魔法剣士とリリカルマジカル   作:菖蒲蜘蛛

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厚顔無恥にも投稿。

まだだ、まだ終わらんよ。


日常3

 とにもかくにもアリサ・バニングスにとって高町京華という人物は奇妙な存在という印象であった。

 

 

 その1日を追っただけで、げんなりするくらいには奇妙な人物であった。

 

 

 京華のハイスペックっぷりに秘密があると知ったアリサは、その翌日である今日一日京華を観察していた。

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 まず、授業光景。

 

 

 1時間目の授業は算数だ。

 

 小学生の授業、とはいえ。

 

 

 サラサラと、一切の停滞なく文字を書いていくその姿は思考しているとは思えない。

 

 まるで自分の名前を書いているような速度で書かれたその答案は。

 

 

 

「では、小テストを返します」

 

 

 

 採点の終わった教師がテスト用紙を生徒に返還していく。

 

「高町京華くん」

 

 名前を呼ばれた京華はテスト用紙を受け取って、アリサの席に向かっていく。

 

「100点でした。アリサちゃん」

 

 そういって、京華は花丸の描かれたテスト用紙をアリサに見せた。

 

 ちなみに、授業開始前にテストの結果を見せろとアリサは言っていたので京華は自慢しに来たわけではない。

 

「そ、そう。私もよ……」

 

 ちなみに、テストの難易度は最後の問題を除いてただの復習問題となっていた。

 

 逆に言えば最後は応用問題なのだが、アリサは15秒ほど考えて答えを出したにも関わらず、京華は見たと同時に書き始めていた。

 

 テスト中、京華をガン見していたアリサだったがそれでも京華を除けばおそらくクラスで1番早くテストを書き終えていただろう。

 

 

「同点ですね」

 

 ニコリと無邪気にほほ笑んだ京華に、アリサはいたたまれなくなって視線を逸らした。

 

 

 

 

 

 2時間目、国語の時間。

 

 初めて習うページ。そんなページを京華は諳んじて見せた。

 

 以前に読んでいたというのも考えられたのだが、恐らくは違う。

 

 

 読む前にページを開いたのをアリサは見ていた。ただし、わずか3秒ほど。

 

 

 30行近くを3秒で覚えたということだろうか?

 

 

 

 

 

 3時間目、体育。

 

 こちらは特になにもなかった。

 

 京華とすずかが端っこのほうで数字の書かれたボールを高速で投げあって遊んでいたのは昨日の光景から驚くには値しないと判断した。

 

 

 4時間目、理科。

 

 実験の授業であるため教室を移動。班ごとなのだが基本は自由、なので京華はなのは、すずか、アリサのグループに入ると思いきや、別の男子のグループに入っていた。

 

 どうやら、いろんなグループに顔を出して話しやすい友達を探しているようだった。

 

 

 そんなこんなで実験が始まり、アリサは道具を取るために席をたったのだが。

 

「京華、お前はバニングスさん可愛いって思うよな?」

 

「バカだろ。月村さんこそ一番可愛いだろう」

 

「高ま……な、なのはちゃんも可愛いと思うぞ」

 

 とても気になる話題を耳にして動きを止める。

 

 幸い、男子生徒たちはアリサの存在に気づいていない。

 

「そうですね。3人とも可愛らしいと思いますよ?」

 

 しかし、そんな当たり障りのない言葉を聞いて、アリサは少しだけ頭にきた。

 

「ちょっと、今の答えはさすがにないんじゃない?」

 

 後のアリサがこの場にいた場合。全力でこの時のアリサを止めにかかっていただろう。

 

 しかし、それは無理な話で。

 

「ば、バニングスさん!?」

 

 先ほど、アリサのことを可愛いと言っていた男子生徒が大いに慌てているがアリサはそちらより京華に視線を向けていた。

 

「……そうですね。少しばかり八方美人の答えでしたね」

 

 京華は少し、考える素振りを見せた後に口を開いた。

 

「本人を前にいうのは少しばかり恥ずかしいのですが、では言いやすい順に言わせてもらいます」

 

 京華は視線を一度なのはに向け、アリサに戻した後、笑みを浮かべて、恐ろしい(・・・・)ことを言いだした。

 

