日常1
「シッ!!」
短く、息を吐き1歩を踏み出す。同時に腰を捻り体全体を使った円運動を意識して木刀で相手をなぎ払う。
鋭い風切り音、しかし、それは乾いた音を立てて相手の木刀に防がれていた。
「相変わらず、太刀筋は鋭いが……」
相手は一度言葉を止めて腕を振るった。
それだけで、攻めていたはずが、無様に体がよろめき致命的な隙を生んでしまった。
「筋力不足だな」
ただそれだけの理由で、完全に負けた
「恭也兄さんが容赦ないだけです。僕は、同世代なら力は強いほうですよ……」
さらに言い訳するなら、少年は外見が華奢で、鍛えても筋肉があまりつかない体質のためこの結果は仕方ないともいえる。
さて、それに対して悪びれもせずに木刀の素振りをし始めた恭也と呼ばれた青年。
容姿は上の下といった感じで、さらに本人の醸し出す落ち着いた―――悪く言えば枯れた雰囲気によって一部の女性からの人気はあるが町に出て騒がれるほどの容姿はしていない。
そして恭也と対していた少年はそれと言わねば少年と分からぬ容姿をしていた。それは別に見た目が少年と言えぬオッサンであるとか、人間に見えないとかではない。
少年と分からぬ理由はただひとつ。肩より少し長い髪は烏の濡れ羽色のようで、睫毛も長く瞳も大きい、顔のバランスは幼いからか、かわいらしい纏まりしていた。つまり、容姿だけで判断するのなら、少年は少年と呼ぶにはあまりに少女的、それも美少女といえるような容姿をしていたのだ。
彼らは兄弟であり、兄弟子と弟弟子という関係である。
「なのはに比べたら、大分強いけどな」
「なのはと比べたらって、大概の人が当て嵌まりますよね?」
話題にでたなのはというのは2人の妹である。
「京華お兄ちゃん!!」
家にある道場に響く幼い声に京華はびくりと体を震わせる。
「やぁ、なのは……今日は早起きですね」
京華と呼ばれた少年は冷や汗をかきながら振り返り話題にあがった妹を見る。
茶髪の髪はツインテールに纏められていて可愛らしい容姿をしている。しかし、だからといって京華に安心する要素はない。
「にゃはは、久しぶりに会ったのに今日は……とか、わかるの?」
声は楽しげに、しかし絶対零度の視線で京華を見つめていた。
「い、いやぁ……入院している間も美由希姉さんに色々聞いてましたし?」
そう、京華はある事情で入院していたのだ。現在京華は年齢で言えば小学3年生である。しかし、1年生になる前に少しばかり命に関わる事件にあい体の調子を崩し、安定するまでに長い時間がかかったのだ。
もっとも、教育に関してはキチンと入院中に歳相応の分(プラスで自主学習)をしていたし、家の流派である御神流の修行に関しても時々見に来る父、兄、姉に見てもらったり自主練習したりとしていたので京華は一般的な小学3年生程度の能力は持っている。(オーバーしているともいえる)
ちなみに体の調子を崩した、というより脳に妙な癖が残り慣れるのに時間がかかったというのが実情だ。
「ふーん……あ、そうだ。今日は京華お兄ちゃんに私の友達を紹介するから、楽しみにしてて!」
なのはは先ほどとは打って変わってにこやかに道場を去っていった。
「え? 結局何しにきたんですか?」
「さぁ……?」
兄弟揃って首をかしげる光景は事情を知らない人が見たらシュールに違いなく。
「どうしたの?
