第21話 2027:消失の救済者
酒に酔ったサラリーマンや、客引きの若い女が街を彷徨く夜、その男は不思議な時計を持っていた。
先程、時計と言ったが常人が
「さて、作ったはいいがどうしようか。」
それを持つ男が言う。彼の名はネイム。世界を渡り『セパレーテド』という怪人を生み出す。
そもそもセパレーテドとは…まぁここに立ち入ったものの中には、それを知っている者もいるだろうが、一応説明しておこう。
それは、無念を抱えた魂が人間を
実際、この世界には既に一度立ち会っている。およそ5年も前の話だが。
「誰かいい相手は…」そう思った矢先だった。路地裏に、何かがぼうっと光るのが見えた。それは、ずっと一定の明るさを保っていた。
何かあると感じた彼は、その足を進める。
そして、その光の先を見るべく路地裏に入った。
「これは…フッ。」
彼は、その正体を見た時、いい考えを思いついたと言わんばかりの顔をした。
「君達の無念は、私が救ってやろう。」
そう言うと、時計を起動させた。[Word…!]
「うぉぉぉ!!!!」誕生した異形の紫の化物は、ビルの屋上へ上がり、本を使い街から『何か』を集め始める。
「力が…湧き上がる。」そう呟いたその時、背後に人の気配を感じ振り返った。
「なんだ…貴様?」そこには、真紅の炎を纏った戦士がいた。
「ワード…!」怪物は彼の名を呼ぶ。
「俺を知っている?」ワードと呼ばれた人物は、驚く。しかし、次の瞬間ワードの身体から真紅の装甲が剥がれ始め、人間の姿へと戻る。
「何が起こっている?」塾屋ゴンは元に戻った身体を見る。その間に、怪物は夜の闇へと消えてしまった…
「あーもう、なんで俺だけ居残りなんだよ!」
放課後、ある教師に言われ俺は居残っている。確かに、テストの点は悪かった…それは否定しない。でも、補習ギリギリだったじゃん…
しかし、補習の為の居残りにしては、少々違和感を感じた。俺以外にも補習になる生徒は居たのに、俺だけが今日残された。
その残るように言った『教師』は中々来ない。相変わらず人使いの荒い…
「面倒な教師?か。」
「そうそう…って、いつの間に。」
いつの間に来ていたのか…この教師が、例の教師、東野誠也だ。
「職員会議が長引いてな…問題生徒の処罰の話し合いは面倒だ。」
彼は、胸ポケットから何かを取り出そうとしたが、すぐにやめた。恐らくタバコだろう。教師が学校内でタバコを吸ったなんて知れ渡ったら、問題になる未来が見えたからだろう。
「さ、居残り授業の開始だ。」
そういうと教科書を開く…かと思った。彼は持っていた教科書を教卓に置くと、教室に『世界移動』の為の膜を広げた。
「へぇ、それは随分と楽しそうな居残り授業ね。」
その膜を潜ろうとした俺たちを、よく聞く彼女の声が止めた。
「ヒステラ?いつからここに?」
「救済者君、説明は後にしよう。それより、私を置いて課外授業とは、薄情な先生もいたものだね。」
彼女の名はヒステラ、一応俺の従者…らしい。彼女は、俺には綺麗な顔を見せたが、東野に対しては睨みつけるような視線を浴びせた。
「俺が伝える前に、お前が逃げるからな…不用意に避けているのが仇になったな。さ、いくぞ。」
2人は、相性最悪だ。俺もこの関係に何かしら言いたいことがあるが、今は関係ないことだから首を突っ込まないでおこう。
ところで、俺が誰であるか…まぁ、これを読む人間なら知っていて当然…かもしれない。
俺は『月河 統矢』…仮面ライダー
2027年 4月
俺は、新たな世界に降り立った。
街路樹が桜を咲かせている様子からして、恐らく4月上旬くらいだろうか。
しかし、何か違和感を感じる…なんというか…親戚の家に遊びに来た時みたいな懐かしさかな。自分の家とはまた違う、でも、全く他人の家であるとも感じない…そんな感じの。
「ここ、自分の世界じゃないのに懐かしい気分になるな…」俺の独り言に、東野は面白い着眼点だと言うような目をした。
「それもそうだろう、ここはウォーズの世界だからな。」
「そうなの?じゃあ、また康介が…」
俺にとってこの世界は、2回目と言う事になるらしい。前回は、仮面ライダーウォーズと共にセパレーテドウォーズを倒した。今思えば、あれが初めて巡った世界での戦いだったな。
「いや、今回は別のライダーだ。この世界は少々狂っていてな、複数のライダーの歴史が重なっている…それも崩壊する事なく。」
ヒステラもそうだが、東野も大分変わった人物だ。普通、『並行世界』について知ってる奴なんて居ないだろ?
