担当ウマ娘がダンボールかぶってる 作:徐々に奇妙な冒険
───響けファンファーレ───
───届けゴールまで───
◇
やりおるハリボテエレジー。
あの状態から一位をもぎ取って、かつウイニングライブもやりきりおった。
ハリボテエレジーの株はとんでもないほど上がってる。
その結果が、俺の手のなかにあるこのハリボテエレジーグッズかぁ。
「……よくやったよ、アイツ」
お、なんだこの気分。
メジャーになって嬉しいんだけどなんかモヤモヤするぞおい。
買い物カゴに入れた新聞や雑誌にだって、期待の新星とか、奇抜なトップスターとか……。
勝手に名前つけやがって! 俺が一番最初のファンなんだぞ! コラ!
「まぁ全部買うんだけど……そういえばぬいぐるみも作るみたいな企画来てたな……」
ラバーストラップの袋をカゴに放り投げて一息つくと、棚の向こうでウマ耳がぴょこぴょこしているのが見えた。
やっべ聞かれてたかも。もし引退したウマ娘だったら俺嫌なやつじゃん。早よレジ通そ。
にしてもハリボテエレジー、よくあのメイクデビューだけでここまで人気出たな。
取材系は一旦俺が確認して時間が空いたらハリボテエレジーが出るやつを決めていく……そんな方針になっているのだが、たった今もメールがどんどん来ている。俺はアイドルマネージャーじゃねえんだぞ。ウマ娘トレーナーや。……似たようなもんじゃん!!!!
こうなりゃ俺もダンボール被るべきかな……なんてことを考えながら店を出ると見知った顔ってか、見知った頭発見!
「や、期待の新星」
「と、トレーナーさん……その呼び方やめてくださいよぅ」
「奇抜なトップスター」
「ひぃ……」
やっぱ雑誌とかの仕事は切るべきだったかな。
いや、これも人気のため。ウマ娘として名を売るには、これしか方法がないのだ。
「冗談だよ、すまんかった」
「うぅ。と、トレーナーさんはここで何を?」
「んあ? まぁ……ファン一号として、こいつをな」
「これって……私のグッズですか? すごい量……」
「グッズ、何を出してるのか本人も把握してないのが面白いよな」
12コセットを2袋買いしたラバーストラップ。袋を開けるまで中身がわからないやつだ。
正直運だけどまぁハリボテエレジーは出るでしょう。
「……オグリキャップか」
「可愛いですね!」
「ハズレじゃ無いんだけど狙ってないんだよな」
「あるあるですね……」
ベンチに腰掛けながら開封していく。
「ハリボテエレジーは何をしてたんだ? このショッピングモールって色々あるけど」
「ちょっと在庫の補充に」
「在庫? ……あぁ、ダンボールの……。ぐ、ゴルシじゃねえか」
「凛々しい!」
「そうか……? ほい、ハリボテエレジーも開けてみろ」
「い、良いんですか? じゃあ……」
ゴルシじゃねえか。
「ダブりですね」
「あるあるだな」
「……トレーナーさん」
「んあ」
「いきなりなんですけど、ちょっと、反省会していいですか」
反省会。
まさか今そんな単語が出てくるとは思わず言葉を選んでいると、沈黙を肯定と取ったのかハリボテエレジーがラバストを開封しながら喋り出した。
「やっぱり、練習と違うなって思ったんですよ。息遣いとか、ビリビリした雰囲気とか……全部違って。それで、すこしくらくらしちゃったんです。だからその、スタートダッシュで出遅れる……と言いますか。不安に、させちゃいましたよね。負けるんじゃ無いかって」
「……そんな、ことは」
「どっちにしたって、あのレースは奇跡が起きて勝てただけなんです。だから、次は……次は、私に勝ちます。弱気な私に勝ちたいんです。もっともっと速くなって、JWCのカップをプレゼントしますよ。だから……もっとビシバシ鍛えてください。ようやく、みんなと同じスタートラインに立てたんですから、ここからは遠慮なしで」
「あぁ……やってやるよ」
「はい。……って、あれ? この娘、見覚えがないです」
「ラバストか? どれどれ……ほんとだ、ラインナップに入ってない。もしかしてシークレット枠じゃねえか?」
茶色の髪を後ろで二つにまとめたウマ娘のラバーストラップを見てハリボテエレジーが首を傾げる。
袋の裏面を見ても同型のものが無いことからきっとシークレットなんだろうけど……こんなウマ娘、俺も知らない。
「レアです! 良かったですね!」
「んまあ嬉しいにゃ嬉しいけどさ。肝心のお前が無いんだよ」
「まだ何個か残ってますし、大丈夫だと思いますよ!」
そうかね、ともう一個に手を伸ばしたとき、俺の前に誰か立った。
誰だお前は。急にたくさんキャラ出てきても困るんだよこっちは。来るならメールで「行きますよ〜」って一言アポ取ってから目の前に立ちなさい。
そんな意を込めてwho are you?
