ハルウララ杯が出来るまで   作:MRZ

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後日談です。あるいはエピローグですね。
予想外の反響と高評価に驚き、ならばせめて感謝を伝えねばと思いましてこれを書きました。

まずは皆様、読んでいただき本当にありがとうございます。
感想や高評価をくれた方々、本当に嬉しかったです。
お気に入りにしてくれた方々も本当に嬉しかったです。
また思い出した時にでも読んでくださると幸いです。


夢の続きのその先へ

 その日、学園中が昨日のハルウララ杯の話題で持ち切りだった。

 あれだけのメンバーで行ったのだ。それも当然と言える。ただ、話題となるのはそれだけが理由ではなかった。

 

「ホント、凄かったよね……」

「だな。ウララの奴ともタイマンしたくなったぜ」

「勝負?」

「おう! ……って、あいつはそこにこだわらないんだよな。じゃ、何て言えばいいんだ?」

「ふふっ、普通に、一緒に走って、でいいんじゃない?」

 

 ゴールドシチーの言い方に若干気恥ずかしさを見せるヒシアマゾンではあったが、昨日の事を思い出したのか納得するように頬を掻いた。

 

「だな。にしても、今もまだ思い出すだけで尻尾がざわつくってどういう事だ?」

「それだけ楽しくて興奮したって事よ。あのハルウララ杯で」

 

 学園中の話題を終わってもなお独占するハルウララ杯。どうしてそうなったのかはゴールドシップが現れた後まで遡る……。

 

 

 

「なるほどな。つまりウララと一緒に走りたいって奴が参加出来るレースか」

「うんっ!」

 

 ウララからの説明を受けて事情を全て理解したとばかりに腕を組むゴールドシップ。

 すると彼女はダートコースへ顔を向けた。次のレースはそちらでやる事を聞いていたからだ。

 

「うし、ならアタシも参加資格はあるって事だな」

「え? うん」

「よしウララ、早速やるぞ。で、アタシが勝ったら金船杯へ改名だ」

「うん、いいよ」

「え、マジ?」

「うん! だって大事なのは名前じゃないから!」

「あ~……うん、そっか。そうだな」

 

 期待していたリアクションと違ったのか戸惑うゴールドシップだったが、その後のウララの言葉に納得するように笑みを浮かべた。

 ウララもそんな彼女へニコニコと笑顔を向けていた。無理だと思っていたゴールドシップと一緒に走れるからである。

 

「でもまだライスちゃん達が疲れてるから待ってあげて」

「いや、待つ必要ないだろ」

「え?」

 

 さらっとゴールドシップが放った言葉にウララは首を傾げる。

 何せ参加者は二人以外先程の疲れを残していて、とてもではないがレースを楽しめる状態ではなかったのだ。

 

 それをゴルシが分からぬはずもない。けれど彼女は平然と観客席へ顔を向けてこう言ったのだ。

 

「あっちの中にいるアタシやウララと走りたいって奴らを参加させりゃいい」

「ええっ!?」

「このレースの参加資格はウララと一緒に走りたいかどうかだろ? なら別に飛び入り参加OKだ。むしろ望むところだろ」

 

 何を馬鹿なと、そうウララが思う事はなかった。

 逆にその発想はなかったとばかりに目を大きく見開いて何度も瞬きさせたぐらいだ。

 

「で、今休んでるマックイーン達も走れるようになったら走りゃあいい。勝敗も関係ないんだろ? じゃあ好きなように走って、好きなように騒げばいいじゃねーか」

「……うんっ! そうだねっ! みんな~っ! みんなの中でウララやゴールドシップさんと走りたい人いたら一緒に走ろ~っ!」

「今なら先着一名にゴルシちゃんパーカーがついてこないぞ~」

 

 この呼びかけに真っ先に応じたのはスーパークリーク、イナリワン、ナイスネイチャ、テイエムオペラオー、エアグルーヴ、サクラバクシンオーの六人だ。

 更に少し遅れてダイワスカーレット、ウオッカ、イクノディクタス、マチカネタンホイザ、マチカネフクキタル、メジロパーマー、ダイタクヘリオス、キングヘイロー、セイウンスカイの十人が参加を表明。