「……珍しいのか、そういう事って?」俺は素直に疑問をぶつけた。
「……下から数えた方が早いお前が、今後の定期テストで毎回上位5人に入る確率と、殆どイコールだな。」
…なんか貶された気がするけど、とにかく珍しいけど、僅かにあり得なくもないと言うのはわかった気がする。
「雑談はその辺りにしよう、この世界の…2人目のライダーを探すのが先だよ。」
ヒステラが立ち止まっている俺たちを促す。
「2人目、と言うよりも3人目じゃないのか?」東野は訂正した。
いや、ウォーズにしか会ってないんだから、2人目でしょ。そう突っ込みたい。
「ネタバレに関わる発言はNGだよ。先生がテストの答えをいきなり言うくらいに。」
ネタバレ…と言う言葉の意味が分からなかったが、今知るべき事ではないのは確かだ。次誰に会うかなんて分かったら、つまらない。
俺達は、2度目であるウォーズの世界を歩く。2025年から2027年と2年も月日が経っているが、意外と街の様子に変わりはない。
しかし、何か物足りないような気がしてならない。
ふと、左手側にあるコンビニが目に入った。青に白に緑と三色のラインが入ったその見た目は、これを見ただけであれだとすぐに分かりそうだ。なんと言う名前だろうか、看板などを探して見つけようとした。
「救済者君、何か見つかったの?」立ち止まっている事を不審に思ったヒステラが声をかけた。
「なんでもない、先に行こう。」どうせコンビニだ。至る所にあるのだから名前を知るのなんて後でいいやと足を進める。
その後小一時間、2人目のライダーを探して街を歩くが、それらしき人物は見つけられなかった。
よくよく考えてみたら、仮面ライダーか仮面ライダーじゃないかってそんな事戦わないと分かるわけない。そう思うと、急に集中力が切れた。
「これ、康介に頼んだ方がいいんじゃないの?」俺はふとそう呟いた。
「それは禁句だよ。それに、この世界に余り関わり過ぎるのもロクな事に巻き込まれかねない…」ヒステラは、否定的な意見を話す。
「こういう面倒な世界ほど、外部からの干渉を受けやすい。と言うよりも、この世界がこうなったのも全て…」東野が話を広げようとした。
「さっきも言ったけど、ネタバレは厳禁だよ。その先を知らない人だって多い訳だし。」彼女は、会話を遮った。だいたい、さっきからネタバレって言うけど、これ読んでる人は知ってそうな気がするんだけどね。
「ネタバレというが、誰に向かってだ?」
「貴方だってわかってる筈だよ。」
まずい、2人の口喧嘩が始まった。このままじゃまずい。どうすれば…
その時だった。まるで雷が鳴るかのように俺の腹が空腹を知らせた。…そういえば、今日は昼飯もまともに食べてなかった…恥ずかしいが、2人の口論を止めるには丁度良かった。
「救済者君、お腹が空いていたのか。気づかなくて申し訳ない。」
「…しょうがない。この近くにいいラーメン屋がある、そこへ連れてってやる。」
どうやら、喧嘩の流れを断ち切れたようでよかった。しかもついでにラーメンも食べれるなんて、今日はいい日だ。
「らっしゃい。」
赤い暖簾を潜った先に、旨そうな匂いが漂う店内。俺達は東野おすすめのラーメン屋に入り、一番手前のカウンターに東野、俺、ヒステラの順番で座る。
「…いつもの。」東野は、店主らしき人物に言う。
「…ねえ、いつものって何?」俺は気になった。
「…ほら、あそこに書いてあるエレ…なぁ、あのメニュー表、文字が掠れて見えないぞ。」東野が指したメニュー表には、一切文字が書いてなかった。
「そんな筈はないよ。朝も俺磨いた時にはっきりと書いてあったし…本当だ。なんでだ?」店主も、文字が掠れていることを不審に思った。
「ねぇ、まさかこれセパレーテドの仕業じゃないようね…?」
俺は3人にひそひそ声で話す。
「…確かに、可能性がある。」ヒステラは俺に賛同する。
「そんな、文字を奪う奴なんている筈…」東野が反対の意見を言おうとしたその時だった。
「うわっ!怪物だ!!」「逃げろ!」
外が騒がしくなった。そして怪物というその言葉、まさか!