「アークインパクトだ」
「アークインパクトですか」
「メイクデビューで一緒に走りましたね!」
「一昨日ぶりだなダンボール。相席よろしいか」
どすんと俺の隣に座るアークインパクト。
二人がけのベンチは三人で座るもんじゃありません。ほらみなさい、ハリボテエレジーがキツそうにしてるでしょうがって痛い。ダンボールが結構肩幅取ってて頭に当たるんだよ。
結果、ウマ娘二人が座って俺が対面に立つこととなった。
「よし。それでだが……」
「お前なんか言うことないの?」
「お、ラバーストラップの最新弾じゃないか。どれ、わたしにも一つ」
「ううんお前腹立つなぁ良いけど!!」
「い、良いんですか……」
「お? このウマ娘は……」
ゴルシじゃねえかッッッ!!!!
「ふう。……それで、本題に入っても?」
「あーったくうん、もう良いよ」
「よし。……単刀直入に言うと、ハリボテエレジー、キミのトレーナーを少し貸してもらいたい」
「俺を?」
「あぁ。交流会……と言えば少しは明るくなるだろうか。ハリボテエレジーのラストのスピード、アレを求めるウマ娘は大勢いるんだ。もちろん、私も。ハリボテエレジーとトレーナー、二人で交流会に参加してほしい」
「……いまいちよく理解ができないな。つまりは技術を寄越せってわけだろ?」
「言い方を変えるとそうなるな」
「やると思ってんの?」
「こちらも技術を教えるわけだし損はないと思うが」
これは俗に言うスカウトの簡易版だ。
優秀なウマ娘やトレーナーがいれば、我先にとスカウトに来る。メイクデビュー後もそんな話が数件来ていた。全部メールで、だけど。
「自分で言うのも少しあれだが私は顔が広い。交流会にはメジロマックイーンも来るぞ」
「あああメジロマックイーン、メジロマックイーンねぇ……ちくしょう結構いい条件なの腹立つなぁ……」
「メジロマックイーンさんってそんな有名なんですか」
「トレーナーからしたらバケモンだぞ。努力の鬼だあいつは……見て損になるものはほとんどない」
「ほとんど」
「ハリボテエレジーはどう思う」
「うむ、私もそっちが聞きたい」
「うえっ!? わ、私ですか? ……えっと交流会ってどれくらい続きますか?」
「どれくらい……一日だな。午前の部と午後の部で分ける。休憩時間もあるし、コースも走れるぞ」
「トレーナーさん、これって」
「まぁ好条件だな。あのメジロマックイーンの走りを生で見られるだけでもかなり贅沢だ。……そのほかにもいるんだろ?」
「あぁ。トレセン学園で見かける機会は多いだろうが、集まるのは珍しいと、私でも思うぞ」
「じゃあ……行きます、その交流会」
「その返事を待っていた」
アークインパクトが胸元から紙を取り出して俺たちに渡す。
日時と行き先、持ち物が書かれた紙だ。遠足かよ。
……「あのハリボテエレジーがやってくる!」っておいこら。これ俺たちが行かなかったら詐欺だろ。っていうか勝手に決めてんじゃねぇぞ。
ぬああやっぱコイツ腹立つ!
「それじゃあその日にトレセン学園の校門前で集合だ。よろしく頼むよ!」
「はいっ!」
「……明日の体育の授業あいつ来るんだけど気まずいわ」
「あ、あはは……」
しっかし交流会とは。
ずる賢いこと考えるなぁ。ちょっとは見習わねばならんかもしれん。
っていうかあいつちゃっかりゴルシのラバスト置いてったな。ゴルシは一人で結構なんだが。持ってけよ開封したなら。
「残り、どうしますか? ラバーストラップ」
「家で開けるわ。まだ開けてないやつ半分あげるからそれも持っていけ」
「い、良いんですか? トレーナーさんのなんじゃ」
「いいよ。もう日が暮れそうだし、頑張ったハリボテエレジーへのご褒美ってことにしてくれ。そのシークレットとゴルシもあげる」
「あ、ありがとうございます!」
ハリボテエレジーが頭を下げる。
撫でようとしたがダンボール。ええい、邪魔をするない。
まぁ……どうせここから死ぬほど頑張らないといけないんだ。休息も必要だろう。
「じゃな」
「はい、また明日!」
ハリボテエレジーが俺を視認できなくなったろう場所で紙を開く。
アークインパクト主催、ウマ娘&トレーナー交流会。君もトレーナーや担当ウマ娘を探そう!! らしい。
吉と出るか凶とでるか。ハリボテエレジーにとってプラスになればいいけど。
……はあ。
明日の体育、気まずいなぁ……。
ウマ娘 プリティダービーseasonEX
「担当ウマ娘がダンボールかぶってる」の第一章はここで完結となります。
謎な部分多すぎワロタって言われるかもしれませんが、適当に伏線張ってあとから超絶怒涛で回収していくのが趣味なんでどうしようもないです。
評価が良かったり感想をたくさんいただければ、また長期を費やして書き溜め、第二章「僕とうどんと時々なまこ」を投稿し始めると思ってます。未定が予定です。
短い間でしたが、まず第一章の応援、ありがとうございました。