 

 一気に総勢十八人となった事を受け、急遽ダートでのハルウララ杯はその十八名で行われる事となったのだ。

 

 そこでウララは意外と健闘してみせるのだが、やはり一着を取る事は出来ずじまい。

 だがそれでも最下位じゃなかった事に驚き、笑顔を見せて周囲を笑顔にさせたのだ。

 入着で喜ぶのでも一着で喜ぶのでもない。最後じゃなかった。それだけでもとびきりの笑顔をみせられるウララに、誰もがいつしか忘れていたものを見ているかのような気持ちとなったのである。

 

 その後は回復した本来の参加者達でのダートレースが行われ、そこでもウララは善戦してみせた。

 

 ちなみにそれが終わった後、ゴルシの発案でターフで1600m、ダートでも1600mのマイルに当たる距離を走る“マイルマイル”という両方のコースを隔てる柵を一部撤去しての変則レースが始まり、そのあまりの過酷さに“ゴルシ走”と名付けられる事となる。

 

 走りたい者全員でやるそれは色んな意味で大混戦となったのだが、そのゴルシ走の勝者はゴルシであった。

 

――ちょっとばかし本気出しちまったぜ☆

 

 そう舌をペロっと出しながら言い放つ様にマックイーンがイライラしたとかオグリが無言で頷いたとか。

 

 だがゴルシはこれだけで終わらせなかった。

 

――最後はパ~っと派手に行こうぜ! 走りたい奴全員でターフレースだ!

 

 ゲートを使わず、たづなが合図を出してのスタートで行われた最後のレースは有名無名関係なく大勢が走るというメチャクチャなもの。

 

 だけどもウララはその日一番の笑顔を見せた。形はどうであれ大勢の仲間達と走れたからである。

 最初こそ呆れていたはずのタキオンでさえ仕方ないと苦笑し、気付けば参加してしまった程のそのレース。

 それが終わった時、そこまでずっと休む事なく笑顔で走り続けたウララの丈夫さを証明し、誰もが“一緒に走る者がいるハルウララ”の凄さを目の当たりにする事となったのだった。

 

 そうしてハルウララ杯は終わりを迎える。

 

 とはいえ当初の予定を大幅に超えて、終わった時には既に昼時を迎えていたが、それでも誰一人不満に思う者はいなかった程の大成功だった。

 

 これを機にハルウララ杯は学園の恒例行事となり、ターフとダートの両方でレースを行う事も決まりとなった。

 それとマイルマイルことゴルシ走は一度限りで廃止となった。理由は言うまでもなく発案者さえ「あれはもういい」と言い切ったためである。

 

 ウララは毎年のハルウララ杯実行委員に任命されたものの、実質はある時期のみ稼働する不定期職のようなものなので、何か大きく変化が起きる事もなく今まで通り日々を楽しく送る事となった。

 

 だがしかし一つだけ小さな変化はあったが。

 

「ウララ君、また勝負といこう。構わないかな?」

「いいよ。でもオペちゃん、ちょっと言い方違うよ?」

「ん? あぁ、すまないね。どうしても言い慣れてる方を使ってしまうな。では、改めて……」

 

 見つめ合うウララとオペラオー。共に笑みを浮かべて頷き合うと同時に口を開く。

 

「「一緒に走ろうっ!」」

 

 ハルウララ杯のような大規模ではない小さなレースをよく挑まれるようになったのである。

 勝ち負けを着けるのではなく、ただ一緒に走る事を、競い合う事を目的とする純粋なレース。それをよく誘うのはやはり重賞戦線に身を置く者達が多かった。

 

「やっぱりオペちゃんは速いねっ!」

「ありがとう。けどそれなら一緒に走って心が弾むのはウララ君が一番さ」

「えへへ、そう?」

「そうとも。君と走ると色々な事が洗い流される気分なんだ。忘れそうになる大切なものを君が教えてくれるからね」

「? ウララ何も教えてないよ?」

「ふふっ、それでいいのさ。君は言葉にせずとも伝えてくれる。大切で、大事な事を。その温かな、そう春の陽射しのような笑顔と共に」

 

