引退した競馬調教師がウマ娘に出会いトレーナーになる話 作:ねこまむしりんだー
続けるとしたら結構長くなっちゃうかもなので、続きの要望があれば継続という形を取りたいと思います。。
※0話は主人公の説明みたいなもんなんで、今話だけウマ娘は出てきません。
片田舎の小さな病院の一室、窓際の日の光が程よく当たる位置に置かれたベッドの上で俺は物思いに耽っていた。
半年ほど前、俺は意識を失ってこの病院に運び込まれた。その時側に家内がいたこともあり迅速な対応ができたため、一命を取り留めるができた。原因は確か.....脳の血管がどうだとか言っていた気がする。そんな事もあり俺は医者に入院を勧められ現在に至るわけだ。
病院での毎日はあまりに退屈だ。変わらない景色に変わらない隣人。そして変わらない食事。そんな場所だが俺には唯一の楽しみがある。
「そろそろ時間か.....」
型は古いが、外装は真新しいラジオのつまみを弄りながら俺はつぶやいた。
ザッ...ザザッ 周波数を手慣れた手つきで合わせると、俺にとって耳馴染みの良い、滑舌の良い男の声がラジオから流れた。
「ザッ...始まりました、天皇賞春、鍛え抜かれた馬体を揺らし、早く走らせろと言わんばかりに歴戦の名馬達が出走の瞬間を今か今かと待ち侘びておりますー。」
俺の楽しみとは、そう、競馬だ。
前は競馬場に足を運び、この目で試合を見届けたが、今はそうはいかない。そんな俺に気を利かせて家内が町内の電気屋で買ってきてくれたこのラジオで俺は競馬中継を聴く。この瞬間が今の俺にとっての至福の時間なのだ。
少し昔話をしよう、馬好きなジジイの話に少々付き合ってくれ。
俺の親父は競馬好きな男だった。その好きっぷりと言えば愛と捉えても良いほどに強く、仕事、飯の時間以外は競馬、と言っても過言ではない程度には強かった。そんな親父に育てられた俺も、必然的に馬が好きになっていた。そんな俺も成長して小学校に通い始めたとかには困ったもんだ。なにせ同年代の友達の趣味が野球、おにごっこだったのに対し俺は〝馬〟だったのだから話が合わないのも当然だった。今思うと馬が友達、みたいなもんだったから寂しくはなかったのだと思う。
そんな俺は小学校、中学を無事に卒業し高校へと入学した。あいも変わらず俺は馬が好きで、こちらも相変わらず友人と呼べる友人は少なかった。そして迎えた高校生活、ここまでくるとあの話がでてくる。そう、進路関係の話だ。両親は寛大な方だったので、特にこういった職業について欲しい、みたいなことは言ってこなかった。だが、たとえそう言われていたとしても、俺にはすでになりたいものがあった。
ーそう、競馬調教師だ。
進路関係の話を両親とした時には、馬が好きならウチの近くの牧場で働いたらどうだ?と言われたが、親父の影響で競馬をみているうちに、馬は馬でも俺は競走馬が好きになっていたようだ。鍛え抜かれた強靭な肉体、しなやかな体躯、気高さ、そんな魅力的な競走馬達に携わる仕事に就きたい、そう思い俺は調教師を目指すことにした。
両親は快諾してくれたが、手強かったのは教師の方だった。俺が調教師を目指すというと、呆れたように「もっと安定した道がある 頭は悪くないんだから公務員でも目指したらどうだ」とかなんとか言われたが、俺の心はもう決まっていた。そうして何度も教師と話をしていくうちに折れたのか、ご両親の許可も得られているようだし、そこまで言うなら好きにしなさい、最後には頑張れと言ってくれた。
そこからはもうがむしゃらに色々やった。知り合いのツテで現役の調教師に話を聞いたり、実際に下働きという形で仕事を体験して見たり、馬に対しての知識が足りないと感じれば図書館なんかに入り浸っては資料を漁ったりもした。とにかく考えあることを片っ端からやり、その時に備えた。
それからいく年月かが流れ、試験資格を得られる年齢になると同時に俺は試験を受け、これまでの苦労もあって合格を勝ち取ることができた。
簡単ではなかったがそうして俺は念願の競馬調教師になれたわけだ。
そこからの調教師人生は多くの苦労があったが、その倍以上に楽しいことがあった。何より憧れであり夢である競走馬と関われることが何より嬉しかった。
ここまでだいぶ昔を振り返っていたが、思い返せば返すほど時間が経つのは早いと感じる。いや、悪いことではない。それほど充実した人生を送れていたということだろう。
だが心残りが何と言えば嘘になる。俺が務めていたのは近場の厩舎だったのだが、地方だったという事もあり、レースで重賞を取る様な有名な競走馬の担当をする機会は無かった。
たまに中央に競馬関係者として立ち寄った時にはチラリと見かける事もあったが、せいぜいがその程度だった。
「心残りはある、でもなぁ.....」
あとどれだけ生きられるかは分からないが、既に引退した、死に損ないの老ぼれでは馬の世話などもうマトモには務まらない。ましてやもうあの輝かしい時代を駆けた名馬達はもう....時間の流れはつくづく残酷に現実を突きつけてくるものだと、そう思った。
そんなふうに考え事をしているうちに、辺りが暗くなっていることに気づいた。どうやら物思いに更けているうちに日が沈んでしまっていたらしい。
その後、いつものように代わり映えのない夕食を終え、眠りに着くために布団に入った。
もう瞼が閉じかける。そんな時ふと、先程まで考えていたことを思い返す。
「心残り...か」
そう呟き、俺は深い眠りについた。
次に目を覚ますその時、自らに待ち受ける運命など知るよしもなく.....
最近アニメのウマ娘を視聴したのですが、2期で涙枯渇しました。
ダブルジェットの根性に心動かされたったぜ。。
※アプリも始めて見たけど生活リズム狂うレベルで面白いから困る。ちなみにまともに育成成功しないクソ雑魚トレーナーです。それでもウマ娘は可愛いから許せ。