全くもって誇ることではない事だけどボクには嫌いなものがたくさん、たくさんある。
例えば季節。
春が嫌いだ。
人付き合いが苦手なボクにとっては地獄の季節とも言える春。新しい環境に新しい人間関係。あぁ、考えただけでもうんざりしてしまう。
「いいじゃん新生活。青春ってヤツだよ」
「……うるさいなぁ。放っておいてよ」
「ほらほら行くよ」
「腕をひっぱるな!」
夏が嫌いだ。
暑いしなにより暑い。じりじりと肌を焼く陽射しなんで誰が好き好むのさ。冷房の効いた部屋で本を読むのが文明人ってやつだよ。
「海!いくよ!」
「いやだよそもそも窓から入ってこないでって」
「……」
「うわ襟を掴むなぐぇ、ッ」
秋が嫌いだ。
訂正。とても良い季節だと思う。スポーツの秋、食欲の秋、芸術の秋、大いに結構。各々思いのまま好きな秋を堪能すればいい。さてボクは読書の秋を堪能するとしよう。
「紅葉を見に行こう」
「今日は大事な読書の秋」
「思い立ったが吉日!」
「やっぱり嫌い!」
冬が嫌いだ。
特にお外に出たくない。寒いし雪だって降っている。こんな銀世界な日は炬燵でぬくぬくしながら本を読むに限るって——
「できると思って?」
「できたらいいなぁって!」
「残念でしたくらえスノーボール!」
「ぶへっ!やったなコラぁ!」
何回嫌いだって言ったと思ってる。その度にニコニコ笑うんだ。慌てるボクがそんなに面白いか。
「んー、それもあるけど」
「けど。なんだよ」
「……やっぱりなんでもないや!」
「なんだソレ」
「ねぇ」
「……今度は?」
「楽しいね」
よくわからない。そういうの、嫌いだ。
嫌いなものが多すぎて自分でも呆れてしまう。
本当に、たくさんの嫌いを持っている、ボク。
自分が住む街も、通う学校も、その通学路も嫌いだ。いつだってキミは勝手に走り出す。
『今からどっちが先に着くか競争ね!勝った方がひとつだけ負けた方にお願いができることにしよう。されたら絶対に断っちゃダメなルール』
よく連れて行かれた近くのコンビニも、プライベートな自分の部屋も、祝われる誕生日も嫌いだ。いつだってキミはボクに無理をさせてくる。
『どしたのそんな顔をして。笑ったほうがかっこいいよって言ってるでしょう。ほら!……わぁ、ぶさいくだなぁ』
晴れの日も、雨の日も、雪の日も、窓の外の景色も全部嫌い。いつだってキミはマイペースで。
『あーあ、もう楽しすぎて笑い疲れちゃったや。ん、……私もう、寝るね?おやすみ、なさい』
全部、全部。ぜんぶ、ぜんぶ、ぜんぶぜんぶぜんぶ嫌いだ。いつだってキミは——
「……いつだってキミは自分勝手だ」
掌にあるのは皺だらけの紙片にたったの一行ぽっち。2、3の滲んだ跡に重ねて一滴。
「キミがそんなんだからボクは」
“どうか、私のことは忘れてね。お願い”
君のいない今日が大嫌いだ。