世界オカルト連合"転生者”事件簿   作:ryanzi

3 / 11
鬼ごっこ

「剣士もどき!いつまで逃げるつもりなんだ!」

 

「アポーテーションが可能になるまでだ!」

 

転生者の粛清は常に上手くいくわけではない。

ゲートオブなんちゃらで油断しまくっているタイプなら楽勝だ。

そういった手合いは隙だらけなので、ハンドガンで一発。

しかし、逆に特典とやらを持ってる上に隙がなかったら?

 

「おやおや、逃げるだけですか~」

 

「くっ・・・」

 

「無惨、堪えるんだ!俺もムカつくけど!」

 

「わかってる・・・!」

 

そして、今回がそのパターンだ。

背後から飛んでくる剣、槍、矢を避けて走る。

逃げ方を練習しろ、まったくもってその通りだ。

かつての附則書類に書かれたことは今でも通用する。

逃げ方も練習していたおかげで、まだ生きていられる。

とにかく、Last and First Manは転生者と鬼ごっこを繰り広げていた。

・・・鬼の始祖と共に。

 


 

「評価班が命からがらの状態で帰還した?」

 

魔法少女リリカルなのはでの変わった任務を完了し、

それから数時間の休息をとった後のことだった。

鬼滅の刃という物語層のとあるストーリーラインに赴くことを命じられたのだ。

 

「ああ、連中は切り傷をたくさん負った。

まあ、全員生きて帰ってきたがな」

 

「・・・ミスでもやらかしたんですか?」

 

評価班が転生者に気づかれて酷い目に遭うことは珍しくはない。

 

「いや、そいつは我々のしていることを知っていたそうだ」

 

「・・・厄介なタイプですね」

 

「率直に言いたまえ」

 

「クソッタレだな」

 

GOCでは口汚くても許されるのだ。むしろ、その方が好まれる。

それにしても、こちらの事情を把握している転生者とは!

これほど厄介な事例もあるまい。

 

「一応、原因はわかってるんだ。我々に反感を抱く一部のオネイロイ共だ。

奴ら、その転生者の夢にまで干渉してきて、我々の存在を知らせたらしい。

おかげで、あとどれくらいの転生者がいるのかも観測できなかった。」

 

「文字通り夢だからな、奴ら。粛清するのも一苦労だ」

 

「現在、そのオネイロイ共に対する対策チームは編成中だ。

とにかく、お前にはその転生者の粛清をしてもらいたい。

できれば、他の転生者も探し出して粛清してくれ」

 

そういうわけでこのストーリーラインに赴いた。

鬼滅の刃の舞台は大正時代の日本。

鬼という存在がいることを除けば、基底世界と歴史も同じだ。

鬼殺隊という存在が鬼を取り除いているのだが、GOC工作員は彼らに仲間意識を覚える。

殺す対象は違うとはいえ、目標がほとんど同じだからだ。

それで、あるストーリーラインの鬼殺隊とは同盟関係にあるくらいだ。

このストーリーラインの鬼殺隊との関係はないが。

 

「・・・さて、数時間眠っただけで、食事をとってないんだよな」

 

排撃班の任務は実に緩い。

転生者を殺すことが唯一の目標なだけだ。

それにいつまで時間をかけてもいい。帰れないだけだから。

現地の女性と一夜限りの関係を持つものもいる。

だから、現地で飯屋に立ち寄っても文句は言われないのだ。

さすがにレーションがおいしいとはいえ、金があれば普通の食事も選ぶ。

 

人殺し、のうのうとコンビニ飯⁉

 

・・・恋昏崎新聞にそう書かれたときもあるが、気にしない。

奴ら、規模が大きくなって色々な視点からの記事が増えたのだ。

もちろん、GOC派の記事もあるのでご安心を。

 

「おっちゃん、山掛けうどんくれ。あと、割り箸を四つ」

 

「二つで充分だよ、兄ちゃん」

 

「しょうがないな」

 

「わかればいいんだよ、わかれば」

 

うどんは温かかった。

そのぬくもりは、つい忘れてしまいそうなもの。

かつての正常な世界の残り香。

ヴェールがめくられていない世界はこんなにも暖かいのだ。

この暖かさを知ってる。

でも、そのたびに黒い手袋をはめた左手に痛みが走る。

 

「おっちゃん、うまかったよ。ありがとう」

 

「おうよ、また来てくれよな。それはそうと、その手袋似合ってんな」

 

「・・・俺の育ての親が買ってくれたんだ!ありがとよ!」

 

需品課から提供された通貨で支払いを済ませる。

さて、鬼滅の刃は基本的に夜に話が展開するらしい。

鬼が日光に弱いからだ。確かに日光でやられる敵など誰も見たくないだろう。

読者のニーズは夜の戦いである。

そして、今は夜だ。転生者も動き出すに違いない。

 

「おい待てや!無惨!その頭、無惨にしてやる!」

 

「ひゃっはー!永遠に苦しめてやる!」

 

「焼き土下座か鉄骨渡りか、どっちも迷うなあ!」

 

鬼滅の刃のラスボス、鬼舞辻無惨が転生者たちに追われていた。

 

「命を何だと思ってるんだあああああっ!」

 

