朝起きたらラージャンになってた 作:驚愕したスゲージャン
山頂で一通りの事を終えた俺は、相変わらず付いてくるキリンと共に下山を開始したのだが、ここで一つ問題が発生した。
……腹減ったなぁ
そう、空腹である。思えば、この身体になってからなにも食ってない。あのケルビたちの一頭でも食っておけば良かったなと今更ながら後悔。しゃーなし、雪山だしポポでも探すか。あいつら旨いらしいし。生肉はアレだが、人間の時だってユッケや馬刺しなんかは生だったし平気やろ。それに、今の俺は
下山を一旦止め、雪山を歩き回っていると漸く食料を見つけた。残念ながらポポではなかったが、背面に苔を生やした豚みたいなモンスターモスが呑気にキノコを食ってる。キノコを食いにここまで来たのかは知らないが、どうやら単独のようで他にモスの姿は見当たらない。しめしめと俺はモスに近づき、拳を振り下ろしモスを仕留める。
すまんな。この世界は弱肉強食なんや。
キノコに夢中だったのだろうモスは、避ける素振りを見せることもせずにそのまま死んだ。まあ、ラージャン程の奴に殴られれば当然だろう。
……これ、このまま嚙り付けばいいんだよな?うん、きっとそうだよ。恐る恐る嚙り付いたが、普通にうまかった。やはり味覚はモンスター寄りのようだ。これはありがたい。しかし、そう考えると焼いたやつとか食えるんだろか?それに、ラージャンは肉しか食ってないイメージがあるから木の実とかも。まあ、それはいずれ機会があれば試してみよう。
俺がモスを食べている間に、キリンはモスが食べていたキノコの残りを食していた。色からしてアオキノコか?まあ、俺と一緒に歩いてた訳だし、彼奴も腹位減るよな。
肉はしっかりと食べたけど、骨って食えんのかな?キリンの角食ってる訳だし、骨程度バリバリ食えるとは思うが……迷ったら食ってみろってどっかの受付嬢兼編纂者も言ってたし、俺も食ってみるか。
フム……俺の顎の力が強いのかモスの骨が柔らかいのか知らんが、軟骨みたいだな。あー酒飲みたくなってきた。
とりあえずモスを食って腹を満たした俺は、もうちょっとこの雪山を歩き回ってみることにした。てか今気づいたけど俺がこの雪山に登り始め時と比べたら、動物やらモンスターがちらほらと見え始めたな。あの猛吹雪が止んだからか?
しばらく歩いていると、洞窟を見つけた。思ったより奥が無く、洞窟ってより横穴と言った方が正しいような気もするが、俺と俺に付いてきてるキリンが入って寝れる程度には広さがあったので今日はここで寝ようと思う。慣れん身体で登山なんてしたからスゲー疲れてるし。ラージャンがどうやって寝るのか知らんから普通に仰向けになって寝ることとする。では、お休み。
*
おはようございます。目覚めたら人間に戻ってないかなーなんて思って手を見てみたが、相変わらずゴリラみてーな掌が視界に映った。ため息を吐きながらとりあえず上体を起こす。当然の様に隣にはキリンが眠っている。なんか、昨日より黒っぽくなってない?土汚れ?それに、角も昨日より長いような……気のせいか?
俺が立ち上がると同時にキリンも目を覚まし、おはようとばかりに顔を擦り付けてくる。冷て!昨日は吹雪にあった直後だったから気にしなかったけど、こいつの身体結構冷たいな。あ、吹雪と言えば今日の天気はどうじゃろなってね。
……昨日のよりはましだけど、吹雪っすね。
まず人間だったら家から出ないであろう程度の吹雪を前に、俺はこの横穴から出るか否か考える。短めの草は横穴内にも生えてるからキリンは平気だろうが、出ないと俺は今日飯なしとなってしまう。気は進まないが、出ていくしかないか。なんとなく昨日より身体が馴染んでる気がするし、歩いてる最中にコケるなんてことはもうないだろう。
吹雪の中、俺とキリンは横穴を出た。寒い……ラージャンが氷属性に弱いからなのか、それとも単に気温が低いのかは知らんが、めっちゃ寒い。こんな寒さの中、機嫌良さげにステップしてるキリン君はなんなんですかね。君、それは雷雨の時とかにやるのでは?雷を操るわけだしさ。それともあれか?お前は雪を珍しがる子供か何かか?
