「俺は風土鉱也だ。よろしく、ワードの坊主。」
2mを超える身長の巨漢はそう自慢げな顔で言った。
「…何故、僕がワードである事を?」ゴンの身長は176cmあたり、25cmも高い彼を見上げながら聞いた。
「それは…まだ言えない約束なんだ。それより、あんたは嬢ちゃんのところへ行ってあげな。」嬢ちゃん、言葉の事を言っているのだろう。彼女は、爆発の収まった現場を物陰から見ていた。
「…また会えるさ。その時には、腹を割って話せるといいな。」彼は、そう言い残しその場を歩きながら去った。
「ゴン!!」
言葉がゴンの元へ走ってきた。そして、「さっきの人は?」と聞いた。
「助けてくれた…超人かな。」彼は、名前しか知らない人物に対して超人と言い表すしか無かった。
「へぇ…」言葉は、さらに沢山の事を聞こうとしていた。だが、その口を閉ざし、何かを心配する様な顔になった。
「今日は一旦帰ろうか。ゴン、酷い顔だし。」
ゴンは、彼女が言っている事が最初は分からなかった。どうやら、それほどまでに彼は疲弊していた様だ。
「それにしても、今回は随分と派手にやったわね。」
楽の元へやってきたのは、怒りを滲ませている嫉だった。
「そう?むしろ君達の方が抑え目なんじゃない?」
「派手な行動は慎みなさい。そのうち痛い目に遭うわよ。」
「ふーん。なら、派手じゃない行動を教えて欲しいな、お・姉・さ・ん。」
「そうさせてもらう。」そう言うと嫉はその場を後にした。その後ろ姿を見ながら、クスクスと楽は笑った。
「新しい戦士の事、あえて教えないで正解だったね。あの人はどう対処するのか楽しみだね。」
「丁度お昼近いし、昼ごはんも作ってあげるね。」言葉そう言うと俺を自分の家に招待した。どうやら言葉の家も誰もいない様だ。
『お主、何を考えておる。それとも、そんなにお主は腑抜けじゃったのか?』
脳内でワードは静かに怒りながら俺に問いかけた。
「何をって…特に何も。」最初は言おうと思った…自分は弱いままだ、だから負けた…と。
「ワードなら俺が思っている事ぐらい分かるだろ?」八つ当たりの様にワードに言う。
『確かに、分かる。じゃが、お主の口から聞きたい。ワシは、確かに時が経てば経つほど力を取り戻している。それはワシだけの力ではない、お主の力あってこそじゃ。』
「俺は、ワードが思っている程の力もない!俺は弱いんだ!神でもなんでもない、ただの人間なんだ…ただの…。」
ワードは、そう弱音を叫ぶ俺を見ると、ため息をついた。
『確かに、ワシからしてみれば人間は弱い。じゃが、それと同時に弱い者は強くなろうと更に前を向く。そう言う人間をワシは何度も見てきた。お主は、そうは慣れない…と言うことじゃな?』
やっぱり…呆れられた。そう思った。
『お主には、何者にも変え難い強さがある…それに気づくまでしばし眠るとしよう。』
ワードの意思は、ここで途切れた。
仕方ないから…見捨てられても。
「ゴン、出来たわよ。」
そう言って出されたのはラーメンだった。インスタントの醤油ラーメンだったがほうれん草やコーン、チャーシューなど色とりどりの食材で実際に店にやって来て食べる様な気がした。
「いただきます。」
ゴンは、そう言うと箸を手に持ち、麺を啜った。
言葉は、そんな俺を見て笑った。何故なのか…それは分からない。でも、自然とこっちにまで笑顔が優しく降りかかる様な気がした。
「ようやく笑ったね。」
驚いた。いつのまにか笑っていたみたいだ。
「ゴンは、あの人みたいに超人的な力はない…だけど、ゴンにはそれ以上の強さがあるじゃない。『優しさ』と言う強さが。」
優しさ…それが俺の強さ?
