
大地のオーラを纏った地装と、自然のオーラを纏った蒼刃。2人のキックは、空中で激突する。
地上に2人は降りた。地装は、殆ど墜落したに等しいが、厚い装甲によって守られていた。その懐には、青葉核が装填されたマウントドライバーがあった。
楽は、強制的にベルトを剥がされた事によって人間態の姿に戻っていた。
「有言実行って奴だ。」
「あーあ、おもちゃが無くなっちゃった。まぁいっか。僕にはこれがあるし。」楽は、自身の身体を怪人態へと変える。緑色のコートを纏い、右手には猛毒の斧を持っている。
「第二回戦ってやつか…」地装はそう言うと、ハンマーを構え戦闘状態へと再び入る。
「これで終わりだ。」[マウントブリザード!]
自分自身を回転させ、巨大な氷の竜巻を作り出す。それを自分ごと敵の身体に特攻する。
水を与えれば敵を強化する事になる、しかしこのまま受けても倒れる、八方塞がりな哀はただ攻撃を受けるしかなかった。
その攻撃で哀は弾き飛ばされ、地面に膝をついた。
一方、2体の人陰は逃げていたはずの言葉、勝治、神楽の元に迫っていた。
「何でこいつらがこっちに!」神楽が悲鳴混じりにそう言う。
「どうするの?どこ行っても追いかけてくる…」言葉が2人に聞く。
「ここは…俺が!」勝治は、2人を庇う様に前に立つ。しかし、赤色の人陰は拳を振り上げ、攻撃しようと迫った。
『そこまでじゃ!』
その時、緑色のワード、跳速の形が人陰の拳を掴んでいた。
『今のうちに!』
その声に3人はその場を後にした。それを追うように青い人陰が走り出す。しかし、それも瞬間移動で迫ったワードによって阻止される。
「それにしても人陰はなんであの3人を…」
『考えるのは後じゃ、今は人陰を倒すぞ。』
ワードはそう言うと弓を引いた。
[必殺書き込み]『スピードスナイパー!』
神速の矢が人陰を捉える。しかし、青い人陰はあろう事か隣にいた赤い人陰を掴むと、自身の目の前に「近くに居たのが悪い」と言わんばかりに盾にした。
それにより赤い人陰は爆散し、爆炎の中青い人陰は逃亡を企む。
しかし、その爆炎の中からもう一度神速の矢が現れた。ワードは逃げることまで想定して二度矢を放っていたのだ。
それにより青い人陰も身体を貫かれ爆散した。
2体の人陰からはそれぞれ[無尽][下弦]の核を回収した。
ワードが氷華達の元へ戻った頃には、既に戦士達が有利な状況へとなっていた。
「2人とも!」
「遅かったな、後はコイツだけだ…」地装がそう言う。楽は、息切れ一つする様子がない。
その時だった。楽の目の前に割って入るように怒と嫉が入ってきた。
「時間稼ぎはもう十分だ。巫女の目星は大体ついた。」怒がそう言うと、5人は煙の中へと消えていった。
『巫女…だと?』
「心当たりがあるのか?」氷華が聞く。
「もしかして、神に唯一直接繋がってた始まりの巫女の事なのか?」続けて地装が口にする。
『…何故知っている?』
「社長に聞いた。人陰の成り立ちも、ワードと人陰の戦争の始まりも。」
「いつの間にそんな事を…」
『…始まりの巫女の血を持つ者は、人陰が救いを求めて近寄る。今回の襲撃はその能力を利用した陽動作戦だったと言う事か。』
「その、始まりの巫女が敵に渡ってしまったらどうなるの?」氷華はなんとか話について行きながら聞く。
『ワシや、ワシに関連するもの全てが崩壊する。私が人間に与えた技術や文明…言葉までも…』
3人は、今日は解散する事にしそれぞれ別れた。刹那は、社長に詳しい話を聞く為に彼のいる研究室へと歩き始めた。
その彼女の目の前に言葉が現れた。
「何のようだ?」
「貴女は、ゴンのことを偽善だと言った。でも、それは絶対に無いって言える。」思いがけない一言に彼女は驚いた。
「…その証拠はあるのか?」
「それは、私の今までのゴンとの記憶…アイツは、いつも誰かの為に動いていたの。だから、ゴンのこと…もっと信じて欲しい。一緒に戦う相手なら尚更。」
「…私は今急いでいる。話が終わったなら行かせて貰う。」
彼女は、誤魔化すのも限界に感じ逃げるようにその場を去った。確かに、彼の善意は本物だと。それを前から彼女は感じていた筈だ。文化祭の時に、財布を拾った彼の、嘘偽りのない善意に…