担当ウマ娘がダンボールかぶってる   作:徐々に奇妙な冒険

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聞き込み調査

「アグネスタキオンさん!」

「ン? 何かようかい……おぉ。個性的な頭をしているね」

「あの、アグネスタキオンさんはどのレースに出るとかの基準ってありますか!」

「……いや、その質問は適していないね。他のウマ娘に問いかけたらどうだろう」

「ありがとうございます!!」

「あぁ、待ちたまえ。その格好では辛かろう。喉が渇いたらこれを飲むといい───」

 

「ナイスネイチャさん!」

「え? っおおう。えっと……」

「ハリボテエレジーって言います! あの、ナイスネイチャさんはレースに……」

「あ、それ系の話はパスで」

「すみません、ありがとうございました!!」

 

「スペシャルウィークさん!」

「もごもごもぐ?」

「…………?」

「もごもご! もぐもぐもぐ!!」

「……なるほどぉ……」

「もごもご!」

「え? 傘? あ、はい、ありがとうございます……?」

 

「ゴールドシップさ……はいいや」

 

「どうしよう、全然聞き込みできてないよ……! ごくごく……ぷはっ」

「お、エレジー? あ、エレジーだ! おーい、エレジー!!」

「この声は……トウカイテイオーさん!」

「やあやあ、エレジーもこれからトレーニン……まぶしっ!! 何その頭、ジャックオランタンみたいになってるけど」

 

トウカイテイオーさんの声に振り返ってみれば、眩しそうに目を細めるトウカイテイオーさん。

光を感じて手のひらを見やれば、何故か体が光り輝いていた。皮膚だけ。

 

「なんですかこれ!?」

「ワ、ワカンナイヨー!」

「もしかしてなにかの吉兆だったりしますか!? 脚が速くなるとか!!」

「ワカンナイッテイッテンジャン!!」

 

しばらくすると徐々に光はおさまっていった。

別段体に異変はないし、何だったのだろうあの発光。

とりあえず、気を取り直して。

 

「トウカイテイオーさん、ちょっと質問いいですか?」

「うん? なんでも聞きたまえ!!」

「トウカイテイオーさんは、どんなレースに出るんですか?」

「どんなレース?」

「こう、URAファイナルズへの道のりと言いますか、ううん……」

「なるほど! ……皐月賞、菊花賞、天皇賞、有馬記念だったかな。合間はとりあえずその時やってるレースにしようと思ってるけど」

「やはり天皇賞……そして有馬」

「うん。有名な舞台だからね! ウマ娘についてよく知らない人でも、有馬記念くらいは聞いたことあるだろうし!」

 

有馬記念……かあ。

ウマ娘の聖地にして、みんなの憧れ?

そんなところ。私が目指してもいいのかな……。

 

「エレジーも有馬を狙うの?」

「もう少し……考えてみようかなって……」

「そっか。どんなレースに出ても、応援するからね!」

「はい、ありがとうございます!」

 

やっぱりトウカイテイオーさんだなぁ。

一番参考になった……っていうか、私の人選が悪かったのかもしれない。

いや、そんなことはない。あの人たちだって伝説を作るために頑張ってるんだ。私如きが人選ミスなんて言っちゃいけない。

さて、次は誰に聞こうかな……っと?

なにかがダンボールを叩いた音がした。

ぼつ、ぼつぼつ。

なんだろう、そう思って空を見上げると。

 

ボツボツボツッ!!

「雨だ!!」

 

ダンボールがふやける! 雨宿りできるとこ〜!!

あ傘! スペシャルウィークさんから傘を渡されてたんだ私!!

ラッキー! ありがとうございますスペシャルウィークさん! すき!!

 

「ふぅ……ん?」

 

思わぬ助けに感謝していると、校舎裏の隅でうずくまってる陰に気づいた。

っていうか校舎裏まで来てたの私? 結構歩いたんだなぁ。

っとと、まずはあの人のとこまで行ってみよう。風邪でも引いちゃったら大変だ。

 

「あの……」

「あ?」

 

ひえ。

トレセンの制服の上に黒いコート着てる。

俗に言うヤンキーというやつなのかな……。

俯いて壁にもたれかかってるウマ娘は、やっぱり全身びっしょりだ。

 

