担当ウマ娘がダンボールかぶってる   作:徐々に奇妙な冒険

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今日仕上げました。ストックが無いです。


トレセンから病院、そして警察官のお仕事

「ほうほう……」

「これがハリボテエレジーの素顔」

 

後日。

ナイスネイチャが出したスマホを二人で覗き込み、そこに映る恥ずかしげな表情をしたウマ娘を観察する。

上からのアングルで膝にダンボールを乗せ、不安そうな目でこちらを見つめる姿はまさに美少女。

 

「本当にこれハリボテエレジーか?」

「やっぱ目、綺麗だよね。深くてキラキラしてて、こう……」

「夜空?」

「そう! 星空みたい!」

「やーめーてーくーだーさーいー! 恥ずかしいです!!」

 

ヒシアマゾンみを感じる艶のある……紺の色素が強めな髪と、それと同じ色の瞳。

惜しむらくはアングルの都合でおでこから上が見切れていることだ。

 

「美人だねぇ」

「あぁ。報道受けしそうだよな」

「うああ……」

 

ヒシアマゾンのは姉御肌って感じがするが、髪の色が同じでもハリボテエレジーのはお嬢様感がある。

箱入りウマ娘、みたいな? いやまぁ、ハコそのものだが。

……さ、充分堪能したし、そろそろやめておきますかね。過度に干渉して嫌われたら嫌だし。

ひょいとナイスネイチャから離れると、ナイスネイチャも察したのかスマホをスリープモードにしてポケットにしまった。

 

「しっかし、勝負服なかなか似合ってるじゃん。赤ずきんみたいだよね」

「あぁ、あの……なんかチューリップ逆さまにしたみたいなやつな。肩掛けの」

「そう! あとスカートもふんわりしててかわいい!」

 

結局、ハリボテエレジーはG1に出る前でありながら勝負服を解禁した。

JWCの他にも雑誌の撮影や服の予備として勝負服を使うシーンはあるため、別にいつでも解禁はしてよかったのだが……。

 

「そういえば、JWCで初めて使うことになるのか、勝負服」

「そうなんですか? てっきり、他のレースにも使うのかと」

「使う機会はあるだろう。けど、JWCは特殊なレースだからな。ハリボテエレジーのルートなら、もしあってもJWCの後で出るレースだろうな」

 

まぁとにかくまずは横浜ステークスの再試合。

練習する時間が増えたことを喜ぶべきか、他のウマ娘も練度をあげられてしまうことに悲しむべきか。

数日後に再試合をすると書かれた紙には、シンボリルドルフの印と共に、運営からの謝罪が述べられていた。

ハルウララは所属していたチームから外れてしまったらしい。今日はそのことについて聞こうと思っていたんだけど。

 

「……あ、そうだナイスネイチャ。一緒に、ハルウララのところへ行くか?」

「え? まぁ、ご一緒しますけども。なんで急に?」

「レースの事を、聞こうと思ってな。さまざまな治療を施したら、だいぶ薬が抜けたらしい。ハリボテエレジーにも、感謝がしたいそうだぞ」

「あぁ! いや別に、大したことはしてないですよ」

 

この期間、ハルウララは血液を浄化するために血管とチューブを繋ぎ、浄化機にずっと血液を送り続けていた。

浄化している間はもちろん血液が足りなくなるわけだが、そこでバツグンの回復力を持ったハリボテエレジーが血液の譲渡を許諾した。

幸いなことに血液型は合っているらしいのでハルウララへ血液をドックドク渡していたらしいのだが、貧血らしき症状を見せないことからコイツは血液生成スピードまでも群を抜いているらしい。

 

「なら行きますよ。女の子二人侍らせてデートなんて罪作りな男だねぇ」

「ほざけ」

「うわっ、急に冷酷じゃん」

 

駐車場へ降りて自分の車の鍵を出す。

最近ウマ娘を乗せることが多くなってきた俺のこの車。

中古で売るとき用にシンプルな黒で染めていたが、おっとハンドル部分にシールがついているそ犯人はわかっている。

剥がしやすい素材なのもいらつく。

 

ペリペリ剥がしながらエンジンをかけクーラーを入れれば、二人が(片方の表情は見えない)涼しげな反応をする。

アクセルを踏みつつ、ナビを入れた───。

 

 

 

 

大欅(おおけやき)中央病院ウマ娘科。

ハリボテエレジーは二度目となるこの場所のこの病室で、何を思うだろうか。

幾分と萎んだ気がする。

しかしその眼光は弱々しく、ハルウララの元気な姿は想像できなかった。

 

「……あ。トレーナーさん、おはよ……!」

 

だというのに、なんとか元気を振り出して心配かけまいとするハルウララ。

血管が浮き出ている細腕は、たまにピクピクと振動を繰り返す。

……だが、今しか聞く時間はあるまい。警察は怖い。怒った警察は待ってくれないのだ。親父が言ってた。

 

「……ハルウララ。聞きたいことが、あるんだけど?」

「なぁに?」

 

ハリボテエレジーがリンゴを剥き始める。

ナイスネイチャがニンジンを剥き始める。

俺はハンバーグのタネをこねくりまわしながら、神妙な面持ちで口を開いた。

 

「合宿の時、誰かに呼ばれた、とハリボテエレジーに言った……らしいけど?」

「うん。もしかしたらどこかのトレーナーさんかなって思って……」

 

ハルウララの口にカットされたリンゴが投入された。

俺はナイスネイチャにタネを渡して移動式コンロを引っ張り出しながら、ハルウララの顔色を伺いつつ聴いた。

 

「えっと……何か、されたり……?」

「トレーナーさん、多分その、抽象的です」

「……。じゃあ……えっと……注射されたり、した?」

「うん。でもその後はよく覚えてなくて……ずっと、頭が熱くって、脚が痛かった……」

 

頭が痛かった。

興奮剤とかの類かなぁ……。

 

「ってことは、最初の合宿から、記憶が曖昧なんだな?」

「うん……。誰かとレースしたような気はするんだけど……あと、横浜ステークスって字とか……変な窓を覗いた時みたいに、ぼや〜ってしてた」

 

……………。

磨りガラスのことか……?

