「・・・ははっ、殺してくれてありがとよ」
「神とやらに無理矢理転生させられたパターンか。
転生者っていうのも、哀れなもんだな」
学園都市の路地裏で、Last and First Manはいつも通り仕事を終わらせようとした。
「それにしても、戦う必要はなかったんじゃないか?
死にたいんだったら、大人しく殺されてりゃいいのに・・・」
「体が勝手に動くんだよ。あのクソ爺の呪いのせいでな」
「そりゃご愁傷さまで。まあ、ゆっくり眠ってろ」
「そういや、なんでアンタは俺を殺そうとしたんだ?
もう、訳が分からないのはごめんなんだ。
訳の分からないまま、転生させられたからな」
GOC手帳を見せた。
「SCP財団って作品、お前の前世にあったか?」
「・・・ああ、そういうことか。
別作品にまで、範囲を広げてんのかよ」
「ちょっとした事情でな。もういいか?」
転生者は大量に血を流し、ずっと苦しんでいた。
せめて、楽にしなければ。
だが、その瞬間、転生者の傷が光を放ちながら修復した。
「・・・あのクソ爺の仕業かよ!ファック!」
彼は天に向かって中指を立てた。
そして、Last and First Manの足元に魔法陣が現れた。
「・・・ご愁傷様、工作員さん。あのクソ爺の前に召喚されるぞ」
「そうか・・・なあ、お前の呪いって、その神さえ殺せば消えるよな?」
「たぶんな・・・待て、本気なのか⁉」
「本気も何も、これがGOCの本来の仕事なんだぞ?」
そう言い残して、彼は消えた。
ふわふわとした雲の上だった。
ああ、これが天国とやらだろう。
「まったく、儂の愉しみを奪おうとしおって」
白い髭の老人が実に不快な表情でLast and First Manの前に現れた。
「アンタが神か。クソッタレだな」
「クソッタレなのは貴様らの方じゃ。
貴様らの世界からは転生者は消えたのじゃろ?
ええか?失ったものが帰ってくる道理はないんじゃ。
いつまでも儂らの愉しみを邪魔してないで、静かに暮らせ。
儂らが転生させた者どもは最初は無様に足掻いたが、抵抗をやめたぞ?
貴様らも抵抗を諦めることを学ぶんじゃ」
その瞬間、神の左腕は吹き飛んでいた。
神は恐怖した。ようやく気が付いたのだ。
本来、人間の心を読んで会話できるはずなのだ。
だが、今、自分は相手の口からでしか情報が読み取れなかった。
要するに、心が読めないのだ。
「オネイロイのテクノロジーは素晴らしいと思わんか?
なあ、神様。人間だって、アンタみたいなのに対抗できるんだ。
あと・・・お前が言うな。あの転生者どもは、お前みたいなのが転生させたんだろ?
だったら、その報いは少しでも受け入れるべきだよなあ?」
右足が吹き飛ばされた。
「これでも、俺は慈悲深いんだぜ、神様?
本当は一瞬で吹き飛ばせるんだから。
せめて、少しでもお前を長く生きさせてあげてるんだ」
神はその銃に見覚えがあった。
携帯型心理診断鎮圧執行システム・・・ドミネーターだ。
だが、本物ともまた違うようだ。
「境界線イニシアチブの羊さんのお土産をもとに開発されたんだ。
まあ、人を遊び道具としか思ってなかったアンタは見落としてただろうな」
「ひっ、ひっ・・・!ふ、復讐は何も生まぬぞ!」
「アンタ、俺たちを不快に思ってながら、まったく知らないんだな。
俺たちの復讐のおかげで、俺たちの世界の経済が潤ってるんだぞ?
食料開発だったり、武器開発だったり、別世界旅行だったり・・・。
復讐は経済効果を生んだんだ。俺たちは復讐して、他はそれを利用する。
なんとも美しい循環だと思わんかい、神様?
人を殺して玩具にするよりも、よっぽど美しいな」
神は這いずりながら、必死に逃げようとした。
本当は殺せるはずなのに、その考えに行きつかなかった。
神が感じていたのは、ただただ恐怖だけだった。
自らを殺せるような人間がいるとは思わなかったからだ。
最期の寸前まで、神は悔い改めなかった。
そいつの体は急速に膨張し、破裂した。
「・・・そういや、天国で死ぬとどうなるんだろうな?」
そんなことを呟いていると、先ほどの転生者が現れた。
「ありがとよ、工作員さん」
「おっ、ようやく死ねたのか」
「ああ・・・うわっ、ドミネーターでやったのかよ。
いい気味だけど、ちょっと気持ち悪いな」
雲の上に、血だまりが広がっていた。
「それで、どうやって帰るつもりなんだ?」
「安心しろ、天国でもアポーテーションは使えるらしい。
そうじゃなきゃ、ドミネーターも取り出せんかったし」
左手の手袋に青い光が溜まるのを待つだけだ。
「・・・それにしても、俺の家族とかいるかな。
顔も覚えてないけど、会ってみたいな・・・」
だが、誰かによって雲の合間に突き落とされた。
「まだ来ちゃダメ!」
見覚えのある天井だった。
それはLast and First Manの個室。
彼は自分のベッドに上にどういうわけか横になっていた。
彼は起き上がって、写真立てに向かって悪態をついた。
「・・・友奈、突き飛ばすことはないじゃないか」
まだ青かった復讐者と、勇者という残酷な運命を背負った少女・・・。
二人が笑顔で映り込んだ記念写真は、掃除しないせいで埃まみれだ。
Last and First Manは服を整えると、そのまま自室から出ていった。
またしばらく帰れなくなるだろう。