担当ウマ娘がダンボールかぶってる   作:徐々に奇妙な冒険

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そして番長は猛る

「一番、ハリボテエレジー」

「はいっ!」

「二番、チョクセンバンチョー」

「実力テストだろうが負けねぇからな」

「ようい!」「buddy……」

「「GO!!」」

「「ッ!!!!」」

 

親子の合図で二人が同時に駆け出す。

ハリボテエレジーは最近できていなかったトレーニングも兼ねて模擬レースのような形式でやらせてもらった。

先頭を行くはチョクセンバンチョー。俺のアドバイスを聞いて、今回は先行らしい。

後ろにいるのはハリボテエレジー。前がチョクセンバンチョーしかいないため、普段よりもペースが早めだ。先行のウマ娘を追い込もうとしたらそうなるだろう。掛かっている。

 

「速いな」

「ウマ娘の専門校だし、当たり前でしょ」

「そういえば、この前ウチに配属されたウマ娘はトレセンからやって来たみたいだったぞ」

「見送ったやつが多すぎてわからんね」

 

サブトレーナー契約。

本来のチョクセンバンチョーの補佐を親父がする。そして、そのサブトレーナーである親父の補佐をするのが俺の役目だ。雇い主は親父という事になる。

 

「お二人とも、どう思われますか」

 

不安そうにこちらを伺ってくるチョクセンバンチョーのトレーナー。第一コーナーを曲がるところだった。

親父は自信満々に「わからん!」と言い放ち、そのままチョクセンバンチョーを見つめていた。

……はぁ。

 

「かなり走り方が型破りですね。まさに暴れウマ娘って感じです」

「実は、しばらく自由に走らせていたんです。チョクセンバンチョーの脚質だと、普通の走り方ではうまくいかないような気がして」

「なるほど、たしかに間違って無いかもしれませんね。実際、ハリボテエレジーが未だに慣れてません」

 

第二コーナー通過。

まだチョクセンバンチョーが本調子を出していないこともあり、ハリボテエレジーも転ぶことなく続いている。

難関は、ウマ娘たち全員が勝負に出る第四コーナーだが……。

 

「おっ。やるなぁ」

「はい。平面ならチョクセンバンチョーは負けませんから」

「……へぇ? ハリボテエレジーも直線は得意なんですけどねぇ?」

「いやいや、うちのバンチョーが一番です」

「よさんか二人とも。今はレース中だ」

「「…………」」

 

トレーナー二人がサブトレーナーに諭された。いかんともしがたい。

……ただ、芝というのもあってハリボテエレジーはなかなか快調そうだ。この前泥まみれになったトキノミノルの蹄鉄を二人でせこせこ磨いたかいがあった。

そのおかげか、第三コーナ差し掛かりで競り上がっている。かなり幅を埋めた。

 

「……勝負だ」

 

第四コーナー、ハリボテエレジーがギアをあげる。

あっ、入ってる! これ転ぶパターンだ!

 

「あっ!!」

「ハリボテエレジー……どうしてお前はそうなんだ……」

「ははは! 面白いな!」

 

横回転を加えながら芝を転がるハリボテエレジー。

骨は砕けていないらしい。

いつものように、クラウチングスタートの姿勢をとって……。

 

「「なっ……」」

「さあ、ここからですよ」

 

轟音と共にハリボテエレジーが競り上がる。

チョクセンバンチョーとの差が一気に縮まり、そしてチョクセンバンチョーを。

チョクセンバンチョー、を……。

 

「抜け、ない……?」

 

いつまで経っても、ハリボテエレジーが抜かせないでいた。

二人しかいないコースで、ハリボテエレジーが抜かせない。

抜かす明確なビジョンを、見ることができていない。

 

「ハリボテエレジー……っ……!!」

 

どれだけ祈ろうが、変わらなかった。

ゴールも、立ったハナの差で。

それでも、2着である事には変わりはない。

 

どうしてだ。

ハリボテエレジーはしっかりと自分の最高速を出せていたし、チョクセンバンチョーだって、すぐに差を縮められて焦っていたはず。

なのに、どうして抜かせなかった?

どうして、後ろにいるハリボテエレジーに、スピードを合わせられたんだ!?

