GOCには一つの黄金律が存在した。
決して一人でやるな
ヴェール崩壊以後はほぼ形骸化したが。
転生者に対する戦術は現在も少しずつ完成している。
だが、現状では一対一の方が被害が軽微だということが判明している。
そういうわけで、大きな作戦でも数人ぐらいということがある。
事実、Last and First Manに割り当てられた基地もマンションの一室だ。
これをはたして基地というべきなのかは人による。
「・・・それで、どうしてお前と一緒なんだよ」
「俺もこの任務に志願したからな」
ルームメイトとなったのは
いや、今も同僚ではあるのだが、仲間とはいえない間柄といったほうがいい。
色々と事情はあるが、粛清方針の違いというのも大きい。
さて、そんなOffenderは108団体の一つである五行結社の一員でもある。
ヴェール崩壊以前から危なっかしい組織だった、あの五行結社だ。
ちなみに、GOCにおける所属は排撃班8233"仙遊霞"。
108団体の構成員がGOCのどこかの部門に所属することは珍しいことではない。
「それで、Offender。神浜をヒロシマ、ナガサキの仲間入りさせるつもりか?」
「それが有効な方法であったらな。安心しろ、貴様は逃がすつもりだ」
否定しないのがOffenderの恐ろしいところである。
彼は何としてでも転生者を殺そうとするのだ。大量破壊兵器を使ってでも。
仲が悪いとはいえ同僚のLast and First Manを逃がそうとするのはせめてもの慈悲だろう。
あくまで、彼の復讐対象は転生者だけなのだから。
同僚には手をかけない。現地民の被害は気にしない。
「・・・それで、そういう貴様は家族の代わりでも見つけるつもりか?」
「あのな・・・雫はまだ十代前半くらいだったぞ?」
「もっと幼い艦娘に膝枕してもらっていた大の男が何を言っている?」
「・・・イングリッド小林から聞いたのか?」
「いや、コロンバからだ」
コロンバ、Pamwacに所属する知り合いのオタクのことだ。
なお、Are We Cool Yet?の賛同者でもある。
そんな彼は快く情報を提供してくれるが、決して仲がいいとはいえない。
とくに、ヒロインを転生者ごと殺すOffenderとは気まずい関係だ。
Pamwacの最も過激な派閥はOffenderに逮捕状を出していた。
「アイツは血涙を流していたぞ。そこ代われとか」
「無視しとくよ。道理で返信が遅いと思ったら・・・それで、さっきから何読んでんだ?」
Offenderは蛇の手とPamwacの提供した文書を読んでいた。
「この神浜市に関するデータだ。そういう貴様もそんなに大量の新聞と本を読んでるではないか」
「俺は神浜と他の都市で起きた殺人事件を調べてるんだ。
どういうわけか十年くらい前に神浜市で子供がたくさん行方不明になった」
「子供が?」
Offenderの眉がぴくっと動く。
「今生きていたら中学生か高校生くらいの子供だ。
・・・そうだな、やけに大人びていたりといった特徴があったそうだ。
こいつらがそういった年齢になれば、原作は始まってるだろうな」
「なるほど、内ゲバか。転生者らしいな」
「そういうことだ。未だに発見されてないそうで。
さらに、数年前にも、二木市で似たようなことが起こったそうで。
しかも、どういうわけか転生者も発見されていない」
「二木市?」
二木市、蛇の手の最近の観測で存在が明らかになった街である。
彼らによると、そこには神浜を恨むことになる魔法少女が存在するらしい。
マギアレコード物語層の第二部はその魔法少女との戦いだそうだ。
Offenderが神浜をカミハマにするような真似さえしなければ、そうなるだろう。
「何かおかしいと思わないか?」
Last and First Manは左手の人差し指を回しながら言った。
「何がだ?」
「マギアレコードというのは魔法少女が多いのが売りだと聞いた。
つまり、神浜市でも需要と供給がある程度満たせるわけだ。
そんなたくさんハーレム作ろうとする馬鹿もいないだろ?
それに、二木市の転生者を皆殺しにする必要もない。
二木市の転生者も同じように神浜の転生者を殺す必要はない」
「確かにそうだな・・・だが、それが今回の任務と何の関係がある?」
「転生者の目的の傾向はヒロインと・・・」
「・・・悲劇的な展開の打破、か。それがどうしたというのだ?」
その時、Last and First Manの通信機の着信音が鳴り響いた。
「ようやく来たか。コロンバからだ。さあ、答え合わせの時間だぞ」
拝啓、むっつり野郎どの。
膝枕が恋しい季節ですな?この野郎。
さて、嫌々ながら仕事をしてあげました。そこ代われ。
雷は僕の母になるはずの女性だったんだぞ。
それで、原作改変率ですが・・・驚くべき結果でした。
ほぼ変わっていないのです。そこに転生者がいることを除いて。
まるで誰かが上手く物語というトロッコをレールに載せたかのように。
あと、立花響のヒモになってたとはいい度胸ですな?
「・・・なるほど、貴様はこう言いたいのだな。
今回の転生者の目的は、原作の維持とやらだと」
「そういうこと。そこで俺たちがこう提案する。
原作の維持は俺たちが何とかするから、大人しく死んでくれと」
「本当に維持するつもりか?」
「するわけないだろ?というか、転生者が消えれば勝手に原作通りになるだろうし」
「貴様もなかなかに酷い手を使うのだな」
「中性子爆弾使ったお前に言われたくないよ」
Last and First Manは左手の手袋に青い光をためる。
アポーテーションの準備だ。
「どこに行くつもりだ?」
「二木市だ。そこに行方不明になった奴らと仲のいい子供がいたらしいんだ。
そいつはたぶん、真相をある程度知っている一般人のはずだから」
Last and First Manの消えた部屋でOffenderは一人資料を読み込んだ。
神浜の東西間対立。転生者を殺す手段はそこにあると、Offenderは確信していた。