担当ウマ娘がダンボールかぶってる   作:徐々に奇妙な冒険

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そんなわけで

アッ! もう朝だ!

ウマ娘の元気な声がよく聞こえるね!

 

「……? 今日はお早い出勤ですね」

 

あぁ、どうも先生。

はは、僕が一番早い出勤らしいです。

いやあ、エナドリってすごいですねえ。

 

「っ、タイムカード切りました? 昨日から退勤してないことになってますよ」

「あれえ? よくわかんないっすねぇ……めっちゃ仕事してたんで」

「帰りました?」

「かえってないれす!」

「理事長ーッ!!」

 

お? お? なんすかなんすか、俺が病人みたいに。

まっさかははは。エナドリ一本で夜が明けるまで仕事してるわけないじゃないですか?

おおっとなんすか理事長、謝んないでくださいよ。

え? いや、理事長わるくないっすよ、頭あげてくださいってば。

 

おー、ハリポタエレジーじゃん。

……ごめんて、ノリじゃんか……。名前間違えたくらいでそんな怒らんでも……。

 

「……そんなわけでこの人に来てもらいました」

「やあモル……トレーナー君」

「帰る」

 

あっあっ何をする。離せい、離せい。

 

「ふぅン……トレーナー君は何を飲んだんだい? 普通こんなことにはならないけど」

「怪物みたいなエナドリ」

「ほう……ゴミ箱にあったあの缶か……あれ、ウマ娘用じゃないかい? あんなもの飲んだらガンギマリに決まってる。さ、今日のところはこの薬を飲んで……」

「ヤダァ───ッ!! どうせまた体が光るんだ! 風邪薬と称して新薬渡してきたのを俺は忘れないぞアグネスタキオン!」

「いやあほら、今回は違うから飲みたまえ……飲みッ……エレジー君右半身を! 右半身を抑えるんだ!」

 

ぐおおおおっ!!

テメェこら、やめるぞ! おまえのトレーナー辞めるぞ俺は! いやだぁっ! 新薬だけはいやだぁっ!!

 

口が開けられ、液体が喉奥へ流し込まれる。

一拍置いてみた。

光った。

 

「タキオンさん?」

「間違えていたようだ、はは……トレーナー君、この娘を止めてくれ。肩が掴まれて痛い」

 

じゃあなアグネスタキオン、また会う日まで。

引っ張られていくアグネスタキオンと引っ張るハリボテエレジーを見送ると、すれ違いにもう一人ウマ娘が入ってきた。

 

「どったんすっげえイルミネってるけど」

「アグネスタキオン」

「くそワロタ」

 

ゴルシてめえコノヤロウ何しにきやがった。

 

「もういい加減ポテト食べろよ……お前もう三日も飯食ってねえんだぞ。お母さん泣いてるぞ」

「いやあ、エナドリ飲んだから『もう少し仕事できるかな?』って感じがしてちっと膝に矢を受けちまいましたな」

「あちゃあ、こりゃダメだな、完全にやられてやがる」

 

……。

 

「お前よくスーパーゴルシちゃん言語がわかったな」

「三年前に学んだことあんだよ」

 

つい最近見た気がする保健室の天井を眺めていると、ゴルシが目の前にファイルのようなものを差し出してきた。

なんこれ? と目で促すと開けろとのこと。

適当なページを開くと、ウマ娘が走っている写真とデータが載っていた。

 

「これお前が作ったん?」

「いんや? 生徒会室に置いてあった」

「今すぐ返してきなさいあった場所に」

「いいじゃねーか、見つかったけどなにも言われなかったぜ」

 

ま、まあ生徒会メンバーが見て見ぬ振りしたのなら良いけど……。

 

「でコレがなんだよ」

「いっつも頑張ってるトレーナーさんに差し入れしようと思ってぇ(きゅるん)」

「ははは、まだ働けってかお前」

「オメーの事だしここにいても結局レースかトレーニングの事考えてんだろ」

 

確かに。

レースやトレーニングはもちろんとして、他のウマ娘のデータ統括、オーバーワークと、ついでにウマ娘よりも保健室の天井見ている自信がある。

もしかしたら俺がウマ娘かもしれない。どけ。俺がウマ娘だぞ。

 

「休みは取るべきだぞ。身に染みてんだろ。将棋やる?」

「やる。……つって、トレーナーなんてどこもこんなもんじゃね? セクハラド変態トレーナーとか、キツめのスーツ美女とか優男とか。休みとってんのかアイツらって感じること多いぞ」

「必殺ゴルシフォーメーション」

「必殺ゴルシフォーメーション改」

「嘘だろお前。……そうかぁ? 休んでるとこが見えねえだけじゃね? アイツらにも休みはあんだろ」

「あったとしても、だ。今は大事な時期だし、休みが取れるのはもう少し先のことだよ王手」

「盤面返しッ」

「おま、盤面まるごとひっくり返すのは無しだろ」

 

180度回転して俺の元にやってきた王将が追い詰められている。俺将棋強くね? 何この盤面絶対勝てないんだけど。

……ゴルシは明らかに気を使っている。特に、俺といると。

平常運転のコイツは扱えたもんじゃないが、周りの空気を見て綺麗なゴルシに早変わりするから器用な奴である。

 

