担当ウマ娘がダンボールかぶってる 作:徐々に奇妙な冒険
おっはよう!
今日も張り切ってトレーニングしましょう!!
「メイクデビュー、メイクデビュー、メイクデビュー……」
どうしたんだいハリボテエレジー! 元気がないじゃ無いか!
え? なんだって? 明日がメイクデビュー?
…………。
「「明日メイクデビューかぁ……」」
二人してでかいため息をつく。
俺の方はメイクデビューの選手一覧を見て。
ハリボテエレジーは自分に自信がなくて。
「ハリボテエレジー、メイクデビューの距離は覚えてるか?」
「2000mです」
「そうだな。だから今日はトレーニング場所を変えて距離が2000mあるところを貸してもらった。で、今日は他のウマ娘がいるとプレッシャーになると思うからサポート役は無しだ」
「はい……」
「走れるか?」
「頑張りましゅ……」
ぽすぽすとハリボテエレジーが歩いていく。
トウカイテイオー直伝の柔軟でスイッチが入ったのか、首を二、三回鳴らすとポーズを取って準備完了の意を示した。
明日メイクデビュー、明日メイクデビュー、明日メイクデビュー。
「いくぞ。……ようい、どん!!」
「ッ」
最初の頃と比べてかなり速くなったハリボテエレジー。
ゲートが開いた瞬間出遅れないようにと練習した甲斐もあってか、集中を保ち足を溜めることに成功している。
カーブ。減速。
「ちくしょう」
こればかりはもうどうしようもない。
本人のトラウマかは知らないが、どうやってもカーブを曲がり切ることができないんだ。
大事なのは曲がった後。そう、ここから巻き返せるのかハリボテエレジー。
「行きますッ」
───[優勝トロフィー作成キット]───
踏み込んだ!!
加速力が半端じゃ無い。
すごい、すごいぞハリボテエレジー。
「ごーるっ!!」
「……っと。すごい……。見ろ、このタイム!!」
「はぁ、はぁ……はぁ……へへ……」
これなら、運が良ければメイクデビューぶっちぎり。
運が悪くても高いポテンシャルを感じてもらえれば花丸ロードも夢じゃない!!
「やるじゃないかハリボテエレジー!!」
「や、やりましたぁ!!」
「ようし。ここまでできたんだ。今日はトレーニングせずに体力を回復した方がいい。Make debut、練習はしてきてるな?」
「はい!」
「イケるぞ……イケるぞこれは!」
「イケますか!!」
「あぁ!! よし、今日は解散ッ! 明日に備えて体力を回復させてこい!!」
「はいっ!!」
やる気そのままに駆けていくハリボテエレジーを見送り、芝に座り込む。
まさかここまでやるとは。
結構俺が見れてない時間が多かったけど、これなら問題無い。
たづなさんの言っていた、ハリボテエレジーは俺が思っているより強いって言葉。まさにその通り。
感服した。
「はぁぁ〜っ!!」
嬉しい誤算でトレーニングが早めに終わった。
やったぁ。空青いわぁ。
「言うてここから。メイクデビューしたら、あの二人に追い付かなければならない。……それは棘の道だぞハリボテエレジー」
これからもっとハードになる。
もう、遅いからこうしようじゃダメ。遅いこと自体が、ダメな領域になる。
いけるのかお前。
……できます!やりたいです! なんて言いそうだけど。
「これが終わったら俺もトレーナー引退しようかなぁ……どうしようかなぁ……」
トレーナーは十分楽しいけど、正直言ってもっといろんなことしたいし。
旅とか……ウマ娘のブリーダーってのもいいかも。
いや結局ウマ娘関係になるんかーいってね。
あーあ。
メイクデビュー。不安だけど楽しみだなぁ。
◇
おやすみ貰っちゃった。
着替えたはいいものの、どうしようかな。
普通に家で休んでても良いけど、ちょっともったいないかも。
せっかくだからもう少しだけ学園をうろうろしていようかな。校内案内まだなわけだし。
トレーナーさんはすっごく嬉しそうにしてたけど、私としてはまだあんまり自信が持ててない。
そりゃ、勝ちたいって気分はたっくさんあるけど、でもまだウイニングライブ練習も自主練しかしてないし……ってあれ? この歌、どこから聴こえてくるんだろう?