まぁでも、何をやったとか誰と会ったとかは覚えているが、記憶の中はその行動や人物に霧がかかったように曖昧になる、と。

 

ジュ〜〜〜…………。

 

脂が弾ける音を片耳に、思考を加速させる。

まぁ、ハルウララの証言があるのだから、予想は確信へ変わる。

小脇に抱えて持ってきた炊飯器からご飯をよそっていると、ハルウララの耳がぴくぴくと動き出す。

 

「特徴は?」

「黒かった!」

「そうか」

 

じゃあ全国津々浦々の黒い服を着たやつを手当たり次第に殴っていけばいずれビンゴが来る、と。

ん? あ、俺今日黒シャツじゃん。犯人は俺かもしれん。

……まぁとにかく。

 

「もう一個だけ。あとどれくらいで復帰できそうなんだ?」

「えーっと、エレジーがたくさん血をくれたからだいぶ進んでるんだって! もうすぐ復帰できるみたいだよ?」

「そうか!!」

 

朗報なり朗報なり!

具体的にはわからないけど、それでも復帰できる目処が立っているのならとても嬉しい!

世間的にはドーピングの件は報道されてないんだから、ハルウララがこのままレースに出られる日も近いだろう!! やったぁ!

 

「焼けたよ」

「よし。ほい、ハルウララ。俺らからの差し入れだ」

「わぁ! ありがと〜!」

 

三段ハンバーグの上にニンジンを一本まるまるストレートイン。

付け合わせに先程ナイスネイチャが剥いたニンジンのスティックをどうぞ。

……そういえば、ウマ娘がニンジンが好きな理由はリンゴに味が似ているから、とかなんとか。昔はリンゴが高かったから、戦争とかで地を駆けたウマ娘はニンジンで英気を養ってたんだな。

植民地支配ではウマ娘が重宝されたらしい。パワーもあるから奴隷とかにもよく使われて……っと。

 

「……奴隷……?」

「ん? トレーナーさん、どうしました?」

「あ、いや……」

 

薬。

狙われたハルウララ。頑丈な体と健康な血液が必要だった。

奴隷。奴隷ウマ娘に何かを訴える権利はなかった。それこそ、兵器運用されたり……。

アグネスタキオン。実験に付き合えと、担当のトレーナーをモルモット呼ばわり……し……。

 

「実験……?」

 

薬の実験……特にこれと言った成果がなかったハルウララにドーピングを施したらどうなるのか。

もしも、最下位から最上位まで上がったら、薬の効果を誇示できる。

わざわざ横浜ステークスというそこまでデカくないレースで薬を投与したのも、実験だからどのレースでも良かった……とかじゃ……?

 

「繋がったかもしれん。ハルウララ、犯人は何人いた?」

「えっと……10人くらい!」

「多いな。ということはなんらかのグループだ。実験施設か、製薬会社やどこかの財閥……表立って行動ができる位置に、犯人はいる」

「え……というと?」

「俺も良くはわからん。けど、それだけでかいグループなら、絞れる確率は上がるってわけだ。ハルウララ、サンキューな。ハンバーグ食っていいぞ」

「やった!!」

 

もぐもぐと頬いっぱいににんじんハンバーグを頬張るハルウララに目を細めつつ、病室を出る。

結局自分は何もできなかった、とでも言いたげなナイスネイチャが遠慮がちに俺の顔を覗き込んだ。

 

「ねぇ、なんか合点がいった、みたいな顔してるけどさ。トレーナーさん、何者?」

「……ちょっと伝手があるだけの一般トレーナーだよ」

「その伝手って?」

「P.P.U.って知ってるか」

「ぴーぴーゆー?」

「プロフェッショナル・ポリス・ウマ娘」

「うわ安直」

 

ハリボテエレジーが声を上げ、しまった、という顔をする。見えないけど。

 

「ウマ娘はレースに出るだけが能じゃないってのは、本人であるお前らが一番知ってるだろ」

「んー、まぁ、うん。それで?」

「オマワリサンみたいに、その脚の速さを活かす職業……たとえば警察職に就く奴もいるんだ」

「そうですね。車より早いウマ娘が追跡したら逃げれなさそうです」

「で、その警察職のウマ娘にも、エリートチームが存在する。それがP.P.U.なんだ。鍛え、育て上げ、この世の悪を滅さんとする、特殊部隊だ」

「はぁ……それが?」

「そのP.P.U.を仕切ってるのは一人の人間だ」

「なるほど?」

「俺の親父だ」

 

静まり返る。

ちょっと気持ちいい。

 

「「───え」」

「病院では静かに」

「「ッ…………」」

 

目を丸くするナイスネイチャ。

眉毛がガッコガコ動くハリボテエレジー。

二人の反応を楽しみながら、手に入れた情報を横流しすべく親父にメールをけしかける。

ふふふふふ。

 

───ぜってぇ、許さねぇからな……。




あなたの感想でモチベが……うぐっ、お腹いたい……。
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