イージーモードからハードモード   作:あるい

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中身のあれこれはなんちゃってです。


第2話

王騎将軍がうちに来た日、つまり私が前世の記憶を思い出した日以降、何が変わったかというと、QOL(物理的)の改善、向上である。

 

 

 

002

 

 

 

その前に私の話をしよう。

 

私の名前は律。3歳。男の子。

 

前世については名前とか細かいところはぼやぼやしてるんだけど、女性だったっぽい。

この前世は自分の記憶、体験というより、映画の中のひとりの主人公を見ているようと表現する方が近いと思う。

自分の自我としては「律」としての方がはるかに強い。よかった。

だって現代人の感覚だとたぶんすぐ死ぬ。

 

ただ、記憶が戻ってからというものの、この時代の生活環境にメスを入れたい気持ちも出てきた。

 

我慢すればできるけど、ここで我慢してもしょうがないっしょ!?

 

時代を変える〜とかかんとかなんて言ってられん。どうせそのうち誰かが見つける。それがちょっと早くなるだけのこと。しかもこんな時代の片隅のことである。

幸いうちは商人で、両親ともに新しいことに対してノーと言わない人だった。

むしろ私の行動を面白そうに見守ってくれる。ありがたいね。

 

「律ー!頼まれたもの持ってきたぞ。こんなの何に使うんだ?」

 

背中に荷物を抱えてきた男子は歴。5歳。

うちと一緒に商売をしているとこの息子さんだ。わかりやすくいうと幼馴染。

 

どさっと私の前に置かれたのは、たくさんの貝殻や卵の殻など。あと海草。

これからやるのは小学生の自由研究や科学の実験でお馴染みのアレです。

まあここまで材料が原始的なのはないけど。

 

さーて実験の始まり始まり!

 

 

 

○○○

 

 

 

疲れたーーー!

 

3歳児と5歳児、体力の限界です。

ていうか力が圧倒的に足りない。それはそう。

しゃあない、だれかに頼むか・・・。

 

家の裏の作業場(勝手に)から家の方に誰かいないか探しに行く。

すると、まさかの人が訪ねてきていた。

 

「王騎将軍!来ていらっしゃっていたのですか!」

 

その大きな体に駆け寄った。

 

「こないだぶりですね、律。そう走っては転びますよ。」

 

すてんっ

 

「いだっ」

「・・・・・・・・」

 

真顔、やめてもらえます?

 

「身体中泥だらけですね。転んだだけではこうはならないでしょう。一体何をしていたんですか?」 

「世紀の大発明です!ただ、ちょっと力が足りなくて・・・。そうだ!王騎将軍ちょっと手伝ってくれませんか?」

「大発明ですか。気になりますねェ。いいでしょう。見せてみなさい。」

 

ノリで頼んでみたけれど、案外王騎将軍って乗ってくれるんだな。子どもに優しいのかも。

 

作業場に戻ると、歴が黙々と頑張って貝殻を砕いていた。

王騎将軍を見た歴はその姿に驚いたみたいだけど、すぐに礼をとって挨拶をした。

こういう切り替えの早さはさすがだ。

 

作業場を見渡した王騎将軍は貝殻の山に進むと、おもむろに貝殻を岩の作業台に乗せた。

 

「この貝殻を砕けば良いんですか?」

「その通りです!砕いた貝殻は海草とこうして・・・」

 

そこからは早かった。さすが王騎将軍!将軍の無駄遣いとか言わない。

揃った材料を臼でごりごり混ぜ、また他のものと合わせると、だんだん白い泡が立ち始めた。

やった!できたっぽい。

 

「これは一体・・・?」

「石鹸です。あとで王騎将軍にも一つあげますね。手伝ってくれたお礼です!まずは試してみてください。さ、こちらに手を出してください。」

 

素直に差し出された手に泡を分ける。

王騎鍾の手は大きくて、硬い皮膚に、たくさんの豆のあと。これが将軍の手かと一瞬息をのんだ。

 

「その泡で手をよく擦るんです。そしたら水で流して、よく洗ってくださいね。」

 

歴も不思議そうに真似していた。

歴は顔も真っ黒だからついでに顔にもつけさせた。(顔に使えるかどうかのテストとは黙っておく)

 

「これは・・・」

 

手を洗い終えた王騎将軍が自身の手をマジマジと見ている。

初めてにしては中々良い出来だと思う!

科学なんて日常生活で使わないなんて思ってる学生諸君、退屈な教科書もたまにはこうして役立つみたいだぞ。

 

「また律の相手をしてくれていたのか。ありがとう王騎。」

 

石鹸作りに夢中になっていると、父上が現れた。

そういえば勝手に王騎将軍を連れてきちゃったけど、もしかして父上に用があったんじゃ!?

 

「律はとても興味深いものを作りますね。これも白明様が?」

「いや、律が自分でやっているんだよ。中々面白いだろう。私も妻も好きにやらせてるんだ。」

「・・・天つ才ですか?」

「それとは少し様子が違うようなんだ。何にせよ、本人は楽しそうだからね。」

「白明様、」

「分かっている。これはうちの中だけのものだよ。」

「それを聞いて安心しました。白明様たちに限って大丈夫かとは思いますが、お気をつけください。」

「ああ。」

 

父上と王騎将軍が真面目な顔をして何やら話し込んでいる。話の内容は聞こえないが、二人の表情がちょっとコワイ。

 

「律、王騎にお礼は言ったかい?」

「ありがとうございました!王騎将軍!」

 

これお土産です、と一緒に作った石鹸をいくつか渡した。

「さっき手を洗ったみたいに全身を洗ったり、服を洗ったり色々使ってみてください!」

「ンフフフフ。ありがとう。わかりました。」

 

その後、石鹸はちょっとしたブームになった。

 

まず、母上が美しくなった。

もともと美人な母上だったが、今までの美容法に加えて石鹸を使った洗顔を導入したところ、肌が改善された。

あと、デトックス効果のあるお茶を飲んだり、マッサージをしてみたり。

このへんは前世の社会人の中、どうにかストレス解消、健康意識をしていた中で集めた知識を活用した。

すっかり母上やご近所の奥様たちに我が商店の商品は人気になった。良いぞ。

 

また、王騎将軍も気に入ったのか、あのあともう少しもらえないかとの話も来た。

一番衛生面に気を使うのは軍だろう。

王騎将軍は石鹸の役目にすぐ気が付いたんだ。さすがとしか言いようがない。

 

「律ー!荷物が届いたぞー!今度は何を作るんだ?」

「ありがとう歴!まあ見てなさいって!」

 

QOL改善活動、一歩前進!

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