先程の戦闘から半日が経過した頃、総三は勝治と刹那を集めた。
「2人に渡したいものがある。」そう言って渡したのは、二つの核だった。『紅鎌』、『守神』とそれぞれ書かれていた。
「これは?」勝治が聞く。
「これは私が核を研究して創り出した人造核だ。その力はとても強大だ。その力ゆえ、必殺技にしか使えない。変身用にはくれぐれも使わないでほしい。」総三は2人にそれぞれ渡した。
「ありがとうございます。」刹那がそう言った直後、部屋に神楽が勢いよく入ってきた。
「みんな、外に竜が来てる!」そう勢いよく彼女は言った。
なんと神を屠る竜は既に研究室のすぐそこまで来ていた。
「…あっちからお出ましか…」勝治は肩を鳴らした。
3人が外に出た時には、既にゴンの姿もあった。
「みんな!」『遅いぞ!』ゴンとワードはそれぞれ3人の到着を待っていた。
「悪かった。だが、こっからは全員で行くぞ。」勝治はそう言うとベルトを巻いた。
「ええ、みんなで言葉を救う!」神楽もベルトを巻く。
「…私は、私の出来る事をする。」刹那も決意を固めベルトを装着した。
「…言葉は、俺たちの力で絶対に助ける!」ゴンは核を構えた。
『…性悪党、長きに渡る戦い、今ここに決着をつけようぞ!』
4人は竜を見上げた。彼らが戦う状態になるのを待っている様にも見えるその姿からは、絶対的強者の風格を見せつけている。
「「「「『変身!!』」」」」
『言霊の統率者』ワード矛盾の形、『零氷の守護者』氷華、『烈火の扇動者』紅蓮、『深緑の剣闘士』蒼刃。4人の戦士は並び立ち、竜との戦いをすべく構えた。
「ウギャァァ!!!!」竜は、地を揺るがす雄叫びを上げた。そして、4人を睨みつけた。
「行くぞ!」その雄叫びを合図としてワード達は一斉に攻撃態勢に入った。
「オラっ!!!!」
初めに攻撃を仕掛けたのは紅蓮だ。空中へ飛び上がると、勢いをつけ巨大な斧を竜の脳天に振り下ろす。
竜は、その攻撃を巨大な翼で空に避ける事で回避。そして、空へ飛ぶ勢いで風を巻き起こし、彼を吹き飛ばした。
「はあっ!!」
次は蒼刃だ。氷華のものと同型の剣に深緑の力を纏わせ右翼に振り下ろす。
しかし、竜はこれを右腕の爪で彼女を切り裂く事で攻撃を防ぐ。彼女は、その攻撃にそのまま地面に墜落する。
『とりゃ!!』
蒼刃が怯んだそのすぐそばからワードは矛を前に出し竜に対して突き進む。
ワードの攻撃を竜は喰らってしまう。しかし、ダメージを負った様子は殆どない。そして左腕でワードを掴み上げた。
「やめろ!やめてくれ…!言葉!!」握られ苦しむゴンは叫んだ。それが伝わったのか、竜は手を緩めワードを離してしまう。そして、突然頭を抱え苦しみ始めた。
「言葉の意志が、竜の動きに影響を与えているのか。」ゴンは他の3人にも伝わる声で話した。
「そう言うことか…言葉!性悪党の力なんかに負けるな!」その意図に気づいた紅蓮が声を上げた。
「なるほどね、言葉!頑張って!!」更に蒼刃も続けて言う。
氷華もまた呼びかける。しかし、3人とは少し違っていた。
「お前は…このまま忘れたままでいいのか!愛する者を、自分の人生を!」彼女が呼びかけたのは、哀についてだった。
「…大切な人を、忘れていいのか哀!」
その叫びで3人は彼女を見た。それは驚きもあったが、それと同時に警告を促すものだった。
竜はいつの間にか正気を取り戻し口から光の一撃を放っていた。
彼女は、それを避ける術なく真正面から受けてしまった。撃たれた時、まるで自然に還る様な感覚に陥った。
「…えっ…」彼女が再び目を開けると、白い空間が広がっていた。そこには性悪党の5人と鎖に縛られてうなされている言葉の姿があった。
