仮面ライダーワード〜言霊の統率者〜   作:津上幻夢

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第14話 超越の紅蓮炎

「ここは…」

 

ゴンと勝治は、自分の状況に気付いていなかった。攻撃を受けた筈なのに、全く別の場所にいた。どこかの建物の中。

 

「ここはジョーカーの特別機密拠点兼研究室さ。国山君、風土君を病院に。」

 

奥から現れたその姿にゴンは見覚えがあった。少し前に氷河核を奪った黒い戦士と瓜二つだ。

 

「了解しました。」刹那は、そう言うと鉱也を連れて部屋を後にした。

 

 

「お前、何者だ。」

 

ゴンが問う。

 

「これはプロトウォーズと言って私がだいぶ前に開発したものだ。そして、それを身につけている私の正体は…」

 

黒い戦士は、ベルトから鍵を引き抜いた。

 

「ジョーカー社長、白夜総三さ。」中から現れたのは、テレビでもよく見る男、白夜総三だ。まさか仮面ライダーを扱う会社が関わっているとは思っても見なかった。

 

「ジョーカーって、あの仮面ライダーの?」勝治が聞く。

 

「そうさ。まぁ、立ち話もなんだし、そこに座ってくれ。お茶を出そう。」

 

そう言うと、彼は奥の部屋へと向かった。

 

ゴンは、この時何かおかしい事に気がついた。今までは普通だったのに、何故か物足りなく感じる。それが何か、まだ気づく事はなかった。2人は椅子に座り、茶が出されるのを待っていた。

 

 

「待たせたね。」総三は2人の目の前にお茶を置き正面に座った。

 

「今までのワードの活躍は、国山君と風土君から聞いているよ。私の会社の戦士にも負けないくらいに…」

 

そう誉めたが、2人は特に反応する様子はなかった。

 

「すまない、君達にとって今はそんな話をしている場合ではないな。これを見てほしい。」そう言って彼が出したのは、くたびれた紙だった。そこには、ワードらしき人、女性、数人の人間、黒き獣、そして白き竜が載っていた。竜を除き、残りの影には見覚えがある。

 

「今回現れたのはこの黒き獣。儀式に失敗すると現れる最強の生物。その生物の黒い光線には、神の力を一時的に抑える効果があるとされている。現に君の身体もそうなっている筈だ。」

 

「そんな事、あるわけ…」その時、その違和感が何か初めて気がついた。ワードの意識がない、そもそも居なかったかのように。

 

「ワード?ワード!」ゴンは叫ぶ。しかし、その声にワードが答える事はない。

 

「やはり…だが、安心したまえ。その能力は一時的なもの。時間が経てば、戻る筈だ。」

 

「僕には、今ワードの力が欲しいんです。そんな悠長な事言っている暇は…」

 

「ゴン、ここは抑えろ。」そう言ったのは勝治だった。

 

「俺がなんとかする。」

 

そう言うと彼は総三の前に立った。そして、頭を下げた。

 

「俺にも、鉱也さんが使ってるベルトをください。」

 

「何を言ってるんだ…?」ゴンが聞く。

 

「今ゴンと鉱也さんは戦えない、刹那って人も鉱也さんを病院に連れて行ってる。それなら、今動ける俺も変身できれば…神楽を助けられる。」

 

総三はしばらく黙って彼を見ていた。

 

「私も、君が戦えればいいと思っていたんだ。だが、ベルトがない。」総三はベルトがないをわざとらしく言った。そして、立ち上がると、ぐちゃぐちゃになっている作業台を整理し始めた。

 

「そう都合よくあるわけ…」そう言って作業台から出したのは鉱也が最初につけていたマウントドライバーだった。

 

「そういえば、彼が無くしたって言うから一個余分に作っていたんだっけな。」

 

その言葉を聞いた勝治は、希望が見出せたようで顔を上げた。

 

「自分からなりたいと言ったからには、負けないでくれよ。片名君。」そう言うと彼は、マウントドライバーを勝治に渡した。

 

「ありがとうございます!」そう言うと勝治は早速戦いに行こうと走り出した。

 

「待って、勝治!」ゴンはそんな彼を止め、あるものを投げ渡した。

 

それを受け取った勝治は、驚いた。

 

「これは、烈火核…」

 

「核が無ければ変身できないでしょ。俺の代わりに頼んだ。」

 

「ああ、任された。」そう言うと勝治は研究室を後にした。

 

 

「…君は、このままここで報告を待つのか?」総三は、座り込んだゴンに聞いた。

 

「それはあなたも同じでは?」ゴンは正論で返した。

 

「…私は、今の体力ではせいぜい変身するので精一杯。足を引っ張るだけだ。」

 

2人の間には、しばらく無言の間が流れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、先程の広場には、性悪党の5人と黒き獣が陣取っていた。

 

「早くもう1人を連れて来いよ。」怒は嫉に言い放った。

 

「無理よ、さっきので皆力を使い切った。仮に捕らえれても、儀式はできない。」

 

「ふーん、僕はつまらないし帰るよ。」楽はそう言うと、広場から出て行った。

 

「僕も今回ばかりは彼に賛成だ。帰らせてもらう。」哀も続けて居なくなる。

 

「待てよ!ちっ…こうなったら、この女を人質にしてワード達を誘き寄せるか?」怒は新しく提案をした。

 

「その必要はない、何故なら…俺が来たからな。」そう声を上げたのは勝治だった。

 

「なんだ…さっきの男か。俺がまた捻り潰してやる。」怒は、刀を構えた。

 

「今度の俺は一味違う。」そう言うと、マウントドライバーを装着し、烈火核を構えた。

 

「見てな、俺の変身を。」勝治は核をベルトに装填した。

 

[烈火、登上!][全てを焼き尽くす烈火!]

