魔法剣士とリリカルマジカル   作:菖蒲蜘蛛

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プロローグはキャラクター紹介と関係みたいな感じになっております。




にしても、亀過ぎる……

誤字脱字、こっちの文章のほうがいいなどありましたら、ご報告お願いします。


日常2

 

 

『ドッジボールをする』

 

 

 その言葉に対しての反応は劇的であった。

 

 

 

「あぁ……ここが……地獄か」

 

 

「婆ちゃんが綺麗な川の向こう側でこっちにおいでって……」

 

 

「小さな星が、ついたり消えたりしている……彗星かな……? いや、ボールか……」

 

 

 

 

 様々な反応を見せたクラスメイトだが、共通している点が1つ、それは全員が恐怖という感情を見せていることだった。

 

 

 

「……どうした? みんな?」

 

 

 ようやく、体育教師もクラスメイトの異変に気付いたようで首をかしげた。

 

 

 

「ふ……貴方は休んでいる山田教諭の変わりだから、知らないんですよ。うちのクラスには……いや、せめて貴方も巻き込まれてください……先日ドッジボールをすると言われてから今日まで感じてきた恐怖、その意味を身をもって体験してください……」

 

 

「は?」

 

 

 

 首を傾げた体育教師(代理)と同様に首を傾げた京華、ドッジボールと恐怖が結びつかない故の反応だ。

 

 

 

 

 

 そうして、チーム分けが始まり京華はアリサ、なのはと同じチームに(2人は素早く外野に移動した)すずかが相手チームに分けられた。

 

「先生こっち!」

 

 

 生徒たちの要望で体育教師(代理)は京華たちのチームに入る。

 

 

 

 大人が入るのに相手チームは文句の一つも言わないことに京華は疑問を持ちながら体育教師(代理)に渡されたボールを眺めていた。

 

 

「よし、じゃあ、先生が居るからボールは……」

 

 

 体育教師(代理)はどうやら相手のチームにボールを渡すようで、京華は何故か目立つ所に居たすずかに注目が集まっていることに気付いた。

 

 

「君が投げてみなさい」

 

 恐らく、体育教師(代理)が彼女を選んだのは一見大人しそうに見える彼女を積極的に体育という授業に参加させたかったのだろう。

 

 

 しかし、ボールが彼女、月村すずかの手に渡ったと同時にコートの空気が凍った。

 

 

「先生!?」

 

「よし、投げてみろ!」

 

生徒の声を声援か何かと勘違いした体育教師(代理)はどっしりと腰を落としボールを受け止める構えをとる。

 

 

 京華はそれを見て、体育教師(代理)に本気で取る気が無いことを悟った。大方、わざとらしく当たって取り損ねる気なのだろうと、そして、その予感は的中していた。

 

 

 ただし―――

 

 

「せいっ!」

 

 

「ゴォッ!?」

 

 ―――投げた球が、体育教師(代理)の想定より遥か上、まともに取ろうとしても取れぬほどの速度であったことを除けば、おおよそ予感通りと言えただろう。

 

 

 すずかの可愛らしい掛け声で投げられたボールはそれとは裏腹に凶悪な速度で体育教師(代理)の腹部を直撃。

 

 

 

 

「先生……月村さんは、山田先生が競技系の運動を躊躇うくらいの運動神経なんですよ……」

 

 

 

 呆然として崩れ落ちる体育教師(代理)をコートから追い出した男子生徒は死地に赴く兵士のような表情を見せてすずかを見る。

 

 

「やっとわかりました。みんなの表情の理由はこういうことだったんですね……」

 

 

 京華は教えてくれなかったなのはやアリサをちらりと見る。

 

 

「お兄ちゃんがんばって!!」

 

「なのは……それ無茶……」

 

 その2人のやり取りを見た京華は少し考えるそぶりを見せる。

 

 

「すずかちゃん! 勝負です!」

 

「え? でも……」

 

 再びボールを持っていたすずかに声をかける京華。しかし、すずかは京華の容姿のためか、ボールを投げるのを躊躇う。

 

 

「む、侮ってますね……」

 

「えぇと、じゃあ……えいっ!」

 

 すずかの投げたボールは体育教師(代理)に投げたものより格段に遅く、京華に向かってはいるが普通に取れるものだった。

 

 

「……見たところ、すずかちゃん最初のも本気じゃないですよね?」

 

 ボールを受け取った京華は一度軽く地面を蹴り後ろに下がる。

 

 

「しっかり、止めてくださいね?」

 

 

 すずかはその瞬間、心臓が高く脈打ったのを感じた。

 

 

 

 京華が足を一歩踏み出す。摺足で踏み出された一歩はすずかの眼には異様な長さに見えた。そして、次に京華は上体を捻る。

 