楽しそうに跳ね回るキリンはほっといて先に行こう。どうせ俺に付いてくるんだし。飯探そ、飯。モスは昨日食ったから別の奴が良いな。
呑気に吹雪の中雪山を徘徊していると、壁肌に生っているキノコを見つけた。しかも、都合よく幾つか生えていたので、その内の一つをもぎ取る。黄色っぽい色をしている以上、俺の知識としてはこれはマヒダケだと思う。ハンターですら普通じゃ食わない代物だ。しかし、俺はラージャンである。氷属性以外には耐性あったと思うし、多分大丈夫だろ。では、頂きます。
……舌がピリピリするが食えないわけじゃなさそうだ。例えるなら、キノコの触感の強炭酸食ってる感じ。ただ、普通に旨い。あと、なんか少し力が漲る気がする。
不思議な感覚を覚えながら、俺は二本目に手を伸ばした。キリンが食している横で、俺もマヒダケを食べる。残念ながら満腹にはならなそうな数しかないから、食い終わったらまた移動するか。
キノコを食べ終わり再び雪山を歩き回っていると、何やら雪に埋もれながらも小さく動くものを発見した。なんだなんだと掘り返してみれば、そこに居たのは瀕死のアイルー……ではなくメラルーだった。行き倒れか?
流石にこのまま見殺しにするものアレなので、ゆっくりと持ち上げ一旦横穴へと帰ることにした。その道中薬草っぽい草を取り、横穴に戻り次第メラルーの口に咥えさせた。
するとメラルーは一心不乱に薬草を食べ、元気よく飛び上がり、俺を見て硬直した。まあ、起きて目の前にラージャンとか誰でもそうなるよね。次にメラルーがとった行動は逃走だった訳だが、逃げようと振り返ったメラルーの先に居るのは小さいとは言えキリンである。俺とキリンに挟まれていることに気づいたメラルーは諦めたようにその場に座り込んだ。煮るなり焼くなり好きにしろと言った風である。
無論そんな気はないので、顔の前で手を振った後に外の雪を指さしその後メラルーを指さした。それで、なぜ雪に埋もれていたのか聞いているのだと理解してくれたメラルーは、猫のように鳴きながらジェスチャーを交えて教えてくれた。
はーん。この吹雪で集落への帰り道がわからなくなったと。で、別の道を探してる途中で力尽きたのか。え?この横穴にも集落に繋がる道があったって?
メラルーの言う場所を見れば、確かにそこには小さい穴が開いていた。隅っこの方にひっそりと開いてたからわかんなかったな。ここを通ればメラルーの集落があるのか。
感心しながらその穴を眺める俺を他所に、メラルーは割としっかり頭を下げてからその穴に入っていった。こういっちゃ悪いが、メラルーもお辞儀できたんだな。悪戯してるイメージが強いからちょっと面食らっちまった。
メラルーの為とはいえ戻ってきてしまった以上、もう一度この吹雪の中探索する気はない。満腹ではないが、マヒダケで多少は腹も満ちているので今日はこれで良しとしよう。
しかし、今更だがハンターもいるんだよなこの世界。ともなれば、山頂で叫んだのは悪手だったんじゃないか?俺がいますよって教えてるようなものじゃん。しかも、よくよく考えれば山頂から見えた景色の中には明らかに人がいそうな場所もあったわけだし。
……やっちまったことを後悔しても今更だな。しかし、そうなるとハンターと出会う前には身体を完璧に慣らしておかないとな。
まあ良いや。今日はもう寝よう。外の吹雪も勢いを増してきたっぽいし。んじゃ、お休み。