「なんか変な事言ってごめん。ただ、ゴンには笑っていて欲しかったから…」
俺は礼を言おうと口を開こうとした。しかし、その頃には彼女は自分が作ったラーメンを食べ楽しんでいた。また今度言おうとゴンは再び自分のラーメンを食べ始めた。
「さあ、始めましょう。」嫉は一体の黒色の人陰を見ながら言った。
嫉は、自身の姿を徐々に変化させた。黒光りする煙の様なもの、飲み込まれたら二度と帰れない様な、そんな闇を纏い嫉は怪人態へと姿を変える。西洋貴族風の衣装はそのままに、顔の肌が白くなり、顔を歪めた表情をしている。右手には黒い日傘を持っている…正しくは日傘型の武器だが。
黒色の人陰は、嫉が姿を変えるのを見届けると目の前の三階建てのとある会社の事業所を巨大な剣で切り裂いた。そこでは丁度重役達が優雅に紅茶を嗜んでいた。もうすぐ死ぬとは知らず。
その会社の重役達を妬んでいた人陰は、建物を破壊すると、「ようやく解放された…」と呟いた。
「このまま他の肩書きだけの上に立つものを殺すのよ。」
「そうは問屋が卸しても、俺は許さないぜ。」嫉達の前に現れたのは鉱也だった。
「貴方が新しいワードかしら。ここで叩き潰して差し上げます。」
「俺はワードじゃないぜ。仮面ライダー地装、覚えときな、嬢ちゃん。」
そう言うと彼は腰にマウントドライバーを取り付けた。
「変身。」[地層核!登上!][地を装う者、地装!]
マウントドライバーに地の文字が左側にくる様に横向きにし、装填した。土色の山の様になったドライバーから大地のエネルギーが彼の身体をほとばしる。
金色の戦士、地装はその地に降りた。
「さぁ、かかって来な!」地装の専用武器、マウントハンマーを構えた彼に人陰は大剣を持って迫る。地装はその攻撃を恐れもせず受け止める。
強固な装甲に、大剣は弾かれるだけだった。
「俺にそれは無意味だぜ!」ハンマーを両手で持つと、人陰にそれを打ちつける。その衝撃で人陰は一気に瓦礫の山に激突する。
その様子を遅れてやってきたゴンは見ていた。それに気づいた地装は、ゴンの近くによる。
「遅かったな、ワードの坊主。」
「貴方は、何故そんなに強いんですか?」ゴンの驚きの質問に地装は一瞬戸惑った。だが、すぐにはっきりと答えてみせた。
「俺は、自分に誇れるものがあるからさ。この大きな身体は、一見窮屈かもしれない。でも、その体で誰かの未来を守れるんだ。誇らないでどうする?そう言うものは、お前にもあるだろ?」
俺にも…そうゴンは考えた。「『優しさ』と言う強さが。」そして、さっき言葉が教えてくれた優しさが思い付いた。それが…俺の強さなのか?
「ワード、ようやく分かったよ。俺の強さが何か。もう一度、俺に力を貸してくれ!」
その時、彼の腰にはワードライバーがあった。更に、手には矛盾核があった。ワードが彼の想いに応えた何よりの証拠だった。
「俺は俺の強さで救う…救ってみせる!変身!」
[核、読み取り][矛盾する運命…ワード、矛盾!]
ゴンは、その身を紫の戦士、ワードへと変えた。
「何かは知らんが吹っ切れたみたいだな、ワードの坊主。」
「俺は、塾屋ゴンです。覚えておいて下さい。」ワードは地装に対してゴンの声でそう言った。
「…分かった。ゴン、よろしくな。」
ワード…というよりゴンは、矛を右手で人陰に突き出した。
「ワード、ようやく姿を現したわね。」嫉は鋭く伸ばした日傘を構えながら迫る。
「誰も傷つけさせない!」
剣の様に伸ばした傘をワードは盾で弾いた。
そして、紫のエネルギーを溜めた矛で敵を貫かんとした。嫉はその攻撃を見切り、傘を開き盾のようにした。
「俺も決めるとするか。」[マウントグランド!]地装はハンマーをうなだれている人陰に激突、完全撃破した。彼からは邪剣の核が表れた。
「これで、終わりにしよう。」[必殺書き込み!]『パラドシカルキック!』
ワードは、空へ飛ぶ為地面を力強く蹴った。そして、右足を前に突き出し、嫉に向けた。彼女は、再び盾を構える。しかし、感情が昂り力が増すワードになす術なく叩き割られた。
ワードが、地面に降り立つ時、嫉はその場から姿を消していた。
「逃げたか…ん?」
ここで彼は初めて違和感に気づいた。
「なんで俺がワードに?」『それはお主が自身の強さに気づいたからじゃ。』
ワードはそう言った。
『これからもよろしく頼むぞ。ゴン。』
「ああ、こっちこそよろしくな。」ゴンはそう笑顔で心の中でワードに言った。
家に帰ってからスマホをつけると、言葉から通知が来ていた。「今度こそ遊びに行こうね。」と言う誘いの連絡だった。
「ありがとう、言葉。絶対行くよ。」
そうゴンは打ち込み、送信した。
「楽しい事を思いついた、聞いてくれないか?喜。」
「悪いが暇じゃないんでね。勝手にやってろ。」