イージーモードからハードモード   作:あるい

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第1話

この世界に気づいたのは3歳の時。

きっかけはあの人と出会ったこと。

 

「王騎将軍・・・!?!?」

「ンフフフフ。私はまだ将軍ではありませんよォ。もちろんすぐになりますが。」

 

 

 

001

 

 

 

私のうちはそこそこ名の通った商人だった。

ちょっと珍しいのが、父でなく母が取り仕切っていたこと。

父は詩や書を愛し、そんな父を母は愛していた。

 

「こんなにかっこいい人そうそういませんよ。羨ましいでしょう。オホホホホ」

 

とは母の口ぐせである。

 

まあそれはおいといて。

 

うちはいまちょっとしたお祭り状態だ。

なんでも客人が来るんだとか。

私は邪魔にならないように奥にいなさいって言われたけど、そう言われたら気になっちゃうでしょう。

好奇心バリバリのお年頃なんです。

 

「ここらへんからなら見れるかなあ〜」

 

よっこいせっと。

屋敷の入り口が盗み見れる屋根に登ってみた。

 

さて、聞いた話だとそろそろ来るはず。

 

「もうちょっと前に出ないと見えないか」

 

前へ・・・・・・・

 

ズルッ

 

「あっ」

 

思ったときは時すでに遅し。

身を乗り出しすぎた私は屋根から滑り落ちた。そこそこの商人の家はそこそこでかい、つまり、そこそこの高さがある。

 

襲ってくる衝撃と痛みを予感して無意識に目を閉じた。

が、私を包んだのは別のもの。

 

「まさか頭上から童が落ちてくるとは思いませんでしたよォ。」

 

すぽっと逞しい腕に抱き抱えられた。

予想外の出来事と、自分の身に起きたことを理解した私の理性はここですっ飛んだ。

 

「ビエエエエエエエエ」

 

泣き叫んだ。

そりゃそうだ。3歳児だ。ふつうに怖かった死ぬかと思った。

緊張の糸が一気に解けたんだろう。

なんで泣いてるのか、もはや本人もよくわかっていない。

 

「ウワーーーーーーーン」

「おやおや」

 

そのうち私の泣き声を聞きつけたうちの家臣が駆けつけ、平謝りをして私を連れて行った。

 

私は散々怒られたが、今の私はそれどころではない。

だって、だって、私を助けてくれたあの人は・・・!!

 

「王騎将軍だ・・・・」

 

キングダムの憧れの将軍、天下の大将軍、その人である。

 

 

 

○○○

 

 

 

これは一体なんだろう。

白いもやのようなものが広がる空間に、映画のフィルムみたいなものが流れている。

走馬灯か?

いや私まだ死んでないし。

 

ああ、これは夢だ。

フィルムに映っているのはいわゆる前世の記憶とかいうやつだ。たぶん。

我ながら3歳にしてどうしてこんなに周りの子どもと違うのかって思ったこともあったよ。

私が自覚してないだけで、この記憶はすでに体にあったんだね。

 

前方に大きな人影が見える。

その人は手に大きな矛を携えていて、大きな背中はとても力強かった。

 

その人影がこちらを振り向く。目があったような気がした。でもそれだけ。

その人はもやの先の光へ向かって歩み出した。

 

ーーーそっちはだめだよ!行っちゃダメだよ!戻ってきて!!

 

「・・・・!!!!」

 

声にならない叫びとともに目が覚めた。

呼吸が荒い。全身汗でびしょびしょだ。

 

泣き疲れた私はどうやら眠ってしまったらしい。

自室の布団から起き上がり、廊下へ出る。

日が少し傾いている。夕焼けが迫ってきていた。

 

あの人はまだいるだろうか。帰ってしまったかな。

 

(お礼を言い損ねちゃった・・・)

 

とりあえず表の方へ向かってみよう。

 

いくつか廊下を曲がったところで、大人の話し声が聞こえてきた。父上と母上の声と、知らない声がいくつか。

 

(よかった!まだいた!!)

 

「父上!母上!」

 

父と母の元へ駆け寄った。

その場にいたのは、やはり王騎将軍と、その脇にいるのは見覚えのある顔。

 

(騰将軍だ・・・!)

 

私はさっと二人へ向き直り、拱手礼をする。

 

「白明が子、白律と申します。先ほどは危ないところを助けていただき、感謝申し上げます。」

「王騎です。こちらは騰。さすが白明の子ですね。大事にならなくて良かった。今後は気をつけなさい。」

「はい!王騎将軍!!」

「ンフフフ。私はまだ将軍ではありませんよ、律。まあすぐなりますけどね。」

「え!?!?!?」

「こら、律。その辺にしなさい。すまないね、王騎。どうもこの子は元気がすぎる。」

「父上・・・!」

 

父上に嗜められたが、衝撃が大きかった。

まだ将軍ではない!?

王騎の姿はたしかに若く、まだ体が出来上がってないようだった。ここから見慣れた姿にさらに仕上がっていくのか・・・!

 

「ではそろそろ失礼します。白明殿、良い返事を期待していますよ。」

 

父上は王騎将軍(将軍て言っちゃうのは癖だなもう)に何か頼まれたのだろうか。

この父上に?(ひどい)

あとで聞いてみなくては。

 

去っていく二人を見送りながら、ふと両親の顔を見上げる。

 

「父上は王騎将軍とはどのような関係なのですか?」

「律はよほど王騎のことを気に入ったのかな。彼ほどの男ならすぐに将軍になるだろうね。」

 

そこから父上は王騎将軍との関係を話してくれた。

 

 

 

○○○

 

 

 

「え!父上が天才軍師!?!?」

「あからさまに驚くんじゃありません!」

 

母上からの鋭い突っ込み。

いや、びっくりするでしょ。この戦国の世の男とは思えないのほほん父上だよ!?ネズミ一匹殺せないだろうに・・・。

 

「いやいいんだよ。私の特技といえば書物だ けだけど、一時期それで王騎君の家庭教師を勤めたことがあってね。兵法なども齧ってたから、その名残かな。」

 

はーーーー。日がな書物を愛しているだけかと思ったら、よもやそんなことが。

 

「ちなみに母上は、さっき一緒にいた騰君の親戚筋に当たる。剣の師匠の家と言えばいいのかな。まあ簡単に言えば遠い親戚なんだよ。」

 

ちょっと待ってまたぶっ飛んだ設定がきたよ。

母上ってもしかしてとっても強いですか!?

 

「母上は一番強くて美しい人だよ。」

「やだ、白明様ったら!」

 

わーーーなんか納得しちゃった。

そうだったのか・・・・・・。

 

色々情報量が多すぎて頭がパンクしそう。

なんだかまた眠くなってきた。

 

「律、疲れただろう。今日はもう寝なさい。」

 

父上が優しく抱き上げてくれる。

大きくて優しい父上の手は大好きで、私は微睡みながら、この手を守りたいなあと、うとうとするのだった。

 

 

この世が戦国だということを、忘れてはならなかったのに。

 

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