「まずは妹から、なのはは、そうですね……年相応の振る舞いにもかかわらず、考え方は少し大人びていますね。一時期、家族がなのはに構ってあげられないことがあったのですが、その時もなのはは決して我儘は言わなかったですし。自分に厳しい、とも言いかえれますね。だから、他人にはやさしくできるし、笑顔もやさしく、柔らかに浮かべられるのでしょうね。なのはと接していると、なのはが本当に他人の気持ちを考えて動いているのがわかりますね。とはいえ、少し意固地なところがあって余裕がないときには自分で背負ってしまうところがありますが。と、性格だけではいいところ、ですね。見た目で言えば、身内のひいき目かもしれませんが十二分に可愛いと思います。そうですね、小動物的、といいますか。ドジなところもありますが、それはマイナスにはならない程度ですし。将来は教師とかになっているんじゃないでしょうか?」

 

 褒め殺しである。本人がいれば、悶絶したに違いない。というか、すでにアリサの脳内では警鐘が鳴り響き、退避を促していた。

 

「次に、すずかちゃんですね。昨日あったばかりなので表面上、かもしれませんが。すずかちゃんを見た第一印象は物静かな子、ですね。けれども、暗いではなくどちらかというと暖かい、柔らかいといった雰囲気でしょうか? ただ、少しだけ他人を拒絶しているようにも見えましたね。話してみると、えぇ。印象が結構変わりました。結構、話もしますし、口調こそ丁寧ですが、もしかしたら一番……いえ、なんでもありません。あと、運動しているときのすずかちゃんは可愛い、というより綺麗ですね、髪も綺麗ですから彼女が動くたびに靡いてとても絵になっています。だからといって、普段の様子が違うかと言われれば、もちろん普段も良いと答えられますね。大和撫子という言葉がありますが、物腰柔らかですし、ぴったりではないでしょうか? 3人の中では髪質が一番きれいですね。いえ、ほか2人も綺麗なんですがなんというか、あれ、ケアとかそういう次元の話ではなくて傷つかない? えぇ、ダメージが全くないように見えます。顔立ちも整っていると一言で言えてしまうのが怖いですね。少しばかり自分を過小評価しているというか、そんな感じがしないでもないでしょうがそれは慎み深いということで。あと、小動物好きなところもあるのでそういうところも男子的にはとてもグッドです」

 

 こちらも、褒め殺しである。聞いてるだけで頭が茹で上がりそうになりながらも、アリサはすずかを見る。

 

(あれ……机に突っ伏してる?)

 

 よく見ると、耳まで真っ赤になっている。つまり、聞いたのか、聞いてしまったのか月村すずか。

 

 と、アリサが戦慄していると京華がアリサを見ていることに気づいた。それも真っ直ぐに妖しい色の瞳で。

 

「最後にアリサちゃんですね。アリサちゃんもすずかちゃんと同じく昨日からの感想になるのですが、そうですね。3人の中では一番……えぇ、芯がしっかりしていますね。少しばかり語調が強すぎるきらいはありますが、それはつまり芯が強いということでしょう? そういう自信をもっている人は凛とした空気を醸し出すものです。そうですね、3人の中では一番の高嶺の花ということですね。足りない人から見ればそれはもう触れるのも恐れ多いくらいには、アリサちゃんは輝いて見えると思いますよ。けど、実はそれとは逆の性質もあるみたいですね。人づきあいが苦手でしょう? 本心をさらけ出せる相手が少ないということから友人に対して少しばかり臆病になっていますね。いえ、おっかなびっくりしているようすはとても可愛らしいので個人的にはとってもいいと思いますが。アリサちゃんは多分一緒にいればいるほど可愛いところが見えてくると思います。ちなみに、見た目で言えばアリサちゃんの顔で好きな部位は眼、ですね。色が宝石のように綺麗というのもありますが意志の強さが見えるというのが一番でしょうか? すずかちゃんがアメジストだとすると、アリサちゃんはエメラルド、ですね。いえ、宝石に例えるなんて陳腐もいいところですが、僕はそれ以上に美しい(・・・)色のものを知らなくて、つまるところ、アリサちゃんは美しいということでしょうか? いえ、性格も合わせればやはり可愛いでよいのでしょうかね。どう思います?」

 

 京華は周りで顔を真っ赤に染めている男子生徒たちにそう問いかけるものの返事をするものはなく。

 

「――――!!」

 