 

 すずかは自らの眼を疑った。

 

 一連の動きは並外れて優秀なすずかの眼をしてなお速く見えた。しかし、その後。

 

 

「っ!?」

 

 両腕に衝撃。それは恐らく、最初にすずかが投げたボールよりもう少しだけ速い球。

 

 

「見えなかった……?」

 

 飛んでくるボールが、ではない。ボールを投げる起点になるはずの腕、その腕を振る動作がすずかの眼では追えなかったのだ。

 

 

「すげー」

 

「月村さんと同じくらい速くなかった?」

 

「いや、月村よりは……?」

 

 まわりのクラスメイトのざわめきもすずかの耳には入っていなかった。

 

 

 

 確かに、月村すずかにとって体育とは楽しい授業だった。けれども、すずかの身体能力は並みの子供どころか大人すら凌駕する。

 

 

 だから、本気も出せない。本気を出せば恐らく、周りから怖がられるだろう。

 

 

 子供は残酷だ。自分が気に食わないものははっきりと嫌う。すずかはそれが分かるくらいには精神年齢が高かった。

 

 もし、今以上の身体能力を他のクラスメイトに見せれば怯えるだろう。

 

 

 けど、それも、今のすずかにとっては。

 

 

「どうでもいい」

 

 小さく、周りの誰にも聞こえないように呟いた。

 

 

 まず、間違いなく。これから周りのクラスメイトはすずかを遠巻きに見ることになるだろう。しかし、それすら例え一部でも、秘密の一端を遠慮なく晒せる相手が目の前に現れたのだ。

 

 

 

 すずかにとって、これ以上に素晴らしい事はあるだろうか?

 

 

 

「いくよ!!」

 

 

 8割、すずかの投げたボールに込めた力である。それは時速80kmを超える弾丸として放たれた。

 

 

 確かに、発展途上の子供なら、見ることはできる。しかし、正面からそれをはっきりと見るのは訓練されていなければ難しい。

 

 

 だから、すずかは祈った。反応すらできずに京華がボールに当たる未来ではなく。

 

 

 

「っ!!」

 

 

 目の前でボールを受け止めた、京華の姿を。

 

 

 

 

 単純に受け止めたわけではない。体を退き、全身の筋肉で衝撃を吸収し、さらにもう一歩、体を後ろに退いてようやく止まった。

 

「あは!」

 

 楽しげに声を上げるすずかに京華は苦笑いを浮かべた。

 

 

「すごいです。……えぇ、正直、驚きました」

 

 

 京華の予想の遥か上、それも力任せに動いて今の速度。

 

 筋力では、とても及ばない。

 

 

 すずかがなぜ、これほどの力を持つのか。体質的なものかそれとも別の何か、家系的なものではないだろう。なぜなら動きがお粗末に過ぎる。

 

 

 

「ふぅ……普通にやったんじゃ勝てませんね」

 

 

 すずかの異様な筋力。それに対しての考察を京華は破棄した。

 

 

 今まで、それを隠し通してきたのはなんとなく京華にも伝わった。周りの反応はそれがはっきり分かるくらいには顕著だった。

 

 

 異端を見る目。しかし、それを無視するかのように、すずかの瞳には京華しか映っていなかった。

 

 

 すずかが全力を出さなかった理由も、いま、喜んでいる理由も京華に伝わる。

 

 

 

「……女の子に期待されてしまっては、断れません」

 

 

 京華は小さく呟き、記憶の奥底を、自分の起源を呼び起こしながらすずかを見る。

 

 

「いきますよ」

 

 

 京華は手に持ったボールを投げた。

 

 

 ただし、前にではなく上にである。

 

 

 

「ちょっと、反則くさいですが……」

 

 

 落ちてきたボールが京華の前に来たと同時に、京華は体を捻り力が最大限乗るようにしてボールに掌底を打ち込んだ。

 

 

「このくらい!」

 

 すずかは先ほど自分が投げたよりわずかに速いボールを笑みを浮かべながら受け止める。

 

 

「次は、全力!!」

 

 大きくボールを振りかぶって投げたすずかは最早自分がどのくらいの速度でボールを投げたのかを理解していなかった。

 

 

 時速でいうところ113kmの速度で迫るボール。それに加えて相手コート寸前でボールを投げた(打った)京華とすずかの距離は4mほど。

 

 

 だから、すずか(・・・)がそれを受け止められなかったのは偶然ではなかったのだ。

 

 

「あ……れ?」

 

 すずかは自分の肩に感じた衝撃に驚いていた。

 

 

「す……すげーーー!!」

 

「月村さんに勝ちやがった!!」

 

