「よおゴン!」朝、片名勝治はいつも通り塾屋ゴンに声をかけた。
「あ、おはよう。」いつもならおはようと返すゴン。しかし、今日は答える前に数秒の間があった。
ゴンはそのまま教室の自分の席に座った。
勝治は首を傾げながら自分の席に座った。
「勝治が考え事だなんて珍しいわね。」
隣の席の万葉神楽が珍しい姿を見せる彼に聞いた。
「いや、あいつ最近なんか雰囲気変わった気がするんだよな。」
「雰囲気が変わった?」
神楽は一瞬、ワードのことかと思い身構えた。ワードの事は何がなんでも隠せと彼に言われているからだ。
「ああ、なんか学園祭の後から上の空って感じで。もしかして一目惚れとかか?」
「さぁ…?」
「って事があったんだけど。」
昼休み、神楽はゴンを連れて屋上で弁当を食べていた。
「へぇ…」ゴンは生返事で返す。
「へぇって貴方ね…自分のそう言う事言われて嫌って思わないの?」
「だって、事実だし。」ゴンはそう呟いた。確かに学園祭の日、自分の初恋の人物と再会した…
「事実なら確かに嫌って言わないわね…え?」神楽は固まった。驚きの表情でゴンを見る。
「って言っても小学生の頃の話。『フウカ』って言う人なんだけど、年上の人で仲良くしてくれたんだ。でも、ある日を境に連絡が取れなくなって…」
「そんな事が…」
その様子を、扉の陰から勝治と言葉が見ていた。
「まさか…そんな訳。」言葉が怒りを込めて呟いた。
「そんな訳って?」勝治が聞き返す。
「あの2人が付き合ってるってことよ!そんな事実許さない!!」
「あの2人が…確かに、お似合いかもな…」
正直、悔しかった。口ではそうなんとでも言えるが。そう勝治は思った。何故だが分からないが。
「それにしても、ここ最近人陰の事件が増えたわね。」部活のない神楽はゴンと帰っていた。
「そうだね。ワードの復活と関係があるのか?」ゴンはワードに聞く。
『恐らく、ワシが復活したことで彼奴等は警戒しておるのだろう。』脳内でワードが答える。
「ワードを警戒して…」
「それなら、確かに納得だわ。敵が再び現れたのなら誰だって警戒するしね。」
「警戒って何に?」
その時、2人の後ろに誰かが近寄った。
恐る恐る振り返ると、そこには目を斜めに吊り上げている言葉の姿があった。
「げ!言葉!」
「何よ!2人してイチャイチャしちゃって!許さないわよ!」
「え、違うよ!」
ゴンは詰め寄ってくる言葉に驚き上手く言葉を返せない。
「しょうがない…ゴン。本当のこと話すよ。」神楽が口を開いた。
「実は…」
「ダメだ!言っちゃダメだ!!」ゴンが叫ぶが神楽はやめない。
「私達、今度貴女の誕生日にサプライズしようと思って…それで警戒されない様にって話をしてたのよ。」
「なーんだ!そう言うことか!よかったよかった!!」言葉は先程の怒りを忘れてすっかり笑顔になっていた。
「バレるかと思った…」ゴンとワードはこの一瞬で疲れ果て倒れそうになった。
言葉は、ありもしない誕生日サプライズを知ってしまった謝罪に2人に流行りのパフェを奢った。ゴンはチョコ系、言葉は生クリーム系、神楽はいちご系のパフェを頼んだ。
街中を歩きながら、彼らはパフェを頬張った。
「そうだな…どの人間にしようか…」
ゴン達がすぐそこにいる街の一角で怒は標的を探していた。目立つ黒のサムライ姿は、周りの人間達が目を惹くほどだった。
「…この時代は歩きづらいな。」そう呟いた時、人が騒ぐ声がした。
その方向を見ると、少年がゲームソフト数本を手に持ち走っていた。その後ろには、ゲームショップの店員であろう人物が追いかけていた。
「待ちなさい!その子ども捕まえろ!万引きだ!」
その少年は真っ直ぐ怒の方へと走ってきた。
「丁度いい。」