 アリサは脱兎のごとく逃げ出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 昼休み。

 

 

「なのは、すずかちゃん、アリサちゃん、ごはんを食べましょうか?」

 

「え、えぇ。た、食べましょう」

 

 アリサは顔が赤くなるのを止めることもできずに、しかし、断ることもできずに応じるしかなかった。

 

「どうしたの、顔が赤いよ、アリサちゃん?」

 

 そんなアリサになのはがてくてくと近寄っていく。

 

「う……うぅ……あんたの兄貴どういう神経してるのよー……」

 

 よもや本人を目の前にあそこまで言うとは思っていなかった。

 

「ね、ねぇ。京華くん、私って可愛いのかな?」

 

「聞こえてたんですね、えぇ、すずかちゃんは可愛いと思いますよ」

 

 そして傍で繰り広げられるバカップルもかくやという会話にアリサの心労は溜まる一方である。

 

「す、すずか……」

 

「えへへへ……」

 

 聞きに行くという発想がすごいと言おうと思ったアリサだがすずかが見たこともない状態になっていたので言葉を失った。

 

 これは、あれだ。

 

 

 

 ダメなヤツだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで、すずかちゃんは答えがわかったそうですよ?」

 

「嘘!?」

 

 

 

 

 

 そして5時間目、わからないと悩んでいると教師がやさしく問題を教えてくれた。

 

 アリサは涙目で京華を睨んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまり、私じゃわからなかったってことよ!」

 

 6時間目まで考えてわからなかったアリサはとうとう、本人に聞くことにした。

 

 時間制限はなかったとはいえ、すずかはすでに分かったのだ。自分だけわからないものをいつまでも引きずりたくはなかったという理由もある。

 

 

「うーん、これは確かにすずかちゃんに有利過ぎましたね……」

 

 京華も声には出さずに、すずかに対して出した問題だったのでアリサは答えられなくてもよかったのだけれどと考えていた。

 

「簡単に言えば、僕は脳にある信号を送ると思考速度が速くなるんですよ。もちろん、本来ならそんなことになっても制御なんてできるはずはないんですが……」

 

 高町、いや、御神流の話をしてもアリサにはわからないだろう。

 

 そう考えて、すずかにしたのと同じ説明を京華はすることにした。

 

「そうですね。本来ならない機能を家系的に使った結果の脳内開発といいますか。事故による後遺症といいますか。なのはにはできないですが、父さんと兄さん、姉さんも僕ほどじゃない(・・・・・・・)にしろ使うことはできますし」

 

 なお、体は耐えられない模様とは付け加えなかった。頭のほうが無事なのだからそのうち、なんとかなるといいなという希望的観測もあったのだ。

 

「入院中は地獄でしたよ。皆さんが1秒間で言ったことが体感で2時間に感じたり、もちろん言っている意味なんてわかりませんし」

 

 おそらく、神速の領域を家系的に使っていなければ発狂していただろう。脳内開発とは自分のことながらうまくいったものだと京華は笑みを漏らした。

 

「大丈夫なの、それ?」

 

「……えぇ、まぁ。200倍速くらいならば普段からノーリスクで使えますね。それ以上になると疲れたり、気絶したり……」

 

 ノーリスク、ではないがあえてそう言っておく。心優しい少女たちに心配させるのはナンセンスである。

 

 ちなみに寿命が縮まるとかではない。体の感覚がズレるのである。

 

 家系的に変態だったおかげでそれだけですんでいるともいえる。

 

「だから、僕は頭がいいのではなくて……」

 

「考える時間が長い、早いんだよね?」

 

 すずかが京華の言葉を引き継いで先をいう。

 

 つまり、アリサが感じた奇妙という感覚は京華の思考能力があまりに一般とズレていたことから感じた違和感だったのだ。

 

 

 

 まぁ、それがわかったとしても。

 

「では、帰りましょうか。アリサちゃん、すずかちゃん?」

 

 本人を目の前に恥ずかし気もなく恥ずかしい言葉を言える奇妙な人間であるということは変わらないのだが。

 

 

 

「友達、なんだからちゃんはいらないわよ」

 

 そして、友達になれそうということもアリサにとっては変わらないことであった。

 

「そうですね。アリサ、すずか」

 

「私もなのー!!」




高町 なのは
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アリサ・バニングス
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月村 すずか
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