 

火山のように湧き上がる力を、赤き鎧に変え、それらを装備する。胸部には烈火の文字が現れ、頭部は真紅のバイザーが装着される。

 

「俺の新たな名は仮面ライダー紅蓮。全てを焼き尽くす!」

 

仮面ライダー紅蓮、そう名乗った彼は、迫る怒にゆっくりと近づいた。

 

 

 

 

 

 

 

「片名君は、何故行ったと思う?」

 

総三は、質問を変えた。

 

「さっき言ってたみたいに、神楽を助けるため?」ゴンは答えたが、違うなと返された。

 

「確かにそうでもあるが、それは全て君の代わりになりたいと願ったからだ。彼は君に対してずっと対抗心を燃やしてきた。だが、それに対して君はどんどん強くなっている。そんな君の代わりをして超えようとしているんだ。」

 

総三は、勝治が座って居たところに座り、ゴンを見た。

 

「それに対して、君はワードの力がないことを理由にただ立ち止まっているのか?呆然としているのか?そんな悠長に構えて居たら、救えるものも救えない。」

 

「…なら俺はどうすれば良い、教えてくれよ…」ゴンは、自暴自棄になって居た。その様子に総三は、厳しい視線を緩め、優しい顔になった。

 

「君のしたい事をすれば良い。それが、最善の道へとつながる。まぁ私が言えた話ではないけどな。」そう言うと、総三は立ち上がり、奥の部屋に行こうとした。

 

「そういえば、まだ謝ってなかったね。氷河核の事。本来ならあんな方法を取るべきではなかった。すまない。」

 

「…別に、半分忘れてましたし。気にしてませんよ。それ以上の見返りも貰いましたし。」そう言うと、ゴンも何かに駆り立てられるように研究室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

「はあっ!」怒は刀を紅蓮に振り下ろした。それを紅蓮は左腕で弾き飛ばした。

 

「なっ!」怒が次の攻撃に移ろうと構えるが、紅蓮はそれを右脚で蹴り上げ、倒した。

 

「さっきの借りは返させてもらった。神楽を返してもらう。」

 

「望み通り、出来るものならな。」喜はそう言うと、黒き獣を解き放った。

 

黒き獣は、一瞬にして紅蓮の元へ飛びかかる。

 

紅蓮は黒き獣に飛びかかり、地面に倒し馬乗りになった。

 

「神楽、俺だ、勝治だ!しっかりしろ!」紅蓮は変貌してしまった神楽に声をかける。しかし、暴れ回る黒き獣にその声は届かず、一瞬にして左に押しのけられてしまった。

 

「くっ、やっぱりダメなのか…」紅蓮が立ち上がるよりも早く黒き獣は突撃してきた。しかし、それは横からの乱入者で弾き飛ばされた。

 

「大丈夫か…勝治。」そこには、息を切らしたゴンの姿があった。

 

「ゴン…なんでここに、変身できないんだろ!」

 

「勝治、俺は俺の思うままに動きたい。変身できなくても戦いたい。神楽を助けたい。それが俺の今やりたい事だから。」

 

その時、彼の身体に力が入った。腰には、既に剛力核が装填されたワードライバーがあった。

 

『待たせたのう、ゴン。今なら戦えるぞ。』

 

「封印が解けた…」嫉が驚き混じりの声で言う。

 

「変身!」その声と共に、ゴンはワードへと変身を遂げた。

 

「俺は俺の強さで救う…救ってみせる!」

 

「俺は強くなる。そしてワードを超える!」

 

「やれ!」喜は、黒き獣に先程の黒い光を放つよう指示する。

 

「勝治、俺に合わせてくれ。」ワードはそう言うと、紅蓮は頷いた。

 

黒き獣は、黒い光をワードのいる場所目掛け放った。

 

「今だ!」その合図で2人は空へとジャンプした。

 

[必殺書き込み!]『マッスルストライク!』

 

[マウントファイア!]

 

ワードは左足、紅蓮は右足を身動きの取れない黒き獣に向け突き出した。

 

2人のキックは、黒き獣を貫き、爆発させた。

 

背後を振り返った時には、幹部の姿はなく、倒れた黒き獣の姿だけあった。

 

ワードは、黒き獣から力を吸収した。そこから[天獄]と書かれた核を手に入れた。

 

 

 

 

「あれ…私は何を…?」神楽が目を覚ました頃、同時に空に太陽が再び現れた。

 

「よかった、無事だったんだね。」

 

「ゴン…と誰?」神楽は、変身したままの2人のうち、ゴンしか分からなかった。

 

「俺だよ、勝治だよ。」そう言って勝治は変身を解いた。

 

「そっか…勝治も助けてくれたんだ。ありがとう。」

 

「い、いやーゴンが怖くて戦えないって言うからな…」勝治は照れながらそう言った。

 

「案外、2人はお似合いかもね。」ゴンはそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

「そうか、風土君は無事だったのか。」

 

その頃、総三は病院にいる刹那から鉱也の無事を伝える連絡を受けていた。

 

『ええ、ただ…』刹那は、告げ辛い事を、ゆっくりと話した。

 

「もう戦えない…か。彼が目を覚ましたら、とりあえずお疲れ様と伝えてくれ。」そう言うと総三は電話を切った。

 

 

 

 

 

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