「…行ってみよう。」俺は2人に目配せして外に出た。その意図を理解した2人も外に出た。
「…文字を寄越せ…!」
そう言って、逃げ遅れた男の手に持っていた本を、自身が持つ『本』に吸収する。
「何やってんだ…やめろ!」統矢は、その怪物に向かっていう。
「ワード…?」怪物は、その身体を振り返らせた。
一色の紫からなるその身体だけでも怪物であると言っているようなものだ。右腕には盾、左腕には本を持っている。背中には、槍のような武器を提げている。頭部は、兜が砕け中の顔が見えているような造形が施されており、初見では恐怖を感じるだろう。
「あれが…ワードか?」東野は、あの怪物と『彼』の姿を重ねた。
「今は誰であるかよりも止める方が先だ!」[REME-L!][WAR-Z!]統矢はリムールとウォーズのウォッチを起動する。
「救済者君、始めよう。」[救済暦伝!]ヒステラは、小型の本のような道具を起動する。
「…そうだな。やるなら、早くやるぞ。」東野は、ブッカーからカードを取り出し、正面に向ける。
3人は、それぞれアイテムをベルトに装填する。
「「「変身!!」」息ぴったりのその掛け声で、それぞれの変身が発動する。
[RIDER TIME!][KAMEN-RIDER REME-L!][ARMOR TIME!][Open!WAR-Z!]
[聞伝 抜刀!][聞伝 一冊!歴史の書と伝暦剣聞伝が交わる時、従者の懐刀かいとうが離空を切り裂く!]
[KAMEN RIDE.][DE-RAISE!]
統矢が変身した黒と青の仮面ライダー、リムール。本来なら、右にウォッチを装填して変身する。しかし、今回のように左側にアーマーとなるライダーのウォッチがある場合は、そのライダーに対応したアーマーが装着される。今回はウォーズだから青緑のアーマーが装着される。左胸には、ウォーズのアイデンティティと言ってもいいZのラインが浮かび上がる。リムール、ウォーズアーマーの完成だ。
剣をベルトから引き抜く事でヒステラの身体は漆黒の鎧に包まれる。背中には、彼女の特徴でもある銀の長い髪が地面に向かって伸びている。空に向かって伸びるソードクラウンと、紅の瞳が特徴的なライダー、ヒステラの変身が完了する。
ベルトを閉じる動作とともに、東野の体の周りには、灰色の複数の素体が並ぶ。それぞれ彼に向かって動き、一つになる。それによって、灰色に緑の瞳が煌めいていた。そこへ、数枚の板のようなものが顔へ突き刺さる。それによって、体色にマゼンタが加わり、ディレイズへと変化させた。
「お前ら…ワードの仲間か…?」
怪物は、姿が変わった3人をみて、彼の名を口にする。
「…アレが持っている本…」ヒステラが、彼が持つ本をみて呟く。
「どうかしたのか…?」リムールが聞く。
「確か、神器と同程度の力を持つとされる本、『オグマの書』に似ている…どんな力を持っていたかまでは覚えていないけど、警戒した方がいい。」彼女は、武器を銃に持ち替えると引き金を引き怪物に攻撃する。しかし、これは盾で防がれる。
「…面白い、相手をしてやろう。」怪物は、本を盾の裏に収納すると背中の槍を取り出した。紫色に反射する刃を見せつけ3人と距離を詰める。
「来るぞ!」ディレイズは、ライドブッカーを剣に変え攻撃の態勢に入る。
怪物は、槍を距離が一番近いディレイズではなくリムールに向けて突き出す。
リムールは、鎧を微妙に擦ったが、ほぼ無傷で避ける。
「俺かよ!」リムールは拳を握りしめる。
そして、再度槍の突きを見舞おうとする怪物の右胸にストレートをぶつける。
格闘技能に優れたウォーズアーマーの拳は、怪物に強い衝撃を与える。しかし、怪物は後退しただけですぐ様攻撃を仕掛ける。
「こいつ、痛みを感じない?」そうリムールが呟く間にも怪物は攻撃を仕掛ける。
リムールは、それを回避する。
勢いに身を任せていた怪物は、後方にいたヒステラの方まで走る。
彼女は、銀色の髪を靡かせながら避ける。
しかし、それが奴の目的であった。怪物は、盾から本を取り出しヒステラに向ける。
「
すると、彼女の身体を形成していた鎧が徐々に吸い取られていく。刹那、彼女の鎧はベルトに装着されていた本と共に消えてしまった。
「ヒステラ!」リムールは、変身が解けた彼女を守るべく前に出る。
「…力を奪う本か…燃やすに尽きる。」[KAMEN RIDE,LOCK!]