「あ、あの、風邪引いちゃうんで……傘、入りませんか?」

「いらねぇよ! それ言うためにここにきたのかお前」

「で、でも、こんな雨に……」

「ウマ娘はそう簡単に風邪引かねえだろ」

「迷信じゃなかったっけ……とにかく、ほら!」

「なんだよ近づいてくんなっ……気づかなかったけどお前ヘンな頭してんな」

「か、かぶりものなんで……へへ」

「あっ」

 

一瞬、私のダンボールに気を取られたらしい。隙ありとばかりに近づいて傘に入れると、逃げ出す気力もないのかそのままにしていた。

 

「名前は?」

「言うかよ」

「そうですか。ん……どうしてここに?」

「関係あるかよ」

「そんなあ。せめて雨が止むまでは……もしくは寮に帰れるようになるまでは話しましょうよ」

「だったら先に帰ったらいいだろ」

「いやですよ、何かあったら大変じゃないですか」

「見かけによらず頑固だなお前」

「えへへ」

「褒めてねぇ」

 

そうしてもう一度見つめてみる。

こういう娘、小学校にもいたいた。

そう言う時はゆっくり仲良くなればいいんだ。

 

「……競争、してた」

「誰と?」

「ギンシャリボーイって知ってっか」

 

ギンシャリボーイ。

誰だっけ?

 

「いけすかない奴だ。事あるごとに突っかかってきやがる。そんでもって走ることより恋愛にうつつを抜かしてんだから最ッ悪だ」

「へぇ……」

「なのに……なのにアイツはクソ速ぇ!! いつもいつもオレの前を行く! スシウォークだかなんだかしらねぇが、とにかく強すぎるんだ!! ……いつもみたいにトレーニングしてたら、アイツが得意げな顔で追い抜いてきやがった。だからオレはスピード上げて、あいつに追いつこうとした。……それでこのザマだ。結局スタミナ使い果たしてのろのろ転んで、アイツは消えてった」

 

思ったよりも重いかもしれない話だ……。

っていうかちょっと待って? ギンシャリボーイ、なんだか心当たりあるかもしれない。

 

「そのギンシャリボーイって、もしかして茶色い短髪?」

「おう。オレと一緒の時期にトレセンに入学した。ったく、何であんな奴と……」

「ギンシャリボーイさんと一緒なの!? えっ、じゃあ同期!?」

「はぁ!?」

 

入学するとき、なんかそれっぽい人に話しかけられた。

僕とキミは同期だー、よろしきたのむーって。

私と同期のギンシャリボーイさんと同期ってことは……。

 

「な、名前は!?」

「えっ」

「あなたの、名前!」

「ち、チョクセンバンチョー……」

「やった同期!」

「なんでオレの同期には変なやつしかいねえんだ……?!」

 

思わぬところで同期に遭遇。

とにもかくにも、チョクセンバンチョーさんは走ることが好きみたいだ。

だってトレーニングしてるって言ってたもの。レースに出るつもりが無かったらトレーニングしないよね。

 

「あの、チョクセンバンチョーさん」

「……あんだよ」

「チョクセンバンチョーさんは、なんのレースに出るんですか?」

「あ?」

「だから、なんのレースから、URAに行くんですか?」

「アイツと一緒だよ。JWCだJWC。ジャパンワールドカップだよ」

「JWC……」

 

たしか、さっきの資料にもJWCって字はあったような……。

せっかくだから、どうせなら。

楽しい方が良いですよね、トレーナー?

 

「決めた」

「あン?」

「私もJWCに出る」

「なっ……」

「それで、同期二人を打ち負かしてURAファイナルズで優勝する!」

「……勝手にしろ」

 

差し出した手は払われちゃった。

でもどうしてか、チョクセンバンチョーさんから、なにかやる気みたいなのが感じ取れた。

ようし。

 

「絶対勝つぞ!」

 

 

 

 

無理かも。

 

「ハリボテエレジー! あと三周だがんばれ!」

「は、はいぃ!!」

「エレジー、お先!」

「そんなぁ!!」

 

トウカイテイオーさんが抜かして行く。

これで抜かされたのは三度目。

ノルマクリアまでトウカイテイオーさんはあと一周、私はあと三周。

 

「目標がJWCだと決まった今、ビシバシ鍛えて行くぞ!!

 

ごめん、チョクセンバンチョーさん、ギンシャリボーイさん。

JWC、出られないかも。

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