道場に入ってきた京華の姉で恭也の妹である眼鏡の見た目文系美少女の美由希も首を傾げたのは仕方ないことなのかもしれない。
◇◆◇◆◇◆◇◆
京華、恭也、美由希の3人は朝の日課をこなした後、道場から出て朝食をするために家のリビングに家族全員で座っていた。
「結局、恭也兄さんにも美由希姉さんにも、一太刀浴びせることが出来ませんでした……」
「ふむ、だが同い年の頃の恭也や美由希よりも確実に強いんだ。このままサボらずに続ければ2人にだっておいつけるさ」
落ち込んだ京華を慰めたのは兄弟、姉妹の父、高町家の大黒柱である高町士郎である。
「父さん……」
「あら、京華はそんなに強いの?」
そこで意外そうに口を出したのは母の桃子、ちなみにこの夫婦、見た目が若い。何度か京華のお見舞いに行った時に士郎は若い父親と言われ桃子は姉と呼ばれていた。
「あぁ、確かに年齢と骨格のせいで筋力は足りないけど―――」
士郎が桃子に話しかける様を見て京華は口を閉ざし止っていた食事を再開。
いつもどおり母の美味しい手料理に舌鼓を打ちながら家族を見る。
高町士郎、見た目温和な黒髪の日本人らしいといえば日本人らしい優しい父親、ただし鬼のように強い。
高町桃子、本当に30代なのかを疑いたくなるような容姿、まず間違いなく京華の容姿は桃子の容姿を受け継いでいる。
高町恭也、黒髪の普通の青年、ただし盆栽が趣味などという枯れたところがある……にも関わらず彼女持ち。
高町美由希、黒髪に後ろで結われた三つ編みに眼鏡、美少女ではあるが雰囲気が暗く見えるせいか、それとも別の理由か彼氏はいない。
高町なのは、桃子に似て可愛らしい女の子、京華と違い黒髪ではなく茶髪、ツインテールで括っている……運動音痴。
そして、なのはの双子の兄である高町京華、家族が揃って食事をとるのも京華にしてみれば時々、であったのだがこれからは毎日、みんなと過ごせる。
何と無しに家族を見た京華であったがこれから先を想像して口元に笑みを浮かべた。
「京華、そろそろ学校の時間だぞ?」
退院してから1週間、ようやく落ち着いてきたため、本日から学校に通うことになった京華だが不安は少ない。入院していたという事実を考慮してなのはと同じ組になることが確定していたからである。
「はい! じゃあ、なのは、行きましょうか?」
「うん!!」
元気よく家から飛び出す兄妹を家族達は微笑をたたえて見送った。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「高町京華くん、私が先に教室に入るから呼んだら入って来なさい」
学校についてなのはと別れ職員室に行き教師に連れられ教室の前。
「はい」
担任の女教師の言葉に言葉少なく返事をする京華は誰が見てもわかるほど緊張していた。
「高町京華くん、入ってきなさい」
ビクリと体を震わせた京華は震える体を押さえながら教室のドアを開く。
教壇の前に行くと黒板には既に名前が書かれていた。
「じゃ、自己紹介をして」
「高町京華です。え、と……長い間入院していたので、皆さんに迷惑をおかけすることもあると思いますが仲良くしていただけると幸いです。……今では健康なので、普通に走り回ったり出来ますから遠慮なく遊びに誘ってくださいね」
そういいながらペコリと頭を下げる京華。
しかし、反応がない。どうしたのかと、顔を上げた京華は首を傾げる。
「はい! しつもーん!」
京華が顔をあげるのを待っていたのか1人の男子生徒が手を上げた。
「はい? ……なんでしょう?」
「高町って高町さんと……高町なのはさんとどういう関係?」
そこでようやく、京華はなのはが京華の事をクラスメイトに説明していないことに気付いた。
「なのはとは兄妹です。僕が兄でなのはが妹、二卵性双生児というやつですね」
「あ、やっぱり男の子だったんだ……」
どこかから聞こえた呟き声を京華は努めて無視をした。
それからいくつかの質問を終えて最初の授業を受けた京華は拍子抜けしていた。
「……うーん」
京華は入院している間も勉強は怠っていなかった。それが原因か学校の授業内容よりも大分進んだ内容を理解していた。
「はい、高町京華くん。この問題を答えてください。」
「はい、答えは―――」
懸念することが一つ減ったと安心するべきか、と京華は考えて初めての授業は無事に過ぎていった。
「お兄ちゃん」
「なのは……? あぁ、友達を紹介してくれる。と言ってましたね」
休み時間に近づいてきたなのはに一瞬怪訝な顔をした京華だったが理由に思い至り表情を笑みに変えた。
「そうよ、私はアリサ・バニングス、アリサでいいわ。よろしくね、京華!」
「私は月村すずか、よろしく京華くん。」