ディレイズは、鍵の騎士ロックへ変身、さらに右半身の赤いロックのカードを装填する。
[FORM RIDE,FLAME!]
ロックフレイムフォームへと変身。炎を纏ったライドブッカーで怪物を斬る。
怪物は、左手が本で塞がりながらも右腕の拳で攻撃を仕掛ける。
ディレイズは、攻撃を受けて一旦引く。
しかし、間髪入れずリムールが攻め込む。
「ついでだ、貴様の力も貰う。」怪物は、再び本を開いた。
すると、今度はリムール、ウォーズのウォッチ、そして顔面の『ウォーズ』の文字の吸収を始める。
「何!」リムールは脱出を試みるが、身体が脱力して上手く動けない。
「はあっ!」そこへディレイズが間を割って入る。
ディレイズは、剣で怪物を振り払おうとする。
分離した勢いでリムールは地面に倒れるが、その頃にはリムールからウォーズアーマーが外れていた。
そして、地面にウォーズウォッチが転がる。
「…!」リムールがウォーズウォッチを拾い上げる。しかし、そのウォッチはウォーズの顔が描かれておらず、ブランクになっている。
「ウォーズのウォッチが…!」リムールは、ウォーズウォッチが消滅した事に絶望しそうになる。
「こいつ、かなりの曲者だな。」ディレイズはそう言う。
「ああ…よくも、康介の力を奪いやがって…」リムールは立ち上がると、右腕のホルダーに装着されている新たなウォッチを起動する。[HOLOS!]
ウォーズウォッチが外れた左側のスロットに、ホロスウォッチを装着する。そして、ベルトを回転させる。
[ARMOR TIME!][ALCHEMIST MACH!HOLOS!]
リムールの素体に、新たにオレンジとゴールドの鎧が呼び出される。そして、それらが装着されていく。左腕には、特徴的なロボットアームが装着されている。リムール、ホロスアーマーは左腕を構え怪物に向かって走り出す。
「おらっ!!」リムールは左腕のロボットアームを怪物にぶつける。怪物は、そこで初めて突き飛ばされ、地面に転がる。
「ぐっ…中々やりおる。しかし、ワードと比べればまだまだ!」
追撃のパンチを迫るリムールを怪物は回避、左腕の本を即座に槍に持ち帰ると後ろ向きのリムールを切り裂く。
「ぐっ…ウォーズの力返してもらう!」
[FINISH TIME!][ALCHEMIST・TIME PROTECT!]
リムールは、必殺技を発動させる。左腕に強大なエネルギーを纏わせる。そして、怪物に対して突き出す。
「…甘い!」怪物は、その左腕の攻撃を右手の盾だけで防ぐ。
そして、左腕の槍を本に持ち替えて開く。
「学ばない奴め…」怪物は、必殺技に集中しすぎたリムールの隙を狙って、再び力を吸収する。
「まずい!」引き下がれないリムールは、必殺技で無理やり押し切ろうとする。
「あの馬鹿!」ディレイズは、攻撃をして2人を止めようとした。しかし、その行動を起こす前に、その必要は無くなってしまった。
リムールの力はホロスの力と共に本へ完全に吸収されてしまい、統矢の姿へ戻ってしまった。
「そんな…変身が!」
戸惑う統矢、それを怪物は平手打ちする。そして、盾に本をしまう。
「もう貴様らに用はない…」そう言って立ち去ろうとした。
しかし、それを良しと思わない人物が現れた。
「ようやく見つけた…今度こそ倒す!」
「…来たか!ワード!」
ディレイズの後ろには、怪物と似たような見た目の仮面ライダーがいた。右半身が赤紫、左半身が青紫になっていて、瞳には『矛』と『盾』を模した緑の瞳が敵を見る。怪物は彼を『ワード』と呼んだ。そう、彼こそがこの世界の3人…いや2人目の仮面ライダー、ワード。
「…だが、貴様とはまだ戦う必要がない。」怪物はそう言って姿を消した。
「また逃げられた…」ワードは変身を解き、倒れている統矢に近づく。
「大丈夫ですか?」彼は、統矢に手を伸ばす。
「…ありがとう、ございます。」統矢はその手を握り起き上がる。
「貴方の名前は…?」
「俺は、塾屋ゴンです。初めまして…」
これまでフォース、ウォーズアナザーでコラボして、更にリムール本編にウォーズを出させていただいて、尚且つワードでもコラボさせていただきありがとうございます。
リムール本編→ https://www.pixiv.net/novel/series/7664482
次回は12月中旬の予定です。