仮面ライダーワード〜言霊の統率者〜   作:津上幻夢

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第4話 天空の鳥人間

私が目を覚ましたあの時、世界は光に包まれていた。

 

眩しすぎて、開いたばかりの目をすぐに閉じた。

 

 

 

再び目を開けると、そこには見たことのない紫の戦士と化け物がいた。

 

 

なんでだろ…なんで紫の方は『戦士』だと思ったのだろう…

 

 

2体は、互いの技で戦っている…というよりは戦士の方が有利だった。

 

紫の戦士は、渾身の蹴りで化け物を倒した。

 

その化け物から勝治が倒れてくるのははっきりと見えた…

 

戦闘を終えた紫の戦士はゴンの姿になった。

 

一体、あの姿はなんなんだ…2人の身体に何が起きたのか…

 

 

 

 

 

今もそれしか考えていられなかった。

 

 

 

「面!!」

 

 

(神楽)の目の前で、その試合は幕を閉じた。

 

私の学校の負けだ。先鋒は圧勝だったが、続く次鋒、中堅…そして副将で勝負は決した。

 

 

 

「そっか、残念だったね。」

 

「後一歩のところだったな。」

 

私は、その話を勝治とゴンに話した。

2人は共にここ(常盤高校)が勝てなかったことを悔やんでいた。ただ、私はここで悔しがって終わりにしない。次こそは必ず勝つ。でなければ勝てるものも勝てなくなる。

 

 

放課後の道場。部活は休みだが、私は忘れ物を取りに来てきた。

 

汗の匂いが染み付いた木の床を歩いて道場に向かうと、道着を来て上座の方を向いて座っている姿があった。

 

私は、それが誰か分からなかった。ただ、誰かが来たことを察したのかその鎧はこちらを向いた。鎧の前掛けには、「弧敷」という文字が白で書かれていた。

 

「夏希か、ここで何している?」

 

弧敷夏希、彼女は私と同じ二年生で昨日の試合にも副将として出ていた。あの私の目の前で負けてしまったのが彼女だ。

 

「いえ、心を落ち着かせようと。」

 

面の下から、翠に綺麗に輝く瞳が見えた。そういえば前に鎧を着て正座すると落ち着くって話していたことを思い出した。きっと昨日の試合のことを…

 

「そうか…」

 

私は彼女の隣に腰を下ろした。

 

沈黙がほんの少し流れた。夏希にとってとても不安な間だった。

 

「その、昨日はごめんなさい。私のせいで勝てなくて。」

 

「…気にすることはないよ。また次頑張ろ。」

 

私は、そう彼女の目を見た。彼女は、面をゆっくりと取り床に置いた。短い髪から汗が滴るのが薄らと見えた。私が来る前に素振りでもしていたのか…

 

「私、いつもこんな調子で…いつも肝心な時に負けて。本当みんなに申し訳なくて…」

 

彼女はいつも悩みを自分の心の箱にしまってしまう癖がある。本当水臭いやつ、そんな事誰も気にしてないよ。

 

「みんな、そんな事1人も言ってないだろ?」

 

「でも…」

 

「…とにかく、自信を持って。」

 

私は、人を慰めるのは苦手だ。正直、何をすれば立ち直ってくれるのか分からない…アイツ(勝治)以外…。そういえば、なんで私はアイツの慰め方を知ってるんだ…?

 

 

 

 

 

神楽が去った後の道場で、夏希は再び竹刀を握りしめ素振りを始めた。彼女にとって剣道は自分の人生そのものだった。幼い頃から剣道をすることに憧れていた。竹刀を振り、勇ましく戦うその姿をカッコいいと思った。小学生になってから地元の道場に入門、そこで初めて竹刀を振った。最初は彼女自身が竹刀に振り回される感覚だったが、いつの間にか手の延長のように操れるようになった。

中学生になってからは剣道部に入部した。そこでは期待の新星として注目された。そんな中で最初の大会、決勝の舞台で出会ったのが万葉神楽だった。神楽の竹刀は、自身の腕以上のものだった。剣と一心同体になっている、そんな感覚がした。一方的に打ち負かされた彼女は、今度こそは勝つと誓った。

しかし、未だ彼女に勝てずにいた。彼女に勝てなければ…強くなれない…

 

でも、「その強さは私にない…」

 

 

「勝てなくて、悲しいのか。」

 

その時、彼女に語りかける男の声がした。彼女が振り返ると、そこには黒いスーツを来た青年が立っていた。まるでさっきまで葬式に行っていたのかと聞かれてもおかしくないような見た目の彼は、徐々に夏希に近づいた。

 

「あなたに…何が分かるの?」

 

彼女は突き放すように言った。だが、心の中では、分かってくれるかもしれない…そう感じた。

 

「分かるさ…その『哀しみ』を僕にも分からせてくれ。」

 

黒スーツの男、『哀』は彼女の手を握った。

 

