担当ウマ娘がダンボールかぶってる 作:徐々に奇妙な冒険
学園では教師として
「疲労ッ!!」
ひ、疲労と言われましても。
「
「残業ッ!! これだけはやめてほしい!!」
「以前ッ!! 自主残業で倒れた経験のある者は特に!! 書類が増えたぞ!!」
ギクリ。
「阿呆!!」
ただの悪口じゃん理事長。
「休息ッ!! 私だって休みが欲しい!!」
ごめん理事長。
「以上ッ!! 今日も頑張るように!!」
「「「「はいっ!!」」」」
職員室での朝礼を終え、手帳を開く。
体育は……どの学年も一時間目からはなし。
とりあえず、やりたいことを消化しますか。
「やっぱ気になるのはこのページだよな」
ゴルシがくれたファイルの、一枚だけ破れたページ。
結局名前を思い出せなかったんだよな。
わかっているのは名前がトから始まること、好物がラーメンと餃子であること、すでに引退していること。
改めて思うけど情報量少なすぎね?
「お、暇そうにしてますね」
「っすね〜ウマ娘が座学やってる間は暇なんすよね」
「何見てるんです? データファイル?」
「この破れたページのウマ娘、誰だかわかります? 妙に気になっちゃって」
つっても流石に無理か。
ウマ娘が好きってだけで、この人はトレーナーでもなんでもないもんな。
「トから始まる……トウカイテイオー、トーセンジョーダン」
「やっぱその二人が最初に思いつきますか。でもその二人はここに載ってるんですよね。他もまた然りです」
「ふむ……あ、幻のウマ娘とかは?」
「幻のウマ娘?」
「ええ、いたんですよ……トレーナーさんが子供の時くらいですかね、すごく活躍したウマ娘がいまして。その娘がトから始まる名前だった気がするんですよね。と、ト、トキノ……トキノなんちゃらです」
「トキノミノルッ!!」
「は、はいっ!?」
あぁごめんたづなさん大声上げて。驚かせちゃったね!
「そう、それですよトキノミノル! いやあスッキリですね! 今頃どこで何してるんですかねぇ」
「トキノミノル……過去のデータが残ってると良いんですけど」
「本人が嫌がったみたいでほとんど残ってないみたいですよ。ウマ娘名鑑改訂版に後ろ姿が載ってるくらいです」
図書室行ってみようかな。なんでページが破られてたのか気になるし、何よりトキノミノルがどんな容姿だったか気になる。
せめて脚だけでも見れれば、その「幻のウマ娘」に近づくヒントになるかもしれん。
「しかし、よく覚えてましたねトキノミノルなんて。僕が子供の頃だから……十数年前じゃないですか?」
「あの走りは一度見たら忘れられないですよ。名前こそ忘れそうでしたが、レコードを叩き出した瞬間の凛々しい表情に仲間が全員惚れてましたね」
「はえ〜……そんなですか」
「せめて記念品でも持っておけばと、後悔しましたね。蹄鉄なんかはプレミア付きですよプレミア! トキノミノルのご加護が得られるとかなんとかで、幼少期の蹄鉄が今も高値で売られているそうです」
「幼少期の?」
「パーフェクトって呼ばれていた時代のときですね。全盛期の蹄鉄は見当たらないようです。かなり質の良いものだったと聞いていますよ」
へぇ……蹄鉄か。
そういえば、ハリボテエレジーは蹄鉄は何グラムのものを使っているのだろう?
交流会の時に聞いてみるか。
「やっぱりいいですねぇトキノミノルは。彼女の走りを、もう一度みたいものです」
「さぞカッコ良かったんでしょうなぁ……」
「ええ、カッコよくて美しくて可憐で、まさに伝説でした……。しかし謎ですね。そのファイルのページはなぜ破られているのでしょう」
「借りた物なのでわかりませんが……もしかして、トキノミノルが近くにいて抜き取ったのかもしれませんね!」
「おぉ! でしたら奇跡ですな!」
「「はははははは!!」」
「…………」
たづなさんから鋭い視線が向けられる。いやまじすんません。授業なくて暇なんですもん。
たづなさん知ってます? トキノミノル。知らない? そうですか。
しかしこのおっさんなかなか喋れるな。人並みにレースを楽しむ系の教師だと思っていたけど、案外ウマ娘が好きなのかもしれない。
「あっ、じゃあこれ知ってます? ラバスト占い!」
「ラバスト占い、聞いたことはあるんですけど……」
「ラバストを開封して、願掛けをするってやつです。歴代のラバストの袋を闇鍋して、推しウマ娘が出たら縁起がいい! みたいな」
「なかなか面白そうですね」
「俺、持ってきてるんですよ……ラバスト闇鍋」
どんと置かれた袋にこの前買った新弾のラバストも混ぜていく。
なんだなんだと続々教師どもが集まってきた。あ、やります? 良いですよ全然。やりましょうやりましょう!