あ、ここかな。
「ワン、ツー、スリー、フォー。ファイ、シク、セブ、エイ……」
「マタコシノウゴキワスレテルヨ!!」
「はい!」
あれは……トウカイテイオーさんと、誰だろう。
見たことないウマ娘さんだ……。
「ウンウンイイカンジ……ってあれ? エレジー?」
「あ、はい……ちょっと見学に……」
「おお〜! 見学だって、いいかな?」
「私は、別に……」
「ジャアモウイッカイ!!」
スピーカーから音が流れる。
やっぱりこの曲……ウイニングライブで使われてる曲だ。
トウカイテイオーさんが教えている……そっか、ダンスが得意だから。
じっと見つめていると、トウカイテイオーさんが閃いた! と叫んだ。
「二人で踊ってみたら?」
「二人で?」
「ですか?」
「うん! ハリボテエレジーも、この曲は踊れるでしょ? はい決まり! じゃあ一着のときのやつ! 行くよ〜!」
「えっちょちょちょ!!」
あぁ流れ始めちゃった!!
え、えっと……踊ろう!!
「…………」
トウカイテイオーさんが首を傾げた。
つ、次はこうで……!
「…………ううん」
うなり始めた。
え、えっと……。
「ちょっとストップ」
「はい」
「ねぇエレジー……あのさ、ちゃんと練習はしたんだよね?」
「え? は、はい、ウイニングライブの動画を見て練習しましたけど……」
「一人で?」
「はい……」
トウカイテイオーさんの耳が前に垂れる。
な、なんかおかしなことしちゃったかな……。
あたふたしていると、一緒に踊ったウマ娘さんが口を開いた。
「ハリボテエレジーさんでしたっけ」
「は、はい!」
「左右が逆です」
「……はい?」
「大方、スマホで動画を見て練習したから鏡合わせで覚えてしまったのでしょう。それ、二着三着と合わせるときぶつかりますよ」
「……エレジー……その……言ってくれれば教えてあげるのに……」
「本当に大丈夫なんですか? ウイニングライブでそんな醜態を晒したら……いえ、ウイニングライブすら出られないかもしれませんね」
ウマ娘さんはトウカイテイオーさんに一礼して出口へと向かっていった。
思い切り、私を睨んで。
「そのダンボール……ふざけているとしか思えません。やる気あるんですか?」
「これは……訳があって……」
「どんな訳ですか説明してください。最初に見た時からずっと言いたかったんです」
「そ、そんな言い方は……」
「テイオーさんは少し黙っていてください」
「ぴえ……」
「ちゃんと走る気があるのならそれを外してください。私、メイクデビューでそんなふざけた人と走るつもるありませんから」
「…………」
「メイクデビュー後、私は全てのレースで一位を取るつもりです。その様子では、仮に三位以内に入っても踊れないでしょうね」
メイクデビュー……明日、一緒に走る人なんだ、この娘。
でも……。
「踊りは練習するし、ダンボールは取るわけにはいかない。私には私の事情があってこれを被ってるんだから……。絶対にあなたに勝って見せます。勝って、私が本気ってことを示してやります」
「…………どうだか。先輩、失礼します」
「エットソノ、ウン……ガンバッテ……」
「トウカイテイオーさん。お騒がせしてすみません。でもちょっとだけムカついちゃったので……私も失礼しますね」
「エレジー……」
絶対に勝つんだ。
私は、ふざけてない。
それを、証明するために。
『各ウマ娘、ゲートへ向かって行きます』
緊張で何もわからない。
ただ、周りのウマ娘が全員、こちらを睨んでいるのだけが分かった。
ゲートが開かない。開くまでを長く感じているだけ?
よくわかってないけど、とにかく走らなきゃ。
この状況を、どうにかしなきゃ。
「本気で走れー!!」
「ふざけてんのか? アイツ」「さあ」
「あんま期待できないな」
「他のウマ娘の箔が落ちないか?」「運営は何をやってるんだ」
「さがれ」「下がれ」
「下がれ」「降りろ」「下がれ」「下がれ」「下がれ」「下がれ」「下がれ」「下がれ」「下がれ」「下がれ」「下がれ」「下がれ」「下がれ」「下がれ」「下がれ」「下がれ」「下がれ」「下がれ」────────────。
このアウェーな状況を、どうにか。
うるさい。
うるさい、うるさい。
『8番ハリボテエレジー、少し不調が見えますね』
何もわかってないくせに。
努力を、してきたのに。
勝つんだ。
絶対に勝つ。
勝たなきゃ……。
『さあ各ウマ娘、全員ゲートに収まりました』
早く始まれ。
もう聞きたくないよ。
ダンボールの中で罵声が反響する。
目の前がだんだんチカチカしてきて、くらくらする。
隣のウマ娘の顔も認識できない。
ゴールだけ、ゴールだけ見ないと。
うううううううう。
もう、もういやだ。
もう、やめて───。
『ゲートが開きました』
「あ」
私の前方を、ウマ娘たちが駆けて行った。
こんな文章力無さすぎるレース書くのはメイクデビューのみです。