アリサと名乗った少女は金髪に碧眼というあからさまに日本人ではない容姿をしていた。
しかし、京華としては見た目が可愛いという点を除けば特に気後れする要因はないと思っている。気が強そうな目をしているが少しドジなところのあるなのはの友達なのだ。きっといい娘なのだろう。
すずかの方は京華と同じく髪が艶やかな日本人のお嬢様という言葉が似合う少女だった。こちらも美少女なのだがこちらは雰囲気が柔らかいため、なのはの友達でなくとも京華は仲良くなっていたかもしれない。
「よろしくね。アリサちゃん、すずかちゃん。」
にこりという言葉がぴったりな微笑みをアリサとすずかに見せた京華を含めた見た目美少女4人組、後に人数が増えることになるが、この1組は仲良し美少女組という本人たちが聞いたら顔を赤くしたり蒼くしたりすること間違いなしの呼ばれかたを長くされることになるとはこの時は誰も予想していなかった。
ともあれ、短い休み時間の間に話す事はあまりなく。ファーストコンタクトは平和に過ぎていったのだった。
そして、昼休み前のセカンドコンタクト。
最初の休み時間以降は他のクラスメイトと話していた京華は、漠然とだがクラスの雰囲気を理解していた。
基本的に明るいクラスメイトたちだが、京華としては妹もいるし、アリサやすずかのいるグループが一緒に居やすいだろうなと感じていた。
しかし、昼休み前、最後の授業の体育。
その準備に入る教室内の空気はどこか淀んでいた。
体育のために体操服に着替える必要があるのだが今は男女同室、しかし、その異性に反応している生徒は少ないため空気の淀みの原因にはならない。
「……?」
ならば、何が原因かと体操服に着替えながら辺りをさりげなく見回す京華。
京華は病院での交流のせいでわずかに、男女間の性別意識が同い年の子供より高い。だから、男子の着替えはともかく女子の着替えを見るのは既に恥ずかしくなってきていたのだが教室内の雰囲気を探ることを優先し極力女子の方は視界に入れずに全体を見ることに成功した。
その結果、なのは、アリサ、すずかの3人のグループ以外が暗いことに気付く。
だからといって、京華にはそれだけで原因がわかるわけでもなく。
居心地の悪さを感じたまま京華は着替え終わった。
「ねぇ、京華! 一緒にグラウンドにいかない?」
着替え終わったタイミングで近づいてきたのはアリサ、その横になのは、一番後ろがすずかなのだが、すずかの様子が少しおかしいことに京華は気付いた。
「いいですよ。すずかちゃん、どうかしました?」
京華に尋ねられてなのはの影に居たすずかは視線を京華とあわせる。
「え……と、京華くんって……」
しかし、再び視線を逸らしたすずかは言い難そうに口を噤む。
すずかの顔は京華のほうをはっきりとは向いていなかったが京華からも見える位置ではあった。
だから、京華は少し遅れてすずかが恥ずかしそうに顔を赤らめていることに気付いた。理由も分かったため京華は慌ててすずかに言わなくてもいいと言おうとしたのだが少し遅かった。
「体、結構筋肉ついてるね。」
つまり、すずかは京華の体を見て照れていたのだ。
不幸中の幸いは連れの2人がよく分かっていないことか。
「う、うん。一応鍛えてはいますから……さ、さて、アリサちゃん、なのは、すずかちゃんもグラウンドに行きましょう!」
突然ぎこちなくなった空気にアリサとなのはは首を傾げているが、理由のわかる原因2人が照れながらも空気を戻そうと頑張って話したので、グラウンドにつく頃には4人全員笑みを浮かべながら話していた。
授業が始まり、男の体育教師がボールを片手に持ちにこやかに宣言した。
「では、今日の体育の授業は、ドッジボールだ!!」
好感度表的なもの
0 興味なしまたは面識なし
1~5 少し好き
6~10 好き
11~15 大好き
16~20 愛している
21~25 ????
(初登場キャラは強制的に+表記)
高町 桃子
親愛度 20 (+20)
友情度 0 ( +0)
恋愛度 0 ( +0)
高町 士郎
親愛度 20 (+20)
友情度 10 (+10)
恋愛度 0 ( +0)
高町 恭也
親愛度 17 (+17)
友情度 15 (+15)
恋愛度 0 ( +0)
高町 美由希
親愛度 17 (+17)
友情度 8 ( +8)
恋愛度 0 ( +0)
高町 なのは
親愛度 12 (+12)
友情度 8 ( +8)
恋愛度 0 ( +0)
アリサ・バニングス
親愛度 3 ( +3)
友情度 5 ( +5)
恋愛度 0 ( +0)
月村 すずか
親愛度 2 ( +2)
友情度 3 ( +3)
恋愛度 1 ( +1)