「次に見所ありそうなレースですか……何にしましょうかね」
「俺、ハリボテエレジーをアイビスサマーダッシュに出そうと思ってるんで、ハリボテエレジー狙いで行きます!」
「ウマ娘のレースよくわかんないですアタシ」
「ガチャ感覚で引いても良いですよ全然! 人が勝手に願い載せてるだけなんで!」
「じゃあ、僕も!」
「俺も良いですか?」
おうおう、なんだこの人気ぶり。
「あ、たづなさん! たづなさんもどうですか?」
「あ、ええと……」
「理事長ー! 理事長、ウマ娘ガチャ引きませんかー?」
まだ職員室に理事長がいてよかった。ハブせは嫌だからね。
おし、なんだか知らないけどワクワクしてきたぞ。
アットホームな職場ってこのことを言うのかもしれない。
「お暇ですか?」
「……うむ、今キリがついた! そちらへ向かおう!」
「理事長!?」
まあ理事長もまだ幼い!
堂々とした立ち振る舞いだから忘れてるけど、こういう楽しいことなら理事長は乗るはずだ!
「はい、たづなさんも!」
「……はい」
たづなさんが観念したようにラバスト袋を手にした。
ちんちくりん理事長も「激熱ッ!」と書いた扇子を開いている。あれ何個バリエーションあんだろ。
それじゃあ、教師(授業しているもの以外)全員、ラバスト袋は持ちましたね?
そろそろ行きますよ? よござんすか? よござんすね?
「「「「「「せーのっ!!」」」」」
◇
「各ウマ娘、ゲートに収まりました〜」
レバーを引く。
ゲートが開いた。
「「「「ッ!!」」」」
ゲート遅れしないための瞬発力と反射神経のトレーニング。
なにも体力やスピードトレーニングだけが俺の仕事じゃないし。ちゃんと教師してるし。
つっても言うことはあんまりない。レバーを倒してゲートを閉じて、引いて開ける。それの繰り返し。
しっかし、やっぱライスシャワーはいいな。地を蹴る振動がこっちまで伝わる。
他はアグネスタキオンとか……つま先を重視した動きはスピードよりも反発力が強いからスタートダッシュも好調になるはずだ。
みんな工夫してんだな……。
「先生、落鉄しました」
「邪魔にならないところで打ち直してきなさい」
「はーい」
高等部組は良いね。
自分の走りをしっかりと理解している。何がベストなのかを自ずと生み出せるのは良いぞ。
何よりカッコいい。
「えっと、次の授業もスタートダッシュ練習でいいかな……て、ちょ、う、は……あったあった」
「……あれ? それ、ライス?」
「ん? あぁ、さっきラバスト引いたらお米が出てさ。……ここ、嫌?」
「ううん。嬉しいな」
結局、あの場の誰もハリボテエレジーを引かなかった。
理事長はトウカイテイオー、たづなさんはメジロマックイーン。
どうしたんだよ期待の新星。混ぜちゃったから確実に引けるかわかんないぞ。
「なぁライス」
「な、なんですか?」
「トキノミノルって知ってる?」
「いえ……」
あ、一応敬語にするのね。まあね、授業中だしね。
そっかぁ。
「アグネスタキオン! Q,トキノミノルとはなんぞ!」
「ん……さぁ……心当たりが」
結構知らない人いるんだね。
いやめっちゃ気になるんよトキノミノル。
一度気になり始めたらもうそれはすんごく気になる。
こう……何かしらのデータがあればなぁ。
「っと、今日に授業はここまででぇす。明日も同じ練習するんで」
「「「「ありがとうございました」」」」
よし! これをあと中等部含め数クラスやるだけだな!
その中にはアークインパクトもいるんだよな!!
教師って地獄ッ!!
まじすまんな。