 いつだって笑顔で走るウララ。その笑顔に重賞戦線の厳しさや激しさで時にささくれ立ちそうになる心をGⅠウマ娘達は癒されていたのだ。

 誰かと走る事って楽しいね。そのウマ娘の根幹にある気持ち。それを優しく思い出させてくれるのがウララだけの特別であり、誰もが彼女を凄いウマ娘だと認める部分なのだから。

 

 ただ相変わらず本番のレースでは中々結果を出せないままではあったが……

 

「やった~っ! 入着出来たよっ!」

 

 そうやって多くのウマ娘達と一緒に走るようになったからか、ウララの実力は僅かではあるが向上していたらしく入着ぐらいなら可能となりつつあった。

 

 だが例え一着でなくても、最下位だろうとも、ウララの笑顔に差はないのだ。

 けれど、もし彼女が一着を取れたらその時の笑顔はどれほど輝くのだろうかと、そう誰もが思う程にウララの在り方は眩しいものであった。

 

 そしてまた季節は巡り……

 

「挑戦状?」

「うんっ! 新しい子達も入ってきたし、わたしが走ってない人もまだまだたくさんいるからね!」

 

 穏やかな午後の陽射しの中、無事進級出来たウララとライスがいつかのようなやり取りをしていた。

 

「でも、新入生たちはハルウララ杯の事をまだ知らないよ?」

「だいじょ~ぶ。知らないなら教えてあげればいいんだし、知ったらゼッタイ参加したいって言ってくれるよ」

 

 心配するライスへウララはそう笑顔で返してみせる。そして元気よく立ち上がった。

 

「よ~しっ! まずはオペちゃんに声かけよう!」

「ええっ!? お、オペラオーさんに?」

 

 そんな強いウマ娘相手では新入生達が怯むのではないか。そう不安に思うライスへウララは笑顔で頷く。

 

「うん! オペちゃんがね、この前は飛び入りだったけど今度はちゃんとした参加者になりたいって言ってたから」

「そ、そうなんだ……」

(その割には随分楽しんでたような……)

 

 ダートレースにゴルシ走、そして最後に大人数で走ったターフレースと、そのどれもオペラオーは楽しそうにしていたのだ。

 

(ううん、違うね……)

 

 だがそこでライスは思い出す。楽しんでいたのはオペラオーだけではなかったと。

 あの日、誰もが笑顔だった。ゴルシによって参加者と観客の垣根は壊され、走りたいなら走ればいいとなった第一回ハルウララ杯。

 まるで子供の頃に戻ったかのような笑顔で誰もが走って、悔しがって、けれど楽しそうに嬉しそうにしていた時間を。

 

「……うん、じゃあ行こうかウララちゃん。第二回ハルウララ杯のために」

「うんっ!」

 

 そこでウララとライスは笑顔で互いを見やって……小さく頷き合う。

 

「「みんなに声をかけようっ!」」

 

 選ぶのではなく誘う。ハルウララ杯はそういうレースだ。

 走る事が大好きならば誰でもいい。誰かと一緒に走る事が大好きならば尚の事良し。

 どうせ最後にはみんなで楽しんで笑い合えるのだから、そのためにもまずはワクワク出来る雰囲気作りを。

 

 そう、一緒に走ってみたいと誰もが思うウマ娘達の参加者を集めるのだ。

 

「オペラオーさんの次はどうする?」

「う~ん……オペちゃんに聞こうっ!」

 

 後に誰もがハルウララ杯をこう評する事となる。

 

 “ハルウララ杯はウマ娘のためのお祭り”だと……。




これで完全終了です。自分としてはハルウララ杯は春か秋のどちらかと想定しています。
春ならばそれこそ名前に相応しいですし、秋なら忘れかけてきた初心を思い出させてくれると思いまして。

……あるいはその内年二回となるかもしれませんね。春で新入生達へ実際見せて、秋で自分達も参加したいと出来るように。
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