すると、彼女の身体が水に浸っているような感覚に陥った。彼女は、徐々にうめき始めた。その顔には、頬を流れる一筋の涙があった。

 

その頃には、哀の姿はなく、代わりに忘れ物を取りに来るという本来の目的を思い出し帰ってきた神楽が現れた。

 

「な…なんなのよ…」

 

神楽が驚きの声を上げるよりも早く夏希の身体はみるみる姿を変えた。白い鳥のようなその姿はまるで湖に脚をつけた白鳥のようだった。

 

神楽は、自分が襲われるのではと急いで逃げた。先日のラーメン屋で見た作業服の男達みたいに…

 

 

「「うわっ!!」」

 

その時、廊下の角で彼女の身体は地面に倒れた。死角から別の人物が現れたのだ。

 

「ごめんなさい!」

 

すぐに相手が謝ってきた。彼女はその声で誰なのかが分かった。塾屋ゴンだと…

 

「私は大丈夫。」

 

そう言って顔を上げると、ちょうどゴンと目が合った。ふと、彼なら救えるのでは、彼女を…あの紫の戦士となって…

 

「ゴン…」

 

彼女がそう言ったその時だった。白い鳥の怪物は顔の嘴を突き出しながら神楽が走ってきた廊下を全速力で飛んできた。

 

「神楽、危ない!!」

 

ゴンは全力で神楽の身体を押し倒して回避した。

 

「早く逃げて!!」

 

ゴンは、体勢を立て直し攻撃を試みようとする怪物を抑え込み、神楽に逃げるよう促した。だが、彼女の反応は違った。

 

「お願い…夏希を助けて!あなたがあの山で勝治を救った時の様に!」

 

ゴンはその回答に驚いた。その驚きを顔には出さなかった。助けての声で、彼の中に潜むワードの力が目覚めたのだ。

 

『よろしい、ならやってやろではないか。』

 

ゴンは、矛盾核を取り出しベルトに装填した。変身の掛け声で、ゴンの体は、一瞬にしてあの時神楽が見た紫の戦士、ワードへと変わった。

 

ワードは、怪物に攻撃を仕掛けようとする。が、怪物は自身の白い翼を広げて、窓ガラスを突き破るとそのまま上空へと飛び出した。

 

「あれじゃあ追えないな…」

 

中で意思だけ存在するゴンが言った。しかし、ワードは動揺を全くしていなかった。

 

『あちらが空を飛ぶなら、こちらも空へ飛べるようになれば良い。』

 

そう言うと、ワードは『跳速』と書かれた核を取り出した。玄地から得た力だ。

 

「跳速、跳ぶ様に速く走るって意味だけど本当に飛べるの?」

 

ゴンはやや恐怖気味に言った、彼は高い所が苦手なのだ。

 

『矛盾以外の核を使っても死にはしない。』

 

そう言うと、ベルトにハマっている矛盾核を取り出し、跳速核に付け替えた。

 

[核、読み取り][跳躍する速さ…ワード、跳速!]

 

紫だった身体は、核と同じ草原の様な緑色に変化、両腕の武器は腕から外れると合成し形状が変化、弓のような形になる。鷹のような顔面には金色のバイザーが装備され、背中には美しい翼が付いている。[天空の鳥人間]、ワード跳速の形の完成だ。

 

 

 

 

その頃、夏希が変身した怪物は街を見たわせる高さまで飛んでいた、そのまま宇宙にまで飛んでいくのか、そんな雰囲気がした。が、怪物は街のある地点を見るとそこへ急降下しようとした。そこには、ゴンや言葉の住む家がある住宅街だ。

 

『待つのじゃ!!!!』

 

その時、音速をも越えんとする勢いでワードが怪物を追い越した。そして、後ろを向くとすぐ様弓を構えた。緑色に光る矢が放たれると、怪物の右翼を貫いた。

 

「今だ!」

 

ゴンが叫ぶと、ワードは再び弓を構えた。

 

[必殺書き込み]『スピードスナイパー!』

 

その攻撃は、怪物の身体を貫き、爆散させた。

 

 

 

 

爆炎の中から、お姫様抱っこされている弧敷夏希とワードが現れた。

 

ワードはそのまま神楽の待つ学校の屋上に降り立ち、夏希をゆっくり下ろした。

 

そのタイミングでゴンは変身を解き、神楽に顔を見せた。

 

「夏希は大丈夫?」

 

神楽はゴンの顔を見た。

 

「うん、時期に目が覚めるよ。」

 

そう言った直後、夏希は自分の身体を起こした。

 

 

 

 

 

 

「今回も見つけられなかった様ね。」

 

別のビルの屋上で、性悪党の3人は戦闘の様子を見ていた。

 

「だが、今回で分かったこともある。」

 

嫉の残念がる台詞に哀は答えた。

 

「何がだ?」

 

怒は哀に聞く。

 

「やはり、彼女はこの街のどこかにいると言うことが…」

 

 

 

 

 

 

 

 

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