仮面ライダーワード〜言霊の統率者〜   作:津上幻夢

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第13話 性悪の逆襲劇

「ワード、さっき言っていた始まりの巫女ってなんなの?」

 

 

ゴンは先の戦いの帰り、ワードに問いかけた。

 

『始まりの巫女、それはワシの身体がまだあった頃、一番繋がりの強い人間の事。彼女は、その村で1番の美人であるとよく噂されていた。お主の周りで例えるならば、平方言葉のような。彼女は、己の身を犠牲にしてワシに抗う性悪党ごと封印した。』

 

「そんな事が…でも、」

 

『そう、今その封印は完全に解けている。いや、気が遠くなる程昔に綻びは始まっていた。喜から始まり、嫉、怒、楽、哀と現代までに徐々に封印が解けてた。』

 

「…性悪党はなんで自分達を封印した始まりの巫女を探してるの?」

 

『性悪党は、始まりの巫女を取り込むことでワシを超えようとしている。自分達を封印した程強い力を持つ始まりの巫女を逆に利用する…それが目的かもしれん。』

 

「でも、始まりの巫女なんてどうやって見つけるの?」

 

『いや…目星はついておる…』

 

 

ゴン達が会話している頃、性悪党達もまた同じような話を始めていた。喜は怪我で倒れたままであるが。

 

「それで、始まりの巫女が誰か目星はついたの?」楽が聞く。

 

「人陰は、ワードの人間に親しい人物3人を追いかけた。」怒がそう答える。彼の言う3人は言葉、勝治、神楽の事だ。

 

「じゃあ、その3人って…」決めつけようとした楽に嫉は待ったをかけた。

 

「いや、その時いた男は外す。あれはハズレだ。私が既に人陰にした。」

 

「そういえばそうだったな。今のワードが生まれた時に…」怒が付け足した。

 

「と言う事は、二択か…」哀は、巫女なのだから女しかあり得ないのではと思いながら呟いた。

 

 

 

 

 

「と言う事は、言葉か神楽が…」

 

所変わって再びゴンとワード。2人も同じ結論へと進んでいた。

 

『そう言う事になるのう。』

 

「ワードの力で始まりの巫女を見分けられないの?」

 

『それは難しい話じゃな…いくら強大な力を持っていたとしても人間だ。そう見分けられるものではない。まぁ強いて言うならば、容姿が近い言葉の方じゃな。』

 

「…それってワードの好みだからじゃ…」

 

『うるさい!とにかく、地装達とも協力して2人を守らねばならぬ。』

 

ゴンは、ワードと話すうちに家の目の前まで来ていた。

 

彼は家に入る前に言葉の家を見た。彼女の家にはいつものように明かりが灯っており、彼女の部屋からは彼女らしき影も映っている。

一安心すると、自分の家の扉を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、ゴンは昨日の性悪党の狙いを鉱也に伝えた。そして、神楽を守って欲しいと頼んだ。快く彼は引き受けてくれた。

 

そして、神楽にもその事を伝えた。彼女は初めてその話を聞いた時は、頭がこんがらがっていた。しかし、時間が進むにつれ状況を理解し、覚悟を決めた。

 

一方、言葉には今日家で遊ばないかとさりげなく誘った。珍しい相手からの勧誘に彼女が応じない訳でもなく、すぐに家にやってきた。

ゴンは、言葉に話そうとか迷っていた。ゲームをしながらタイミングを見計らって…

 

 

その頃神楽の家には、彼女の他、話を聞きつけた勝治と鉱也が来ていた。

 

「お茶持ってきますのでお待ちください。」神楽は自分の部屋に2人を招き入れ、お茶を出す為に部屋を出た。

 

 

「初めましてですね。話はゴンから聞いてます。おおらかで力強い人だって。」勝治は、鉱也に対して話しかけた。

 

「もしかして、あんたが勝治って坊主か。あんたの事もゴンから聞いてるよ。アイツと同じくらいの実力があるって。」

 

「…そんな事、ないですよ。」勝治は謙遜した。

 

「でも、勝治の得意分野には勝てないってゴンは言ってたぜ。全て勝てなくても、得意分野で勝てるだけでも、同等だろ?」鉱也はありのままにそう言った。

 

「…そう言うもの、なんですか…」

 

「…お前は、なんでゴンに勝ちたいんだ?」彼の問いに勝治は言葉を詰まらせた。そういえば、深く考えた事がなかったな、そう思った。

 

「それは…」すぐに答えは出なかった。それを見た鉱也はこう言った。

 

「答えが出ないうちは勝てないな。まずはどうして勝ちたいか考えるところからだな。」

 

 

「キャーーー!!!」

その時だった。突然女の悲鳴が聞こえた。それも家の中だ。

 

「神楽!」2人は急いで台所のある一階まで走った。

 

そこでは、紫色の沼のようなものに囚われた神楽の姿があった。

 

「今助ける!」鉱也が近づいたその時、沼に完全に入り込むように神楽の姿は消えた。それと同時に今度は外で悲鳴が聞こえた。

 

「外か!」

 