「いや、ちょっとまてお前らあの動きどう考えても……」

 

 

 クラスメイト数人が歓声をあげて体育教師(代理)が小さく冷静な言葉をいうのだがクラスメイトはそんなことお構い無しにはしゃぎまわる。

 

 

「すいません先生! すずかちゃんの肩に当たっちゃったんでちょっとコートから出て付添っててもいいですか?」

 

 京華がにこやかにしかし有無を言わせぬ早口で体育教師(代理)にそう告げてすずかを引っ張りコートを離れていく。

 

 

「へ? ……え?」

 

 京華は未だに混乱しているすずかをコートから離れた位置、まわりのみんなからは見えはするが声は聞こえないくらいの位置にすずかを座らせた。

 

 

「すずか、大丈夫?」

 

「お兄ちゃん、酷いよ?」

 

 一緒についてきたアリサとなのはに苦笑いを浮かべながら京華はすずかの隣に座る。

 

 

「みんな普通に凄い凄いって言ってましたね。最初はすずかちゃんのテンション(・・・・・)驚いて(・・・)いたみたいですけど」

 

「あ……うん」

 

 呆然と呟くすずかに京華はクスクスと小さく微笑む。

 

 

 

 

「すずかちゃんが元から凄かったからさっきのがどれだけ凄いかみんなにはわからなかったんですよ」

 

「……京華くんは……」

 

「アリサちゃんもなのはも、すずかは凄いと思いますよね?」

 

 すずかが何かを言う前に京華はアリサとなのはに声をかけた。

 

 

 

「あったりまえよ! すずかは私の親友なんだから!」

 

「うん! でも、お兄ちゃんも凄かったの!」

 

 

 なぜか胸を張り威張るアリサと眼を輝かせて京華を見るなのはに、すずかは眼を見開いた。

 

 

 

「あ、うん……あ、ありがとう……」

 

「と、まぁ、気にしているのは本人だけというのは多々あることです。僕にも身に覚えがありますから」

 

 すずかはその京華の言葉にも驚いた。さきほど、京華に切られた言葉“京華くんは私のこと怖くない?”の答えが聞く前に帰ってきたからである。

 

 

「ネタ晴らししちゃうのはまだ早くて面白くないですから、さっきの僕の動きがなんなのか、とか、なんで分かるのかとかはすずかちゃんが考えてください。一緒に遊んでいれば、その内わかりますから」

 

「む、確かにね。勉強はできるしスポーツもできるなんてそりゃ、努力! とかもあるんだろうけど……難しいものね。何か秘密があるって言われたらそんな気がしてきたわ……ちなみに塾とかには?」

 

 すずかではなくアリサがネタがあると聞かされてそれを解くつもりなのか、真剣な表情で京華に問いかけた。

 

 

 

「すずかちゃんも、がんばって解いてね?」

 

「はーい! 私わかったの!」

 

「なのはは知ってるから教えるのも禁止で」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

「って、京華くんが言ってたんだけど何だと思う?」

 

 家に帰ったすずかは早速、姉の(しのぶ)にそう尋ねていた。

 

「そう、それですずかは今日帰ったときにそんなに嬉しそうだったの……」

 

 優しく微笑む忍。

 

 忍の容姿はすずかが18歳になればちょうどこうなるだろうと思わせるもので可愛らしさと綺麗さが同居した美少女であった。

 

「恭也の弟さんよね。会ったことはないけど恭也から答えも聞いてるし……だけど、本当に奇跡ね」

 

「ん?」

 

「……すずか、京華くんとはいい友達になれそう?」

 

「うん!」

 

 元気よく返事したすずかだが、忍の表情から明るさが無くなったことに気付き困惑する。

 

 

 

「すずか、京華くんと……友達と近くに居たいなら……気をつけなさい」

 

「え?」

 

「体育の時間、押さえが利かなくなっていたでしょう?」

 

 忍は何が、とは聞かない。そして、すずかもわざわざ聞く必要のない。分かりきったものだった。

 

 

 

「認めてくれるとは限らない。だから、すずか。早いうちに、何を諦めるか考えておきなさい」

 

 強い口調の姉にすずかは頭が真っ白になる。体が震え、気を抜けば膝から崩れ落ちそうになりながら気がつけばすずかは自室に戻っていた。

 

 

「大丈夫……大丈夫……私は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「高町京華くん……ね。すずかの話を聞く限り、優しく育ったみたい……本当に、あんな症状(・・)で小さな子供がよく優しく育ったものね……本当に奇跡だわ。願わくば、その優しさで、すずかを助けてくれればいいんだけど……」

 




高町 なのは
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アリサ・バニングス
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月村 すずか
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月村 忍
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