ゴルシが将棋盤に碁石を置き始めた。

 

やっぱり気を使ってないのかもしれない。

角行で碁石を討ち取ってみれば、ゴルシは王手を決められていた。

ゴルシ弱し。

 

「……今度勉強するか? 将棋」

「この将棋マスターのアタシに将棋を教えるなんて片腹痛いぜ」

「クイーン置きながら何言ってんだお前。っていうかお前のカバンどれだけボードゲームあんだ」

「バトル○ーム」

 

権利的に大丈夫なのかそれは。

 

「ま、そのファイル、持ってても損は無いと思うぜ。でかい武器だ」

「……そうかもな。今後やってく上で重要な物になるかもしれん王手」

「ここで手札からドロフォーカードを使うぜ」

「トラップカード発動バーサーカーソウル」

「………………帰るわ」

「おう。気をつけて帰れよ。あとコレ持って帰れ」

「ハリボテエレジーのことに躍起になんのはいいけど、それで倒れてトレーニング見れないんじゃ意味ないからな、しっかり休めよぉ〜」

「コレ持って帰れ……ほんとに置いていきやがったアイツ」

 

ゴルシが帰って一息。

ぽすと枕に後頭部を埋め、ファイルを手に取る。

……「いつかこのファイルが、誰かの助けになることを願う」。

ロマンチストなのかな。

 

「メジロマックイーン、トウカイテイオー、ライスシャワー……」

 

本当に、よくこれだけのデータを集めて来れたもんだ。

幼少期っぽいのまであるじゃないか。ルーズリーフで止められていて、後ろページにはトレセン学園ができた頃の写真などもまとめられている。

 

「……ん」

 

なんだこのページ。一枚だけ乱暴に破り取られている。

ちょっとだけ残ったページから予測してみよう。

えー、ト、ト、ト……。

 

「トぉ?」

 

トで始まるウマ娘でこのファイルに無いやつなんているのか?

トーセンジョーダン……いるわ。

トウカイテイオーはさっき見た。

 

「なんだっけ……なんだぁ……?」

「すっ、すみません、失礼します!!」

「うおう。たづなさんじゃないすか、どうしたんです?」

「あの時、間違ってウマ娘用のドリンクを渡してしまったみたいで……私のせいです! 申し訳ありません!!」

「なんすかなんすか、いや全然大丈夫っすよ。気にしないでください」

「しかし……」

「俺そんなことより気になることあるんすよ。……たづなさんって、ウマ娘に詳しいですよね。コレ、誰だかわかりません?」

 

ファイルを見せると顔を顰めた。やっぱわかんないかな。もしくは生徒会室のものだってバレたかな。

……いや違うわこれ多分俺がまだ発光してるからだ。恨むぞアグネスタキオン。

 

「い、い、いえ、知らないですね」

「そうですか……トで始めるウマ娘で、ほら、端っこにまでびっしり何かが書き込んでありますよ。ってことは結構有名なウマ娘だったっぽいんですけど、心当たり無いんですよね。いやあ……なんか……なんかあともう一人いた気がするんすけど、思い出せなくって……」

「……えっ、ええと、私、これで失礼しますね! これりんごです、食べてください! っでは!!」

 

業務を思い出したのか足早にたづなさんが去っていく。

いやまじでほんと誰なんだコレ。この端っこページになにか読み取れるヒントないか……。

好物……ラー……餃……ラーメンとギョウザ? そっかぁ、美味しいもんなぁ。

引。……引退? 引退したのかこのウマ娘? あぁ、よくわからん!! もっと早くこのファイルを手にしていれば思い出せたかもしれないのに!!

 

「だぁチクショウ、全然思い出せない……寝るか」

 

とりあえず今日のところは寝よう。

どうでもいいときに思い出すかもしれんし。

 

 

 

 

 

夢を見た。

 

 

 

 

 

 

 

『ぐんぐん突き放していく! その剛脚でゴールへと進んでいく!! 日本レコードをぶっちぎったウマ娘は、どんなレースでも気を抜かない! 速い速い! 後続を追い払いただ一人突き進む! もはやバ身では表せない!』

 

───。

 

『今ゴールテープを切りました! 伝説のウマ娘としてこの世に名を轟かせましたぁ!!』

 

──────。

 

『パーフェクトと呼ばれていたウマ娘! 名を改めて再びこの地へ降り立った! まさに十連勝であります! その名も……』

 

『トキノミノル!! トキノミノルの圧倒的な勝利であります!!』

 

────────────。

 

…………っ、…………。…………! …………?

 

「お姉さん! 僕、いつか、お姉さんみたいな人を育てるトレーナーになる!! ぜったい!!」

「◼️◼️◼️◼️◼️◼️。なら、◼️◼️◼️◼️。これを、◼️◼️◼️◼️◼️◼️。◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️」

「いいの!? ……ありがとう!! 大切にする!!!!」

「◼️◼️◼️◼️◼️◼️」

「うん! まってて!」

 

 

 

 

 

「…………もちろん。いつまでも、ずっと待っていますよ」

 

 

 

 

 




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