2人は、玄関を勢いよく開け外へ飛び出した。そこには、神楽を拘束している嫉怪人態の姿があった。嫉は2人の姿を見るや否や逃げる為に走り出した。

2人も、神楽を助ける為に追いかけた。

 

 

 

 

「分かった、すぐに向かう。」

 

神楽が拐われた事はゴンの耳にもすぐに届いた。勝治からの連絡を聞いて、気がついたら身体が動いていた。

 

それを言葉は追いかけた。

 

「待って!ゴン!」

 

その声に彼は振り返った。

 

「何?」ゴンは振り返った。

 

「気をつけてね。」

 

「わかってる…すぐに戻るから。」そう言うとゴンは外へと出ていった。

 

「…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「変身!」

 

地装に変身した鉱也は嫉を捕らえた。その隙に神楽は脱出を試みた。しかし、性悪党の陣地に入った3人に逃げ道はなかった。神楽は怒によって捕らえられ、人質にされた。

 

「動くな、コイツがどうなってもいいのか?」怒は、刀を彼女の喉元に突きつけた。

 

「…私に構わず倒して」神楽はそう言う。

 

「そんな事、できるかよ。お前を守れってゴンに頼まれてんだ。」地装は持っていたハンマーを地面に置いた。

 

「それでいい。」怒はそう言うと突きつけた刀を下ろした。その背後には他の3人の幹部の姿もあった。

 

「神楽を離せ!」その時、怒の目の前に勝治が現れた。彼は拳を固め怒に振り下ろす。しかし、人間如きの攻撃で怯む事はない。

 

「お前、そんなに死にたいのか?」怒は、彼を蹴り飛ばした。

 

勝治は地面に倒れた。しかし、再び起きあがろうとする。

 

そこへ怒は刀を振り下ろす。

 

「面倒を増やしやがって、俺を怒らせるな!」

 

刀は、一瞬で振り下ろされる。命がなくなる事を覚悟した彼はただ呆然としていた。そこへ、一つの影が割って入る。

 

「変身できないのに、無茶しやがって!」

 

地装だ。彼は自身の装甲を盾として勝治を守ったのだ。しかし、怒の刀は想像以上に切れ味が良かった…左肩の鎧を貫通していた。

 

刀はそのまま振り下ろされ、地装は変身を解かれる。

 

「おい、しっかりしろ!」

 

鉱也は、勝治の目の前に倒れた。

 

「…でも、そう言うの、嫌い、じゃ、ない…」

 

鉱也は、そう言うと目を閉じた。勝治は、脈があるか確認した。どうやら、微弱ではあるがまだある。

 

「死なないでくれよ、俺はまだアンタに聞きたいことがあるんだ!」

 

「つまらん…切り捨てる!」その様子に飽きた怒は、再び刀を振り下ろす。

 

「待った、切る必要はないだろ?」それを止めたのは哀だった。

 

「なんだと?」

 

「どうせ世界は滅ぶ。彼らも死ぬ。放っておけばいい。」哀はこの時何故2人を庇ったか自分でも分からなかった。

 

「…アンタがそう言うなら、仕方がない。」

怒は剣を下ろした。

 

そのタイミングでワードが到着した。跳速の形に姿を変えていた彼は、倒れている鉱也と勝治を見た。

 

「勝治!鉱也さん!」

 

「嫉、始めるぞ。」喜はそう言った。その声に嫉も応じた。

 

「そこで見ていろワード、今日が貴様の命日だ。何千年越しの。」

 

5人は、それぞれの体色の力を空に掲げた。神楽は、徐々に力を奪われ気絶した。

 

 

 

「神屠る力よ。」「我々に」「授けよ。」「生贄は」「始まりの巫女とす。」

 

すると、空が徐々に曇り始め、太陽を隠した。夜のようになった大地に、黒い光が舞い降り神楽の身体に降り注いだ。

 

「…何かがおかしい!」そう声を上げたのは喜だ。

 

神楽の身体は、徐々に黒い獣の姿へと変化した。そして黒い光も徐々に途絶え、遂に消えた。そこから現れたのは、翼をなくしたような竜、恐竜を人型にしたような獣だった。

 

『これは…何が起きている!』ワードもこの状況には混乱していた。

 

出来上がったのは、全く違う黒き人陰だった。

 

「これは…まさか?」楽が言う。

 

「失敗の様だな。」嫉が続けた。

 

「本来なら何が起きる筈だったんだ?」哀は聞いた。

 

「我々の身体は巫女に吸収され、一体の白きものへと変化する筈…と言う事は、二択をはずしたな。」喜は冷静に答える。

 

 

黒き獣は、呻き声の様な雄叫びをあげると、ワードに対して先程のような黒い光を放った。それを浴びたワードはその装甲が消え、ゴンの姿に戻ってしまった。

 

「そんな、変身が…」ゴンはワードがなくなった事に驚きを隠さなかった。

 

「まぁ、今はこれでも十分だ。黒き獣よ、ワード達を消せ!」

 

今度は、尻尾を振り回してゴン、そして勝治と鉱也に向かって振り下ろした。

 

 

 

土煙が収まったそこには3人の姿がなかった。

 

 

「逃げたか…」

 

 

 

 

 

 


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