ラスボスであるはずの彼は叫びながら逃げていた。

お前が言うな、とすごく言いたくなった。

だが、Last and First Man自身も大きな口は叩けない。

殺すのが仕事だからだ。

そして、殺すのは転生者だ。鬼ではない。

 

「そこまでだ、屑ども」

 

サイレンサー付きのアサルトライフルをぶっ放した。

それだけで奴らはゲームオーバー。

 

「・・・さて、無惨さま、大丈夫ですか?」

 

「・・・お前は何だ?転生者などというふざけたものではなさそうだが」

 

「俺はGOCという機関に所属する工作員だ。転生者を殺すのが仕事だ」

 

「なるほど、道理で鬼殺の剣士どもと似たような雰囲気を纏ってるはずだ」

 

「さて、今度はこっちが質問する番だ」

 

そう言いながら、Last and First Manは左手の人差し指をくるくると遊ばせる。

漆黒の手袋には、青い光の紋様が描かれていた。

 

「アンタ、最強のはずなのに転生者に追われていただろ?

他の世界のアンタは転生者くらいあっさりと片付けていたんだがな」

 

「・・・その転生者とやらの一人に力を奪われたのだ。

そいつは望んで鬼になったのだが、それが間違いだった。

突然、そいつの存在を感知できなくなった時点で警戒すべきだったのだ。

気が付けば、配下の鬼も鬼殺の剣士も全滅していた。

そして、そいつは私から様々な力を奪っていった。

今の私に残っているのは不死の体と鬼を増やせる力だけだ」

 

「本当にクソッタレな転生者だな。かなり骨の折れる仕事だな・・・」

 

「へえ、骨が折れるだけで済むと思ってるんですね」

 

槍が頬を危うくかすめるところだった。

さっそく、粛清対象のお出ましのようだ。

対面しただけで、件の評価班がいかに有能だったかを思い知らされた。

いや、評価班というのはちょっと仕事がいい加減な気もするが有能なのだ。

だが、この転生者を見つけた評価班はさらに有能だったのだ。

なぜなら、目の前のバケモノから全員生きて帰れたからだ。

 

「無惨、逃げるぞ!」

 

「ああ、わかってる!」

 

「おやおや、つまらないですねー」

 

始まったのは鬼ごっこだ。

捕まるとかそれ以前に、武器が飛んでくるのだ。

まさか王の財宝(ゲートオブバビロン)がここまで強いとは思わなかった。

いや、普通に強いのだが、それをすっかり忘れていたのだ。

今まで会った使い手があれなせいで、弱く思えたのだ。

 

「アポーテーションが可能になるまで、残り十五秒だ!」

 

手袋の紋様から発される光がだんだんと強くなる。

だが、その一瞬で左足が吹き飛ばされた。

痛覚訓練と平衡感覚訓練のおかげで、片足で走り続けられた。

 

「まったく、無様ですねー。

だから、自分たちの物語層に大人しく引っ込んでたらよかったのに。

まだ世界が復興途上にあるというのに、さっそく戦争とは・・・。

実に愚か!他の世界の転生者にまで怒りをぶつけて、このザマですからねえ!」

 

「・・・愚かなのはてめえだよ」

 

アポーテーション。二人の姿は消えていた。

転生者は困った。鬼舞辻無惨に感知されまいと転生特典でなんとかしたのだが、

それが仇となって、一瞬では探しきれないのだ。

幸い、転生特典はたっぷりと持っていた。千里眼だってある。

少し時間はかかったが、二人の居場所がわかった。

浅草凌雲閣の屋上部分だ。

だが、転生者が費やした時間は相手にとってはチャンスそのものだったのだ。

光の筋が、転生者を貫いた。

鬼でもなんでもなくなっていた転生者に日輪刀は必要なかった。

ただ、即死レベルの武器を撃ち込めばいいだけの話。

 


 

「実に面白い手袋だな。こんな奇天烈な武器まで取り出せるとはな」

 

無惨は標準器付きレールガンをまじまじと見つめた。

 

「・・・とりあえず、大物はやっといた。

あと残っているのは雑魚だけだが、ちょっと痛いな」

 

「ちょっとで済むとか異常者か、貴様は・・・」

 

無惨の手から炎が発せられ、見る見るうちに左足が生えてきた。

 

「どうやら、あの男の力が私に戻ってきたようだ。

・・・他の鬼や剣士どもの力も一緒にな。

あと、何となくだが日光にも耐えられそうだ」

 

「・・・とんでもないバケモンの完成だな。

まあ、後は勝手にやってくれ」

 

GOCの現在の方針では、無惨がどう強くなろうと知ったこっちゃないのだ。

 

「とりあえず、私も当分は貴様に協力しよう。

弱いとはいえ、そやつらも転生者には違いないのだろ?」

 

「ああ、そうだ。早くぶっ殺さねえとな」

 

この後の転生者狩りを観察した評価班の一人は言った。

 

「鬼に金棒なのか、金棒に鬼なのか、よくわからなかったな。

転生者もあんなに残っているとは夢にも思っていなかったが、

そいつらが一瞬で片付けられるとはもっと思っていなかったよ・・・」

 

なお、吹き飛ばされた左足について弟の食料品店はこうコメントした。

 

スタッフ(石榴倶楽部)がおいしくいただきました」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。