『ウマ娘』。
彼女たちは、ときに数奇で、ときに輝かしい歴史を持つ別世界の名前とともに生まれ、その魂を受け継いで走る、という。
事実、トゥインクル・シリーズで名を揚げているウマ娘は、誰も彼も別世界で偉業を成し遂げた馬たちの名を冠していた───ただ1人を除いては。
生涯成績113戦0勝。
「負け組の星」と呼ばれた彼女が巻き起こしたブームに、人間だった頃の私も少なからず影響されていた。
競馬の奥深さに惹かれ、ある程度の知識は調べたものの、血統やらの歴史が深すぎて馬券を買う勇気はついぞ生まれなかった──そんな私が。
そんな私が、ウマ娘に転生したのはなんの因果か。
高知トレセン学園に入学し、模擬レースで5連敗中の私は、頭を打った拍子に思い出した前世の記憶に耽っていた。
きっと、前世が競走馬ですらない私に、この世界で勝つことなんてできないのだろう。そんな気持ちでいっぱいになった。
実際に負け続けてみて初めて、ハルウララの努力がいかに凄かったかを知る。
私は殆ど諦め半分で、せっかくなのだからこの世界のハルウララと戦って引退しようと携帯の検索欄に彼女の名前を打ち込んだ。
『ハルウララ、URA決勝進出』
驚くべき文字が、画面に表示される。
URAファイナルズといったら、優駿揃いの中央で開催されるトゥインクル・シリーズの頂点を決める戦いだ。
私はすぐに出バ表を調べ、学友から話を聞き、それから自分の頬をつねって、それが夢でも幻でもないことを確信する。
聞くところによると、この世界でも彼女は頑張り屋で、何度負けてもめげずに立ち上がり、URAまで上り詰めたのだという。
かつて私を魅了した彼女がそこまで遠くに行ったなんて。嬉しさと寂しさが同時に込み上げてきた。
URAファイナルズ決勝を観に行こう。
自分が走るのをやめるかどうかを考えていたのに、そんなことはすっかり忘れて、私はすぐに旅程を立てていた。
レース当日。
会場は多くの人で溢れかえっていた。
中には「ハルウララちゃん頑張れ!! 後援会一同』と横断幕まで広げて応援している人たちまで見受けられる。
そうしているうちに、パドックに桜色の髪の少女が現れ、満開の笑みで観客に向かって手を振り始めた。
同時にワッと歓声が上がる。その声を一身に受け、ハルウララはコースへ赴いていく。
その一瞬、振り返る彼女の目が覚悟を帯びたものになっていたのを、私は見逃さなかった。
そして、その走りは、1400mという短いレースが、まるで何時間にも感じられるほど、私の脳裏に深い衝撃を与えた。
歯を食いしばりながらスパートをかけ、並み居る強豪たちを一気に抜き去る彼女の姿は、もはや私の知っているハルウララではなかった。
運命は覆せる。
別世界の名前を持たない私でも、きっと。
そんな希望が心から溢れ出す。
負け組の星が、気付けば一等星となって、私の道を照らしていた。
5月5日より、アンケートの結果、各話の後書きにプチ設定資料を追加することになりました。違和感などあれば感想欄でお伝えください。なお、その他小説に関する話題は活動報告で行っていますので興味があればご覧ください。
設定資料作ったんですが、どこかに置いた方がいいですか?
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後書きで一人づつ紹介してほしい
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1話の前に小説として挿入して欲しい
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最新話の後に小説として挿入してほしい
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活動報告で小出しにしてほしい
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いらない