怒は、タイミングよく迫る少年の腕を軽々と掴み上げた。
「おじさん!離せよ!」少年が騒ぐ。
「そうだよな。俺が捕まえなければ万引き犯にならないからな…もっと怒れ!」怒は自身の力を少年に流し込む。
「その『怒り』、俺の為に使え!」力を流し込まれた少年は、徐々に身体を変化させ、ロボット玩具の様な見た目へと変化した。
その姿を見た通行人は叫び、逃げ始めた。
その叫びはゴン達の元にすぐ様届いた。
「何?」言葉が振り返る。
「俺行ってくる、言葉と神楽は安全な所へ。」ゴンはそう言いながら走り出す。
「分かった。」神楽は走り去るその背中を見ながら頷く。
ゴンは変身しながら現場へと急ぐ。
『場所は近い!』ワードがそう言った途端、目の前に銀色のブリキのおもちゃの様なロボットが暴れていた。
「あれは…おもちゃ?」ゴンは想像とは違う見た目に驚いた。
『いや、人陰じゃ。しかし意志が弱い。すぐ様倒す。』ワードは的確に分析し、核をドライバーに再装填した。
[必殺書き込み!]『パラドシカルランサー!』槍にエネルギーを纏わせたその一撃は、一瞬にして人陰の身体を貫く。
ワードは核を吸収し、少年は元の姿に戻った。彼から作り出された核は機械だった。
『あっけないな。』そうワードが呟いた時、後ろに誰かがいる事が分かった。
「久しいな、ワード。」
『その力強さは相変わらずじゃな、怒。』ワードの背後には、怒の姿があった。彼は腰に帯刀している刀を左手で触っていた。
「また、地獄へ送ってやろうか?」
『怒、ワシに抗う者こそ、地獄がふさわしい。』ワードは再び槍を構え直した。
「言ってくれるじゃないか。なら本気で戦おう。怒り…抜刀!」
怒はそう声を出すと右手で刀を引き抜いた。妖刀怒鬼と呼ばれる紅い炎を纏ったその刀から力が湧き出す。
怒はその身の筋肉を隆起させ、強張っている顔はより厳つく変化させ、赤くなる肌を見せた。
「なんだ…あれは?」ゴンはそう言う。
『あれは怒の真の姿。怒はその名の通り怒りを操る者。』
「いざ…参る!」怒は、妖刀を前に突き出し迫る。ワードはそれを盾で抑える。
「すごいパワーだ。」『やはり矛盾では力不足か…』ワード達は口を揃えてそう言う間にも怒は迫る。
「余所見をするな!本気で斬る!」
怒はワードに妖刀を再び振り下ろす。ワードはそれをギリギリのところで回避し、後方へと下がる。
『何か打開策は…』ワードは考える。矛盾では太刀打ちできない。跳速でも敵うわけない…
「力が有ればいいんだろ。なら、『剛力』がいいんじゃないのか?」
剛力核、ラーメン屋の店主の怒りから作り出したあの力。ワードはそれなら見込みがあると矛盾核を引き抜き、剛力核を構えた。
ワードライバーにそれをセットした。
[核、読み取り][剛力の魂…ワード、剛力!]
ワードの身体は、紫から青へと変化する。装備の大きさが一気に巨大化、頭部には四角い兜が装着され、そこから翠の眼が現れる。
両脚には、脛当てが装備され、完全なパワータイプの戦士が現れる。盾は消失し、右手に持っていた矛は形を変えて剣になる。まさに「怪力の豪剣士」、ワード剛力の形だ。
「姿を変えたところで変わらん!」
怒はワードに妖刀を振り下ろした。しかし、それは鎧に弾かれ、甲高い金属音を出した。
「なんだと?」
『ワシの力を甘く見るでない。』ワードは右手の剣で動揺する怒の左腕を斬りつける。重い一撃を振り下ろされた怒は後退する。
「今日は…この辺りにしておいた方がいいか…」
そう言うと、怒は姿を消した。
『逃げたか…』
ワードは剛力核を引き抜き、ゴンの姿に戻った。
その様子を、先日会った茶髪の女は見ていた。その傍らには、2m近い身長の大男が立っている。
「あれがワード、塾屋ゴン。」
「…どれだけ強くなるか楽しみだぜ。」