 

「……とまぁ、これがチョクセンバンチョーの力です」

「…………ッ」

「ははっ、面白い! 彼女はすごい!!」

 

今回のJWC。

注目すべきはギンシャリボーイで、チョクセンバンチョーは優秀ではあるが練習次第で抜かせると思っていた。

だが、違う。

明らかな、刺客がいる。

例えるならライスシャワーのような。

例えるなら、ハマったゴルシのような。

 

「トレーナー……さん……ハァッ……はぁっ……」

 

天才は、三人いる。

そう思わせられた。

 

「君! 少し話をしよう!!」

「あぁッ!? 今疲れてンだよ……」

 

とは言いつつも根は良い子なのか「あ゛あ゛あ゛あ゛〜……」と気の抜けた声を出しながらも親父の方へ向かうチョクセンバンチョー。

そして、回復してようやく俺の元へ来たハリボテエレジー。

脚が震えている。

 

「……トレーナー、さん」

「わかってる。今のままじゃ、チョクセンバンチョーには勝てない」

「それも、そうなんですけど……その……」

 

ハリボテエレジーの視線が、黒フィルム越しにあちこちを彷徨う。

……思考を読め、俺。担当のウマ娘に無理をさせるな。

不安な感情、最近のレースの様子、ソレらから読むんだ。

……つまりは。

 

「勝てるのか不安になって来たんだろ」

「……え?」

「横浜ステークスでは全く活躍できなかった。それに、得意な芝での実力テストも、チョクセンバンチョーに負けてしまった。だから自信がなくなってきている。……違う?」

「違わ……ない、です」

 

挫折、か。

勝負事と多く接するウマ娘の世界ではよくあることだ。

でも、それを乗り越えるからこそ強くなり、そしてそれを実現するために俺が、トレーナーがいる。

 

「ハリボテエレジー」

「……はい」

「乗り越えよう」

「…………」

「JWCの優勝トロフィー、俺に見せてくれ。そこまでの道のりは、俺が手作りしてやるから」

 

手を差し出し。

すぐに握られた手。

震えてはいるものの、それがどうしたと言わんばかりの、これは武者振るいであると言わんばかりの闘志を感じる。

 

「練習だ」

「はい」

「ギンシャリボーイを、チョクセンバンチョーを、全部を越えるぞ」

「はいっ」

「行こう!」

「はいっ!!」

 

まだまだ、俺たちには足りない何か。

ソレを埋めるべく、俺たちは親父とチョクセンバンチョーの元へと駆け出した。

 

 

 

 

犬歯を剥き出しにして走る君が好きだ。

一度先頭に出たら抜かせない君が好きだ。

メラメラ燃やす心を、全面に押し出して戦う君が好きだ。

だから、だからチョクセンバンチョー。

 

「あの……本当に良かったんですか? あのトレーナーさんのお父さん、すごい人だって聞きました。サブトレーナーとしては、とっても優秀な気が……」

 

僕の後ろにいたウマ娘が遠慮しがちに聞いてくる。

もしかして今更心配しているのだろうか。

 

「大丈夫だよ」

「……それでも、どうしてアレに、なんですか? サブトレーナーを譲渡してくれるなら、是非私に……」

「君はティアラじゃないか。あの子は僕と同じJWC路線だ」

「実績がないじゃ無いですか! 皐月賞も出ていないのに、どうして!」

「実績なら、あるよ」

 

毎回、校舎裏でトレーニングをしていたね。

興味が出て勝負をしてみたけど、一回負けちゃった。

実力は僕の方が上のはずだった。なのに、抜かされたらそれ以降、前に出れなくなった。

だから次から抜かせないようにした。それだけ。

 

「僕はね、良いレースがしたい」

「……んえ?」

「あそこにいるトレーナーの言葉を借りるなら……エモいレース、かな」

「は、はぁ……」

 

強くなってね。

チョクセンバンチョー。

僕は上にいる。だから、君が上がってくるんだ。

もぐもぐ。

 

「うん、美味しい」

「ところでなんでドローンを使って盗撮なんか……」

「しっ! 僕がストーカーみたいになるじゃないか!」

「す、すみません」

「ほら食べなよ君の好きな甘エビだ」

「あ、あ〜ん……おいひいれふ」

 

まったく、失礼してしまうね!

 

「いや普通にストーカーだと思うぞ」

「ひどいよおハナトレーナー!?」

 

さ、さっきまで頑張ってキめてたのに!

シリアスな雰囲気を醸し出していたのに、どうしてそこで口を挟むんだい!

 

「いや寿司食い始めたら誰でも『あ、もう良いんだな』ってなる」

「(´・ω・)」

 

屋上でキめてたのにぃ……。

 

「それで? もうやることは決まったのか?」

「三冠バ、かなと」

「……わかった。言っておくが茨の道だぞ」

「ティアラもダービーも三冠も、派手に舗装された道なんてあるの?」

「……いや、ない。わかった。楽しみにしておこう」

「寿司食べる?」

「玉子をもらおう」

 

待ってるよ、チョクセンバンチョー。

君の活躍を。

 




【速報】ここからバンギンのルート入ります【速報】
バンボテ? 無いです()
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