「貴様!何故ここにいる!」そう声を上げたのは怒だ。その声に他の3人も彼女を見た。
「…僕が呼んだ。一時的に取り込んだんだ。」哀はそう言った。そして、彼女のいる方へ歩き始めた。
「何故そんな事を?」嫉が聞く。
「…僕は、性悪党にはなれない。笑を忘れる事なんてできない!」哀は声を荒げた。そして、かつて自分のそばにいた彼女の名を叫んだ。
「そんな事で居なくなるの?理解できないよ。」楽が彼に聞く。
「…僕からしたら、世界を壊すことの方が理解できない。笑が好きだったこの世界を…壊す事なんてできない!」
「…そうか。勝手にすれば良い。だが、ワード達に勝つ道筋は存在しない。その選択を後悔するが良い。」喜は怒りを込めた言葉を告げると、黄金の衝撃波で哀と氷華を外へ追いやった。
2人が外に出たのは、氷華が攻撃を受けた直後だった。
『…なんで哀がここに!』哀が彼女の前に立つ姿を見てワードは唖然とした。
「…ゴン、これが私のやりたかった事なのかもしれない。」氷華は、ワードの方を向いてそう言った。その言葉の意図を察したゴンは、仮面の内側で笑顔を見せた。
「ワード、彼女はまだ生きている。だが時間はかけられないぞ。」哀はワードに対して命令口調で言った。
『分かっておる!それより、今は貴様も味方と捉えて良いのか?』ワードは、苛立ちを抑えながら聞く。
「…そう言う事、だな。」哀は銃を構えた。
「哀、竜を誘き寄せてくれ。私がその隙に叩く。」氷華の言葉に、哀は頷き、銃の引き金を引いた。
竜はそれに反応して、彼に両爪で攻撃を仕掛ける。
その攻撃を哀は身軽に回避して、また銃で攻撃する。
そして竜が右腕を哀に振り下ろそうとしたその時だった。
[マウントブリザード!]絶対零度の氷を纏った氷華の剣が竜の背中に突き刺さる。竜はその攻撃が効いたのか、叫び暴れ回った。その勢いで氷華は剣を背中に突き刺さしたまま地面に落ちてしまった。
氷華が再び立ち上がろうとしたその時、怒りに満ちた左腕を竜は振り下ろさんとしていた。
避けられることのできない攻撃に彼女は顔を伏せた。
彼女が再び顔を上げた時、目の前には爪で右半身が抉られていながらも、氷華を守っている哀の姿があった。
「何…やったんだよ…」弱々しい声で彼は言った。その直後爪は引き抜かれ、彼は地面に倒れそうになった。
「哀!!」氷華は倒れそうになる彼を受け止めた。
「…ここまで…か…」哀は力を徐々に失い人間態に戻った。
「何やってるんだよ…哀…」氷華は言う。
「…別に、僕はもう5年前に死んでたんだ…今更死ぬのなんて怖くない…」
氷華は、今にも死にそうな彼に、ある物を左腕に握らせた。
「これ…は…」そこにあったのは、ペンダントだった。
「それは、お前が持っていてこそ価値がある。」氷華は、震える声でそう言った。
「そうか…あり、が…とう…」その言葉を最期に、彼の眼は二度と開く事はなかった。
そして、彼の身体は思念体の様になり、彼女が持っていた守神核へと入っていった。力を託したのだ。
氷華は、守神核を握りしめて立ち上がった。
氷河核をベルトから外し、守神核を装填した。
[守神核!登上!][守護する神、護神!]
氷華の装甲は、動きやすさ重視で軽装だったものが、防御重視となり肥大化する。胸部の文字は氷河から護神に書き換えられた。哀の世界を守りたいという思いを受け取った彼女が、本来変身に使えない核を使い変身してみせた形態。それが仮面ライダー氷華護神。
その姿に脅威を感じたのか、竜は彼女に向かって光を放った。
光は、確かに彼女を包んだ。しかし、護神はそれをもろともせず受け止め、耐えてみせた。
「哀…共に護ろう!」
氷華は右拳を突き出し、竜に向かって放った。